それでは前回のあらすじ
フランが覚醒して狂獣技を使えるようになった。
それではどうぞ!
side三人称
突然フランの見た目が変化したことに動揺してしまうルーミア。
髪の色は金色から紫色へと変化し、黒いマントを羽織った姿となった。
そしてさらに、今のフランからは今までとは比べのものにならないほど強烈な妖力を感じるが、暴走時とは全く別物。
荒々しさは感じられない。
「フラン、それって……」
「ルーミア、ごめんね。迷惑かけちゃって」
「ううん、あんなのは迷惑の内には入らないよ。それよりもその格好は……」
「
ルーミアの問いに烈夏が静かに答えた。
「狂獣技?」
「あぁ、能力者の中でも極わずかな者しか発現しないとされている力。能力の中でも特に強力な能力は意志を持つ。この意志を獣という。そしてこの獣が能力者を認めた時、能力がさらなる力を得て覚醒する。つまり、狂獣技だ。樹海よりもさらに使える人は限られてくる」
「って言うことはフランは……」
「あぁ、恐らく今のフランちゃんは獣に認められ、今までとは比べ物にならないほどに強くなっている」
「そんな姿がなんだ! またぶっ飛ばしてやる!」
玲音はさっきと同じように目にも止まらぬ速度でフランに急接近すると、思い切り斧を振ったのだが、その斧がフランをぶっ飛ばすことはなかった。
「なっ!?」
玲音が驚愕の声を上げ、ルーミアも口に手を当てて驚く。
なんと、フランは玲音から放たれた高威力の斧を片手で受け止めて見せたのだ。
反応出来たこともそうだし、速度を威力として組み込んだ斧の一撃を受け止められたことも、明らかに今までのフランとは次元が違った。
「くっ! 《
「うわっ!」
突如として周囲に高重力のエリアが発生し、至近距離にいるフランに押しつぶさんとばかりの重力が襲いかかるが、足に力を入れて何とか耐え、大斧を捕まえた手に力を入れると反動をつけて大斧ごと玲音を投げ飛ばした。
投げ飛ばされた玲音はまだ残っていた家の壁に激突して吐血し、地面に座り込む。
「ぐはっ! く、かはっ」
今、玲音は《重力操作》を使っていたことによって重力を纏っていなかったため、ダメージをモロに食らって骨がいくつも折れる。
フランが重力によって本気を出せなくなっていたからこの程度のダメージで済んだが、本気で投げ飛ばされていたら今頃玲音は肉片になっていたことだろう。
手足も折れて変な方向へ曲がっている。
この状態では普通の人間はまともに動くことすら出来ない。
だが、玲音は違った。
ゴキ、バキ、グキャ
骨が折れるような音を鳴らしながらどんどんと玲音の手足の形が元に戻っていく。
その姿は妖怪から見ても非常に異様なもので、フランもルーミアも引き気味の視線を向ける。
やがて完全に元に戻ると玲音は何事も無かったかのようにその場に立ち上がった。
その体からはオーラが出てきていることから重力をまとっているということが分かる。
「重力にはこんな使い方もある」
重力によって離れ離れになった骨同士を接続し、骨折の応急処置をしたのだ。
間違いなく靭帯などに負担がかかり、繰り返し行うと動けなくなるというリスクはあるが、直ぐに動けるようになる。
「それにしても、俺の高重力の中で普通に立ってくるとは思わなかった」
「うん、間違いなくさっきまでの私だったら耐えられなかったけど、今はすごい力が湧いてくるんだよ」
狂獣技を発動することによって強化される内容は能力によるが、フランの場合は力が大幅にアップし、妖力も強化された。
それによって強引に玲音のゼロ距離の重力にですら耐え切ることができたのだ。
今のフランのパワーは重力を纏った玲音を超えている。
誰の目から見てもどっちの方が有利なのかは目に見えていた。
「行くよ!」
フランは思い切り地面を蹴ってかけ出すと、蹴られた地面に小さなクレーターが出来上がった。
そしてスピード的には玲音に劣るものの、ブレて見える速度で玲音に急接近して拳を振りかぶる。玲音もそれに対抗して大斧に重力を纏わせてフランの拳にぶつけた。
「《インパクト》!!!」
「《波桜》!!!」
瞬間、周囲に衝撃波が発生、更には高威力の重力が横方向に放たれたことによって家が大破し、瓦礫がぶっ飛ばされ、ぶつかり合っている2人よりも周囲の環境の方に被害が生じてしまった。
2人のパワーは互角、そう思われたのだが、決着は突然に着いた。
バギィィィン
何かが大破する音が周囲に響き渡り、その次の瞬間にはフランの
何が起こったのか、玲音も分からないという雰囲気だったが、よく見ると玲音の手に握られている斧の先端が木っ端微塵に破壊されて無くなってしまっていたのだ。
つまり、玲音はフランの拳によって武器破壊をされてしまった。
このチャンスを見逃す手は無い、そう考えたフランは再び急接近すると拳に妖力を纏わせる。
「っ!」
「《インパクト》《インパクト》《インパクト》ぉぉぉっ!」
咄嗟に玲音は重力を纏って防御したが、そんなのはお構い無しに次々と拳を叩き込んでいくフラン。
その攻撃は重力の鎧を貫通して玲音にダメージを与えていく。
「ぐ、がはっ、だはっ、どぅあぁぁぁ、ぐ、だっ! が、ぐわっ!」
「《インパクト》《インパクト》《インパクト》!!!」
次々に叩き込まれるフランの拳に満身創痍になる玲音。
玲音が重力を纏っていなかったら破壊の能力が乗った《インパクト》をこれだけ食らったら跡形も残らなくなっていてもおかしくない。
誰もが勝ちを確信したが、そう簡単に終わる男手はなかった。
「いんぱく――えっ?」
もう1発叩き込もうとフランが拳を振りかぶった次の瞬間、なんとフランは地面に倒れ込んでしまった。
いや、倒れ込んだのではなく、重力に引き寄せられてしまったのだ。
「こんなもの……あれ? く、動けない!」
「何!?」
「ど、どういうこと!?」
今まで全く問題なく重力に対抗できていたフランが突然動けなくなったことにさすがのルーミアと烈夏も動揺してしまう。
しかも、今の玲音はめちゃくちゃ手負いだ。そんな奴がそんな強力な力を使えるはずがないと思い込んでいた。
奥の手を彼は持っていた。
オーラが周囲に解き放たれ、散らばった斧の破片が集まって来て次々と斧の形を再形成し始めた。
「俺は同時に技を使えないって言う話だったな。だが、それは俺が通常時の場合だ」
ここで右手で斧を構え、左手をフリーにする玲音。フランが暴走する直前にしていた構えと全く同じ構えに全員警戒する。
そしてフリーにした左手が残った壁に着いたその瞬間、その場にいた全員がその壁に向かって引き寄せられ始めた。
「ぐ、なんだこれは!?」
「さっきまでの重力よりも強い!?」
フランはもちろん、少し離れた場所にいたルーミアと烈夏までもがその壁に向かって引き寄せられ始め、ついに3人ともその壁に磔にされたかのようにくっついて動けなくなってしまった。
フランのパワーですら離れることが出来ないほどの強烈な重力に烈夏は笑うしか無かった。
「能力は時として周囲に影響を与えることがある。これは重力の中心を他のものに移し、重力の方向を自由自在に操る樹海、《
周囲に自分の能力の影響を与えることが出来る力、樹海。
樹海が使えるという人がそもそも限られており、その中でも能力の影響を周囲に与えるということが出来る人はさらに限られてくる。
玲音はそんな力を使えるというのだ。
重力の力は今までよりも上がり、更に玲音を中心に重力が展開しているわけではなく、壁が中心となって重力を発生させている。
「フラン、能力を破壊することってできないの?」
「できない。私の能力は触れないと破壊できないんだから。触れられない、概念みたいなものは今の私の力じゃ無理」
「はは、ここで僕らは終わりかな」
「縁起でもないことを言わないでよ……」
やけに諦めがよすぎる烈夏にツッコむフラン。
でも、実際このまま壁から離れることが出来なければジ・エンドだ。玲音の斧に叩ききられて終わる。逆に言えばこの能力を突破することが出来たら玲音討伐に王手をかけることが出来る。
玲音もこの技は奥の手として使っているのだから。
「さぁ、誰から斬ってやろうか……あ?」
玲音が一歩ルーミアたちに近づこうとしたその瞬間、自分の足が動かなくなっていることに気が付いた。
凍りついていて足が完全に地面に固定されていた。
こんなことができる人は1人しか居ない。
「雪姫!」
「はぁ、はぁ、行かせない。絶対に!」
ぶっ飛ばされた雪姫がいつの間にか帰ってきていて玲音の背後から能力を発動して地面と玲音の足を凍らせていた。
今なら玲音は動けなくなっている為、チャンスだと考えた烈夏はフランに指示を出した。
「フランちゃん、能力が壊せないんならこの壁を壊したらどうかな。これなら壊せるんだろ?」
「うん! やってみる」
フランはその指示通りに手を振りかぶって思い切り壁をぶん殴ると、3人が張り付いていた壁は木っ端微塵に破壊され、3人は自由になった。
このチャンスを逃すまいと3人揃って走り出すが、次の瞬間、今フランが破壊したはずの壁が1人でに引き寄せられ合って元の形状へと元通りに。そしてその壁は再び重力の効力を取り戻し、3人は再び引き寄せられて磔にされてしまった。
「どうして、今破壊したのに!?」
「あれか、あいつが骨折を治した原理と同じ。能力の影響を与えるというのは言い換えると能力の主導権をこの壁に渡すということになる。だから遠隔でこの壁を修復して重力を発生させることが出来たんだ」
「つまり、この壁を壊すのは不可能ってこと!?」
「そういうことになるな」
ここから抜け出せるかもしれない最後の頼みの綱が切れてしまった。
そして更には最悪なことは続いた。
バリィィィン
何かが割れるような音が鳴り響いた直後、さっきまで凍りついていたのはなんだったのか、玲音は普通にルーミア立ちに向かって歩き始めた。
そう、今の割れる音は氷が割れる音だったのだ。つまり、玲音は強引に氷を割って歩き始めた。
「重力の質量に勝てるものは存在しない」
「っ! みんな!」
雪姫が叫ぶがもう間に合わない。
玲音が重力を纏って駆けると、まずはルーミアの目の前に現れた。
その手には振りかぶられた斧が握られており、今この状況では逃げられる範囲が限られているため、とてつもないピンチ。
樹海を使ってルーミアは攻撃の挙動を読むが、それでも小さく躱すというのが精一杯だろう。
「お前は樹海持ちで厄介だからな。先に殺らせてもらう! 《波桜》」
ズターン!!!
何とかルーミアは間一髪でその一撃を壁で寝返りを打つ感じで回避することができたが、玲音が斧を振り下ろした瞬間、壁が木っ端微塵になった世を見てルーミアは戦慄してしまう。
直ぐにその壁も修復され、元通りになる。
「避けるんじゃねぇ!」
次々とルーミアに振り下ろされる斧。それをルーミアは間一髪の所で回避する。
そんな攻防を繰り返していたら玲音はイラついてきたのか、横凪の一撃を放ってきた。
それをルーミアは頭を下げることによって回避したが、完全には回避しきれずに髪の毛とリボンが少しだけ切られてしまった。
「次は当てる」
「……」
「ルーミア?」
すると、ルーミアは突然俯いたまま動かなくなってしまい、フランは心配して声をかけるが、なおも俯いたままフランの声には何も答えなかった。
さすがに様子がおかしい。
疲労は間違いなくあるだろうが、ルーミアがこんなに喋らなくなることなんてまず無い。
ようやくルーミアは口を開いたかと思ったらとんでもない発言が飛び出した。
「はぁ、はぁ、疲れたぁ……お腹、空いたなぁ……ニンゲン、美味しそうだなぁ……」
ルーミアへ黒葉と出会ってから黒葉に嫌われたくないという理由で人間を食べないようにしている。
だが、ルーミアは人食い妖怪だ。生きた血肉ではなければエネルギーの吸収効率が悪くなってしまう。
つまり、ルーミアは普通の人間の食事をしているが、これでは実は全く腹の減りを抑えることは出来ていない。
そして前回黒葉から血を飲んだ以降、全く人の血肉を摂取していなかったため、ルーミアの空腹度はかなり限界値に突入している。
「そうだ、私は人食い妖怪なんだよね」
腹が減りすぎたら暴走し、人食い妖怪であれば人を襲いたくなってしまうと言うのは当たり前のことだ。
そこで顔を上げたルーミアの瞳は真っ赤に輝いていた。
「なら、食べてもいいよね? ジュルリ」
ダンッ!
その赤い瞳で玲音のことを見据えて舌なめずりをすると、磔にされていた壁を蹴って一瞬にして玲音へと飛びかかった。
それを玲音は咄嗟に回避すると、ルーミアは玲音のさらにその先にある瓦礫に齧り付くこととなった。
「こいつ、今俺の事を食おうと……いや、まず待て。なぜこいつは重力から抜け出せた!?」
そう、ルーミアは今は狂獣技を使ったフランですら抜け出すことが出来ない程の重力に囚われていたはずである。
だと言うのに、ルーミアは簡単に抜け出して見せた。
それに、様子がおかしい。
「美味しい! バクバク〜」
「こいつ、地面を、瓦礫を食ってやがる……」
なんと、笑顔で美味しそうに地面や瓦礫を食べ始めたのだ。
そしてそれだけでは無い。
「いや、どういうことだ? 食ってるはずなのにあいつが食ったところが無くならねぇ。それどころか色が無くなって真っ黒に……」
「あは、あははははは! 美味しい、美味しいよ!!」
ルーミアが食べた箇所の色がなくなっていく。まるで、ルーミアは色を食べているかのように。
どんどんと玲音の周囲の地面や瓦礫、壁などの色を食べていき、真っ黒なエリアを増やしていく。
「まぁ、いい。ならもう1回拘束すれば……なに!? 能力が使えない!」
再び壁に手で触れて樹海を発動させようとする玲音だったが、何故か樹海で能力を与えることが出来ず、発動することが出来なかった。
玲音の触れた壁は先程ルーミアが色を食べた真っ黒な壁、それはまるで能力を与えようとした瞬間、どこかへとその力が消滅してしまったかのような感覚を玲音は感じ取った。
不気味に笑いながら尚も色を食らうルーミア。
「あは、あははははは!」
〜World〜
「これだよこれ! これがやりたかったんだ!」
〜Of〜
「これがあればあなたを倒せる! 黒葉を守れるんだ!!」
〜Nightmare〜
「これが、ワールド・オブ・ナイトメア〜っ!」
――《
ルーミアが妖力を周囲に解き放った瞬間、周囲に闇が広がり、周囲の環境の色を奪い取って真っ黒に染め上げていく。
それと同時にルーミアの金髪と赤い眼も真っ黒に染まった。
今までとは違う異質な妖力にこの場にいた全員がフランの様に能力が暴走してしまったのかと頭をよぎるが、フランはそのルーミアの発言からすぐに暴走しているわけではなく、ルーミア本人の発言であると気が付いた。
「樹海っ!」
「そうか、あれは樹海なのか……にしてもあの規模はっ」
樹海を使える者の中でもまれに能力の影響を周囲に与えることが出来る者がいる。
明らかにルーミアの樹海は周囲に能力の影響を与えていた。
「あれが樹海? なんて出鱈目な……」
「ふふん、これであなたを倒せるよ!」
「っ! 《
ルーミアがうっすらと笑みを浮かべながら玲音へと突撃していったため、樹海がなぜか使えなくなってしまったので玲音は《重力操作》を使用して近づくルーミアを地面に押しつぶそうとした。
だが、そんな玲音のたくらみとは裏腹にルーミアはそんな重力ももろともせず、まるで何事もなかったかのように玲音に急接近して玲音を殴り飛ばした。
「ぐっ!」
ルーミアの拳の威力はフランの物よりも断然弱いものだが、技に関しては同時に使えないという制限があるため、重力を身にまとっていなかった玲音にとっては結構なダメージになる。
殴り飛ばされた玲音は自分に重力を纏わせて何とか踏みとどまるが、顔面に拳を食らったため、口の中を切って口の端から血が垂れる。
「なぜだ、なぜ効かない!」
樹海だけではなくルーミアには重力が通用していないように見える。
玲音の問いにルーミアは驚くべきことを言い放った。
「《W.O.N》は私への能力の影響を完全無効化するんだよ」
はい!第146話終了
今回は結構長くなってしまいました。書きたいところまで書いていたら自然と長くなってしまいましたね。
そして前回のフランに引き続き、今回はルーミアが覚醒。樹海がパワーアップし、周囲に影響を与える力を得ました。
ルーミアの樹海は周囲に影響を与えるようになると自身への能力の影響を完全無効化します。つまり、攻撃が能力によって強化されたものでなく、能力で攻撃をしてきているのだとしたら全く効かなくなります。
この能力世界で月刃たちの
ただ、ルーミアの樹海に関しては絶対に能力を使った攻撃が効かないというわけではなく、能力で強化された物理攻撃などは通用しますし、防御力が上がるわけではないので、通用する攻撃で殴れば意外と倒せます。
なので、ルーミアに関しては完全サポートタイプですね。
そしてせっかく樹海技まで見せてくれたのにルーミアのかませになってしまう玲音さんかわいそうですね。
そしておそらく次回辺りに決着です。
勝敗はどうなるのか?
それでは!
さようなら
銀河天音はどっち陣営だと思いますか?
-
味方
-
敵
-
中立