それでは前回のあらすじ
咲夜と茉衣、妖夢と威迅が共闘することになった。
茉衣は咲夜に敵対意識があるが、なんとか共闘することが出来たものの、妖夢と威迅のコンビはガタガタで隙を突かれてピンチになってしまう。
それを見た茉衣が助けようと芭露に攻撃するものの、一瞬でやられてしまった。
当然そんな光景を見た威迅が我慢できるはずもなく、力を解放して芭露を倒そうとしたその時、この場に黒葉が現れた。
それではどうぞ!
side三人称
「黒葉君、どうしてここにいるんですか!?」
咲夜と妖夢が黒葉を見て驚きの声をあげる。
本来、黒葉がここに居るはずはなく、里の方で両親が見ていてくれているはずだったのだが、どういうわけかこの場に黒葉が現れたことで咲夜と妖夢は驚いてしまったのだ。
そしてその状況を知らない茉衣と威迅は二人がどうして驚いているのかわかっていないが、威迅は弱い黒葉がこの場に来たことに驚いて力を解除してしまう。
(あいつ、まさか茉衣が攫われるところを目撃したか……)
「っ! 黒葉危ない!」
黒葉の背後から迫る影。
間違いなくこれは盗賊の下っ端だ。盗賊の下っ端がこの中で一番弱そうな黒葉に向かって攻撃を仕掛けてきている。
この場所は薄暗く、それにより咲夜は気が付くのが遅れてしまった。
だが、問題はなかった。その背後に強い剣士が潜んでいたからだ。
下っ端が黒葉に向けてナイフを振り下ろしたその瞬間、ナイフが弾き飛ばされ、ほぼ同時に下っ端は真横に吹っ飛ばされて壁に激突していた。
よく見るとその体には切り傷が付いており、刀で斬り飛ばされたということがわかる。
「いやー、悪いね君たち。黒葉がどうしてもっていうから……あと、茉衣ちゃんにはお世話になってるしね」
「そうそう、お世話になったんだから恩を返さないと!」
黒葉の後ろから出てきた二人の人物は黒葉の両親である冬夏烈夏と冬夏雪姫の二人だった。
烈夏が刀を手に持っていることから、今攻撃したのは烈夏だということがだということがわかるが、その技のキレが尋常じゃなかった。
ほぼ同時の二連撃。
双剣ならば攻撃する箇所がかぶるのだが、烈夏はナイフと胴をほぼ同時に斬ったことから、双剣を使わずにほぼ同時の二連撃を放ったことになる。
「烈夏さん、あなたは一体……」
「今は僕のことはどうでもいいでしょう? まずはこの状況を切り抜けることが大事なんじゃないかな」
咲夜は烈夏にその実力のことを問いただそうとしたものの、烈夏がすぐにそれを静止した。
烈夏の言葉に咲夜も確かにその通りだと考えて、今はこの戦いに集中することにし、ここに烈夏と雪姫がいるなら自分も妖夢と威迅の助太刀に行っても大丈夫だと判断して芭露の方へと駆け出す。
部屋の中は二種類の温度差で対流が発生しており、部屋の奥へと進むものを拒むような突風が吹き荒れていて、さすがの咲夜と言えどもなかなか前に進めないという状況になってしまっていた。
(このままじゃ助けに行けない……どうしたらっ!)
「……差し詰め風の檻といったところか……外からの侵入を妨害するとはな」
「戦いの邪魔をされたくないからな……それに確実に殺せる相手は確実に殺しておく。お前たちは俺が本気を出さずとも自滅する」
「それはやってみないとわかりませんよ。私の刀は切れないものはあんまりないんですから」
「てめぇのその決め台詞、締まんねぇな」
助けは望めないと察した威迅と妖夢は共に刀を構えて再び芭露へと向き直る。
だが、未だに二人の心はばらばらのまま、このまま共闘したらさっきと同じ異なることは目に見えている。
そのことが心配で咲夜もどうにか向かい風の中、二人を助けに行こうと地面をしっかりと踏みしめて進んでいくが、なかなか進めずにいた。
(ち、しかたねぇか……俺と白髪の戦い方は真逆だ。共闘なんてできるはずがねぇ。誰かに操ってもらわねぇ限りな。あんまり気が進まねぇが……)
この短時間で威迅は頭を超高速回転させ、そしてプライドを捨てて叫んだ。
「黒葉!!」
「え?」
「俺たちを助けてくれ!」
その言葉にこの場にいる全員が驚いて威迅の方へと視線を向けた。
茉衣はこの言葉の意味がどういうことなのか理解できたが、それ以外の面々はこの短期間威迅と関わっただけで誰かに助けを求めるような人物じゃないと認識していた。
現にその性格が災いして妖夢ともうまく連携が取れていないほどだった。
なので黒葉に助けを求めるとは思っていなかった。
だが、いくら助けてくれと言ってもこの風の檻がある限りは助けに行くことが出来ない。
なら、どうするのか――
「俺を、俺たちを信じて、お前のその目で俺たちを操って見せろ!」
咲夜と妖夢はその言葉の意味がよくわからなかった。
目で操るという言葉の意味。黒葉のことを知る咲夜の記憶にも黒葉の能力に目で相手のことを操るなんて能力はなかった。
芭露はその言葉に少し驚いていたが、すぐに元の調子を取り戻した。
なにせ、この風の檻がある限り誰もこっちに近づいてくることはできないと、そう考えているからだ。それほどまでに芭露はこの風の檻に絶対的な自信を抱いていた。
「お前たちが何を画策しようとも、最終的に勝つのは俺だ!」
左拳に氷をまとわせ、そして右足で超加速をして目にもとまらぬ速度で二人に攻撃を仕掛ける。
相手がこの速度である以上、どうしても認識し辛く、後手に回りやすくなる。
「黒葉……」
咲夜が黒葉へ視線を向けてみると、黒葉は俯いてしまっていた。
忘れがちではあるが、黒葉は10歳なのだ。
この状況で向けられる期待に押しつぶされそうになっている。
やはりこんな状況で黒葉に助けを求めるなんて酷なんだと考えてどうにか咲夜は威迅たちへと近づこうと歩き始める。
だが、なかなか前に進めない。
「黒葉、お前なら出来る。お前の目を俺たちに貸してくれ!」
「もう遅い!」
威迅が黒葉を鼓舞するように言うが、それをかき消さんと言わんばかりの勢いで威迅に攻撃を仕掛ける芭露。
だが、その前にこの空間に声が響き渡った。
「威迅君は右に斬って、妖夢さんは威迅君の左側を斬って!」
その声が聞こえ、威迅は声に従って右に横凪の一撃を放ち、妖夢は少し戸惑ったものの、声に従って威迅の左の空間に刀を振り下ろした。
「ぐあぁあぁぁぁぁぁ」
その次の瞬間、妖夢のその刀は芭露のその胸を切り裂いていた。
妖夢も何が起こったのか全く分からなかった。だが、妖夢が芭露を斬ったという事実が目の前に広がっており、芭露はその場で膝をついてしまった。
何が起こったのか。
この一瞬で実は芭露は威迅の右側に回り込んで殴ろうとしたその瞬間に威迅が右に横凪の一撃を放ったため、威迅の左側に回り込んで刀を回避したその瞬間に妖夢に斬られたのだ。
今、この瞬間にすべてが嚙み合った。とある人物の力によって。
二人に指示を出した人物、それは――冬夏黒葉だった。
はい!第101話終了
これを書きたかったといった話を今回は書きました。
ずっとこの話を考えていて、ようやく書くことが出来ました。
ちなみに今回黒葉がやった指示については数話ほど前に伏線を張っていますので、忘れてしまったという方は黒葉と妖夢の特訓を見直してみてはいかがでしょうか?
それでは!
さようなら