【3章投稿中】東方妖滅録   作:ミズヤ

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 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 天魔は強かった。

 落雷で茉衣と天音は倒れ、黒葉と威迅は森へ散り散りに飛ばされてしまった。

 そんな黒葉の前に月刃が現れる。

 黒葉に史上最大のピンチが迫っていた。



 それではどうぞ!


第155話 師弟

side黒葉

 

「はぁ……はぁ……くっ」

 

 俺は月刃を見た瞬間、決して目は逸らさないようにゆっくりゆっくりと後ずさる。

 心臓の鼓動が速い。爆音でも鳴ってるんじゃないかってくらいに音を立てている。

 今のこの状態で月刃と接敵するとは予想外だ。正直、天魔よりも月刃の方が怖いまである。

 天魔は攻撃のパターンは何となくわかるが、月刃は大量の技を持っているから何してくるか、何考えてるのか全く読めない。

 

「どうしたんだい? 太陽、俺から距離を取っちゃって。なんで離れていくんだい? もしかして、お兄ちゃんが怖いのか?」

 

 ホラー小説の登場人物ってこんな感じだったのかな。

 俺が離れるのに対して急激に距離を縮める訳ではなく、付かず離れずの距離で俺を追いかけてくる月刃。

 

 天魔は月刃を超えたその先の場所に居るというのに、これではどんどんと離れて行ってしまう。

 

「太陽、大きくなったな〜。昔はこんなに小さかったのに」

「……そりゃ5年も経てばな」

「違いねぇ」

 

 何を考えてるのか知らないけど、話題を振ってくるというのなら時間稼ぎにもなるし、しっかりと返しておく。

 

「しっかし、お前らはまだ勝てると思ってるのか? 見ただろ? 親父の力を。誰1人手も足も出なかったじゃないか」

「はぁ……はぁ……それでも、この里は大切な場所だから」

「ふぅーん、そんなに大切な場所なのか。でも今、お前たちは守れてないじゃん」

 

 家屋はボロボロ、人も大勢の犠牲が予想される。

 里への被害は甚大だ。

 

「その程度の思いだったのか。弱いやつは何も守れない。これ常識! 運が悪かったね。まぁ、これも1種の自然災害にでも遭ったと思って諦めなよ」

「自然災害……だと?」

「そうそう。親父には誰も勝てないんだ。自然災害にだって勝てるやつは居ないだろ? 同じさ」

 

 親父の破壊行動が自然災害と同じ? 諦めろ、だと?

 あまりにも軽い感じで話す月刃に俺の中で例えようのない怒りがふつふつと湧き上がってきて、やがて火山の噴火のように爆発した。

 何か、俺をセーブしていた何かの糸がプツンと切れたようだった。

 それは多分――理性だった。

 

「ふざ、けるなよ」

「あん?」

「ふざけるなよ! 何が災害だ、何が諦めろだ。ふざけるのも大概にしろ! 弱い者は強い者から奪われるだけ。そんな世界あっちゃいけない。この里は身寄りの無い俺を受け入れてくれた。姉ちゃんと過ごした5年間、俺の今まで生きてきた人生の半分が詰まった大切な場所だ。それを諦めろだと? 出来るわけねぇだろ!」

 

 さっきまで理性で考えて月刃をあまり刺激しないようにしていたが、もうダメだった。

 全て感情に流されて言葉を発してしまう。

 多分、月刃の逆鱗に触れることになる俺はここまでの命になるだろう。でもそれでも構わない。

 俺は死の間際まで全力で戦った、そう思えるから。それはとても名誉なことだと思うから。

 だからそれでいい。

 

「お前は兄でもなんでもない。ただの悪人だ!」

「へぇ、言うようになったじゃねぇか。やるのか? 俺は容赦なくお前を殺すぞ?」

「大切な物を守るために戦って死ねるならそれは大変名誉なことだ!」

 

 ここまで苛立つ相手は初めてだ。

 多分、今俺は初めて人間相手に殺意を抱いている。

 この里は俺の大切な場所だ。それは何物にも代えがたい見捨てられない場所だ。

 それを自然災害に見舞われたと思って諦めろだ?

 

「よし、ならばここを太陽、お前の墓場としてやろう!」

「せめて一矢報いてやる! 《日輪一閃(プロミネンス)》」

 

 地面を思い切り蹴飛ばし、一気に月刃へ接近して炎を纏った居合を放つ。

 だが、地面がぬかるんでいたせいでいつものスピードは出ず、挙句の果てには俺が刀を振った時には既にそこには月刃は存在せず、さっきまでの距離と同じくらいの距離の場所に月刃は立っていた。

 そしてその代わりに俺の体は真後ろへとぶっ飛んでいた。

 

「ごはっ」

 

 何が起こった? 全く見えなかった。

 ただ1つ分かることは俺が全く認識できないほどの速度で殴り飛ばされてしまったということだ。

 月刃はそれだけの速度を出して俺を殴った後、距離を取るところまでやってのけた。

 

「くはっ、はぁ、はぁ……」

 

 全身が痺れるみたいに痛い、足の感覚もほとんど無くなってきた。

 視界が歪み、意識が段々と薄れゆく。

 だが、まだここで倒れる訳には行かない。まだ、死ぬ訳にはいかない!

 

「《霊力斬》」

 

 ぶっ殺されながらも俺は月刃に霊力斬を放った。

 さすがにこれは予想外だったのだろう。月刃も直ぐには反応出来なかったが、俺の霊力斬は腕で受け、そしてかき消されてしまった。

 普通そんなことしたら腕が切れる。

 だけど多分月刃は奪った能力の1つでも使ったんだろう。無茶苦茶がすぎる。

 

「霊力の扱いが上手いじゃないか」

「はぁ、はぁ……」

「声を出す気力も湧かないか……」

 

 言葉を発するのすらもう惜しい程にまで体力が無くなってしまっている。

 次何か喋ったら死んでしまうんじゃないかと思うほどに……。

 

 血が流れすぎたのか頭は痛いし、思考も上手く働かない。

 段々と体温が下がっていくのを感じる。昔の俺、人間だった頃の俺だったら間違いなくとっくの昔に息絶えていただろう。

 これは俺が吸血鬼だからこそ何とかなっている。

 でも、いくら吸血鬼のタフさでも限界は存在する。これ以上のダメージは致命傷になりかねない。

 

「太陽、その傷ではもう持たないだろう。せめてこれ以上苦しませずに殺してやるからさ、抵抗はするなよ」

 

 なんとか……しないと。

 なんとか……なんとか…………なん……とか……

 

「ぐっ」

 

 そこでついに俺は膝を着いてしまった。

 

「じゃあな。弟よ」

 

 死ぬ。

 そう思った刹那、俺の体は突然の浮遊感に襲われ、突撃してきた月刃の拳をなんとか躱すことが出来た。

 何が起こったのだろうか。見上げてみるとそこには師匠の顔があった。

 

 思考が上手く働かない。

 でも、1つ言えることは、今俺は師匠に抱えられているということだ。

 どうやら俺は師匠に助けられてしまったらしい。

 

「お前、生きていたのか」

「いい事を教えてあげます。相手の死を確認するまでは油断しないことです」

 

 しっかし、師匠も酷い血だ。

 人間である師匠にとっては致命傷と言ってもいいほどの血の量。

 でも、師匠は平然とその場に立っている。しかも俺を抱えて月刃の攻撃を回避できるほどの力がある。

 

「そうだ黒葉、これを飲んで」

「これは?」

 

 師匠が渡してきたのは錠剤のようなもの。

 カプセル状で水が無くても飲みやすいようになのかとてもとても小さい。

 小さい子でも喉をつまらせずに飲むことが出来そうな程だ。

 

 何の薬だか分からない。

 だけど、師匠がこの状況で渡してきたということは何か意味があるはず。

 錠剤を受け取った俺は恐る恐る口の中に入れてそのまま飲み込んだ。まるで試験者の気分だ。

 

 その瞬間、心臓がどくんと高鳴り、さらに全身が燃えるように熱くなっていく。

 でも、その熱さは次第に心地よくなっていく。

 なんだか安心する温もりだ。心が落ち着く。

 

「その薬は傷薬兼精神安定剤を兼ねているそうよ。ほら、体を見てみて」

「え?」

 

 言われて体を見てみる。

 すると、体から溢れ出していた血がまるで何かに突然せき止められたかのように止まっていき、普通ではありえない速度で皮膚が形成されていっていた。

 これ、傷薬と言うよりも何かやばい薬のように感じるのは俺だけだろうか?

 

 そういえば師匠も服や髪が血に濡れているから酷い傷のように見えるけど、新たに血は流れていていない様子だ。

 多分、師匠も同じ薬を服用したのだろう。

 

「さぁ、それなら動けるわよね」

「あ、あぁ……問題ない」

 

 深い傷はさすがに治りきらなかったけど、さっきと比べたら全然動ける、戦える。

 上手く刀を握れなかったけど、今なら力強く握ることだって可能だ。

 

「まだ戦えそうだ」

「そう……それじゃあ、色々と聞きたいことはあるけども、後回しにするわ」

「それで頼む」

 

 俺は刀を、師匠はナイフを構えて月刃へと向き直る。

 月刃は相変わらず余裕そうな表情をしていてかなり腹が立つ。

 確か天音の話だと大量の能力を月刃は操ってくるはずだ。昔も結構持っていたはずだが、あの頃よりも増えているのは確実だろう。

 

 それに、月刃の速度は一瞬でこの距離を詰めることが出来る。

 一瞬の油断も命取りになる。

 

「来ないならこっちから行くぞ?」

「黒葉!」

 

 一瞬にして姿を消した月刃は瞬く間に俺の真横に出現し、俺は蹴り飛ばされてしまった。

 なんとかスピードをそのまま載せた蹴りじゃなかったため、耐えることが出来たけど、スピードを載せた蹴りだった場合、意識を保てるかどうか……。

 

「くっ」

 

 なんとか倒れた体を持ち上げて立ち上がるが、どうやら月刃は俺に休みを与えてくれないようだ。

 直ぐに再び俺の目の前に出現した月刃は拳を振り下ろしてきていた。

 

 だが、これはもう予想出来ていたため、俺は霊力で双剣を構えていた。

 間違いなくこの威力の拳は1発では受けきらない。

 ならばどうする?

 親父との戦いの時にやったことと同じだ。

 

 1発ではダメなら2発叩き込むだけだ!

 

 ガキンっ!

 

 俺の刀と月刃の拳がぶつかり合ってお互いを弾いた。

 鉄と肉体がぶつかったとしてこんな金属同士のぶつかり合いのような音がすることは無いだろう。

 どうやら今月刃は硬化していたようだ。

 

 だがしかし、俺が月刃の攻撃を弾いたということは隙ができる。

 その次の瞬間、一瞬にして月刃の背後に出現した師匠。

 そして月刃の頭には10本程のナイフが生えていた。




 はい!第155話終了

 咲夜と黒葉が合流しました。

 天魔の攻撃ではギリギリ弾けるか弾けないか位の双剣ですが、月刃はそこまでの攻撃力は無いので、比較的余裕を持って弾けてます。

 そしてナイフが刺さった月刃。

 果たして黒葉達は無事に勝利することが出来るのか?

 それでは!

 さようなら
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