それでは前回のあらすじ
ついに完治した黒葉。
しかし、折れてしまった『吹雪』を直せる手段は存在しない。
そこで威迅がなんと『吹雪』を超える一作を作り上げて見せると宣言した。
果たしてどんな刀が出来上がるのか?
それではどうぞ!
side黒葉
翌日、俺たちは人里から旅立つために入口に集合していた。
あれほどボロボロになっていた入口も天音の能力によって綺麗に元通りになっており、あとは住民たちだけでも直せるような小さいものばかり。
俺は体がボロボロ過ぎて鈴仙さんに外出すらも禁じられていてあまり見れていなかったが、これほど綺麗になるのかと少し感動すら覚えている。
戦っている最中はここら辺のものは全て木片になっていたはずなんだけどな。
「思ったより長く紅魔館を離れることになってしまったわね。荒れてないと良いのだけど……」
「あはは」
紅魔館には妖精メイド達が大勢働いているが、かなり人間や妖怪と比べると知能が劣るらしく、定期的に師匠が見に行かないと荒れていることがあるらしい。
それに師匠が居なくなったら料理当番が居なくなる。
一応パチュリーと美鈴は簡単な料理くらいなら作れるらしいが、あの2人で紅魔館組全員分の料理を賄うと言うのはかなり酷な話だ。
常人には師匠と同じような仕事量をこなすのは不可能なのだ。
「本当に残らなくてよかったの?」
「ここ、黒葉が暮らしてた人里なんでしょ? 友達とかも居るだろうし」
俺が紅魔館へ戻ることに対してフランドールとルーミアが心配そうに言ってくるが、これに関してはもう決めたことだ。
「あぁ、確かにここにはいっぱい思い出があるけど、でも思い出ばかりに縋ってちゃダメだと思うんだ。今の俺の帰るべき場所は紅魔館で、やるべきことが俺にはある」
「そっか。黒葉がそう決めたなら大歓迎だよ」
「黒葉もこれで立派に紅魔館メンバーの一員だね!」
俺たちが揃って帰るのを姉貴やパチュリー、美鈴達が待っててくれてるだろうからな。
俺の事を助けに来てくれて、こんなに長く俺の記憶を取り戻すために付き合ってくれて尚且つ、一緒にこの里を守ってくれた皆には頭が上がらないな。
「黒葉」
そこで威迅が声をかけてきた。
「威迅?」
「黒葉、お前は戦いの才能がない。その体は俺たちのように戦うことに向いていない。それを肝に銘じておけ」
「あぁ、それは自分自身でもよくわかってる」
「お前は雑魚だ。だけど1つだけ俺も認めていることがある。それはお前のその目だ。お前の目は極めれば最高の強みになる。それを忘れるな」
「お、おう」
まさかあの威迅が俺にアドバイスをしてくるとは夢にも思っていなかったため、感謝よりも先に驚愕が来てしまった。
「あと、刀は代わりにこれ使ってろ。そいつは壊しても良いし、返さなくてもいい。好きに使え」
「ありがとう!」
威迅が手渡してきたのはごく普通の刀。業物でもなければ粗悪品でもない。
一般の刀だ。
「あと咲夜、頼まれてたやつだ。にしても、お前にこれは必要なのか?」
「今回の戦いで嫌という程痛感しましたから。私は接近されたら弱いって」
「月刃ほど速く接近してくる奴もそうそう居ないだろうがな」
そう言って威迅が師匠に手渡したのは鉄の籠手だった。
師匠の手が入れやすいように大きさが調整されており、腕部分にはナイフホルダーが取り付けられている。
まさに師匠のために作られた籠手と言った感じだ。
にしても珍しい。
威迅は基本的に相手の名前は呼ばず、特徴で呼ぶ節がある。師匠ならメイドだったはずなんだけど……。
俺なんて雑魚だし。まぁ、機嫌がいい時なのか分からないけどたまに名前で俺の事を呼んでくる時はあるけど。
「お、お兄ちゃんが名前で呼んでる!?」
同じくそれに茉衣さんも反応したようだ。
「お兄ちゃんは認めた相手と家族しか名前で呼ばないのに!」
そういう事か。
今までその違いがわからなかったけどようやくわかった。
つまり威迅は師匠を認めたって言うことか。
あ、なるほどね。
「おい茉衣、余計な詮索はするな。俺は咲夜の実力を認めただけだ」
「そういうこと言うんですね。あれだけ激しかったのに」
「戦いがな!」
「初めての共同作業」
「月刃と戦ったことな! 俺とお前で共闘しただけじゃねぇか!」
なんか師匠ってすげぇな。完全にあの狂犬、威迅を手玉に取ってる。
でも、なんか安心したな。
ちょっと前まで修羅って感じがしたけど、なんだか戦いの後から雰囲気が柔らかくなった。
多分威迅は長年背負ってきた荷物をやっと下ろせることが出来たんだろう。
多分茉衣さんも安心している。あの2人ならこの先上手くいくと思う。
「父さん、母さん、俺行くよ」
「あぁ、元気でな」
「風邪をひかないようにね」
「うん。それと、たまに顔を見せに来られるようにするよ」
「楽しみにしてる」
「皆さんと仲良くやるのよ」
「わかったよ」
父さんは何故か俺よりもダメージが酷いのに俺が完治していないというのにすでに完治してバリバリ働いている。
やっぱこの人化け物だ。
あの娘にしてこの親ありってことだな。化け物の親は化け物なのかもしれない。
姉ちゃんも異常だったからな。
「ちょっと! 誰か忘れてないですか!?」
俺たちが里を去ろうとした瞬間、里の方から声が聞こえてきて俺たちは全員で声の聞こえた方へと視線を向けた。
するとそこには慌てて走ってきている天音の姿があった。
天音はここに来てなかったからこの里に留まるのかと思っていたんだけど。
「はぁ……はぁ……あ、あたしも連れてってよ!」
息も絶え絶えで全力疾走してきたというのが伺える。
そういえば天魔組の連中は全員無間地獄行きになったみたいだけど、天音だけは天魔組の連中に加担しなかったから連れていかれなかったんだよな。
でも、これに関しては俺たちだけで決められるものでも無い。
最終決定権は主であるレミリアにあるのだ。
だからどうしようかと思って師匠へ視線を向けると師匠は優しく微笑みながら頷いてくれた。
まぁ、断られることは無いか。
むしろ姉貴のことだから妹が増えて嬉しい位に思いそう。
「んじゃ、主に掛け合ってみるか」
「やったーー!」
天音は今まで1人で頑張ってきたんだ。これくらいのわがままは許されてしかるべきだろう。
『元気でなーーっ!』
こうして俺たちは里を後にした。
俺たち紅魔館組は紅魔館へ、鈴仙さんは途中まで一緒で途中から永遠亭へ帰る。
帰り道が長いため、何日かかけて歩く。
途中、餞別として貰ったお菓子や食料なんかをいただく。
4日ほど歩いたところで紅魔館と永遠亭の分かれ道へとたどり着いたため、ここで鈴仙さんとはお別れだ。
「まぁ、最初は師匠に命令されて同行しただけでしたけど、なんだかんだ楽しかったです」
「こちらこそ、楽しかったわ」
鈴仙さんと師匠の2人は今回の戦いを讃え合うように握手を交わした。
「また何かあったら永遠亭にいらしてください。いつでも歓迎しますので!」
「えぇ、その時はぜひ」
そして俺たちが見送る中、鈴仙さんは永遠亭への帰路に着いた。
お互い姿が見えなくなるまで手を振り合う。
永遠亭と紅魔館の距離はそこまででもないため、またすぐに来ようと思えば来れるだろう。
今生の別れという訳では無い。なのに今までずっと共に行動していたせいか、別れるとなると非常に寂しく感じた。
そして鈴仙さんが見えなくなってから俺達も紅魔館へ歩き出す。
鈴仙さんと別れた時間帯が夕方頃だったというのもあり、1晩挟んでようやく紅魔館へと帰ってきた。
いつ見ても目に悪い真っ赤で大きな建物。
それを囲うように立てられた外壁と大きな門。そしてその門前で何故か寝ている門番の美鈴。
いつも通りに師匠が制裁を加えるのだろう。そんなことを考えながら浮き足立って紅魔館へと歩いていく。
そしてついに俺はその紅魔館を視界に捉えた。
「っ!」
が、俺たちは
確かにそこには真っ赤なものが存在していた。だが、それらは全て
門も木っ端微塵に破壊されており、まるで以前の面影が存在しない。
庭も焼け野原となっていて、美しく咲いていた花の面影もない。
ゲンと戦った時はこれほどまでに崩壊しなかったはずだ。
「一体なにが……」
はい!第184話終了
さて、3章スタート!
黒葉達はゆっくりする暇も無く次の事件に遭遇。
なんと紅魔館が崩壊してしまいました。
一体何があったのか?
それでは!
さようなら