それでは前回のあらすじ
ついに始まった戦い。
早速咲夜に恨みを抱いていた月刃によって咲夜と威迅は分断されてしまった。
殴り飛ばされた咲夜を追おうとする威迅だったが、天魔によって邪魔をされてしまったので、まずは天魔と戦うことに決めた。
そして2人がぶつかり合う直前、黒葉の能力が暴走し、火柱が上がった。
それではどうぞ!
side三人称
「く、凄まじいパワー」
殴り飛ばされてしまった咲夜は何とか空中で体制を立て直して着地した。
だが、咲夜はかなりの距離を殴り飛ばされてしまったようで、遠くの方に里の入口が見える。
何とか戻って戦いに合流しなければいけない。それだと言うのに、咲夜は追っ手が居ることに気がついてウンザリした。
そこで咲夜は半身になることによって自分へと迫って来ていると感じた攻撃を回避した。
するとその瞬間、背後の木が3本ほど木っ端微塵に砕かれ、木くずへと変貌を遂げる。
「へぇ、ちょっとはやるじゃん」
「あなたこそ、その速度は何? 目で追うことは出来ないわよ」
「さーて、なんでしょうかね〜。簡単に敵に情報をあげるとでも?」
「いえ、そんなことは思わないわよ。ただ、面倒だなって」
普通に話してはいるが、咲夜はこれまでに無いほどに心臓がバクバクと煩く音を立てて爆発しそうになっていた。
自分の能力が通用しない。時を止めても相手も止めて時を止めた世界で動いてくるなんて初めてだったのだ。
更には自分の目で追えない速度で走る。どうやって戦えばいいんだと言うのが咲夜の正直な感想だった。
(修行をしたけど、月刃の動きは漠然としか感じ取れない。これじゃ戦いにならない)
咲夜はナイフを構えるが、いつものように投げナイフスタイルでは直撃する気がしない。
だから咲夜はナイフを両手に1本ずつ構えて超短剣の二刀流スタイルへと切り替えた。
「さぁて、死ぬ覚悟は出来たかな」
「そっちこそ、切り刻まれる覚悟は出来ているんでしょうね」
その次の瞬間、咲夜と月刃は同時に駆け出した。その直後、目にも止まらぬ速さで月刃は方向転換をすると、咲夜の背後に回り込んで飛び蹴りを放つ。
だが、その行動は月刃が見えなくなった瞬間から咲夜は気がついていたようで、上体を逸らして回避してから時を止めてナイフで斬り掛かる。
一瞬の出来事だ。
さすがに月刃と言えども反応速度には限界があるため、これは反応速度が追い付かずに回避出来ないんじゃないかと考えた故の攻撃だった。
だが、時が止まったことに気がついた瞬間に月刃も時を止めた。
しかし今から回避していては間に合わないと悟ると月刃は両腕をクロスして咲夜のナイフを防御した。
これはナイフの攻撃だ。殴りや蹴りとは違う斬撃の一撃。
生身で防御したら確実に肉体が切り裂かれる。
咲夜はそう思ったのに月刃の腕にナイフが接触した瞬間に感じたのは硬い何かを鈍器でぶん殴ったかのような感触だった。
「い、今のは?」
咲夜の一撃で殴り飛ばされた月刃は少し飛んでから何事も無かったかのように着地した。
訝しみ咲夜はよく見てみるとある事実に気がついた。
「何よその腕」
「さてな、なんだろうな」
月刃の両腕はまるで鉄のように銀色に光り輝いていたのだ。
そして当然のように腕には全く傷がない。
咲夜は直ぐに気がついた。
「
「お、知ってたか……そう、今のはお前と同じように俺が奪った能力、『肉体を硬化させる程度の能力』。文字通り、肉体を硬化させることが出来る。つまり、今お前は鋼鉄を切ろうとしたのと同じだってことだ」
能力喰いは相手の体液を摂取することで量に応じた能力を相手から奪える力。
天音から聞いていて分かってはいたが、咲夜も実際に目の当たりにしたら気分が悪かった。
つまり、月刃の能力の数は今まで月刃の犠牲になってきた人の数ということだからだ。
「いやぁ、今のは焦ったな〜だけど、今のでわかった。やっぱりお前は俺には勝てない。時を止めようが無駄だ。どうせ俺が時を止める力がなく、お前だけが止められたとしても、俺に傷をつけることは出来ないんだからな」
時を止めて斬り続けてダメージが無いんだったら意味が無い。
(でも、それでも、戦わなきゃ行けない!)
咲夜は徐に時を止めると、月刃へと向かって走り始めた。
「また無意味なことをするか!」
だが、当然のように月刃も時を止めて動き始める。
今度は月刃の指がキラリと銀色に輝き、指先が鋭く変形した。
即席のかぎ爪と感じだ。
それを確認した咲夜は指の間に1本1本ナイフを挟み込み、両手で計8本のナイフを構えた。
咲夜のナイフと月刃の手がぶつかり合う。
予想通り、月刃の指は鋭いダガーのようになっていて、まるで金属同士がぶつかり合っているかのような音が森に響く。
「これならどうだ?」
その次の瞬間、月刃は地面を蹴ってバックステップで咲夜から距離を置いたかと思うと、力一杯地面を蹴り、見えない速度で駆け回り始めた。
右へ左へ、上へ下へ、前へ後ろへと縦横無尽に駆け回る月刃。
咲夜はなんとなくの位置が掴めるため、距離こそ分かるものの、今の状況で咲夜から攻撃することは不可能だった。
「どうだ! 俺の動きに着いてこれるか!?」
「ぐうっ!」
月刃は咲夜が自分の動きに着いて来れないと悟るとトップスピードのまま咲夜を蹴り、そのままのスピードで再び走り始めた。
「かっ、ぐっ、ぐぁっ」
四方八方から飛んでくる月刃の連続攻撃。
まだ月刃の時止めのタイムリミットは来ない。
何とか咲夜は時止めを維持してはいるが、ダメージによっていつ解除してしまってもおかしくない状況。
「おいおいおい、それじゃあ本当に死んじまうぞ!」
(は、早すぎる)
咲夜も樹海の修行をしたおかげである程度の位置は掴めるようになり、どの方向から攻撃が来るかは分かるので何とか致命傷は避けてはいるが、それでもダメージが蓄積されていく。
そしてついに――
「かはっ!」
咲夜は蹴り飛ばされてしまい、その衝撃で能力を解除してしまう。
それと同時に月刃の能力の時間制限が来たため、時間が動き出した。
バァンという凄まじい音を立てながら背中を木に強打する咲夜。
そのまま地面に力無く座り込む。
「どうだ? もう動けないんじゃないか?」
ぐったりとしている咲夜に余裕の笑みを浮かべる月刃。
誰が見てもこの状況は圧倒的だった。
だが、1歩月刃が咲夜に向かって歩いたその瞬間、強烈な痛みを足に感じて月刃もその場に蹲ってしまった。
「ぐ、な、なんだ、どういう――これは!?」
月刃は自分の足を見てあるものが刺さっていることに気がつき、それを足から抜いて手に取った。
「これは、ナイフ!?」
なんと、月刃の足に刺さっていたのはナイフだった。
ナイフは月刃の足に深々と突き刺さっていたため、その刀身には月刃の血液がべっとりと付着している。
足のズキズキとする痛みを感じつつ、血がべっとりと付着したナイフを見ていた月刃は徐々にある感情が膨れ上がっていくのを感じた。
――殺意だ。
「どう? 私のナイフ、結構痛いでしょ?」
「てめぇ」
そういうと咲夜はゆっくりとスカートの土埃を払いながら立ち上がって月刃を見据えた。
月刃は表情こそあまり変わっていないものの、周囲に放たれている霊力には明らかにさっきまでよりも強い怒りが含まれていた。
「俺が蹴りを入れた瞬間か」
「えぇ、見ていたらあの超スピードの最中じゃ1度始めた行動はそう簡単には止められないみたいだからね。あなたも自分の速度に反応出来てないんじゃない?」
咲夜は最初攻撃を受け続けていた。だがしかし、その最中、咲夜は虎視眈々と攻撃のチャンスを伺い続けていたのだ。
月刃は1度超スピードで走り始めたら何かにぶつかるまで止まることは出来ない。
現に木を蹴って方向転換することによって四方八方からの攻撃をしていた。
つまり、自分で止まることが出来ないのだ。
「だが、お前もダメージ受けてんじゃねぇのか? あんな状況で冷静に分析し続けるなんて、普通じゃねぇぞ」
「えぇ、なんたって吸血鬼の館のメイド長ですから。普通じゃやって行けませんよ」
皮肉を込めてニッコリと笑顔を浮かべながら言う咲夜に月刃は引き攣った顔をした。
「まぁ、お前のその肉を切らせて骨を断つ作戦は失敗だがな」
「ん? どういうことかしら」
「俺には
徐に月刃は刺された足へと手を当てて撫で始めた。
何をしているのだろうか、咲夜はそう訝しみながらその光景を観察していると、数秒後には月刃は患部から手を離した。
「なっ」
すると何と、さっきまでナイフで刺されて止めどなく血が溢れ出てきていた足の傷が綺麗さっぱり無くなってしまっていた。
これは咲夜にとって異常事態。
やっとの思いでダメージを入れたというのに、そんな咲夜の努力を無下にする光景。
「どうだ? 俺は『治す程度の能力』を持っている。無くなった血は戻りはしないが、体の欠損でも治すことが出来る強力な能力だ」
「あなた、どこまでっ!」
咲夜は新たな能力を使う光景を見て怒りが溢れ、衝動的に行動しようとした、その時だった。
ボバアアアアアアアアーーーーーーーン!!!!!!
突如として里の方から爆発音のようなものが聞こえてきたため、咲夜は冷静になって里の方へと顔を向けた。
「ははははは! もしかしたらうちの奴らがお前たちを爆撃してるのかもな!」
「こうしてられない……さっさと何とかしないと」
冷静になった咲夜は再び臨戦態勢に入った。
はい!第128話終了
咲夜対月刃でしたが、どうでしたか?
相変わらずのチート性能な月刃。
しかし冷静に咲夜は月刃の弱点を暴いて一撃入れましたね。
それでも回復する月刃。
果たして咲夜はこれからどう戦うのでしょうか?
ちなみにこの2人は時を止めて戦っているので、他の戦いと比べて時間の流れがゆっくりです。
それでは!
さようなら
銀河天音はどっち陣営だと思いますか?
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味方
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敵
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中立