【3章投稿中】東方妖滅録   作:ミズヤ

120 / 284
 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 ついに完結した料理対決、ルーミアとフランの料理はダメダメだったため、優勝したのは天音だった。



 それではどうぞ!


第120話 好きだった

side三人称

 

 料理対決の後、黒葉と天音は2人で森の方へとやってきていた。

 もう夜も更け、森の中は真っ暗になっている。

 吸血鬼である黒葉は周囲を見渡すことが出来るが、人間である天音は周囲が見えず、チラチラと葉の間から覗く月明かりだけが頼りだった。

 

「ありがとうね」

「ん? どうしたの?」

「いや、僕らみんなを助けてくれて」

「いやー、まぁあれはあそこでみんなに死なれたら困ったしね。それに助けられた面もあるからお互い様だよ〜」

 

 にこにこと笑みを浮かべながら黒葉の言葉に返していく天音。

 口では謙遜しているが、表情から照れているようにも感じ取れる。

 

 だが、そんな天音を見て黒葉は首を傾げる。

 

「そう言えば、どうしてここに?」

「んー? なんかさ、森って落ち着くんだよね。あたしは森の中にある家で生まれ育ったからさ」

 

 天音達、銀河家は今でこそあの研究所を拠点に暮らしているが、昔は森の中に建てた一軒家で暮らしていたのだ。

 その時の感覚が残っていて天音は森を好む傾向にある。

 

 実際、黒葉も里の中に居るよりも空気が綺麗で心地よく、葉の間から降り注ぐ月光が綺麗なため、黒葉も少しいい環境だと思っている。

 

「黒葉君はさ」

「ん?」

「夢ってある?」

「夢?」

「そう、なんか無いの? 将来はこんな風になりたい、みたいな」

 

 突然夢について聞かれたため、黒葉は少し驚いて言葉に詰まってしまった。

 しかし、黒葉の心にはなりたい像というのは存在しているため、悩むことはなく答えた。

 

「僕は剣の才能が無くて弱いし、刀鍛冶としての腕前もまだまだだけど、いつか僕は自分で打った刀で戦えるようになりたいかな」

「そうなんだ……いい、夢だね」

「ありがとう。君は?」

「え、あたし?」

「そう、僕も答えたんだからさ」

「そう……ねぇ」

 

 天音は自分で聞いておいて自分も聞かれるとは思っていなかったので、一瞬固まってしまったが、その後すぐに顎に手を当てて考え始める。

 だが、やはり何も思い浮かばなかったようで――

 

「わかんないや。考えたこともない」

 

 苦笑いを浮かべ、首を傾ける天音。

 そんな天音を見て黒葉はまたもな不思議そうな表情で首を傾げた。

 

 黒葉は天音が感情表現をする度に違和感を覚えており、それがどうしてなのかずっと探っていた。

 そしてついに意を決して言ってみることにした。

 

「君、なんか変だよ」

「変? 変って何が?」

「何だろうなぁ……なんか上手く言葉で言い表せないんだけど、なんかこう……そう! 作ってる感じがする」

「作ってる?」

 

 黒葉は必死にどうして違和感を覚えるのかずっと考えていた。

 そして黒葉が導き出した結論は、天音が表情を作っているのではないかって言うことだった。

 

「そう、作ってる。感情を作ってる気がする。だって、君が笑ったり恐怖したりしてる時、なんか変だから」

「へぇ……でも、私は作ってないよ」

 

 そんな黒葉の発言を聞いて天音は真剣な、それも怖い表情へと変化した。

 怖いというのは少し違うかもしれない。真顔だ。

 天音は突如として真顔になったため、黒葉は少し恐怖を覚えてしまう。

 しかし、それでも黒葉はやめない。

 

「表情も、しぐさも、声色もなんだか変だよ。ちぐはぐって言うか……筋肉の弛緩が少しおかしいって言うか。まぁ、微妙なくらいの違いだから気付くのに遅れたけど」

「……そっかぁ……」

 

 天音は天を仰ぎ見る。

 

「上手くやってたつもりだけどなぁ……」

「やっぱりか……どうして?」

「冬夏黒葉君、知らない方がいい事も、あるんだよ」

「っ、天音ちゃん!?」

 

 ゆっくりと黒葉に1歩、また1歩と近づいていく天音。それに対して恐怖を覚えた黒葉は天音が迫ってくるのに連れて1歩、また1歩と後退する。

 今の天音は真顔では無い。微笑んでいる。

 だが、その微笑みが感情を作っていると知った今、黒葉にとってはそれが恐怖の象徴でしか無かった。

 

「黒葉君、どうしてあたしが感情を作ってる怪しい人だって分かりながら着いてきたのかな」

「いや、だってそっちが誘って」

「まぁ、それを仕向けたのはあたしだけどね。あたしの能力は『声を操る程度の能力』だから、相手を安心させることが出来る声とかも作れる。だから、最初は警戒している相手を油断させることもできる。1度破られた相手には再度効かないけど、君はまだ食らったこと無かったよね」

 

 さすがに黒葉も馬鹿では無い。

 みんなの警戒している様子を見て天音に何かがあるのだろうと気がついていた。

 そのため、普通だったらこんなところに天音と2人きりで来ようなんて考えないだろう。例えそれが天音に誘われたとしても。

 

 だが、それでも黒葉は来てしまった。

 それは黒葉が油断してしまったからだ。

 

 これも天音の能力、一種のマインドコントロール。

 天音の『声を操る程度の能力』は言霊ともう1つ、声色で相手の精神に語りかけることが出来る。

 それによって相手を意図的に怒らせたり、逆に落ち着かせたりなど、様々なことが出来る。

 これが天音の力。天音の本領。

 

「まんまとあたしの罠に引っかかったってことだね」

「っ!」

「あたしの使命は君、冬夏黒葉君を殺すこと。だけどあたしは武闘派じゃないから大勢に囲まれている状況だとさすがに分が悪い。だからこうして二人きりになる必要があった」

「お、落ち着いて! こんなことをしてもなんの得にも」

「あなたに私の何がわかるの」

 

 そう言い放った時の天音の声は今までに無いほどに低く、冷めきった氷の刃のような声だった。

 

 そして黒葉が1歩また下がると、黒葉の足は一瞬宙に浮き、驚いて一瞬で足を元に戻した。

 黒葉は後退りをして逃げている間に崖にまで追い込まれてしまっていたのだ。

 

「崩れろ」

「待って天音ちゃん!」

 

 だが、黒葉の声も虚しく、黒葉の立っていた足場は天音の声に答えて崩れてしまい、その場に止まれなかった黒葉は土砂と共に崖下へと落ちて行ってしまった。

 この崖はかなりの高さがある。普通の人間ならまず助からない。

 妖怪だとしても普通に落ちてしまったら大怪我を負ってしまうし、当たりどころが悪かったら死んでしまうかもしれないほどの高さだ。

 

 それを確認すると天音はゆっくりと背後に振り返った。

 

「終わったよ、お兄ちゃん」

「天音、俺たちは生け捕りを命じていたはずだが?」

 

 天音の呼びかけに答えて闇夜の木の裏から姿を現したのは銀河月刃。天音の兄だった。

 月刃は2人がこの森に入ってからずっと後をつけており、その事に天音も最初から気がついていたのだ。

 

 月刃は天音が裏切るんじゃないかと少し怪しんでいた。だから天音の様子を監視するために尾行していたという訳だ。

 

「あたしたちに従わないゴミは生きていても、死んでも同じでしょ? そんなことより、あたしは裏切らないから心配しなくていいよ。あたしは強化プログラムを受けたその瞬間から、天魔組以外に居場所なんて無くなったんだから」

「ああ、それでいい。だが、もしお前が少しでも裏切るような素振りを見せたら俺は直ぐにお前の首をはねる」

 

 そういうと月刃は天音に背を向けて歩き始めた。

 

「あぁ、そうそう。襲撃の日は明明後日になった」

「何かあったの?」

「雨雲の軌道が変わった。雨雲がちょうどその日にくる」

「へぇ、りょーかい」

「それだけだ」

 

 それだけ言うと月刃は今度こそこの場を去り、天音がただ1人残された。

 その場に立ち尽くし、天を仰ぎ見ると月に向かって手を伸ばす天音。

 

「私は一体どうするのが正解なんだろう」

 

 月に問いかけるが、当然その答えが帰ってくるはずがない。

 ただこの場に天音の声だけが木霊する。

 かと思いきや次の瞬間、突如として天音の目の前に咲夜が出現した。

 

「っ、十六夜咲夜……」

「えぇ、もう夜も遅いのでお2人ともどうしているか気になりましたので」

「見てたの?」

「なんの事ですか?」

 

 ニコッと笑みを浮かべながら知らないと答える咲夜。

 しかし、その左脇腹には状況を知らないと抱えているはずがないものを抱えている。

 落下したショックで気を失ってしまった黒葉がだらんと力無く咲夜の左脇腹に抱えられている。それは正しく、状況を理解していないと回収しに行くことが出来ないものであるため、知らないというのが一瞬で嘘だとわかる。

 状況を知っているのならさっき天音が能力で黒葉の事を崖から落としたことも知っているはずだ。

 なのに全く攻撃しようとしてこない咲夜に不思議に思う天音。

 

「とりあえず帰りましょう。みんなが待っているわ」

「……いや、いい」

「え?」

「多分これ以上あそこにいたら迷惑をかけるだけだろうし、あたしはここらで失礼するよ」

 

 ニコッと咲夜に笑みを浮かべると、そのままこの場から立ち去ろうとする天音。

 

(あの子、本気で黒葉を殺すつもりじゃなかった。だってあの下には草のクッションが敷かれていた。あれならば多少体は打つかもしれないけど、重症になることは無い。そしてあの直後に月刃が現れた事を考えると、多分天音は月刃に気がついていて、黒葉を守るためにわざと崖から落とした?)

 

 今まで天音は何を考えて、何を目的として動いているのかさっぱり分からなかった。

 咲夜もずっとそればっかりを考えていたが、全く答えは出なかった。

 でも、それが今やっと出たような気がした。

 

 天音の一連の行動は全て黒葉を守るためのものだ。

 なら迷う必要は無いと考え、咲夜は立ち去ろうとする天音を後ろからぎゅっと抱きしめ、頭を撫で始めた。

 

「ちょ、何よ急に」

「まだ幼いのに、よく頑張ったわね」

「ちょ、もうそんなに小さくないんだから、やめてよもう……」

 

 照れくさそうな表情を作る天音。

 やめてよと言っている天音だが、その声色からはそこまで嫌がっていないように感じられる。

 

「ごめんなさいね。思わず撫でてしまったわ」

「でも、少し、なんだか懐かしいなって思ったよ」

「懐かしい?」

 

 天音は昔を思い出し、さっきまでは作った表情の中にもこの短時間で色々あったせいか険しい表情が含まれていたのだが、この瞬間だけは今までに見た天音のどの表情よりも柔らかいものだった。

 

「うん、もうあんまり覚えてないくらい小さい頃なんだけど、今みたいに撫でてもらってたんだ」

「そうなのね」

「でも、もう撫でては貰えない。でもあたし、あの手がすっごい好きだったってことははっきり覚えてる。もう、誰が撫でてくれていたのかわからない。あたしの近くに居た人物はお父さんと月刃お兄ちゃんだけだけど、あの二人が撫でてくれるとは思えないしね。本当に、誰だったんだろう」

 

 天音はその撫でてくれた人物が誰だったのか思い出せないでいて考え込んでしまったが、今の話を聞いて咲夜は何となく状況が理解出来た。

 

(天音は気が付いていないみたいだけど……そういうことね。人は大体物心がつくのは3~4歳位って言われてる。だから天音が物心ついた年齢が3歳と仮定すると、その前には多分、もう1人居た。多分、その時のことが印象に残っているんでしょうね)

 

 咲夜は一人思い当たったものの、その答えを天音に告げることはしなかった。

 天音にとって本当に大切なことなのだろうからこれは天音自身が答えを見つけるべきだと、そう思ったからである。

 

「それじゃあ、あたしはこの辺で」

「えぇ、それじゃあ気をつけてね」

「……ありがとう。咲夜も気をつけて」

 

 天音は森の奥へ、咲夜は人里へと帰っていく。

 次会うのはいつになるか分からないが、咲夜は心の中で誓った。

 みんなは天音の事を敵の仲間と認識しているかもしれないけど、自分だけは天音のことを信じてあげようと。

 

 ――天音のことは僕が守るからね。




 はい!第120話終了

 どうだったでしょうか?

 黒葉視点だけを見ると天音は敵になりますが、咲夜視点を見てみると黒葉を助けようとしたとも捉えられるんですよね。

 そして明明後日襲撃してくることになった天魔達。

 果たしてみんなの運命や如何に?

 それでは!

 さようなら

銀河天音はどっち陣営だと思いますか?

  • 味方
  • 中立
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。