【3章投稿中】東方妖滅録   作:ミズヤ

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 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 至高の領域に入った霊夢と天魔の戦い。

 2人とも体力の消耗が激しく、どうにか相手の隙を突いて決定打を叩き込みたいところだった。

 その時、霊夢は体力の消耗と焦りから足をもつらせて絶体絶命に!

 しかしそこで炎を纏った黒葉が飛んできたのだった。



 それではどうぞ!


第179話 親子喧嘩

side三人称

 

 ――狂獣技(ビースト)【獄炎龍・炎帝】――

 

「《天裂く日炎の剣(サンライズ)》」

 

 炎で象られた龍は真っ直ぐ一直線に天魔へと突き進んでいく。

 そんな天魔は今にも超巨大な剣を地面に叩き付けようとしていた。これほどの技が直撃したら周囲に甚大な被害を及ぼすことは明らかだった。

 

 しかし、霊夢は思わず炎の龍に気を取られてしまった。

 細胞が騒いでいる、あれを自分は知っている、そんな感覚を抱いていた。

 

「《雷神剣・絶》」

 

 やがて2つは衝突した。

 雷神と炎龍のぶつかり合い。2つは衝撃波を渦巻き、天高く登っていく。

 まるで竜巻のような凄まじい衝撃波に、至近距離にいた霊夢は吹き飛ばされそうになるが、何とか堪えて竜巻の中へと目を向けた。

 

「っ! 黒葉!?」

 

 そこで気がついた。あの炎龍は黒葉が作り出したものだということを。

 あれほど弱々しかった少年がこれほどのパワーを作りだしているという事実に驚愕し、今度は別の意味で固まってしまった。

 

「てんまぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 黒葉の咆哮と共にいっそう激しく炎が燃え上がり、2人のことを包み込んだ次の瞬間、一瞬で炎が消失しさっきまでの凄まじい衝突はまるでなかったかのように静かな世界が当たりを包み込んだ。

 黒葉の炎も、天魔の雷も完全に消失した。

 

 それから数瞬遅れ、空を覆っていた分厚い雨雲が黒葉の通ってきた箇所からまるで斬られたかのように2等分され、上空の雲が消え始めた。

 それはまるで今までの絶望という闇に光が差しているかのように。

 

「おにい……ちゃんっ!」

 

 今まで長い長い3年を過ごしてきた天音。

 もうずっと空を見上げることはなく、天音の視界に映るのは常にグレーの景色。

 だが、今久しぶりに空を仰いだ瞬間、この長い長い戦いが終わりを告げようとしていることを感じ、景色に色が戻った。

 

「勝って、お兄ちゃん……っ! 全て終わらせてっ!」

 

 喉が裂けようとも潰れてしまった喉をフルに使って叫び声をあげた。

 だが、現実は無情だった。

 

 パキンっ

 

 そんな嫌な音が周囲に鳴り響いた直後、空から刀の切っ先が降ってきて地面に突き刺さった。

 間違いなく刀が折れたものだった。

 そして空から降ってくるというこの状況、考えられることは1つしかなく、それは間違いなく最悪の状況だった。

 

「お、お兄ちゃんの刀が」

「折れた!」

 

 黒葉の手に握られている刀にはもうほぼ刀身はなく、これではもう何も斬ることができない。

 白愛の刀、吹雪は白愛の能力を使うことに特価させた刀だった。白愛の能力を最大限に使えるように作られた刀。

 だが黒葉はこれまで何度も炎を纏わせて戦ってきた。これは想定されていない戦い方なため、刀に対する負担が大きかったのだ。

 そして今回のぶつかり合いにて今までのダメージもあり、限界が訪れてしまったのだ。

 

「はっ、刀が折れちゃ勝負あったな! なっ」

 

 だが、天魔もただでは済んでいなかった。

 《雷神剣・絶》はとてつもなく霊力を消費する究極奥義。だと言うのに黒葉の技とぶつかり合ってしまった。

 《天裂く日炎の剣(サンライズ)》はありとあらゆるものを裂く炎の剣。そう、霊力さえも。

 黒葉の技によって《雷神剣・絶》は霧散し、さらにオマケとして天魔の内に残っていた残り少ない霊力さえも引っ張り出して余分に消費させたのだ。

 つまり今、天魔の霊力残量は極わずか。それも、もう大剣どころか霊力の弾1つ作ることさえできない程にまで減ってしまったのだ。

 

 弱り、霊力も使えなくなった今の天魔の防御力はゼロに等しかった。

 鎧などは全て木っ端微塵に砕け散った。

 今なら確実に勝てる、そう考えて霊夢は再度攻撃しようとお祓い棒を構えたが、直ぐに構えを解いた。

 

「絶対に勝つ。勝つんだ!」

 

 黒葉がまだ倒れていなかったからだ。その目はギラギラと燃えており、刀が無くとも殴り勝つ気満々という様子。

 そしてさらに黒葉の体から再び炎が溢れ出てきた。

 

 ――狂獣技(ビースト)【獄炎龍・炎帝】――

 

 瞬間、黒葉の体を炎が包み込み、まるで鎧のような見た目となって黒葉の体に装着された。

 真っ赤に燃え盛る炎の鎧、それを纏っている黒葉は普通に太陽の下に居るが、全くもってその影響は受けていないようだ。

 

「あの能力は太陽の影響を無効化する? いえ、黒葉自身が太陽になっているからそもそも効果がないって言う方が正しいのかしら」

 

 狂獣技を発動した黒葉と生身の天魔。普通なら戦うまでもなく勝敗は明らかなのだが、それが黒葉対天魔となると話は別だ。

 天魔は恐ろしく強い。対する黒葉は少し前までは雑魚と呼ばれるほどだった。

 

「お前は誰だ」

「俺か? ちょっと見ない間に俺のことがわからなくなったのか? いいぜ、教えてやる。俺は冬夏黒葉、くそ親父ぃ……あんたを倒す男の名だ。よく覚えておけ!」

「ふん、少し見ないうちに言うようになったじゃねぇか、バカ息子!!」

 

 2人は笑いながら最終決戦へと身を投じた。

 同時に2人は駆け出し、拳同士が衝突する。そこには双剣も王剣も何も無い。剣士同士の戦いとは思えない程の肉弾戦があった。

 黒葉が殴ると天魔が防御し、天魔が殴ると黒葉は回避する。

 

 ただ1つ、黒葉にはアドバンテージとして左腕がなかった。そのため、防御することが難しいのだ。

 それでも諦めない。

 

 2人の攻撃がぶつかり会う度に周囲には爆発音にも似た轟音が鳴り響く。

 

「かはっ!」

「ぐっ」

 

 お互いの拳がお互いの顔面にクリーンヒットし、同時に後ずさった。

 2人の戦いは互角。

 力的には黒葉の方が上回っているが、左腕が無いのがかなりの痛手となっていた。

 

「《インパクト》」

「かはっ!」

 

 《インパクト》で加速し、《インパクト》で天魔の顎をアッパーでぶん殴る黒葉だが、天魔も負けじと拳を振りかぶってそれを黒葉に叩きつけた。

 

「がっ」

 

 モロに拳を受けてしまった黒葉は地面に叩きつけられるが、直ぐに体勢を立て直して天魔に蹴りを放った。

 だが、これは天魔に受け止められてしまった。

 お互いにもう余裕などない。どっちが先に倒れてしまったとしてもおかしくない状況。

 限界などとうの昔に超えていた。

 

 だが、2人とも笑っていた。

 

「太陽、なんだか嬉しそうじゃねぇか」

「へへっ、好きな子に好きだなんて言われて嬉しくないやつは居ないさ」

「そうか、じゃあお前とそいつのガキが俺の孫になるって訳か」

「親父も爺さんになるな。じ・い・さ・ん」

「お前、言うようになったじゃねぇか」

 

 言い終わると同時に勢いをつけて投げ飛ばされてしまった黒葉だったが、空中で体勢を立て直すと再び《インパクト》で直ぐに距離を詰める。

 この里の命運がこの1戦にかかっている。文字通り命を掛けた死闘。

 だが、2人ともこの戦いを楽しんでいた。

 

 黒葉が生まれて約10年、初めての親子喧嘩と言っても過言では無いのだ。

 もう2人の道は分かたれている。それでもそこには間違いなく親子の絆というものが存在していた。

 

 あの事件さえ無ければ2人は今でも一緒に幸せに暮らしていた未来もあったかもしれない。

 

「天魔っ!」

「来い、太陽っ!」

 

 2人同時に拳を振り抜いた。

 どっちが勝つか分からないこの勝負。その競り合いを制したのは――天魔だった。

 リーチの違い。それはどうしようも無い体の差だった。

 

 黒葉の拳が届く前に天魔の拳が黒葉の顎にクリーンヒット。そのまま殴り上げた。

 勝負は着いた。そう思われたのだが、黒葉はまだ意識を失ってなどいなかった。

 

 天魔は最後の最後、目を瞑って全力を出して黒葉を殴り飛ばすことは出来なかったのだ。

 ()()()()()()の天魔の内に僅かに残っていた情だった。

 

(俺は物心がつくのが他よりも早かった。確か1歳半だったか。母さんと父さんのやり取りはよく覚えている。暴走しそうになる父さんに母さんはいつもゲンコツを落として止めていた。だから、俺は母さんに変わって父さんにゲンコツを落としてやる!)

 

「終わりだっ!!!! 《インパクト》ぉぉぉぉぉっ!」

 

 上空から降ってくる勢いを利用しての《インパクト》によるパンチは天魔の顔面に直撃した。

 天魔の立っている地面は割れ、クレーターが出来上がっており、これがかなりの威力だということは誰の目から見ても明らかだった。

 普通ならこれで倒せている。だが、天魔は素で防御力がかなり高いのだ。防御力が下がっているとはいえ、まだ耐えることが出来るほどの防御力はあった。

 

(まずいっ!)

 

 視界の端で天魔が拳を構えているのが見えた。

 これがラストチャンス。もうこれ以上の好機が訪れることは絶対にないと考えてもいいほどの好機だった。

 逃すことは絶対に許されない。

 

(この後のことなんて知らない。この後どうなってもいい。この1本しかない腕が吹き飛んだとしても、この命の灯火が潰えたとしても、今この瞬間に全てをぶつける!)

 

 何度も何度も《インパクト》を使用して衝撃を加えるが、それでも倒れる気配は無い。

 そしてついに黒葉はその己の腕が耐え切れる以上の《インパクト》を使用してしまった。

 過剰霊力を溜め込んだものがどうなるか、そんなことは決まっている。

 

「《インパクト》ぉ、《インパクト》ぉ、《インパクト》ぉ、……《インパクト》!!!」

 

 バゴォォォンッ!!!!

 腕が爆発した。

 まるで巨大な爆弾のような爆発力。爆弾とは違うのは周囲への影響はそこまででは無いということ。

 だが、これによって黒葉の腕の骨は粉々に砕け散って曲がってはいけない方向に曲がってしまっていた。もう使い物にはならない。

 

「がはっ」

 

 しかし、これほどの爆発、至近距離にいた天魔も無事では済まなかった。

 ついに天魔はその場に仰向けで倒れ込んでしまい、もう動けないとでも言うように大の字になった。

 

 同時に黒葉も爆発に巻き込まれて意識を失ってしまい、地面に落ちてきていた。

 だが、その表情は安らかなもので満足げな様子だった。

 そんな黒葉を霊夢が走っていき、落ちてきたところを下でキャッチした。

 

 男子三日合わざれば刮目してみよとは言うが、少し見ない間にこれほど成長しているものかと驚きつつも、霊夢の顔はどことなく嬉しそうな感じで、優しい目で黒葉へ目を落とした。

 

「お疲れ様」




 はい!第179話終了

 ここまで長かったですね。

 黒葉の《天裂く日炎の剣(サンライズ)》は力をかき消す力があります。

 吹雪に関しては最初からどこかの段階で手放そうと考えてたんですよね。

 白愛の形見ということで大事なものなのですが、ここで過去と決別するという意味も込めています。

 あと、吹雪を黒葉が使ってもこの先戦っていけないので……。

 確かに狂獣技は手に入れましたが、インフレについていけないんですよね。

 まぁ、ここが既にインフレの最上位みたいな感じではありますが、まだ強い敵は居ますよ!

 ちなみにこの2章まではこの妖滅録の中でも長い長いプロローグの様なものです。

 本番は3章からなのでお楽しみに!

 あ、2章はもう少し続きます。

 それでは!

 さようなら

2章ではどの戦いが好きでしたか?

  • 芭露&恋 戦
  • 玲音 戦
  • 月刃 戦
  • 天魔 戦
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