【3章投稿中】東方妖滅録   作:ミズヤ

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 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 ついに明かされる月刃本来の能力。

 圧倒的な能力の前に戦慄する3人だったが、それでも善戦して行く。

 だが、ついに威迅がやられてしまった。

 立っているのは咲夜と茉衣の2人。

 果たして月刃に勝つことは出来るのだろうか?



 それではどうぞ!


第163話 ケル

side威迅

 

「グルルルル……ガウッ!」

 

 また吠えてる。威嚇している。

 この8年、あの日ケルが死んでしまったあの日から毎日見る夢だ。

 この声、怒りが込められた声が頭の中から離れた事は1日たりともない。

 

 真っ黒な空間で、遠い遠い場所にケルが立ってずっと俺へ向かって吠え続けるんだ。

 

 毎日毎日俺の夢に出てきては俺を責め立てる。お前が弱いから自分は死んだんだと呪いの籠った声でずっと叫び続ける。

 そんなことは俺もわかっている。

 あの時、俺に力があればまだまともに戦えてケルも死なずに済んだんじゃないかって。ずっと頭の中をぐるぐるしてる。

 

 能力を使っている時なんかは特に酷い。

 能力が後天的に使えるようになることなんて無い。元々才能としてあるものが使えるようになると言うだけだ。

 あの時、俺は能力のことを自覚していなかった。

 

 この能力を使っていれば少しは違う未来があったかもしれない。

 能力を使う度、俺の意識が飛びそうになる。頭をハンマーでガンガン叩かれているかのような痛みが走る。

 

 俺はケルに呪われたのだ。

 だが、それも当然だろう。ケルにはずっと助けられてばかりで、最後の最後もやはりケルに助けられて……。

 やっぱり俺は弱いっ!

 

 また俺は負けるのか。

 

「グルル、ガウッ」

 

 このままケルの所に行っても俺はケルに嫌われている。昔のように仲良くは出来ないだろうな。

 ケル、ごめん。弱くて。

 ごめん、助けられなくて。

 

 いくら謝ったところで許しては貰えないことだと思う。でも、それでも謝りたかったんだ。

 そしてこれからも謝り続ける。

 でも、それでも1つだけわがままを言ってもいいなら、あの頃みたいにもう1度仲良くしたい。

 

「グルル……」

 

 いつもならここで夢が終わって目が覚める。

 でも、今回は違った。

 月刃にやられて気を失ったという構図、眠りでは無いため目が覚めることはなく、そのまま夢が続いていく。

 

 すると、ケルはゆっくりゆっくりと俺に向かって歩き始めてきた。

 俺はこの場所から1歩も動くことが出来ない。指1本すら動かせないため、ケルに攻撃されたとしても抵抗もできない。

 まぁ、最初から抵抗する気は無い。

 

 近づいてきたということは恨みを晴らす気なのだろう。

 好きにして欲しい。俺は抵抗する気は全くない。非は俺にあるんだから。

 

 目を瞑って衝撃を覚悟する。

 だが、俺の体に走った感覚はダメージのそれとは全く違うくすぐったい感覚だった。

 まるであの頃みたいに、ケルに舐められているかのように……。

 

 恐る恐る目を開けてみると、既にケルは目の前に居て、何と俺の頬を優しく舐めて居たのだ。

 いつの間にか溢れ出していた涙、それをまるで慰めるかの如く、優しく舐めとってくれる。

 

 俺の家にはほとんど親がいないことが多かった。今だって各地を飛び回って忙しそうにしていて帰ってくることは稀だ。

 茉衣が居たが、兄として情けない姿を見せるわけにはいかない。

 寂しかったんだ。だから、俺にとって本当にケルは心の支えになっていたんだ。

 

 寂しくなったら必ず森に行ってケルに今と同じように慰めてもらってケルの腹を枕替わりに使わせてもらって昼寝して。

 妖怪が出る森だけど、ケルの力が強すぎたからかほかの妖怪が近寄ってこなくて非常に快適に眠れた。

 

 時には遊んで、時には修行して、俺にとって唯一無二の親友だったんだ。

 

 あぁ、そうか……。

 やっとわかったよ、ケル。

 

「お前……俺の事を責めてた訳じゃなかったんだな」

 

 夢ならいつも途中で終わっていた。だからこそ、その続きにこんな光景があるということを知ることは出来なかった。

 今、続きを知ってやっとわかった。

 

「お前はいつも、俺を励ましてくれていたんだな」

「がう?」

 

 俺が勝手に呪いだ、責めているんだと決めつけて俺に対して攻撃的な声だと決めつけて勝手に苦しんでいた。

でも実際は励ましの声だったんだ。

 

 頑張れと声をかけ続けてくれていた。独りじゃないと励ましてくれていた。

 でも、俺はその声を聞こえないふりをしていた。

 心が弱かったんだ。

 

 なんだよ。そういうことだったのか。

 

「お前が俺を呪ってたんじゃない。俺がお前を呪ってたんだな。お前はいつも俺を見守っててくれた……」

「バウッ!」

 

 ケルは俺の言葉を肯定するかのように一際大きく鳴いた。

 そうじゃないか。なんで忘れてたんだろう。

 ケルが最後に言った言葉。

 

 ――あいうい

 

 赤ちゃんの言葉の方が聞き取りやすいくらいの拙い人語。

 だが、間違いなくケルは俺に『だいすき』って告げたんだ。ケルのその気持ちを信じてあげられなかった。

 俺が勝手に恨んでいるだろうと決めつけていたんだ。

 

「ケル、俺はもう1度頑張ってみようと思う。力を、貸してくれるか?」

「おいおん!」

「もちろん、か。ありがとな」

 

 やっぱり拙い人語だが、俺には通じる。

 ケルは死んでしまったけど、その意思は俺の中で生き続けている。

 俺とケルの絆は決して揺るがない。

 

 そうか、そうだったのか。

 あの能力が暴走しそうだった感覚、そうか。ケルは獣となって俺と一緒に居てくれたのか。

 なら、またケルと一緒に戦える。

 

「行くよ、ケル」

「がうっ!」

 

 ――狂獣技(ビースト)【ケル】――




 はい!第163話終了

 ついに威迅の狂獣技が発動!

 威迅は本物の狂犬となります。

 ちなみに狂獣技の名前は個体名がある時はそれになりますが、名前が無い。もしくは概念として捉えられているだけで使用者が名前を知らない時は種族名になります。

 ちなみにケルって言うのは流れで分かっているかと思いますが、威迅が付けたケルベロスの名前ですね。
 安直ですが、本犬は気に入っている様子です。

 それでは!

 さようなら
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