【3章投稿中】東方妖滅録   作:ミズヤ

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 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今日は僕の誕生日ということで、記念に1本投稿します!



 それでは前回のあらすじ

 黒葉と威迅は共闘する。

 だが、そこに天音が横槍を入れたことで黒葉は天音と戦うことに。

 しかし、全く攻撃する気のない天音にどうしたらいいのかと悩んでいると、ついに天音は黒葉に本気の攻撃を仕掛けた。



 それではどうぞ!


第151話 銀河天音

side天音

 

 私が物心着いたのは大体3歳くらいの頃だった。

 この頃住んでいた場所は森の奥にひっそりと建てられた隠れ家的ログハウス。

 あまり外見の良い家じゃなかったけど、今住んでいる研究所よりかは全然居心地のいい家だった。

 

 私には母親が居ない。父と2人の兄との4人暮らし。

 ただ、1番上の月刃お兄ちゃんは今でも一緒に居るけど、次男である私の2個上の太陽お兄ちゃんと言う人がどんな人なのかはあまりよく知らない。

 物心が着くか着かないか位の時に太陽お兄ちゃんは行方をくらませた。

 

 だから正確に言えば父と月刃お兄ちゃんとの3人暮らしってことになる。

 

 昔の私はすごく人懐っこく、森の中に住んでいたから他人と関わる機会はあまりなかったけど、直ぐに仲良くすることが出来た。

 表情豊かで、直ぐに感情が表情に出るから嘘はつけなかった。

 

 自分ではよく笑う子だったって記憶してる。

 

 人は物心着く前の記憶はほぼほぼ無いとされている。

 だけど、なんだか心の中にずっと残り続けている感触があった。

 それは人に撫でられると言う感触。

 

 あの手は暖かくて安心できて、すごく好きだったという事を覚えているけど、それが誰の手だったのかが全く分からない。

 分からないまま、その手は2度と私の頭を撫でてくれることはなくなった。

 

 そんなこともありつつ、私は現状を知らないままのほほんと暮らしていると、その運命の日がやってきた。

 

 5歳の誕生日のことだ。

 誕生日は世間一般ではおめでたい日という事でお祝いをしたり、プレゼントをしたりするものなのだという。

 私もそれは例外ではなく、そんなに立派なものじゃなかったけど、食卓にはいつもよりも美味しいものが並べられていた。

 

 だけど、5歳の誕生日。あの日だけはいつもと違ったんだ。

 

 私が今まで見せてもらうことが出来なかった開かずの部屋。

 入ろうとしてもいつもどこからともなく月刃お兄ちゃんがやってきてその部屋から引き離されてしまう。

 だけど、その日だけは違って、お父さんが私を部屋の中へと案内してくれたんだ。それが運命の分かれ道だった。

 

 その中はメカメカしいものがいっぱいあって、壁は鉄製で、秘密基地みたいだって最初はそんな陳腐な感想を抱いたことを覚えてる。

 あの時は本当に見るもの全てが目新しくて楽しくて、好奇心旺盛な私は誰かに連れられるでもなく、自分の意思で1台の機械の前までやってきてしまった。

 

 それはまるで椅子のような形状をしていて、そこからたくさんの管が伸びている。

 手すりや足置きには手錠のような鉄製の輪っかが取り付けられていて、如何にも怪しげなものだったが、当時の私は意図してか人を疑うということを知らないまま育てられてしまったため、その椅子を疑うことはなく、何気ない日常の動作のように笑顔で軽やかに椅子に座ってしまった。

 

「おーーー! お父さん! この椅子ふっかふか! すっごい座り心地いいよ!!」

「そうか、その椅子は気に入ったか」

「うんっ! 天音、この椅子好き!」

 

 あははあははと楽しげに笑う私に対して今になって考えてみればお父さんの表情は険しいものだった。

 でも、当時の私はそんなことには気が付かなくて――

 

 ガチャン。

 手足が拘束されてしまってからようやくこの事態の深刻さに気がついたが、時すでに遅しだった。

 

「え? どう……して?」

「…………」

「動けないよ! どうして!?」

 

 あの時のお父さんの表情は今まで私が見たことの無いほどに険しい表情を浮かべていて、当時の私はその表情に恐怖を覚えてしまって静かになってしまった。

 そしてそのままお父さんは私の問いかけに答えることはなく口を閉ざしたまま機械の操作盤の前まで行くと私に向き直ってやっと口を開いた。

 

「お前はまだ5歳だ。この世界のこと、あまり知らないだろう。いや、知らないままでいい。知らない方が幸せなこともあるもんだ」

「なんなの!? 早くこれ外してよ!」

「これからお前には強化プログラムを受けてもらう。お前は今日から俺の兵士だ」

「兵士!? どういうこと!?」

 

 強化プログラム。

 それは人体のDNAの構造を改変し、超人的な力を与えるマシーン。

 それを受ければ通常の人間の何倍もの力を得ることが出来たり、五感が何倍も鋭くなったりと、通常の人間とはかけ離れた力を得ることが出来る。

 だが、そんなものがなんのデメリットも無しに使えるわけが無い。

 

 代償が必要なんだ。

 

 何かを失う代わりに何かを得る。そんな、悪魔の取引的なマシーンだった。

 1度機械を作動させてしまえば全てが終わるまで基本的には止まらない。自分で何を代償に何を得るのかを決めることが出来ない。

 完全な時の運。

 

 私は感情を代償に超人的な五感を手に入れた。

 望遠鏡が必要な距離でも見えるし、風の流れを肌で感じ取ることが出来る。

 少し集中すれば数百メートル先の匂いだって感じ取れるし、数百メートル先のこそこそ声だって聞き取れる。

 ただ、1つ難点だったのは味覚が敏感になり過ぎてて、本当に美味しい料理じゃなければ美味しいと思えなくなったこと。

 だから私は料理だけは頑張った。

 

 そんな力だけど、得るときにすんなり得ることが出来たわけじゃない。

 人間の体のDNAを無理やり書き換えるのだ。

 全身に今まで受けたことがないくらいの激痛が走り、声すらも出すことができなかった。

 

「あ……あ……か……」

 

 出るのは無理やり喉から絞り出したかすれ音だけ。まるで言葉になっていない。

 実際の時間にして10秒程度だっただろう。だけど私にはその時間が数時間にも感じた。それほどに今まで感じたことがない苦痛が体を襲う。

 頭が割れるように痛い。四肢が引きちぎられるかのような痛みが走る。

 死にたいとすら思った。

 

 全てが終わって私の両手両足は開放された。

 だけど、私は暫く廃人の様に何も考えることが出来なくなって体を動かすことすら出来なくなってしまっていた。

 一応5歳ならギリギリこの圧にも耐えられるらしいんだけど、私の精神はこの時、壊れてしまったんだと思う。

 

 脅威的な五感を手に入れた。その代わり感情を失った。

 感情を失ったことで今まで仲良くしてくれてた人達が私のことを気味悪がるようになってしまった。

 それはそうだ。何をしても笑わない、表情が変わらない。そんなのは人形と同じだ。

 人との付き合いは大事だ。お父さんの計画を聞き、協力するようになってからはそれを強く感じるようになった。

 だから私は感情を作るようにした。

 無感情というのを押し隠すために、気づかせないために、少しオーバーに。

 

「あたし、天音って言うんだ! よろしくね〜っ」

 

 そんなある日、私は博麗選抜チームというのを知った。

 その中で私が興味を持ったのはお父さんが博麗選抜チームというものの一員だったということだ。

 数年前に実在した犯罪者集団、五天魔王に対抗すべく結成されたチーム。

 その時の博麗の巫女、博麗霊華をリーダーとして最強の面々が集められた異変解決のための組織。

 

 そんなチームに居たのに、お父さんはどうしてこうなってしまったのか? それに私はとても興味を持った。

 だから私はまず、お父さんをどうにかしたいと思った。

 お父さんを止められる人がいれば、そう考えたんだけど、お父さんは博麗選抜チームに選ばれるだけあって強かった。

 ダメだったんだ。

 

 人里に襲撃しに行っては住人達に協力を呼びかけたけど、抵抗する間も無く壊滅した。

 もう誰も止めることが出来ないんじゃないか? そう思った私は最後の頼みの綱として博麗神社に行ったんだけど、ただの金の亡者だった。

 

 私は疲れたんだ。

 もう何もかも。

 

 今までずっとずっと頑張ってきた。

 来る日も来る日もどういう人達ならお父さんを倒せるか、どうしたら自分でもお父さんを倒せるのか考え続けた。

 でも、結論は全て不可能という3文字にたどり着いてしまう。

 

 何となくこの戦いでなら死んでもいいと、そう思えた。

 だからいつも私は戦いに関わることも無いんだけど、十六夜咲夜の手当てをしたし、冬夏黒葉君とも戦った。

 

 もう辛い。

 これ以上考えたくない。

 もう、終わらせたい。

 

 そんなことを考えていたからだろう。

 

「お願い。もう終わらせて。お願い。私を――殺して」

 

 そんな言葉が口をついて出た。

 私の攻撃は黒葉君の退路を塞ぎ、その上から飛び蹴りをしている。回避は不可能だ。

 これで黒葉君は私と戦わざるを得なくなった。

 

 黒葉君と戦えば私は死ねる。

 なんとなくだけど、黒葉君になら殺されてもいいと思う。むしろ、黒葉君に殺されると考えると安心感すら覚えた。

 さぁ、早くその腰につけた刀を抜いて私を斬って。

 

「…………やめた」

「え?」

 

 ボソッと黒葉君は呟くと私の飛び蹴りをそのまま胸にモロに食らった。

 いや、当たりに行ったといったところだろうか。

 

「ぐふっ」

 

 私の体重は軽いし、そこまで高いところから落ちてきたわけじゃないから威力はあまり無かっただろうけど、それでも防御もせずに胸で受けたらダメージは受けてしまうだろう。

 でも、私の蹴りを胸で受け止めると地面に私を下ろし、その上で私に抵抗させないとばかりの力強さでギュッと抱きしめてきた。

 少し痛いくらい、だけどそれがなんだか心地いい。

 

「お前、本当は戦いたくないんだろ?」

「え?」

「正直さ、今の天音がどういう信念の元、行動しているのか俺には分からないんだけどさ、辛い時は辛いって誰かに相談しても良いんだぞ?」

 

 黒葉君が何を言っているのか理解出来なかった。

 否、理解することを脳が拒んだ。

 誰かに相談? 出来るわけが無い。

 私には相談できる仲間なんて居ないし、家族は月刃お兄ちゃんとお父さんだけ。

 どこにも相談出来る人なんて居ない。

 

「っ! 離して! あなたと私は殺し合わなきゃいけないの!」

 

 思わず本来の一人称が出てしまった。それほどにこの状況に対してパニックに陥ってしまっていた。

 この状況は想定外にも程がある。

 胸を叩いたり、ぐぐぐっと押し返そうとするが、私の力で黒葉君を引き剥がすことは不可能だった。

 

「昔、親父はあんな人じゃなかった。お袋が生きてた頃は普通に優しい人だった。天音はそれをどこかで知って親父を何とかしようとしてくれたんだよな」

「何を分かった風なことを言って! 私はあなた達の敵なんだよ!?」

「確かにもう何年も会っていなかったんだから、天音のことはあまり分かっていない。でも、その目を見ていたら昔と変わらず優しい目をしていたからさ」

「っ!?」

 

 強化プログラムを受けてからそんなことを言われたのは初めてだった。

 いつも無表情で何を考えているのか分からなくて不気味だって言われ続けていたから。

 

 すると黒葉君は右手を頭まで移動させると、優しい手つきで頭を撫でてきた。

 

「もう、ちょっとやめてよ〜あたしはもう子供じゃないんだから」

 

 でも、なんだか少し懐かしくて落ち着く感触――そうか、この手の感触。あの手は太陽お兄ちゃんのものだったんだ。

 

 ――天音のことは僕が守るからね。

 

「あー、なるほどね。そういうこと、か。元々私に選択の余地なんて無かったってことね。なんでこんな簡単なことに気が付かなかったんだろう」

「天音?」

 

 あぁ、長らく忘れてたな、こんな感情。涙が溢れて止まらなくなってしまった。

 私はもう感情を抱くことなんてないと思ってた。強化プログラムが施されたあの日から。

 今でも何が嬉しくて、何が楽しいか、正直言ってわからないけど。

 

「黒葉お兄ちゃん!」

「え、お兄ちゃん!?」

 

 でも、これだけは間違いない。これだけは本心だって確信を持って言える。

 

「お兄ちゃん、大好き」

 

 多分今、私の顔は雨と涙でぐしゃぐしゃになっている。

 だけど、多分今私は今までで一番の笑顔になれていると思う。




 はい!第151話終了

 この章で書きたかったところです。

 今まで天音がどういう心理で動いているのかぼかしてきましたが、ついに判明しましたね。

 そして、これは勘づいていた方も多いのでは無いでしょうか?

 天音の頭を幼い頃に撫でていたのは黒葉でした。

 これによって天音の中で頼れる相手としてロックオンされましたが、今まで頼れる人がいなかった反動でおかしなことにならなければいいんですけどね。

 それでは!

 さようなら

銀河天音はどっち陣営だと思いますか?

  • 味方
  • 中立
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