それでは前回のあらすじ
咲夜の放送で集まってくる住民たち。
そこで改めて咲夜は襲撃が来ることを伝える。
だが、思うように敵の強さを伝えられなかったのか、みんな短絡的に考えて修行を始めてしまった。
咲夜はその状況に頭を抱えてしまった。
それではどうぞ!
side三人称
咲夜と茉衣が中央区に行っている頃。
黒葉、鈴仙、ルーミア、フラン、威迅の五人は勿論放送を聞いてはいたが、分郷家に居た。
鈴仙、ルーミア、フランの三人は医療の準備を、黒葉と威迅は庭で修行をしていた。
修行をしていると言っても、黒葉が威迅に修行を見てくれと言ったため、仕方がなく威迅が縁側に座って修行を見ている形となっている。
「お前たちはメイドの指示に従わねぇのか?」
「えぇ、もしあれが本当なのだとしたら私達は集合するよりもやるべきことがあります。私は戦いの際には医療班を担当する予定なので」
「私達は護衛するよ!」
「フランが居れば大体の敵は倒せるからね」
「それはそれとして、威迅君も行かないんですか?」
「俺はいいんだよ」
威迅はそう言い放つと再び黒葉へと視線を向ける。
黒葉は今必死に先日妖夢から教えてもらった双剣を会得しようと特訓している。
何とか刀に霊力を纏わせることは出来るようになったが、それも一瞬。
直ぐに霊力が蒸散してしまう。
そう、霊力は肉体から離れた瞬間に扱いが一気に難しくなり、上手く制御ができなければ一瞬で蒸散してしまう。
元々黒葉は教え方とは関係なく、霊力の扱いが苦手だったため、これにはだいぶ苦戦してしまっている。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
黒葉はもうだいぶ霊力を使ってしまっており、体力の限界が近い。
肩で息をしながら霊力を絞り出し、双剣を繰り出す。
しかし、どうしても的を斬る前に霊力が蒸散してしまい、二回斬りつけることが出来ない。
黒葉はずっと真剣に集中して修行をしていたから咲夜たちの放送は聞いていなくて気がついていない。
「ルーミアさん、あなたも大丈夫なんですか?」
「ん? 全然大丈夫だよ、これくらいなら」
ルーミアは鈴仙の医薬品整理を手伝いながら黒葉の周囲に黒葉に気が付かれないように薄く闇を展開していた。
勿論これは黒葉が日光に焼かれないようにするためだ。
吸血鬼はルーミアの闇の中でも薄ければ昼間と余り変わらない視界を維持することが出来る。
そして黒葉が修行をすると言って庭に出た時からずっとルーミアは使い続けているため、鈴仙は心配をしたのだが、力を抑えて使っているから黒葉程は消耗が酷くは無い。
「黒葉、なんだか焦っているみたい」
「え? そう言われればそうですね」
黒葉へ目を向けると汗をダラダラと滝のように流しながら鬼気迫る表情で一心不乱に刀を振っている。
(僕は守られるだけだった。指示を出しているだけで、僕自身は戦えないから。ついこの間の戦いを見て思った。僕が戦ったとしても足でまといだ)
黒葉は盗賊団のアジトでの戦いで自分は足でまといだったんじゃないかと考えて必死に実力をつけようと考えている。
別に白愛が自分の前で死んでしまい、それが自分の実力不足のせいだと言うのを覚えている訳では無いし、先の戦いでは誰も命を落とすことはなく茉衣を救い出すことが出来た。
だから重く考える必要は何も無いのだが、それでも黒葉は非常に重く捉えていた。
白愛を喪った後の黒葉はガラリと性格が変わったように強さに貪欲になった。
だが、本当は白愛を喪う前の黒葉も心の奥底では強さを求めていた。
自分に本当に大切な人が出来た時に確実にその人を守ることができるように。
「おい、力抜け。余分な霊力を使うんじゃねぇ」
「っ! 威迅君がアドバイスしてる!?」
気だるそうにしながらも黒葉へアドバイスをする威迅に驚く鈴仙。
ただ、本当に気だるそうに縁側に横になって欠伸を交えながらなので、どこまで真剣に黒葉の修行を見ているかは分からないものの、威迅のアドバイスによって黒葉の体にあった余計な力が抜けたような気がした。
そしてそれを踏まえて双剣を発動してみる黒葉。
すると先程と同じように的には一回しか切り傷はつかずに途中で霊力は蒸散したものの、さっきよりは霊力が持続した。
やはりまだ霊力の操作が上手くいっていないのは事実だが、余分な霊力が減ったことによって操作難易度はグンと下がった。
「くっそおお」
それでもまだ的を斬る段階まで霊力を持続させられなかった悔しさで黒葉は雄叫びをあげる。
そんなに直ぐに上達する訳では無いので、本来ならばゆっくりと進めていけばいい。
だが、黒葉は焦りに焦っていた。
本人にもどうして自分がこんなにも焦っているのかがわかっていない。
ただ、己の焦燥感に苛まれ、行動していた。
そこで玄関の方からガラガラガラと扉が開く音が聞こえてきたため、修行に夢中になって物音に気がついていない黒葉以外は玄関の方へと顔を向けた。
玄関を開けて入ってきたのは咲夜と茉衣。
ちょうど演説が終わって帰ってきたのだ。だが、二人の表情はあんまり良くないものに見える。
「どうしました? あんまり……来なかったんですか?」
「いえ、来たのだけど……」
「皆さん、楽観的で少し心配です」
「相手はどんな感じ?」
「あ、それは私も気になってた!」
「……相手は天魔組よ」
相手のことについてルーミアとフランが聞くと咲夜はトーンを落としてゆっくりと告げた。
――天魔組。その言葉は2人とも知らないものの、その言葉を聞いて思い浮かぶのは月刃や天魔達がいる組織ということだった。
それが思い浮かんだ瞬間、2人とも青ざめてしまう。
当然だ。
目の前で2人は黒葉が一撃でやられ、そして記憶を失うのを見ているのだから。
「どどど、どうするのそれ」
「正直勝てる気がしないよ」
「えぇ、そうね。今の私たちでは勝てないかもしれない。いえ、はっきり言って勝てないわ」
霊力量、パワー共に圧倒的に負けている。
最低限1対1で月刃相手に圧倒できるようにならなければ天魔と対等に戦うことはできないだろうと咲夜は考えていた。
月刃であれば手を伸ばせば届きそうだと、咲夜はそう感じていたが、天魔のあれは別格だった。
「ん? 黒葉君は修行していたんですね。私も混ざろうかな」
「はい、黒葉君はずっと修行していました。私たちのこの話し声が全く聞こえないくらいに没頭しているみたいです。ただ、少し焦っているようなんですよ」
「そうですね。なんだか表情も険しい」
今も無我夢中で霊力を刀に重ねて双剣の特訓を続ける黒葉。
その様子を見て咲夜は覚悟を決めて言い放った。
「天魔達が攻めてくるその日、黒葉は閉じ込めておきましょう。絶対に出られないように」
「え?」
咲夜の口から出てくるとは全く思っていなかった言葉にフランは素っ頓狂な声を出してしまった。
「奴らは黒葉を見つけたら真っ先に狙ってくるでしょう。ならば、黒葉は奴らの前に出さないのが1番いいんじゃないかしら」
「でも……」
フランは閉じ込められる辛さを知っている。だから気が進まなかった。
合理的に考えたら黒葉を表に出さないのがいいとフランも理解しているのだが、その考えを肯定することは出来なかった。
「天魔組との戦いは黒葉を庇いながら戦えるほど、生易しいものじゃない。それは妹様も理解していますよね」
「…………」
「それでは失礼します」
咲夜は報告のためだけに1度帰ってきていたのだろう。
それだけ言うと直ぐに家を飛び出して行ってしまい、茉衣はそんな様子を見て呆然と立ち尽くしてしまった。
咲夜は今までにないほどにピリついている。それほどまでに咲夜はこの状況に焦りを覚えているのだ。
各々修行をしていく。
運命の決戦は明後日だ。
はい!第123話終了
はい、次回各々の修行を書いてその次に戦いが始まる感じの流れになると思います。
果たして天魔達に勝てるのでしょうか?
それでは!
さようなら
銀河天音はどっち陣営だと思いますか?
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味方
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敵
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中立