精霊少女に『カッコいい俺』だけ見せていたら、いつの間にか最強になっていた   作:平成オワリ

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第二十一話 宣言

 突然現れたドラゴンの襲来。あわやルクセンブルグ壊滅となるギリギリの状況は、なんとか回避することが出来た。

 

 そして今、俺とダイヤ、そしてエメラルドの三人は、精霊界から戻ってコロシアムの中心に立っている。

 

 すぐ傍では実況が大きく身振り手振りを動かしながら会場を盛り上げており――。

 

「さあ皆さん! 今回の精霊大戦の勝者にして、この街の英雄をご紹介いたします! まずはこの人! 突然この街に現れてギルドに登録。そしてこの初めての精霊大戦で見事勝利を飾った謎のマスター……レオンハート!」

 

 コロシアムの頭上にある巨大モニターに俺の姿が大きく映る。

 銀髪に黒いコート、そしてサングラスという出で立ちは、はっきり言って完全に裏家業の人間だ。絶対悪いことをしている。間違いない。

 

 それでも歓声が響くのは、俺が街の危機を救ったからだろう。

 

「そして次に突如現れたドラゴンを一閃! 白き閃光のごとく神速の一撃と、そのあまりにも美しい立ち姿に多くの人たちが恐怖すら忘れて息を飲んだことでしょう! レオンハートの契約精霊、エメラルドティアーズ!」

 

 やはり精霊大戦の華はマスターではなく精霊たち。

 

 エメラルドの姿がモニターにアップされると、俺のときとは比べ物にならない凄まじい歓声が響き渡る。

 

 わかる、わかるぞ。この美しい精霊を見たら、誰でもこうなるに決まっているのだ。

 

「そして最後に、皆さんご存じの方も多いでしょう! 敗北に次ぐ敗北、この街全てのマスターから見放されて、それでも彼女は一人戦い続けた! そしてついに最強無敗だったアマゾネスボルケーノを地に付け、最弱の称号を返上! さあ紹介しましょう! 今回の精霊大戦の勝利精霊……ブラックダイヤモンドです!」

 

 その瞬間、今日一番の歓声が響き渡る。まるで会場中が彼女を祝福しているかのようだ。

 

「あ、あ、あ……」

「ダイヤ、もっと堂々としたらどうだ?」

「マスターさん、でもボク、こんなの初めてで……」

 

 そうか。そうだよなやっぱり初めては動揺するよな。

 

 俺もイメージトレーニングは日々欠かさずにやっているが、やはり初めてのときは上手く出来るか不安である。

 

 そしてそれはダイヤやエメラルドでも一緒だろう。

 不安なのは俺だけじゃない。だからこそ、彼女たちを安心させてあげるのが男というもの。

 

 よし、やはり帰ったら速攻イメージトレーニングだ!

 

「マスターさん、その……」

「ん?」

 

 見ればダイヤが手を出しては引っ込める動作をしている。

 これはいったいどういう……。

 

 疑問に思っていると、エメラルドがそっと近づき、ダイヤに聞こえないように耳打ちしてくる。

 

「マスター、ダイヤは緊張しているのです。手を握ってあげてください」

「……なるほど」

 

 いいのだろうか? こんな衆人環視の中で手なんて握っちゃったら、もう世界公認の夫婦みたいにならないだろうか? 

 

 も、もちろん俺はオールオッケーだ! だがしかし、それではエメラルドは、まだ見ぬ世界のどこかにいる俺の精霊たちに、嫌われないだろうか!?

 

「マスター、さん……う、うぅぅ、あのね……」

「なにも言わなくていい」

 

 不安そうなダイヤを見て俺はすぐにその手を握ってやる。

 

 まだ見ぬ精霊たち? それより今はダイヤが大事だ。

エメラルドからは許可を貰ってるし、大丈夫……大、丈夫……ですよね?

 

 不安に思ってエメラルドをちらっと見ると、彼女は柔らかく微笑んでいた。

 

 よし、大丈夫!

 

「……ごめんね、情けないところ見せちゃって」

「初めてなのだから仕方あるまい。それに、初々しくて良かったぞ」

「も、もう! そうやってまたボクをからかう! でも……ありがとう」

 

 超可愛い! もう好き! 大好き結婚する!

 

 実況が盛り上げているのか、歓声がどんどん大きくなっていく。しかしそんなものより、彼女の声を聞く方がよっぽど重要だ。

 

「さあそれではこの新進気鋭なマスターに今後の方針を聞いてみましょう! レオンハートさん、これからどうしていく予定なのでしょうか!?」

「予定?」

 

 そんなものは、決まっている。

 

「ブラックダイヤモンド、そしてエメラルドティアーズとともに【ラグナロク杯】に出場し、優勝する」

 

 俺がそう答えた瞬間、会場の空気が一瞬止まった。

 その状況など気にせず、俺はただ言いたいことだけを言い放つ。

 

「そして、まだ誰も成しえていない天空の塔を攻略し、神に願いを叶えてもらうことだ」

「お、おお……凄い! 凄い目標だレオンハート! しかしこの会場にいる皆さんなら、これが大言壮語でないことはわかるはず! ええ、ええ私はもちろん応援しますよ!」

「そうか……」

 

 この実況いいやつだ。

 出来れば俺とエメラルドとダイヤの恋模様も応援してもらいたいところである。

 

「と、ところで一つだけお聞きしたいのですが……その、レオンハートとエメラルドティアーズと言えば、かつて五年前に無敗を誇った最強のコンビの名前と同じ名前なのですが……」

「ああ、そのことか」

「もしかして、いやもう聞かなくてもわかっておりますが貴方はかつて黄昏の魔――」

「ただ同名なだけだ」

 

 シン、と会場中が静まり返る。

 内心、それは無理があるだろうと自分でもわかっていた。だがしかし、別に今更過去の栄光を盾に成り上がろうなどと思っていないのだ。

 

「私はどこにでもいる、ただのマスターだ。それ以上でもそれ以下でもない」

「え? ですが……」

「ただこれから先、私も、そしてブラックダイヤモンドも負けることはない。だから、この名前を覚えておいて欲しい」

「お、おおお……おおおおおー! かつての伝説と同じ名前のマスターからの無敗宣言! これは目が離せないぞ! これからマスターレオンハート、そしてルクセンブルグが生んだ怪物、ブラックダイヤモンドによって刻まれる伝説を、私たちも追いかけましょう!」

 

 その瞬間、今日一番の大きな歓声がコロシアムに鳴り響いた。

 

 ふと周りを見れば、ガルハンとシスターが抱き合いながら大きく泣いているのが見えた。

 

 おいちょっと待て、あの二人ちょっと仲良すぎないか? このままでは俺の義父がガルハンになってしまうじゃないか!

 

 ああでも隣で笑ってる小さな精霊たちが超可愛い。癒される。

 

「さあそれでは今日の精霊大戦はここで終わりたいと思います。皆さん、また次の大戦で会いましょうー!」

 

 その言葉が締めくくりとなって、俺たちの勝利インタビューは終わることになった。

 

 ただ、俺の戦いはまだ終わってない。

 

 ブラックダイヤモンドを一度見る。

 彼女は嬉しそうに笑っていた。これまでの苦労がすべて報われたと、そう信じている顔だ。

 

 この笑顔を、曇らせたくない。だからこそ俺は、彼女を守るためなら修羅にもなろう。

 

「マスター……」

「心配するな。少し話をするだけだ」

 

 コロシアムの特等席。そこにいる領主を見る。

 俺は心配性だから、ちゃんと話を付けなければ不安なのだ。

 

「ダイヤにはなにも言わなくていい」

「はい……お気をつけて」

 

 そうしてコロシアムを出てから、俺は領主の下へ一人で向かうのであった。

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