それでは前回のあらすじ
黒葉にも語られる運命の決戦の真実。
歩夢から新生博麗選抜チームの結成を頼まれた。
果たして黒葉は新生博麗選抜チームを作ることは出来るのでしょうか?
それではどうぞ!
side黒葉
「ここは……」
目を覚ますとそこは医療班拠点内のベッドだった。
そうだ。俺は戦いの後、気を失ってしまって、歩夢さんに呼び出されて……。
その間に誰かが運んでくれたのか。
全身が痛い。だが、それ以上に異常なまでの気だるさを感じる。
霊力、妖力が欠乏してるんだ。無理して使いすぎたせいで力が無くなってしまっている。
「あら、目覚めたのね」
「この声は――」
声が聞こえて隣へと目を向けてみた。
するとそこには俺のベッドにもたれかかって眠っているルーミアとフランドール。それから、
「は、博麗様!? 来てたんですか!」
「居たわよずっと。あんたが来るまで天魔と戦ってたのだけど、気づいてなかったの?」
全く気づいてなかった。
すごく必死になってたから全く周りが見えてなかったし、博麗様が来てくれるなんて微塵も思ってなかったから自分一人で何とかする気満々だった。
つまり、博麗様が来てくれなかったら俺たちは負けていたって言うことか……。
「天魔はどうなりました?」
「天魔組の奴らなら無間地獄送りになったわよ。あれほどの大罪を犯したのだから当然の結果ね」
無間地獄、それは滞在を犯した者が収容される大監獄。
地獄に存在するらしく、そこから脱獄することは実質不可能。
空間内は登録されている人以外は何の力も使うことが出来なくなり、多くの殺戮妖怪が跋扈する監獄の中へとぶち込まれるのだから脱獄しようとした瞬間に殺されること間違いなし。
ちなみに登録されている人以外は力を使えなくなるのだから侵入者も力を使えなくなってあとは殺されるのを待つのみとなる。
「ちなみに紅魔館を襲撃した炎のヤツも無間地獄送りにしたわ」
「そう、ですか」
でも、とりあえず一段落した。
姉ちゃんの敵も取れたし、天魔達のことも止めることは出来た。
次は五天魔王だ。
「ねぇ黒葉」
「なんですか?」
「前にこの里を襲ったのは炎のヤツだけじゃないかもしれないわ」
「え、それってどういう――」
「さぁ、だけど天魔に聞いてみたら妖怪が襲撃した件は知らないそうよ。私はこれから調べなきゃいけないことがあるから目が覚めたなら行くわよ」
「は、はい。ありがとうございました」
博麗様は忙しそうだから気になることは言っていたけど、これ以上引き止める事は出来なかった。
多分俺が目を覚ますまで見ててくれたんだろう。
博麗選抜チームのことも今後話せばいい。博麗様なら手を貸してくれるだろう。
それにしてもゲンだけじゃないかもしれないってどういうことだ?
まだ姉ちゃんの死にはまだ謎があるって言うのか?
分からない。でも姉ちゃんは今起きてる異変を解決してくれって俺に頼んできたんだ。
もしその異変が五天魔王に関することなんだとしたらこのまま進んでいけば何かわかるかもしれない。
ちらりと横へ目を向けてみて俺はため息をついた。
やっぱり夢じゃ無かった。しっかりと刀身のど真ん中で吹雪はポッキリと折れてしまっていた。
いくら激しい闘いだったからって折れるのは俺の力が至らなかったせいだ。
姉ちゃんの形見だと言うのにこんなにしてしまったことにかなりの罪悪感を覚える。
「あれ、黒葉……」
「おはよう……」
そこで俺のベッドにもたれかかっていた2人が目を覚ましてまだ寝ぼけているのか目をこすっている。
2人もまたずっと俺の事を見てくれていたんだろう。
「って、黒葉!?」
「目が覚めたの!?」
やっと意識が覚醒したらしい。2人は驚いて飛び上がった。
「ああ、お蔭さまでな」
「良かったよ……」
「うん……白愛さんの話によるとかなり深刻な状態だったみたいだから」
「白愛? 姉ちゃん?」
はて、俺の姉ちゃんは目の前でしんでしまったはずだが……とそこまで考えて思い出した。
俺は一時期記憶退行してしまって容姿が似ているうさぎさんを姉ちゃんだと思って接していたからみんな俺に合わせてうさぎさんを姉ちゃん扱いしてくれていたんだった。
かなり色々苦労をかけてしまったらしい。
でもでも! うさぎさんと姉ちゃんの違いって言ったら頭に耳が生えてるかどうかしかないからてっきり姉ちゃんがそういう格好をしてるんだと思ってたんだよ! 間違えても仕方がないと思います!
「心配かけたな……ごめん。見ててくれてありがとう」
そう言って2人へと手を伸ばそうとする。が、そこで気がついた。
自分の右腕の存在に。
なんで俺の右腕は存在しているんだ?
包帯が巻かれていて軽く固定されているから大きく動かすことはできないのだが、それでも俺の右腕が存在していることはおかしい。
俺は確実に腕が爆発によって吹き飛んだはず。だと言うのにこれだけのダメージだなんて……。
そんな風に自分の手をまじまじと見ているとルーミアとフランドールは不思議そうに俺の事を見てきた。
そうこうしているとこの部屋に新たな人が入ってきた。
「よっす。見に来てやった……って目が覚めてるんじゃねぇか」
「お邪魔します」
威迅と茉衣さんだった。
茉衣さんの方は右足に包帯をぐるぐると巻いて松葉杖をついて歩いている。
威迅の方は両腕が包帯でぐるぐる巻きになっていて何も掴めなさそうだ。
この戦いのダメージはかなり大きそうだが、2人は多分俺よりもずっと早く目が覚めてたんだろうな。
「3日だ」
「え?」
「お前が起きるまでの期間。起きるまでずっとそいつらと茉衣が泣いてたぞ。俺たちはその日の内には目を覚ましたからな」
「そんなに……心配かけたな。……その傷、大丈夫なのか?」
「ん? ああ、これか。最初は俺も心配だったんだ。左腕は壊死して右腕は斬り落としたからな。だけど、問題ないらしい。最近の薬ってすげーんだな」
うーん。それはその薬がおかしいだけだと思うんだけど。
ってか薬だけでそれほどの傷が治るんだとしたら、果たしてそれは人体に使っても大丈夫な薬なんだろうか。なんか変な副作用とかない? 大丈夫?
「私も足が壊死しちゃったんですが、あと2日もすれば感知するらしいです」
だからおかしいって。
なるほど、合点がいった。俺がなぜ腕は無くなっていないのか。それは俺も同じ薬を使って治療されたからか。
俺の腕も痛みはそれほどない。もしかしたらもう少しで治るのかもしれないな。
見てみるとルーミアとフランドールの2人には目立つところに傷はあまりないが、服の隙間からチラチラと包帯が見える。
多分2人も戦ってくれていたんだろう。
今回はみんな居なかったらこの程度の被害では済んでいなかったな。
里はほぼ全壊。だけど、死人はあまり見かけなかった気がする。
「賑やかになったと思ったら目が覚めてたのね」
「あ、良かった〜。目が覚めたんですね」
さらに師匠とうさぎさんが現れた。
この部屋の容量的にかなり限界なんですが。ここだけ人口密度高すぎるんだけど。
師匠は包帯で右目を覆っていた。あれもこの戦いのダメージだろう。
この里出身という訳でもないのに力を尽くしてくれたみんなには本当に頭が上がらないな。
「皆さん酷いダメージで、あと少し遅れていたら皆さんは今包帯を巻いている箇所を失うところだったんですよ。薬が効くのは出来て1日までの傷ですから」
「本当にありがとうございます」
俺がうさぎさんに対して礼をするとうさぎさんはニコッと微笑んでくれた。
正直この戦いはこの人が居なかったらまず間違いなく負けていた。この人が居たからこそ戦いながら回復し、ゾンビアタックが出来たんだ。
そんな感じで俺がお礼の言葉を言っているとやっと理解したルーミアとフランドールが俺とうさぎさんを交互に見る。
「黒葉、記憶!」
「記憶戻ったの!?」
「ちょっ、近い近い! 戻ったけど近いって!」
2人は興奮して身を乗り出してくる。俺が少しでも前に出たらぶつかってしまうくらいの距離だ。
俺が指摘すると自分の距離に気がついたのか2人は顔を赤らめて元の位置へと戻って行った。
「私の本当の名前は鈴仙・優曇華院・イナバって言います。よろしくお願いしますね、黒葉君」
「はい! こちらこそよろしくお願いします」
また何度かお世話になるかもしれないしなと、そんなことを考えているとルーミアとフランドールがジト目で俺の事を見てきた。
いや、別に好きで怪我してるわけじゃないんだよ?
ただ、結果的に怪我してるだけで……。
「黒葉君、君はもう数日安静です。消耗が著しいので」
「あとあれはもうやっちゃダメよ?」
「え、博麗様?」
さっき部屋を出ていったはずの博麗様が何故か戻ってきた。
「腕を爆破させるやつ」
「あー、すごい威力が出るんですよね」
「差し詰め《インパクト・バズーカ》と言ったところね」
「《インパクト・バズーカ》か……よしっ! いてっ!」
博麗様に頭をグーで叩かれてしまった。
「あんたまた馬鹿なことを考えたでしょ? もうあれは使うんじゃないわよ」
釘を刺されてしまった。
でもまぁ、確かにあんな戦い方を続けていたら命がいくつあっても足りないからな。自重しよう。
あと、俺が死んだら悲しむ人がいるし、死なない闘い方っていうのも考えておいた方がいいかもな。
「話はそれだけよ。あと、追加のお客さん」
「良かった、目が覚めたようで」
「あらあらモテモテね、黒葉君は」
「お兄ちゃーんっ!」
「ぐえぇっ!」
父さん、母さんに続いて入ってきたのは天音。
凄まじい勢いで突撃してきたため、腹にタックルがもろに直撃。
腹の中は空っぽのはずなのに何かが出そうになった。今の弱っている体には中々きつい。
でも、良かった。天音の喉も治ったみたいだ。まぁ、あれは元々1日で治るって話だしな。
「父さん、母さん、心配をかけてすみません」
「本当よ」
「お前、この里を出てから無茶するようになったんだな。男としては俺は素晴らしいと思うが、残されるヤツらのことも考えてやってくれ。以上!」
「はい、気をつけます」
元々父さんは誰かに説教するのは得意じゃなかった。だから簡潔に言ってきたんだろう。
そんな話をしている間に博麗様は再び出ていってしまった。あの人はやっぱりかなり忙しそうだな。
「それで、黒葉はここに残るの? それとも、その……こうまかん? っていう所に帰るの?」
「あ、そうか」
今の俺には帰る場所が2つある。
1つはこの里、ここに残って復興を手伝ってここに住むっていう案。もう1つは紅魔館だ。あそこなら多分いつでも俺の事を歓迎してくれる。
多分姉貴なんかは俺が帰るのを待ってくれているだろう。
どっちも俺にとっては大事な場所だ。
でも、それでも選ぶとしたら――
「俺、紅魔館に戻ります。今の俺の居場所はあそこなんで」
「っ!」
「あそこにはいい人がいっぱい居ます。みんな俺の大切な人で、一緒にいたいと思える。あそこでの生活は、なんて言うか……師匠とフランドールの前で言うのは気恥しいけど、楽しかったんです」
紅魔館に行ってから色んなことがあった。
最初こそ俺はみんなを殺そうと考えていたが、そんな考えはいつの間にか溶かされていた。
みんな俺のことを心配してくれる、助けてくれる。
あそこは俺にとってかけがえのない宝物だから。
「ごめんなさい」
「何を謝る必要があるの? それが黒葉の選んだ道だって言うならお母さんは止めはしないわ。黒葉の事を応援してあげる。ただ、たまに顔を見せに来てくれるとお母さん嬉しいわ」
「っ! ありがとう……」
家族の温もりってこんなに暖かいものだったか。
たった数ヶ月離れただけだと言うのに母さんの温もりはまるで数年間も離れていて渇望していたものかのようにすごい暖かい。
正直反対されるかもと思っていた。だけどこの返事を聞いてそれは杞憂だったとわかった。
母さんも、そして口は開いていないが父さんも優しい目を向けてくれている。2人とも、俺が進む道を応援してくれているんだ。
迷う必要はなかった。俺が行きたい道を素直に伝えればそれだけでよかったんだ。
凄く嬉しい気持ちになって浮かれていた。
ただ、俺は気がついていなかったんだ。たった1人、表情を曇らせている少女がいるということに。
そして、この選択によって俺がとんでもない事件に巻き込まれることになるということに……まだ気がついていなかった。
はい!第182話終了
これにて2章完!
ここまでご愛読いただき、ありがとうございました!
さて、次回から3章に入る訳ですが、軽く予告的なことをします。
2章の序盤の方で触れていた伏線、あれを3章で回収します。
まぁ、紅魔館に咲夜が居ない日の話ですね。
招かれざる客が紅魔館へと訪れます。
さて、その結末は如何に?
3章でも新しく東方キャラが登場します!
ただ、2章よりは少ないかもですね。
さて、紅魔館に帰っても休む暇は無いですよ。
事件に脅かされない日常パートは3章が終わるまでありません。
では、3章もお楽しみに!
それでは!
さようなら
2章ではどの戦いが好きでしたか?
-
芭露&恋 戦
-
玲音 戦
-
月刃 戦
-
天魔 戦