それでは前回のあらすじ
天音の過去が語られる。
今まで何度も人里を襲撃しては天魔を倒そうとしてきたが、その全てが失敗に終わった。
もう疲れた、そう思った天音は黒葉に殺されることを望む。
だが、そんな天音の姿を見た黒葉は天音を抱きしめ、諭す。
そこで天音をなでたことによって天音は黒葉が昔自分をなでてくれていた人物だと理解したため、うれしさのあまり泣きながら抱き着いた。
今回は黒葉視点です。
それではどうぞ!
side黒葉
全部思い出した。
ゲンに襲撃されてからのこと、紅魔館のこと。
それだけじゃない。昔のこと、俺が魔理沙に連れられて冬夏家に運び込まれるまでのことも全部。
今思えばなんて大切なことを忘れてしまっていたんだと自責の念に苛まれてしまうが、今はそんなことどうでもいい。
今のこの現状を認識した。
どうやら俺は里のみんながやられてしまうのを見て暴走してしまっていたらしい。
それを認識した俺は刀を手に取って戦場へと駆けた。
俺はやられてしまったようだが、処置がとても良かったのかもうあまり痛みは無い。
体の内部はボロボロかもしれないけど、今の状態で戦う以外の選択肢なんてあるわけがなかった。
だから、威迅と協力をして親父をぶっ飛ばそうと思っていたんだが――
「お兄ちゃん、大好き」
天音は大泣きしながら抱きついてきた。
いや、本当にどうしてこうなった?
俺は威迅と一緒に天魔と戦っていたはずだった。
だが、気がついたら天音と戦うことになっていて、天音からは殺意が感じられなくて少し暴走しているような気がしたから落ち着かせるために昔みたいに頭を撫でてあげたら泣いた。
俺は果たしてこの状況でどうしたらいいんだ?
姉ちゃんが俺の前で泣いたことはないし、紅魔館のみんなも泣いているところをあまり見たことがない。強いて言えば俺が無茶をしたことでめちゃくちゃ心配された時くらいだろう。
だから俺は女の子の涙に慣れていない。
そもそもどうして泣いたのかがわからない。
でも、顔は俺の胸にうずめられていて見れないけど、なんだか深刻な雰囲気ではないのは分かる。
そこでついに天音が作り出した壁が崩れ落ち、俺たちの抱き合っている今の姿が外に晒しだされた。しかも天音は大泣きしている状態だ。
「あれ、どうなってるんだ……?」
「黒葉君が女の子泣かせた」
「ち、違う!」
威迅は困惑し、茉衣はすごい冷たい目を向けてきていた。
今弁明して意味があるのかと思うが、こういうのはすぐに弁明した方がいいだろうと考えて咄嗟に否定した。
いや、違わなくもないかもしれないけど、女の子を泣かせたというと語弊があると言うか、人聞きが悪すぎると言うか。
俺もすごく混乱しているんだ。
ズダーンっ!
「っ!」
突如として雷でも落ちたんじゃないかという音が鳴り響き、次の瞬間俺の視界内に天魔が映り込んだ。間違いなく大剣を構えて俺に攻撃を仕掛けてきていたため、咄嗟に天音を突き飛ばして離れると刀を構えて応戦を試みる。
だが、正面からぶつかったところで俺と天魔の力の差というのは最初の一回で嫌というほど思い知らされた。天魔は間違いなく今の俺にとっては高すぎる壁。
押し合いでは絶対に勝てない。一撃の重さでは絶対に敵わない。
でも、俺は戦いながらずっとどうしたら天魔の攻撃を防御できるかと考えていた。
1つは受け流すという事。
「む」
天魔の振り下ろされた大剣を受け流し、俺は天魔の懐に入り込むと勢いよく刀を振り抜いた。
「《業火一閃》」
グッ!
俺の刀が天魔に届いた。でも、筋肉を硬くして防御しているのか、皮膚に触れてもそれ以上進まない。
そうこう考えていると天魔は俺の追いつけない速度で間合いを取ると、横凪の構えを取った。
体勢的に受け流せるだけの余力がない俺は次の手を考える。
天魔の1撃に1撃をぶつけたところで弾かれるのがオチだ。
ならば、2撃ならどうだ!
「《雷神剣・空》」
「《
なぜだか今なら行ける気がした。
妖夢師匠と特訓した時は1度も成功しなかったこの技だけど、今の俺には姉貴と修行した妖力操作の知識が叩き込まれている。
刀と妖力刀の形をピッタリと合わせて刀に重ねる。
妖力による双剣。
通常の双剣は刀身がきらりと白銀に輝くが、妖力を使っているからか分からないけど、刀身が紫色に妖しく輝きを放つ。
そんな俺の双剣と天魔の横凪がぶつかり合い、俺はついにある程度衝撃を殺すことに成功した。
お互いの攻撃は弾き合い、俺は数メートル飛ばされると1回転して地面に着地、一方天魔は剣こそ弾かれたものの、体は一切微動だにしない。
やはり攻撃をぶつけ合うと負けるのは俺のようだ。
でも、今ので俺はダメージを受けずに済んだ。これは大きな進歩だ。
「よしっ」
「確かに黒葉、お前は強くなっているようだ。だが、今のがお前の全力だろ? 全力でやっとそれならお前に勝ち目は無い」
確かに天魔の言う通りだ。
俺1人じゃ無理だ。でも、こっちは――
「3人だからな」
「うん、好きにはさせないよ」
威迅と茉衣が居る。
俺1人じゃない。
相手がどれだけ強くともこっちは3人がかりだ。3人で戦えば勝機はある。
「どれだけ雑魚が集まろうとも、強者にはなんにも感じない。道端のアリが集まったところで人間に勝てるか?」
「そう言ってられるのも今の内だ!」
威迅が威勢よく突撃したのを見ると俺も数瞬遅れて走り出す。
正面から押し合えば負けてしまう。
だから俺たちは正面から押し合う気なんて毛頭ない。
卑怯に、姑息に戦う。
大切なこの里を守るために。
「さぁ来い、小僧共!!」
「あぁ、言われなくともぶっ飛ばしてやるよ!」
威迅はそう言うと、刀を超絶長く伸ばし、天魔に振るった。
もちろんそんな単純な攻撃では天魔には当たらない。大剣を刀にぶつける事によって防御されてしまった。
だが、威迅の目的はこんなところで終わらない。威迅もこの攻撃が防がれるのは当たり前に思っていた。それが回避するか防御するかだが、今までの戦いで天魔は避けれそうな攻撃も回避しなかった。
だから回避しないという方に賭けたのだ。
都合よく防御してくれたため、威迅はこれ幸いと攻撃を利用することにし、天魔の振るった大剣に刀を巻き付けると、刀をロープ替わりに捕まって天魔の攻撃の勢いを利用して上空へと舞い上がった。
「むっ」
「《インパクト・キック》」
今度は俺が地面に向かって魔力を爆発させ、地面にクレーターが出来るくらいの威力で地面を蹴ると、そこら辺の人間では目で追うことすら不可能であろう速度に達することに成功。
そのままの勢いで天魔へと急接近する。
上と前からの同時攻撃。
威迅の上空からの振り下ろし攻撃。だが、天魔は眉一つ動かすことも無く清々しい表情で威迅の刀を受け止めて見せた。
だが、それでも俺が残っている。
俺が刀を振りかぶったその瞬間、タイミングを見計らっていたのか天魔の目の前に着くと、そこに雷が降り注いだ。
この動き方の弱点は直線にしか走れないから動きを読みやすいって言う点だ。
そこに雷を落とされた。
「がぁっ」
雷が体を貫く。
今まで味わったことの無い体が痺れ、弾け飛びそうな痛みに意識を飛ばしてしまいそうになるが、それをグッと堪える。
「その程度で俺を倒せると思っているのは心外だな!」
「思ってねぇさ」
「なに?」
「むしろ、あんたをリスペクトするよ。俺は」
俺は雷を食らっても尚、諦めずに刀を振るう。
俺はフランに投げ飛ばされても、親父の攻撃を2回まともに受けても無事だった男だ。こんな雷ごときにやられて溜まるか!
そして刀を振りかぶると天魔の向こう側に人影が見えた。
俺と同じように刀を振るい、天魔に攻撃しようとしている。
「諦めない、絶対に!」
「小娘!?」
「あんたは絶対に俺に集中すると思ったぜ。何せこの場で1番強いのは俺なんだからな。だからそんな俺が囮になってやったんだ。感謝して斬られろ」
俺と茉衣による双剣の同時の斬撃。
「《日輪一閃》」
「双剣《三枚おろし》」
俺たちどちらか一方では攻撃力が足りなくてダメージを入れられない。
だが、2人同時なら。2人で1点を集中攻撃すれば、絶対にダメージが入らないものなんてないんだ。
小さな小さな水滴でも数を落とせば岩を削れる。
ここまでダメージを与え続けてきたんだ。今更ダメージゼロだなんて言わせねぇぞ。
「くっ」
すると突然天魔が白いモヤのようなもので覆われた。
これは正しく霊力だ。天魔は霊力を鎧のように纏って防御しようとしている。
さすがの天魔でもこれはダメージは避けられないと悟ったのだろう。
このままではこの攻撃が防がれてしまう。
これ以上のチャンスが今後あるかどうか分からない状況だと言うのに……。
「"壊れろ"」
「なっ、お前」
その瞬間、背後からそんな声が響き渡った。
すると、突如として天魔を覆っていた霊力の鎧と威迅と拮抗していた大剣がまるでガラスが割れたかのように粉々に砕け散った。
正直状況を理解しきれないけど、これ以上の好機は存在しないはずだ。
逃したらダメだ。必ずここで致命傷を負わせる。
「ははっ! おもしれぇ!」
大剣が壊れたということは威迅もフリーになった。そのため、威迅は作戦を変更。自分も攻撃に加わる全員攻撃をする。
俺と茉衣が攻撃しようとしている箇所に刀を伸ばしてきて威迅も双剣を発動する。
「はぁぁぁぁぁぁぁ」
「たぁぁぁぁぁぁぁ」
「だぁぁぁぁぁぁぁ」
俺たち3人は雄叫びと共に刀を振り切った。
瞬間、凄まじい攻撃力の斬撃が無防備な天魔に襲いかかり、ぶっ飛ばされて行った。
瓦礫を破壊し、里の入口近くへとトンボ帰り。
胸には俺たちにつけられたデカイ傷痕を残し、天魔は遂に地面に四肢を投げ出して倒れ込んだ。
はい!第152話終了
ついに天音の件も解決し、ようやく戦いに集中できますね。
今回ので天魔に大ダメージを与えることは出来たでしょうけど、倒せるかと言われるとそんなことは有り得ないですね。
これくらいで倒れてたら博麗選抜チームでは戦えません。
それでは!
さようなら