それでは前回のあらすじ
樹海を覚醒させたルーミアと玲音の戦い。
ルーミアは自身へ影響を与える能力が効かないということを利用して玲音と戦うが、ルーミア自身の攻撃力と防御力の低さが仇となり、ピンチに陥ってしまう。
だが、ルーミアの能力によって解放されたフランと烈夏がルーミアを助け、ついにフランが玲音を撃破することに成功した。
今回は超絶久々に黒葉視点でお送りします。
それではどうぞ!
side黒葉
「ここは……」
僕が目を覚ますとそこは真っ白な空間だった。
全く何もない空間、だけど不思議と不安のようなものを抱くことはなかった。むしろなんだか安心するような空間だ。
僕は今まで何をしていたんだっけ?
確か威迅君たちに閉じ込められて、部屋の中からみんなが大男にやられて行くのを見て頭痛がして、そこから記憶がない。
途方もない怒りを覚えたはずなんだけど、どうしてこんなところに僕が居るのか全く覚えがない。
そう言えば今は戦闘中だったっけ。そうだとしたら僕はもしかして技に巻き込まれて死んでしまったのか?
考えてみればここはまるで現実の様に思えない。歩いても足音がならないし、地面の感触も地面なのか、はたまた空中なのかよくわからない感触だ。
半固体というやつなのだろうか。沈みそうで沈まないという変な感触で気を抜いたらバランスを崩して転んでしまいそうだ。
そんな感じで不安に思いながら周囲を見回していると、そこにはこの空間にはそぐわないものが存在していることに気が付いた。
丸形のテーブルと2脚の椅子。そのテーブルの上にはティーセットのようなものが並べられていた。
その片側の椅子には1人の女性が座っている。
とても美しい長い黒髪を携えており、ティーカップを片手に本を読んでいるその姿は神秘的とも言える程の光景だった。
クールにも見える表情だが、その表情には少女のあどけなさがまだ残っている。
この状況、どう考えても異様な状況だし、もっと警戒心を持つべきだって言うのは分かっているんだけど、何故だか僕はこの状況でも警戒するということは出来なかった。しなかったんじゃない、出来なかったんだ。
僕はこの状況を危険じゃないと知っている?
もう少し近づいて観察してみることにし、少しだけ近づいたところで僕はあることに気がついて驚愕してしまった。
なんとその女性は脇が空いた紅白の巫女服を来ていたのだ。そのデザインは博麗様の巫女服と一致する。
「どういう、ことだ?」
「あら? 目が覚めたのね」
「っ!?」
どうやら僕は無意識に呟いてしまい、それを聞かれてしまったことで僕が目覚めたことに気が付かれてしまったらしい。
僕の方を一瞥すると女性は読んでいた本に栞を挟んで閉じ、対面側にある椅子に座るよう促すジェスチャーをしてきた。
「で、ではお言葉に甘えて……」
恐る恐る僕が椅子に腰を下ろすと女性は僕にもティーセットを出してくれた。
ティーカップには透き通った茜色の紅茶が淹れられている。
「どうぞ、美味しいわよ」
「じゃあ、いただきます」
恐る恐る紅茶に口をつける。
「美味しい」
「でしょ? おかわりもあるからね」
美味しいのは認めるけど、こんなところにこんなものがあるって言うのはどうしても解せない。
だって見たところ、この空間には出入口は無いし、こんなものを調達することができるように思えない。
「あの、ここは?」
「ここは精神世界」
「精神……世界?」
「そう、私が作り出した偶像の世界」
女性はあろうことかここを地獄でも天国でもなく精神世界だと言ってきた。
という事は死後の世界では無いのだろうか。
だが、目の前の女性からはさっきから気になってはいたが、生気が感じられない。生きている人っていう感じがしない。
「あなたは誰ですか? どうして僕はここに?」
「私は歩夢。ここには私が呼び出したのよ。あなたの魂だけを、ね? あなたは現実世界で気を失っているし、ちょうどいいかなっと思ってね」
「な、なるほど……ところでその服装はいったい?」
「これ可愛いでしょ? せっかく自由が効く私の精神世界なんだから前々から着てみたかったこれを着てみたのだけど、似合うかしら?」
「ものすごく似合うと思います」
「そう、良かったわ!」
正直、ものすごく似合う。
ニコッと笑う歩夢さん。
よく美しい女性に微笑まれるとドキッとすると言うが、今の俺の感情としてはなんだか嬉しくなってきていた。
「でも、どうして呼び出したんですか?」
「……お姉ちゃんとの約束かな」
「お姉さんとの?」
「そう、この幻想郷を救うって……でもさ、私はもう8年前に死んじゃったんだ。お姉ちゃんとの約束を自分で守れないことをずっと後悔してる」
歩夢さんの言葉にごくりと息を呑む。
何となくこの女性から生気というものを感じないと思っていたら案の定この女性は死んでしまっていたらしい。
8年前に何があったんだろうか。それにお姉さんとの約束って……。
僕は話を聞いて恐る恐る手を伸ばしてみる。
「ん? どうしたの?」
むにゅっ
肩を触ってみて本当に触れないのか確認しようとしたら歩夢さんも動いてしまって予定外の場所に触れてしまった。
結論から言おう。触れた。
死者だって言うから魂だけになっていて触れないのかと思ったら普通に触れた。
あと、柔らかい。
「あらぁ〜」
「っ!? ご、ごめんなさい!!!」
僕は慌てて手を離し、そして椅子から素早く立ち上がると、綺麗なジャンピング土下座をキメた。
冷や汗がダラダラ流れてくる。
触れたのには触れたのだけど、その触る場所が良くなかった。
如何にも大人の女性という膨らんだ胸部に手を触れてしまったのだ。
柔らかかった。
「別にいいわよ。気にしてないし。むしろ触る?」
「遠慮しておきます」
こっちにずいっと寄ってきて胸を突き出してきた為、僕は慌ててその場から飛び退いて距離をとった。
顔が熱い。多分今の僕は顔が真っ赤に染まっているんだろう。
すると女性は僕の反応を見てか口元に手を当ててふふふと笑い始めた。
「可愛いわね。あー……」
「?」
面白そうに笑ったかと思ったら急にしんみりとした態度になって天を仰ぐ歩夢さん。
その表情はまるで昔のことを思い出しているかのようだった。
「ちなみになんで触ったの?」
「あ、いや、えっと……死んでるって言うので触れるのかなと思いまして」
「そりゃ触れるわよ〜。この空間に
「な、なるほど……ん? 太陽君って誰ですか?」
「あ」
僕がツッコむと女性はしまったと言うような表情を浮かべ、何やら誤魔化すように咳払いをした。
「とにかく、黒葉君も同じ魂なんだから触れるのは当たり前だよ」
1つ誤魔化したとしても新たにもう1つの疑問が生まれてしまった。
なんで僕の名前を知ってるんだよと。
だが、今はそこをツッコむべきではないと判断して特にそこに触れることはなく聞き流す。
「それで、あの、お姉さんとの約束って?」
「あぁ、それはね。今起こっている異変の元凶を倒して幻想郷を救うこと」
チクッと頭が痛んだ。
僕は今魂だけだから痛覚とかは無いはずなのになんだか頭の中がモヤモヤっとして電流が走ったような痛みがした。
なんだかとても大事なことを忘れているような気がする。でも、それが一体なんだったのか思い出せない。
「でも、私は守れなかった。8年前にその元凶に殺されたから」
「殺された?」
「そう。人って案外呆気なく逝くもんなんだねぇ」
「いや、そんなあっけらかんと言われても……」
正直反応に困ります。
人がなんて言ったら良いのかわからない複雑な気持ちでいるというのに、歩夢さんと来たら何でもないかのようなテンションで話してくる。
多分僕に気を遣わせないために何だろうけど、ちょっとどう反応したらいいのかわからなくなる。
でも、おかげでなんとなく話が読めてきた。
「8年前に私たちは負けてしまった。だから、次は私たちに負けないくらい強い新世代の英雄たちが目覚めるのを待っているといった状況なんだよ」
「もしかして、僕をここに呼び出した理由ってその仲間集めをしてということですか?」
「お、話が早いね。つまるところそういう所だよ」
「でも、どうして僕なんですか?」
「ちょっと
「えんくん?」
「え? あ! 何でもないよ」
また歩夢さんは明らかに失言をしたという反応をしてごまかしたが、絶対にそのごまかし方は無理があるため、僕も気を使ってそのことについては触れないことにした。
正直いろいろと気になることはあるが、あんまり話すことが出来ないこともあるのかもしれない。
「でも、その前に今の状況を打破しないといけないよね」
「今の状況……あ、鍛冶師の人里が襲撃されていました」
「そう。これを打破しないと仲間集めどころじゃないでしょ?」
「確かに……でも、僕じゃ力になれる気がしないですし、何もできないですよ」
僕がそんなネガティブなことを言うと、歩夢さんがガシッと僕の両肩を掴んできた。
「そんなことないわ! 君なら戦える、その力を君は持っている」
「僕が?」
「そう、そしてあのバカをぶん殴ってやって!」
元気にそう言いながら握りこぶしを作る歩夢さん。
なんだかこの姿に覚えがあった。
「君は冬夏黒葉、今まで過ごしてきた大切な時間を忘れないで……」
「歩夢……さん」
歩夢さんの言葉が聞こえた瞬間、僕の目の前が真っ白になり、最後に聞こえた歩夢さんの言葉が頭から離れなくなる。
大切な時間を忘れないで。歩夢さんの言葉が胸にすっと溶けていく。
頭の中でずっと木霊する。
何度も何度も何度も――――
その度になんだか頭の中にあったモヤモヤが薄れていくのを感じる。
――瞬間、僕の脳内に溢れ出した
そうか。そうだったか……。
俺は冬夏黒葉だ。
はい!第148話終了
ついにここまで来ました。
次回は威迅と茉衣の方に視点が移ります。
それでは!
さようなら
銀河天音はどっち陣営だと思いますか?
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味方
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敵
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中立