それでは前回のあらすじ
黒葉は目を覚ますと真っ白な空間にいた。
そこで歩夢と名乗る女性と会い、歩夢は黒葉にここに黒葉を連れてきた理由を語る。
そして、黒葉は今起こっている問題を解決するためについに動き出す。
それではどうぞ!
side三人称
「こんなところで寝てたら風邪引くよ」
「ん?」
咲夜は気だるげながら目を覚まし、瞼を開けた。
今の咲夜は服も体もボロボロになっており、血を流し、雨に濡れながら気にもたれかかっていた。
声が聞こえたため、目を覚ました咲夜はボヤける視界のピントが合い、自分に話しかけた人物が誰なのか把握すると軽く笑った。
「天音……来てたのね。見かけないから、来なかったのかと、思ってたわ」
「ずっと陰から見てたんだ」
「そうなのね……」
「ずっとあなたの姿が見えなかったからどこにいるのかと思ったらこんなところに居たんだね。大丈夫? 傷、舐めてあげようか?」
「これが、大丈夫だと、思う? あと、唾つけても、この傷は何とも、ならないわよ」
咲夜はついさっき月刃にぶっ飛ばされたばかりでダメージが凄く、喋るだけでもキツイというのに天音が冗談を言ってきたため、咲夜は少しイラッとしてしまう。
そもそも、天音の顔がさっきからずっと変化がないせいで冗談か冗談じゃないのか分かりにくい。
(そんなことよりも、凄く寒いわね)
ただでさえ血が一気に失われてしまったことによって体温が下げられているというのに、この大雨でどんどんと体温が奪われていく。
ギリギリ死なずに済んだ咲夜だが、今この場には咲夜と天音しか居らず、助けてくれそうな味方は居ないため、このまま死んでしまう可能性も高い。
元々白い咲夜の体からどんどんと血の気が引いていき、血色が悪くなっていく。
「……はぁ……」
そんな咲夜の様子を見てか天音は今自分の着ていた雨具を脱ぐと咲夜に羽織らせた。
咲夜がその行為に驚き、どういうつもりなのかという目で天音のことを見ると、天音はゆっくりと咲夜の横に腰を下ろした。
「咲夜、あなたのことだからどうせあたしの事を庇ってくれたのでしょ? あたしが黒葉君のことを突き落としたという事を内緒にして」
「………………」
「沈黙は肯定と受け取るよ……。やっぱりか〜あなたは何故か銀河の姓であるあたしの事を信じてるからね。本当、どうにかしてるよ。馬鹿なんじゃないの?」
咲夜のことを罵ってくる天音だったが、その様子は満更でもなさそうな様子だった。
感情はないという天音だが、感情表現ができないという訳では無い。
そこまで言うと天音はホッと一息ついて空を見上げると静かに本心を語り始めた。
「あたし、これでも感謝してるんだ。あたしがいつそっちに行きたくなったとしても来づらくないようにってことだよね」
「そうね」
「ありがとう。味方が居るってなんだか、心が楽になるね。天魔組ではさ、目的のために共に戦うって言う人は居ても、仲間は居なかった」
天音は天魔組以外では唯一咲夜に本性が知られており、それでもなお普通に咲夜が接してくれるため、天音も自然な態度で接することが出来る。
今の天音にとっては咲夜は救いで、死んでほしくないと思っているため、何も言わずに咲夜の前に立つと持っていたバッグの中から包帯や消毒液などを取り出すと咲夜の傷の手当をし始めた。
この程度じゃ咲夜のダメージを取り去ることはできないが、それでも何もしないよりはましだ。
「天音、ありがとう」
「まぁ、お礼って事で」
さっきまで雨風にさらされていた生傷が包帯に包まれたことによって雨風を防ぐことが出来るようになったので、少し楽になる。
折れた骨や傷は永琳の薬とは違ってそこまで治すことはできないので、本気で治すなら後で医療班に行く必要があるが、応急処置としては十分なほどだった。
「天音、あなた本当に私たちと一緒に戦う気はない? もしかしたら天魔も倒せるかもしれないわよ」
「…………いや、無理だよ」
咲夜が言った瞬間、今までとは打って変わって冷たい口調になった天音は目のハイライトを消して黒々とした瞳を咲夜に向けながら続けた。
「今まで見ていた。ずっと陰から……でも、無理だ。あの人たちじゃお父さんには勝てないから。できたとして傷をつけるのが精いっぱい。倒すには至れない」
「天音……」
「それに……あはは、ごめんね咲夜。色々と庇ってもらったのに……でも、そっちにはあたしの居場所なんてないんだよ。強化プログラム……それをあたしたちは5歳を超えたら受けさせられる。そして強化プログラムを受けたら何かを代償に強大な力を得られる。あたしは感情がないんだよ、モンスターなんだよ……だから、そっちには行けない……」
天音の感情がないのはこの強化プログラムというものを受けたせいだということが判明し、咲夜はなんと言ったら良いのかわからなくなってしまって言葉に詰まってしまう。
それと同時に言いようのない怒りがふつふつと湧き出してきていた。
(天魔組のトップは天魔ということは天魔は自分の子供にそんなものを受けさせたっていうことよね。最低……。つまり強化プログラムの代償によって天音は感情をなくし、その原因を作ったのは天魔ということになるじゃない。人として……親として……最低よ……)
「ごめんね。それじゃ、もう行くね」
「あ、ちょっと待って天音!」
「じゃあね……」
慌てて咲夜は天音のことを引き留めるが、その言葉が聞こえているのか聞こえていないのか、天音は咲夜の引き留めを無視して戦地へと向かって行ってしまった。
結局咲夜は天音の心を救い、仲間に引き入れることに失敗してしまったのだ。
その事実に咲夜は地面に手をついて打ちひしがれてしまう。心の中で何度も何度も天音に対して「ごめんね」と謝罪を続けた。
鍛冶師の人里、医療班。
「あぁ……」
「っ!?」
医療班拠点内のベッドで寝かされて治療を受けていた黒葉が呻き声を上げながら目を覚ました。
それによって傍で見守っていた医療班の子が突然のことにビクッと身体を震わせて座っていた椅子から立ち上がった。
ゆっくりと周囲を見渡す黒葉。
そんな黒葉を見て我に返ったのか「はっ!?」という声を出すと「すぐに先生を呼んできます!!」と言って黒葉の前を後にした。
その後すぐにその子は黒葉の前に鈴仙を連れて戻ってきた。
「黒葉、体の調子はどう?」
鈴仙は黒葉の前までやってくると白愛として黒葉に接する。
今のこの状況を掴みきれていない黒葉はそんな鈴仙の言葉に反応することは出来ずに無言になってしまう。
「まだどこか悪いのかしら……何か他に治療薬は……」
「あ、いや、大丈夫だと、思う」
永琳の薬のおかげでもうほとんど体の痛みも無くなっており、感覚としてはもう全然動き回ることが出来そうなほど。
だが、実際にはまだ完治した訳では無いため、動き回ることは推奨することはできない。
そこで黒葉は鈴仙の腰に下げられている白愛の刀、吹雪へと視線を向けた。
そんな黒葉の視線に気が付き、鈴仙は腰から吹雪を外して黒葉を寝かせているベッドの横に置いた。
「欲しかったらあげるよ」
「っ、あぁ、ありがとうございます」
そこで黒葉はベッドから立ち上がると、吹雪を手に取って腰に下げ、満足気な表情をうかべる。
「治療、ありがとうございました」
「ん? どこか行くの? ここにいた方が良いんじゃない?」
「里を救いに行ってきますよ」
「それって……」
黒葉がどういう意味で言ったのか、すぐに鈴仙は理解したため、黒葉へと手を伸ばして止めようとする。
「だめよ! まだ傷は完治していないんだから!!」
「本当に、ありがとうございました。
だが、鈴仙が手を伸ばすも虚しく、その手は黒葉が走り出したことによって空ぶってしまい、黒葉は戦地へと走り去ってしまった。
黒葉の傷は凄い力で叩きつけられたからか内蔵付近の骨折が多かった。
これらは永琳の薬によって多少治療されたが、それでも完治したというわけじゃない。再度骨が折れたら今度は本当に内蔵に刺さり、命に関わるかもしれない。
まだ戦っちゃいけない体なのだ。
「うぅ……」
追いかけたい。だが、鈴仙には医療班での治療もあるため、追いかけるに追いかけることが出来ないため、無事を祈ることしか出来なかった。
場面は鍛冶師の人里、東区に移る。
「はぁ……はぁ……、ぐっ」
「お兄ちゃん!」
威迅は茉衣を庇いながら天魔と戦っていたことによってかなりのダメージを受けてしまっており、体の至る所から血を流しながらも決して倒れまいとして足の裏以外を地面に付けることなく戦っていた。
もう既に普通だったら倒れていてもおかしくないほどのダメージを食らっているが、それでも尚しっかりと天魔を見据えて戦っている。
「お前のその覚悟、立派だが、助けが来るのはまだまだ先になるぞ? あの怪我、そう簡単に回復するものでもあるまい。それまでお前が耐え切れるか?」
「うるせぇ。黙って戦いやがれ! 俺はまだ倒れちゃいねぇぞ!」
威迅の刀はうねる様に伸び、天魔へと斬りかかるが、その攻撃が天魔に届くことは無い。
届く前に防がれてしまったからだ。
単純にパワーの差があった。だから威迅では天魔の剣を弾き飛ばすことは出来ない。
「双剣《三枚おろし》」
威迅が天魔の剣と競り合っている間に茉衣は天魔の懐に入って双剣を使用して斬りかかる。
だが、そんな茉衣に対して天魔は威迅と競り合っている手のもう片方の手で剣を作り出し、茉衣の刀にぶつけると茉衣の力ではまともに競り合うことなどできるはずがなく、茉衣は弾き飛ばされてしまう。
そんな茉衣に対して追撃を加えようと天魔が大剣を思い切り振りかぶった直後の事だった。
突如として真横から鞭のようにうねる剣が伸びてきて茉衣を絡めとって天魔の目の前から救い出した。
「お兄ちゃん!」
「無闇に突っ込んだらあぶねぇぞ」
「ご、ごめんなさい」
威迅は飛んできた茉衣をお姫様抱っこでキャッチし、その場から飛び退いて天魔から距離を取った位置で茉衣を地面に立たせる。
さっきからこんな感じで何とか戦ってはいるが、終始押されっぱなしで、入口から中央区のちょうど間くらいの場所まで追い込まれていた。
(やっぱり私は居ない方が良かったかな。お兄ちゃんはさっきから私のせいで大変そう)
「よく頑張ったが、お前らじゃそこが限界のようだな」
「うるせぇ。勝手に俺たちの限界を決めてんじゃねぇよ。限界を決めるのは俺たち自身だ!!」
その瞬間、威迅の体から溢れ出す霊力。
ボロボロで満身創痍だと言うのにまだこれほどの力が残っているということに天魔は感心してしまった。
それと同時に何も枷などは無い威迅とサシで本気の勝負をしてみたかったとも思ったが、もう遅い。もう、決着が着いてしまう。
「お前の名前は?」
「あぁ? 俺の名前か。よし、覚えておけ。分郷威迅! それが今からお前をぶった斬る男の名前だ!!」
そこで威迅の刀が赤黒いオーラを纏い始め、それを見た天魔は面白そうに目を細めた。
「くく、かはは、この里はどうなってやがる! 化け物量産施設か、おい」
笑いながらも大剣を構える天魔も同じように霊力を流し込んで剣に赤黒いオーラを纏わせる。
二人の間にとてつもない緊張感が走り、周囲に居るだけで気絶してしまいそうなほどの威圧感が解き放たれる。
威迅はわかっていた。
このままでは自分は天魔に勝つことはできない。自分のパワーでは真っ向からぶつかったとしても正気なんてものは存在しない。
それでも――男にはやらなければならない時がある。
ダンッ!
威迅は地面を蹴ると咆哮を上げながら天魔へと刀を振りかぶる。
「だぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
「凄まじい気迫だが、まだ届かん! 雷神剣――」
「《
突如として大雨の中、こちらへ突っ込んでくる業火。それに驚いて天魔は気をとられてしまうが、威迅は真後ろから突っ込んでくる業火には気が付かずに、天魔の隙を着いて刀を振るう。
「「ぶっ飛べェェェッ!」」
「ぐあああああああああああ」
2つの叫び声が重なり、業火と威迅の一撃が同時に天魔の体に突き刺さる。
さすがに同時の攻撃には耐え着ることが出来なかった天魔は数十メートルほどぶっ飛ばされて剣を地面に突き刺すことによって何とか耐える。
「ぐ、ははは、だっはははははは! 戻ってくると思ったぞ。太陽っ!」
はい!第149話終了
ついに黒葉が記憶を取り戻し、戦いに復帰しました。
もう数話ほど三人称が続きます。
この後はもう意外なキャラとかは出ずに戦っていきます。
なので、残るボスは皆さんのご想像の通りだと思います。
それでは!
さようなら
銀河天音はどっち陣営だと思いますか?
-
味方
-
敵
-
中立