【3章投稿中】東方妖滅録   作:ミズヤ

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 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 黒葉が加わり、天魔と戦いは続く。

 烈夏と黒葉の連携で攻撃するが、なかなか有効打を与えられない。

 だが、天音と雪姫が復活したことによってついに天魔をぶっ飛ばした。

 烈夏も黒葉も体力の限界が近い。

 だが、天魔はまだ余裕がありそうだった。



 それではどうぞ!


第170話 至高

side烈夏

 

「しっかり勉強しろよ。お前は将来、この診療所を継ぐんだ」

「はい」

「最近剣術なんかに興味を示しているようだが、能力がないお前みたいなのが剣士になれるわけが無い。大人しく医師になれ」

 

 俺には能力がない。

 この世界には能力があるものが絶対的な強者になるという法則が存在している。

 だから能力がない俺には剣の才能がないとされていた。

 

 父には診療所を継げと耳にタコができるくらいに言われた。

 俺が剣術に興味を示した時もそれを否定され、刀を没収された。

 

 それでも諦めきれなかった。だから俺は親の目を盗んで木刀なんかで刀の修行をしたんだ。

 何度も挫折しそうになった。能力があったらどれだけ良かっただろうと無い物ねだりをした。でも、そんなもの手に入ることは無かった。

 

 能力は基本的に後天的に発現することは無い。

 例外的に発現する場合もあるが、能力喰い(イマジンイーター)という力が必要になる。

 俺の家系にそんなものがあるなんて言う都合のいいことは無いから能力を手に入れる手段は無かった。

 

 だから考えた。能力に対抗しうる俺だけの強みって何かないか。でも、そんなもの簡単に見つけられるはずがなかった。

 

「いやー、親父もさ、酷くね? 勉強はやってるんだからさ、剣の特訓くらい許してくれてもさ」

「そうね。でも、能力が無いと強くなれないってのは本当だしね」

「いいなぁ……能力。あ、そうだ。雪姫の能力を俺に少し分けてくれよ」

「む、無理よ。そんなことできないのわかってるでしょ!?」

「ジョーダンだ、ジョーダン」

 

 父に剣術のことで叱責されたら毎回幼なじみの雪姫の所へ来て相談していた。

 だけど、雪姫の両親は平民の俺と由緒正しい家系の娘である雪姫が関わるのをあまり良しとはしていないみたいで、見つかるとネズミが如く追い払われるので、俺はいつも木を登って3階にある雪姫の部屋の窓に腰をかけて雪姫と話をしていた。

 この時間がとても幸せだったんだ。

 

 そんなある日、里に突然由緒正しい家系の坊ちゃんがやってきた。

 彼は剣の腕も超一流で、『風を操る程度の能力』を持った天才だった。

 

 その時には既に俺は診療所を継いで忙しい毎日を過ごし、剣術の練習なんてする暇は無くなってしまっていた。

 

 そんな彼はこの里の雪姫の噂を聞き付けて遠くからやってきたのだとか。

 一目見た瞬間、一目惚れしたらしい。

 彼は即結婚を申し出た。

 

 どうやら彼は雪姫の両親のお眼鏡にも叶ったようで、そこからはトントン拍子で物事が進んで行った。

 所謂政略結婚と言うやつで、雪姫の意思なんて関係なかったという。

 

 それは直ぐに俺の耳にも届いた。

 このまま進めば確実に雪姫は好きでもない相手と結婚させられてしまう。それだけは絶対に許せなかった。

 俺は自分の中に秘めていた好意を自覚していた。でも、身分の差というものがあり、俺では彼女に釣り合わないってことも嫌という程理解していた。

 だから雪姫が幸せになれるんなら別に相手が俺じゃなくてもいいってそう思っていたんだ。

 

 でも、この1件が消えかけていた俺の心に火をつけた。

 今でも父には悪い事をしたと思っている。本来なら今でも俺はあの診療所で医師をしていたはずなんだ。

 しかし、俺はこの1件で事件を起こしてしまった。

 

 それは雪姫と彼のお見合いの日。

 2人はもう何度も街中でデートをしているのを目撃されており、楽しそうに談笑している姿も捉えられている。

 でも、俺だけは知っていた。

 

 あれはたまたま雪姫の部屋へ久しぶりに遊びに行った時のことだった。

 いつものように窓をノックして開けてもらおうとしたら雪姫の暗い表情が目に映った。

 もう夜で暗かったため、はっきりとしていた訳じゃないが、何度も雪姫の表情を見ていた俺が雪姫の表情を見間違えるわけがなかった。

 

 だから俺は何かがあったのだと判断し、その日はそっとしておくために窓をノックせずにそのまま踵を返して家に帰った。

 その次の日、その日はなんと彼とのデートの日だったんだ。

 もちろんその日も2人は楽しそうにしていたらしいが、俺にはわかった。前日の暗い表情が今日を憂いてのことだったのだと。

 

 雪姫は空気が読める。自分に選択肢など無いんだとわかっている。だからこそ1番穏便に済むように相手に合わせているんだ。

 自分が好きな人が自分の人生を捨てようとしている。そんな状況に俺は我慢ならなかった。

 

「この前、こんなでっかい妖怪が現れたんだけど、僕の剣の前には無力だったね。一刀両断してやったよ」

「流石ですね〜」

 

 バンっ!

 2人がどこで今日合っているのか、それは分からなかった。でも、里中の人達に聞いて何とかたどり着いた俺は障子を勢いよく開け、2人の前に飛び出した。

 2人とも驚いた表情をしていたことをよく覚えている。

 それと同時に相手の男はすごくイライラしていた。多分気持ちよく自分の武勇伝を話しているところを邪魔されたからだろう。

 でも、俺にそんなことは関係ない。

 

「れ、烈夏……さん?」

「雪姫、ごめん!」

 

 自分勝手な話だと思う。

 多分あのまま雪姫が結婚した方が波風立たず、穏便に俺たちはあの里で暮らすことが出来たんだろう。

 でも、俺は自分勝手だった。だから雪姫のことを横抱きにして連れ去ったんだ。

 

 背後から焦ったような声が聞こえてきて俺たちのことを追ってくる人もいた。

 俺が戦っても勝てないような奴らだ。だから俺は雪姫を抱いて必死に走った。

 

 里を出て1時間ほど走った頃だろうか。もう、奴らは俺たちのことを追ってきてはいなかった。

 そこで力尽きた俺は雪姫を下ろし、その場に倒れ込んでしまった。

 

「もう、烈夏さん。やってくれましたね」

「はぁ……はぁ……」

「これ、誰の目から見ても誘拐ですよ?」

 

 それは俺自身もわかっている。

 これはただの俺のワガママだ。

 むしろ、雪姫が暗い表情をしているように見えたのは俺があいつに雪姫を渡したくなくて見えた幻覚だったのかもしれない。

 俺はあいつらに捕まったら斬首されるだろう。まず間違いなく。

 俺だけじゃない。親もあの里には居づらくなってしまう。

 でも、それでも……

 

「これは俺のワガママだ。でも、それでも雪姫を他の男には渡したくなかったんだ」

「っ!」

「俺は雪姫が好きなんだよ」

「なんですかそれ……本当にワガママで自分勝手な人ですね」

 

 もう夜で雪姫がどんな表情をしているのかが見えないから、雪姫の抱いている感情がどんなものかは分からない。

 勝手なことをした俺に怒っているのかもしれない。

 でも、直ぐにそんな心配は杞憂だったとわかった。

 

「責任、取ってくださいね?」

「せ、責任……?」

「あなたのワガママで私を連れ出したのでしたら、最後まで責任を取ってくださいね? 私と結婚、してくださいませんか?」

「はぁ……それ、俺が言いたかったな」

「ふふっ、遅いんですよ」

「俺からも頼む。こんな俺で良かったら、結婚してください」

「はい、喜んで」

 

 それから俺たちはさらに里から離れ、この鍛冶師の人里にたどり着いた。

 彼らは日々鉄製の武器を作り、それで戦う戦闘民族のような住民たちで、とても強かった。それこそ、強すぎてあまり怪我をしないので治療院なんて必要が無いくらいに。

 

 だから俺も刀を打つことにした。

 俺も強くならないといけない。雪姫と結婚するという事は俺が雪姫をこれから一生守り続けるという事だ。

 ならばせめて雪姫に守られる必要が無いくらいに強くなって見せよう。

 

 それからずっと剣術と鍛冶師の訓練に明け暮れる日々だった。

 負ける訳には行かない。

 もっと強くならなければ行けない。

 

 能力持ちに勝つ方法、俺だけの強み。

 そうして考え出したのは俺が医師だったということだ。そんな俺ならこの体をより効率的に、効果的に使えると考えた。

 筋肉のパワーを最大に使うには、より早く動くことが出来る筋肉の動かし方は――

 

 ずっと考え続けた。

 

 それで今の俺がいる。

 気がつけば俺は里の中でもトップクラスの実力へと上り詰めていた。

 でも、それでも勝てない相手というのが存在する。

 

 目の前のこの男、銀河天魔とかな。

 パワーに勝てない、防御を破るので精一杯。

 これほど勝てないと思わせてくれる相手というのは久しぶりだ。

 

「《電雷迅(でんらいじん)》」

「っ、黒葉!」

 

 天魔がおもむろに地面を蹴った瞬間、閃光の如くスピードで黒葉へと迫っていた。

 まるで雷が通ったかのように見えるそのスピード。

 天魔はまだ力を隠している。

 

 まずい、黒葉がやられる。

 もう、誰も失いたくない。もう、嫌だ。

 絶対に守る。俺の家族は絶対にもう、誰1人だって死なせるもんか!

 もう、白愛の時と同じ轍は踏まない。

 

 ――()()()()()()()()()()

 ――()()()()

 ――()()()()()()()()()

 

 どんどんと頭の中がクリアになっていき、その分思考が加速していく。

 脳の処理速度がさっきまでの比じゃない無いくらいに上がっている。

 だが、ここで終わりじゃない。次から次へと脳へ情報が流れ込むが、それを一瞬で処理する。

 脳の処理速度の向上が限界を知らない。上がってもなお上がり続ける。

 

 まるで目の前にそびえ立っていた開かずの扉が開きかけ、その先にとんでもなく広大な世界が広がっているのを目にしたような感覚。

 

 研ぎ澄ませ。

 俺は()()()()()

 

 だんっ!

 その地面を蹴る筋肉の力、角度、体勢。全てが完璧だった。

 

「なっ!」

「お前のその面は見飽きた!」

 

 この一撃は外れない、そんな妙な確信があった。

 完璧な剣筋がまるで視認できるよう。その線をなぞる様に俺は刀を振るう。

 瞬間、周囲に冷気が吹き荒れる。雪姫の《氷結剣(アイスエンチャント)》だ。

 

 今までずっと何度も試してきた。でも、この技と《氷結剣》は相性が悪いからってずっと諦めてきた。

 でも、今ならできる気がする。

 

 そのでかい図体に刻み込んでやる。

 俺という剣士の一太刀。渾身の一撃っ!

 

柔剣・奥義/反転(じゅうけん・おうぎ)白の復讐(しろのふくしゅう)》」

 

 シャキンっ!

 空間が割れた。

 柔剣だと言うのに豪剣以上に威力のある俺の最強の一撃にして、これは生涯を通して最高の一撃だ。

 初めてだった。天魔の体に深い傷を入れ、天魔は血を吐いた。

 渾身の一撃をまともに受けた天魔はタダじゃ済まないだろう。

 

 だが、俺ももう限界だったらしい。

 もう指1本も動かせない。

 

 力尽きてしまった俺はその場に倒れてしまった。




 はい!第170話終了

 今回は烈夏の独白でした。

 烈夏の雪姫の過去、そして謎の力。

 果たして烈夏が突然パワーアップした理由とは?

 そしてこれで烈夏は戦闘不能です。

 しかし、最後の最後ででかいダメージを与えましたね。

 あれ? 烈夏はあまりダメージを受けてないじゃんですって?

 烈夏は1回永遠亭で休みましたが、あの程度で治るダメージじゃないってことですね。

 本人は回復した気でしたが、実際はダメージが蓄積されています。

 さて、残るは黒葉、天音、雪姫の3人。

 果たしてこれで勝てるのでしょうか?

 それでは!

 さようなら
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