【3章投稿中】東方妖滅録   作:ミズヤ

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 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 狂獣技を使い、月刃と互角の戦いを繰り広げる威迅。

 しかし、だんだんとそれも押され始める。

 咲夜はこの状況から勝つ方法を考えるが、失敗すれば死ぬという作戦だった。

 だが、やらずに後悔するよりはいい。

 やらなくても死ぬ。どうせ死ぬなら後悔しない死に方をと考えて作戦を行動に移す。

 そして今、その作戦が達成された。



 それではどうぞ!


第166話 予測不可回避不可絶体絶命

side三人称

 

「な、何故」

「よぉ、随分楽しそうだったな」

 

 動けなくなった月刃の背後から声が聞こえてくる。

 もしこの状況が時止めのせいだとしたら絶対に聞こえてくるはずのない声に月刃はぞっとしてしまう。

 そう、この声の主は時が止まるまで自分が戦っていた分郷威迅だった。

 

 威迅は時を止めることが出来る能力は持っていない。そのため、時が止まっているのならば動けるはずもないのだ。

 だというのに今この場で動いているのは威迅のみ、月刃の脳は限界を超えそうだった。理解の範疇を大きく超えてしまっていた。

 

「気が付いたら突然こんな世界になっていた。そして咲夜に伝えられた、この能力の使い方を」

 

 威迅は臨戦態勢、だというのに月刃は一切構えることが出来ない状況。

 時が止まっているので、能力のクールタイムも全く進まなく、もう一度能力を使うということもできない。

 さっきまでの状況とは一転し、今度は月刃が絶体絶命な状況となっていた。

 

「お前、何をした……」

「…………《ザ・ユニバース》、威迅を私の世界に招き入れた。《ディス・ワールド》、自分の能力の主導権を相手に譲渡する。これが私の樹海よ」

 

 威迅に助けてと懇願していたあの一瞬、咲夜は威迅を《ザ・ユニバース》でこの時が止まった世界に招き入れて状況を軽く説明し、《ディス・ワールド》で威迅に能力の主導権を譲渡した。

 譲渡した時点で能力のタイムリミットはリセットされ、咲夜は能力を一時的に使えなくなってしまうが、その代わりに譲渡した相手が能力を使うことが出来るようになる。

 

 レミリアの言葉を信じた結果の咲夜の答え、咲夜の樹海技だった。

 威迅が能力を使えたらいい、その考えを現実のものにしてしまったのだ。

 

「動けなくなったお前はただの的だ。さぁ、終わりにしようか」

「く、ふざ、けるな! がはっ」

 

 まず一発目、威迅の膝蹴りが月刃の腹へと叩きつけられる。

 邪魔が入ることもない、月刃が攻撃を防御することもない。威迅が攻撃し放題の状況、威迅は時が止まっている状況では回復することもできない。

 殴り蹴り、刀で切り刻み、月刃は最初とはくらべものにもならないほどに無残な姿へと変貌してしまっていた。

 

「あ、がっ」

「終わりだ!」

 

 トドメとして月刃を一刀両断しようとしたその時だった。

 そこで能力のタイムリミットが訪れてしまい、時間停止が解除されてしまった。能力の主導権を譲渡したとはいえ、能力を譲渡したわけではない。そのタイムリミットは咲夜の体力に大きく影響されてしまう。

 ボロボロで動けなくなってしまっている今の咲夜の体力では1分にも満たない時間しか時を止めることはできなかった。

 

 それによって最後の一撃を月刃が回避してしまい、傷を治癒してしまう。

 

「く、今のはさすがに死ぬかと思ったが、これでもう命運は尽きたようだな」

 

 その時だった。

 咲夜たちにはもう打つ手がない。もう一度時を止められてしまったら今度こそ終わりだ、とそう思われたのだがそこで月刃がなんと地面に膝と両手をついて倒れ込んでしまったのだ。

 よく見てみると治癒したというのに傷が完全に治癒しきれていなかった。回避するときも神速の加護を使用して威迅から距離を取ったが通常の威迅よりは速い程度の速度しか出ていなかったのだ。

 

 それもそのはず、当たり前の事態だった。

 月刃は今まで多種多様な能力、更に神速の加護を使用して相手を瞬殺してきていたため、これほど長い間戦ったことなど今までなかったのだ。

 だが、今回はかなりの長期戦。多種多様な能力、そして神速の加護の乱用。時を止めての咲夜とのバトル。これだけのことをやっておいて体力が尽きないというのは無理があった。

 

 つまりこれは()()()だった。

 周囲に舞っていた霧も徐々に晴れ始めてくる。月刃の体力がもう限界を迎えているということを告げていた。

 

「く、くそ……どうして……」

「やっとか……」

 

 長かった。

 もう全員ボロボロ。

 茉衣も動けなくなり、咲夜ももう体力の限界。威迅ももうそろそろ倒れそうなくらいには体力の限界が迫ってきていた。

 これは威迅達の粘り勝ちというものだった。

 

「まだ、まだだ……まだ、負けてねぇ……」

「いや、お前はもう終わりだ」

 

 もう月刃は立つのでやっとのようで、もうさっきまでのような威圧はない。今の状態なら能力さえ使わなければ茉衣ですらタイマンで勝てそうなくらいには弱っていた。

 だから威迅は最後の一撃を放つために歩き出す。

 

「威迅」

「咲夜、お前もタフだな」

 

 もう動けなくなっているかと思いきや、まだ立ち上がるだけの力は残っていたようで咲夜は立ち上がってナイフを構えた。

 だが、体力の限界はとっくに超えている。もう一秒たりとも時を止めることは叶わないだろう。だが、それは月刃も同じことだ。もう能力はお互いに使えない。

 

「まけ、負けるわけがないんだ、俺が、俺、が!」

「行くぞ咲夜!」

「倒すわよ威迅!」

 

 ラストアタック。

 威迅が刀に能力を使用してまるで剣の雨が降っているかの如く大量の刃を月刃の上から降らせた。

 だけど、これだけならまだ回避のしようがある。しかし、咲夜の攻撃が月刃の逃げ場を完全になくす。

 

 降り注ぐ刀に向かって咲夜が大量のナイフを投げたのだ。

 本来だったら明後日の方向に投げたナイフ。刀とナイフがぶつかったとしてもナイフがそのまま落下するだけだ。

 だが、これは普通の刀ではない。威迅が操っている刀だ!

 

「「現幻符(げんげんふ)殺人時雨(さつじんしぐれ)》」」

 

 飛んできたナイフを刀が弾き、目にもとまらぬ速度で刀が降り注いでいる範囲内を飛び回るナイフ。

 それは感覚的には月刃の神速の加護で移動している時と同じくらいの速度で反応できるわけがない、回避不可能のナイフだった。

 刀だけだったらスキマに逃げることが出来るが、そこへナイフが襲い掛かる。

 

「が、ふ、だぁっ!」

 

 予測不可能回避不可能絶体絶命の乱反射。

 威迅も範囲外にナイフを飛ばさないようにしているだけでそれ以外はほとんど適当に反射させているだけ。そのため、予測は絶対にできないという技が出来上がってしまっていた。

 どんどんと切り傷が増えていく月刃だが、体力の限界を迎えている月刃はもう治癒することが出来ない。あとはもうダメージが蓄積していくだけだ。

 

 やがて――

 

「あ、が……」

「あ、くそ……」

「げん、かい……」

 

 月刃が地面に倒れ込んだ。と同時に咲夜と威迅も地面に倒れ込み、気を失った。

 威迅は狂獣技の体力消費をなめていた。凄まじく体力を削られた威迅は抗うことはできずに気を失ってしまい、咲夜は月刃が倒れそうになっているのを見て限界が訪れてしまったのだ。

 

 静かになった。

 戦闘音が無くなったこの森に雨音だけが鳴り響く。

 

 

 

【天魔組VS鍛冶師の人里

鍛冶師の人里、外周の森の戦い

勝者――

 

 

 

「ふ、ふふふ、あーはっはっはっは!」

 

 そこで一人の男の笑い声が響き渡った。

 月刃である。

 限界を迎えてしまい、気を失ってしまった威迅と咲夜とは違い、月刃は意識を保っていた。凄まじいダメージではあるが、二人ほどではなく、動けなくはあるのだが休めば治癒して再び攻撃を再開することが出来る。

 それ即ち咲夜たちの敗北を意味していた。

 

「やっぱり俺の勝ちだ。まずは体力を回復し、そのあと殺してやるよ。あーはっはっはっは!」

「ねぇ」

「っ!」

 

 再び勝利を確信して高笑いをしていた月刃だったが、そんな彼に声がかけられた。

 もちろん威迅や咲夜ではない。二人は気を失ってしまっていて声を発することすらもできない。

 じゃあ、誰なのか――

 

 威迅や咲夜と戦うことに夢中になっていて月刃も存在を忘れてしまっていた少女、分郷茉衣だった。

 体をピクリとも動かすことが出来ない月刃に対して体力がまだ残っている茉衣は這ってではあるがじわじわと動くことが出来ていた。

 その状態でじわじわと月刃へと接近していく。

 

 その手には刀ではない、何やら四角い箱のようなものが握られており、月刃はそれを見た瞬間顔を青ざめてしまった。

 

「す、スタンガンっ!」

「護身用ってお兄ちゃんに貰った奴、こんなところで役に立つとは思わなかったけど、あってよかったよ」

「ま、まて、落ち着け、冷静になろう。こんな雨でびしょ濡れの状態でそんなものを使ったらお前も感電するぞ!」

「私は冷静だよ。それに別にいい。お兄ちゃんたちが作った最後のチャンス、絶対に逃さない!」

 

 茉衣の決まりきった覚悟に説得の余地などないということをいやというほど理解した月刃は茉衣から逃げようとするが、体力が全くなく動けない月刃では逃げることなどできるはずもなかった。

 じわじわとにじり寄ってくる茉衣をただただ待つことしかできない。

 絶体絶命の状況だった。

 

 このスタンガンに人一人殺せる威力なんてない。だが、これだけ体力が減っている状況、更に雨も大量に浴びている状況ではどの程度の威力になるかは想像もつかない。

 それは茉衣も理解していた。だが、そんなことはどうでもいいと笑みを浮かべてスタンガンを構えたのだ。

 

「じゃーね」

 

 ぴとっと月刃の首筋に当てられるスタンガン。

 腕を動かすことも叶わない月刃はそのスタンガンを払いのけるということもできなかった。

 

(ははは、全てがゆっくりに見える。これが走馬灯ってやつか。もう、指1本も動かせねぇ)

 

 もうこれは認めざるを得なかった。

 避けようがないスタンガン、チェックメイト。

 

 刹那、敗北を悟った月刃の脳内にあふれ出した()()()()()()()記憶。

 

「ああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」




 はい!第166話終了

 ついに次回月刃戦決着、となるかと思います。

 ようやくですね。

 月刃が強すぎた。

 そして月刃の失われたはずの記憶とは?

 月刃の強化プログラムの代償は?

 あ、ちなみにこの戦いで威迅の技は現幻符《殺人時雨》しか出てきていませんが、威迅の戦い方は型にはまらない自由な戦い方ですので、技というものがないんですよね。
 なので咲夜との連携技である《殺人時雨》が威迅唯一の技ということですね。

 それでは!

 さようなら
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