それでは前回のあらすじ
黒葉が敗北し絶望感が漂う中、最強の助っ人、博麗霊夢が現れた。
霊夢は天魔と互角の戦いを繰り広げる。
そしてついに樹海を解放するのだった。
それではどうぞ!
side三人称
「うーん……」
「ここは……拠点?」
烈夏が目を覚まして少し経過した頃、ついに気絶していたルーミアとフランが目を覚ました。
何故2人よりもダメージが酷かった烈夏の方が先に目を覚まして戦いに向かうことが出来たのかは永遠の謎なのだが、あれは烈夏がおかしいだけである。
鈴仙の治療を受けた2人は既に外傷は無くなっていたが、それでもまだ体は痛む。
「目を覚ましたんですね」
「鈴仙!」
「今の状況は?」
「……あまり芳しくは無いですね。敵のトップが強すぎて戦いの余波でどんどんと患者が送られてきてます。それに、救護班も戦いの余波に巻き込まれてどんどん人員が減ってますね」
大勢居た救護班も残り1/4程度となってしまった。
幸いにも早期治療のおかげで死者は最小限に抑えられているものの、そろそろ人数的にカバーするのが厳しくなってきている。
敵の数は減っているものの、天魔をどうにかしなければこの戦いは終わらない。
治療自体は何とか間に合っているが、このままでは救護が追いつかない。
「……鈴仙、私も救護班のお手伝いにいくよ!」
「私も行く! なんというかじっとしてられないし」
「ルーミアちゃん……フランちゃん……それは――」
救護班というのは戦わないにしろ、直接戦地に赴くことになるのだ。
そのため、死んでしまう可能性もかなり高くなってしまうので、鈴仙はなるべくなら2人をそんな危険な場所に送り出したくはなかった。
だが、2人の目を見た鈴仙は考えを改めた。
「分かりました。2人とも、お気をつけて……」
「うん!」
「わかった!」
鈴仙の返答を聞いた瞬間、2人はベッドから飛び出して戦地へと向かって走り出した。
さすが妖怪。ダメージを感じさせないほどの動きに鈴仙は感心してしまった。
そして祈る。2人が無事に帰ってくるということを。
医療班から離れたら直ぐに瓦礫の山地帯に突入する。
かなり離れた場所でも天魔の攻撃の余波だけでこれ程までに建物が粉砕されているのだ。
この余波に当てられて怪我で済めば良い方だろう。
「この先にみんなが居るっ」
「凄まじい霊力のぶつかり合いを感じるよ」
烈夏と天魔の霊力のぶつかり合い。そして、烈夏の一瞬の霊力の昂りを感じた2人は冷や汗をかく。
まるで目の前に居るかのような圧倒的存在感。
更には黒葉と天魔の霊力と妖力のぶつかり合い。目眩がしてきそうな程余波だ。
そして2人はついに中央区へとたどり着いた。
中央区の建物などほとんどが全壊していて視界が開けている。
そんな中央区からは黒葉と天魔の戦いをよく見ることが出来た。
白髪になった黒葉と笑いながら戦っている天魔。
普段の黒葉とは違って雪を使い、今までではありえないほどのパワーを持ってして天魔と互角の戦いを繰り広げている――そう思われたのだが。
「《電雷宝刀》」
「《雪泥鴻爪》」
2つの王剣がぶつかり合い、今までで最大の余波を生み出す。
「な、何あれ」
「触れてない。触れずに押しあってる!」
だが、それも一瞬のことだった。
黒葉は負けたのだ。
凄まじい威力でぶっ飛ばされてしまった黒葉はそのまま流れの激しい川へと叩き込まれてしまったのだ。
黒葉は吸血鬼。吸血鬼は流水を超えることが出来ないという弱点が存在するため、水の中へと叩き込まれてしまった黒葉はもう自力で上がってくることは出来ないだろう。
それを見てフランは悔しさのあまり、下唇を噛んだ。
フランも吸血鬼だ。そのため、フランが助けに行ったらただただ要救助者が増えるだけ。
それだけではなくこの流れだ。荒れ狂う川に飛び込んだら泳げる人だってどうなるかわかったものでは無い。
救出は絶望的だった。
だが――
「黒葉っ!」
「ルーミア!!」
なんとルーミアは迷わず川の中へと飛びこんだ。
自分もどうなるかわかったものでは無いというのに、それでも飛び込んだのだ。
(黒葉は死なせない! 絶対に死なせない!)
必死に手を伸ばす。
流れが早く、上手く手を伸ばすことが難しいが、それでも手を伸ばして救出を試みる。
さすがにこの流れでは溺れそうになってしまうルーミアであったが、それでも必死に手を伸ばし、そして――
「っ!」
掴んだ。
手首をようやく掴むことに成功した。
そして川から上がろうとしたその時、この流れの中必死に泳いだことによる代償が襲いかかって来た。
ルーミアは足を攣ってしまった。水中で声が出せないだめ、声にならない悲鳴をあげることとなってしまった。
泳ぐ力を失い、川に流されてしまう。
このままではルーミアまで溺れ死んでしまう。ルーミアは焦るが、焦って足が動かせるようになるものでは無い。
なすすべが無いのかと頭を過ぎったものの、直後に水中へ木材が突っ込まれた。
水面を見てみるとフランが木材を持っていて口パクで何かを伝えようとしているのがわかった。
水中にいるルーミアには声が届くことは無いが、何を言っているのか理解したルーミアは力を振り絞って黒葉を抱えながら木材にしがみついた。
「よいしょっ!」
ルーミアが掴まったことを確認したフランは木材を勢いよく引き上げたことで何とかルーミアと黒葉は川から脱出し、陸へと上がることが出来た。
今この場にフランが居なかったら2人とも確実に溺死していたであろう事を考えると青ざめる思いだが、後先考えないほどルーミアは黒葉をどうしても助けたかったのだ。
だが、今のルーミアにとってはそんなことはどうでもよかった。
もっと重要なことがあったからだ。
「黒葉が、黒葉が息をしてない。脈も無い。心臓も止まってる!」
「え!?」
それは最悪の報告だった。
生きるために必要な息も脈も心臓も止まっている。その状況からかんがえられることは唯1つ。
――死――
その1文字がどうしても頭をよぎる。
フランも何度も人の死というのはみたことがある。だが、親しい相手の死というのに直面したことは初めてのため崩れ落ちてしまった。
「そ、んな……」
黒葉はフランにとって親友のような存在だった。
何度も助けられたし、助けたいとも思っていた存在。だが、それが目の前で動かなくなっていた。
ようやくできたレミリアと咲夜以外の心の支え。それが無くなってしまったとなっては精神が崩壊してもおかしくない。
前までのフランだったらまず間違いなく能力が暴走していた。
(いや、まだ死んだとは確定してない。早く処置すれば助かる可能性がある。まずは心臓マッサージと人工呼吸だっけ?)
そこまで考えて黒葉の唇へと視線を落とした。
(こ、黒葉と……ううん……今は緊急時、そんなこと考えてる場合じゃない。やるんだ、フラン。勇気を――え?)
フランがそんな思考を巡らせていると、ルーミアがフランよりも先に黒葉と口を合わせた。
顔が真っ赤になってはいるものの、黒葉を全力で助けることに意識を向けているのだ。
(そう、だよね。躊躇ってる場合じゃないよね)
(黒葉、戻ってきて。お願い!)
人工呼吸をした後、心臓マッサージをする。ルーミアのその姿には一切の躊躇は無く、立派な医療班の一員の姿だった。
決して諦めない。
諦めが悪いところは黒葉もルーミアも同じだった。
「大好きなんだよ、だから死なないで!」
そして再度人工呼吸を行うために口を合わせた直後、ついに黒葉の目がゆっくりと開き、次第にその表情が驚きへと変化した。
はい!第175話終了
目を覚ましたらルーミアにキスをされていた黒葉は一体何を思うのでしょうか?
次回は霊夢対天魔から始まりますが、短そうだったらこの話の続きも書きます。
それでは!
さようなら