それでは前回のあらすじ
黒葉対天魔。
黒葉は盗賊と戦った時のことを思い出し、自分の目で自分を操ろうとする。
しかし、天魔には及ばず、ピンチに。だが、天音が言霊で黒葉を操ることで何とか窮地を脱することが出来たが――?
それではどうぞ!
side黒葉
俺に《言霊》を使った瞬間、天音の声がガラガラになった。
どういうことだ?
まず、天音の能力って意思のある相手には効かないはずじゃ無かったか?
それに、天音の喉が潰れてしまったみたいだ。あれではまともに声が出せず、《言霊》を使うことも出来ないだろう。
「どういうことだ?」
「天音はお前らに自身の能力は意思のある相手には効かないと言ったみたいだが、半分正解、半分不正解っていう感じだ。もちろん、基本的には効かない」
喉が枯れてしまって喋れない天音の代わりに天魔が天音の能力の説明を開始した。
「正確に言えば、天音の能力は人にも効く。だが、それをやるためには代償が必要だ」
「代償?」
「まず大量の霊力を消費することになる。それこそ、天音の霊力をすっからかんにするほどの。さらにその霊力に喉が耐え切ることができず、一時的に喉が潰れてしまう。1日経ったら回復するが、故にこれは1日1回のみの奥の手という訳だ」
つまり、今の天音は喉が潰れているだけではなくて霊力まで枯渇してしまっているという事か。
霊力が枯渇したら動けなくなってしまう。そうなることがわかっていながら天音は俺を助けるために《言霊》を使ってくれたのか。
俺が不甲斐ないばかりに天音にそんな奥の手を使わせる羽目になってしまった。
本当に情けない。
昔から俺は弱かった。
俺たちは5歳になったら強化プログラムを受けさせられる。だが、あれの恩恵を受けられなかったのは俺だけだ。
能力だって銀河家の中で俺だけが全然使えなかった。
能力を認識できたのはココ最近だ。
俺はいつだって落ちこぼれだ。
でも、それでも……。
今だけは勝ちたいんだ。
銀河天魔。俺の実父。最強の敵に勝ちたい!
天魔に勝てるなら、大切な人たちを守れるなら俺は何でもする。
天音に救われたこの命、無駄にはしない!
「……なぁ、銀河一族には
「それがどうした?」
「なら、俺にもあるだろ」
――
思い出せ。今までの事を。
俺だって銀河一族だ。俺にだって
自分の中に眠る力を探り出す。
「力を貸してくれ、フランドールっ! 禁忌《フォーオブアカインド》」
力を使うと、俺の周囲に3人の俺の分身が出現して俺本体を含めると4人に増えた。
前にフランドールがゲン戦で使っていた技だ。
前に1度、フランドールが暴走しそうになった時、俺が吸血をすることで暴走を沈めたことがあった。
今思うと俺にはこの力があったから暴走で高まった力を奪ったことで静まったってことなんだろう。
なら、俺には能力がフランドールの能力、『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』が使えるようになっているはずだ。
この使える能力の強さは摂取した血の量によって変わってくる。俺が吸った血の量はそんなに多くないからそこまでの出力は無いし、フランドールほど使いこなすことはできないだろう。
でも、いろいろな戦い方が出来るのはでかい。それにフランドールの能力は俺の火力の底上げが出来る。
確かにこの場でまともに戦えるのは俺だけだ。母さんはサポートだし、天音は能力を使えない。父さんはもう動けないだろう。
でも、俺は1人じゃない。俺には仲間がいるんだ。
今までの経験を全て無駄にするな。余すことなく全て天魔にぶつける。
あんたが落ちこぼれの烙印を押した少年はこんなに強くなったんだぞと見せつけてやる!
瞬間、4人同時に天魔へと突っ込んだのを見て天魔も剣を構えた。
本体では無い、A、B、Cの俺が順番に攻撃を仕掛けていくが、俺の攻撃力では天魔の防御を突破することは容易ではなく、簡単にあしらわれてしまう。
でも、この力を使って気づいたが、分身したからと言って力は分散せず、そのままの力で人数を増やせる。
なら、攻撃力問題は簡単に解決できる。
Aの俺と一緒に俺も刀を構え、双剣を発動させる。
本来、俺は自分の攻撃力の2倍までの攻撃力しか出せない。双剣が俺の最大打点だからだ。
だが、この《フォーオブアカインド》を使っていたら俺は4人にまで増える。
つまり、俺の攻撃力は4かける2で最大8倍までの攻撃力を出せる!
天魔も当然警戒しているため、俺とAが手を組むことは阻止しようとしてくるだろう。
だが、それをさらにBとCが阻止する。
俺とAにばかり構っていたらBとCに攻撃される!
俺とAは同時に地面を蹴った。
でも、双剣が使えれば十分だ。
天魔は剣を構えて俺達のことを迎え撃とうとしてきている。
なら、それを後悔させてやる。
俺とAは同時に叩きつけるように刀を振り下ろした。
「「だぁっ!」」
「ぐっ!」
俺とAの双剣の攻撃を同時に剣で受けた天魔はさすがに衝撃が大きかったのか、後退りをして少しよろめく。
これだけやっても少しよろめくだけってのはかなりのショックだが、もちろんこれでダメージを与えられるとは思っていなかった。
「なっ!」
天魔も気がついたようだ。
本体の俺は叩きつけた時の衝撃を利用して真上へと飛び上がった。
近くには俺が複数いるんだ。霊力探知も上手く機能していないんだろう。反応に遅れていた。
だが、それが命取りになる。
ここで懐から取り出すのは魔理沙から貰ったスペアのミニ八卦炉。
そしてフランドールの能力を解除すると今度は違う能力を発動する。
「魔理沙、力を貸してくれ」
魔理沙の魔法の火力に頼る。
魔理沙よりは火力が劣るし、これでノックアウトできるとは思っていない。
でも、父さんが決死の覚悟でつけたあの傷口に狙い打てばタダでは済まないだろう。
「っ! 恋符」
さぁ――どうなる?
「《マスタースパーク》」
瞬間、大気が揺れた。
ミニ八卦炉に集約した俺の霊力は一気に解放され、天魔へと頭上から降り注ぐ。
魔理沙よりは威力が下がっているはずだが、それでも大気を揺らすほどの威力が出た。
周囲にあった瓦礫等は衝撃波でぶっ飛ばし、地面をえぐっていく。
これでノーダメージとかだったらさすがに泣くぞ。
砂埃が舞い上がって《マスタースパーク》が直撃した場所が見えない。
だが、その次の瞬間、その砂埃の中から1人の人影が飛び上がってきた。
「マジかよ」
思わず驚嘆の声を上げてしまう。
天魔だ。天魔が砂埃の中から飛び上がってきて俺の上を取ってきた。
大剣を真上に構え、俺を叩き切ろうとしてくる。
俺の《炎天下》と同じように上からの落下攻撃は通常よりも威力が高くなる。
あれだけは受けちゃダメだ!
「《雷神剣・地》」
「恋符《マスタースパーク》!!!」
間一髪。俺は寸前のところで《マスタースパーク》を真横に射出することによって反動を利用して回避することに成功した。
俺が回避して地面へ叩きつけられる大剣。
普通なら剣の方が地面に負けるのだが、大地に亀裂が入っており、剣の方は無事だった。
あれをまともに食らってたら俺は戦闘不能になっていた。
着地して天魔のことを観察してみるが、あんまりダメージが入っている気がしない。
魔理沙の《マスタースパーク》なら今ならダメージは入ったかもしれないけど、俺の弱体化された《マスタースパーク》じゃこの程度か……。
もっと、もっと強くならなくちゃ勝てない。
俺自身の力もダメ。フランドールと魔理沙の技を駆使してもダメ……どうしたら……。
やっぱり、俺にはみんなを守ることなんて無理だったのか?
嫌だ。そんなのは嫌だ。
子供みたいだと思われるかもしれないが、そんなのは嫌なんだ。
もうこれ以上失うのは……。
「姉ちゃん、俺はどうしたらいいんだ……」
その答えが帰ってくるはずは無い。でも、俺の中での最強は姉ちゃんだったんだ。
だから俺はこの場面でもすがった。
すがったところで姉ちゃんは死んでいる。だから助けてくれるはずもないが、なんだか姉ちゃんに助けを求めたらなんとかなる気がしたんだ。
頼む姉ちゃん、俺たちを、助けてくれ!
――
瞬間、力が湧いてくるような気がした。
心がポカポカする。安心する。
まるで姉ちゃんに抱きしめられているかのようだ。
そうか、姉ちゃんはずっと俺の事を見守ってくれていたのか。
『行ける?』
うん、行くよっ!
覚悟を決めると、周囲に冷気が放出され、降っていた雨が雪となって吹雪き始めた。
これは姉ちゃんの能力だ。でも、
これは姉ちゃんが俺に託してくれたんだ。
手に握る刀、『吹雪』の模様が光り始め、強力な刀へと変化を遂げる。
「なんだこの威圧感は! それに、その姿は」
言われて俺は刀身に写る自分の姿を見てみた。
するとそこに写っていたのは白髪、蒼眼になった俺の姿。まるで姉ちゃんみたいな髪、目の色だ。
でも、今なら戦える気がする!
はい!第172話終了
能力喰いとはまた違う己喰いという力。
果たしてその力は一体?
次回明かされると思います。
まだまだ天魔との戦いは続きますよ。
それでは!
さようなら