それでは前回のあらすじ
黒葉が目を覚ましたが、正気ではなく、トラウマがよみがえって錯乱してしまっていた。
だが、それによって黒葉は天魔と敵対していたため、これはチャンスだと考えて猛攻を仕掛ける烈夏と威迅。
しかし、それでもだめだった。
烈夏は倒れ、黒葉はぶっ飛ばされてしまった。
残された威迅、茉衣、雪姫の三人はどうするのか?
それではどうぞ!
side三人称
「白愛の母さん、走れ! 白愛の父さんを担いで走れ!」
「っ!」
戦場に威迅の叫びに似た声が響き渡った。
この戦況は誰がどう見ても敗北した。このままこの状態で戦い続けたとしても勝機は見いだせない。
ならば一度引いて体勢を立て直した方が堅実だ。威迅はそう判断した。
「い、威迅君はどうするの!」
「俺は……」
立ち上がると威迅はしっかりと刀を握って天魔の前に立ちはだかった。
「まさか、お前、俺を一人で足止めするとか言わねぇよな」
「だ、ダメよ威迅君! そんなこと」
天魔は口角を上げて楽しそうに威迅のことを見下ろし、雪姫は必死に威迅のことを止めようとする。
どう考えても烈夏と一緒に戦っても勝てなかったのに威迅一人で戦ってただで済むとは思えない。
しかも、今の威迅は今の今まで戦っていてダメージも蓄積されている。天魔と一人で戦える体力がもう残されていないはずだ。
でも、威迅の決意は揺るがないものだった。
「じゃあ、どうしろっていうんだ。この場での最善はこれだ。白愛の父さんには戦ってもらわないと困る。俺一人じゃ勝てないから。なら、俺が足止めをして少しでも時間を稼ぐしかない。そうしたら活路が見えるかもしれないから!」
それは威迅にしては珍しく大変弱気な台詞だった。
このまま時間を稼いだとしてもどうにかなる保証なんてどこにもないし、威迅と烈夏が共に戦って勝てなかった相手を倒すことが出来る人物に威迅も心当たりがない。
それ即ち、ほぼ負けのギャンブルを行おうとしているのだ。
威迅のことを知っている人ならば誰もが威迅らしくないと思った。
威迅もこれがほぼ負ける賭けだと分かっていた。それでも挑もうとしている。
(死は怖くはない。親も里外に出ていて俺たちのことは気にしていない。放任主義だ。俺が死んでも悲しむことはないだろう。気がかりは茉衣だが、あいつは俺よりも上手くやっていける。俺が居なくても何とかなるだろう。思い残すことはないな)
威迅が覚悟を決めて天魔と戦おうとしたその時だった。
パシーン
小気味いい破裂音のようなものが周囲に鳴り響いた。
「え?」
突如としてほほに襲い掛かったひりひりとした痛みに驚き、威迅は横へと顔を向けると、更に目を見開いて呆けたような表情をして驚いた。
なぜなら、そこには目に涙をためて震えながら威迅をビンタした茉衣が居たからだ。
今まで威迅に対してはいい子でいるようにしていた。威迅の言うことなら極力聞くようにしていたいい子ちゃんだった。
兄のことを誰よりも大切にしていて、大けがをして特訓を控えるように言われた時は威迅もすぐに咲夜を監視に寄こしたんだと気が付いていた。
だから威迅は茉衣にビンタされたことに驚いてしまったのだ。
「ま、い?」
「どうして…………どうして一人で何とかしようとするの? どうして誰にも助けを求めないの? お兄ちゃんが命を
「……それが、最善だからだ」
「私たちを信用できない?」
「そんなことは――…………っ」
ないとは言えなかった、口がそう動いてはくれなかったのだ。
威迅も心ではわかっている。だけど、他人を信用して一緒に戦うということはどうしても抵抗があった。
烈夏に関してはかなりの実力があったため、そこまで抵抗はなかったが、自分よりも弱い人相手だとどうしても信用して一緒に戦うということが出来ない。
「お兄ちゃん、まだ信用できない? あれから私も強くなったんだよ。双剣だって妖夢さんに教えてもらって使えるようになった……でも、信用してもらえないかな」
「…………」
「わかったよ、お兄ちゃんがその気なら」
「ごめん」
「私は勝手に戦うだけだから」
「ちょ、お前、何言って!?」
威迅の言葉は無視して刀を構えて威迅の横に並ぶ茉衣。
何言っても威迅が頷くことは無いと判断したのだ。とはいえ、自分が加わったところでどれだけ力になれるかと言われると自信の無い茉衣だったが、それでも今は威迅を1人にはさせたくなかった。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんは自分が死んだとしても悲しむ人は居ないと思っているのかもしれないけど、少なくとも私は悲しむよ」
「茉衣……」
「勝手に死んだら恨むからね。そしてあの世に私も行ったらいっぱい文句を言ってやるんだから」
茉衣はこの状況には相応しくない笑顔を浮かべ、冗談っぽく言ってのけた。
だが、この言葉だけで茉衣がどれほど自分のことを心配してくれているのかということがひしひしと伝わってくるようで、絶対に突き放さなければ行けないと心では分かっているが、威迅はそんな茉衣を突き放すことは出来なかった。
「なので雪姫さん、どうか無事に烈夏さんを医療班のもとへ連れて行ってください! 確かにお兄ちゃんの言う通り、烈夏さんも居ないとどうにもならないと思いますから。私、これでも意外と強いんですよ、むんっ!」
腕まくりをして無い筋肉を見せる茉衣に思わず雪姫は笑みを浮かべてしまった。
確かにこの状況ではまだ不安は残るが、烈夏が必要と言うことは事実なので、烈夏を医療班へと急いで連れていかなければならない。
そして雪姫は今この場で1番の足でまといとなってしまう。
雪姫の氷では全く足止めは出来ないし、自分で戦う力も無いから、この場で誰が烈夏を連れていくべきかと言われたら雪姫となってしまう。
「分かったわ。2人とも、死なないで! 必ず烈夏さんと戻ってくるから!」
「はい!」
「もちろん死ぬ気はねぇ」
烈夏を背負って医療班へと走る雪姫、天魔という圧倒的な強敵を足止めしようとしている威迅と茉衣。
3人はこの状況でもまだ勝利を諦めてはいなかった。
はい!第138話終了
次回は医療班のお話です。
戦いが始まってからルーミア達の話が無かったですが、ついにルーミア、フラン、鈴仙の3人が出てきますよ!
そしてぶっ飛ばされた黒葉はどうなったのか?
そして天魔を足止めしている2人の運命は?
今までのは戦いは前菜という感じで、ここからどんどんこの全面戦争は加速していきますよ!
それでは!
さようなら
銀河天音はどっち陣営だと思いますか?
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味方
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敵
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中立