それでは前回のあらすじ
黒葉達一行は鍛冶師の人里での戦いも一件落着し、帰るべき場所へと帰ってきた。
黒葉達は紅魔館へ、鈴仙は永遠亭へ。
そんな黒葉達が帰ってきて目にした光景とは、破壊し尽くされた紅魔館だった。
それではどうぞ!
side黒葉
元々の紅魔館の影も形もない。
そこに存在するのはただの瓦礫の山。どんなことがあったらあれほど大きく頑丈な作りをしている紅魔館がこれほどまでに破壊されてしまうのだろうか。
確か前に聞いた話だとたまにフランドールが能力の制御を誤って暴走させてしまうことがあるからかなり頑丈に作られているって話だったんだが……。
「酷いわね」
冷静にそうつぶやく師匠だったが、その声色からは動揺が隠しきれていなかった。
長年レミリア達と暮らしていた思い出の場所なんだ。そりゃーショックに決まっている。
俺たちは駆け出した。
こんな状態なんだ。みんなが無事だとは思えないが、せめて生きてて欲しい。そうしたらきっと永琳先生が何とかしてくれるはず、そんな希望を抱いて紅魔館だったものの敷地内へと足を踏み入れた。
建物が破壊されているだけではなく、あちらこちらにクレーターが出来上がっている。間違いなくここで激しい戦いがあったという証拠だ。
みんな、無事で居てくれと必死に願いつつ、駆け回る。
そして見つけた。焼け野原となって地面がむき出しになっている箇所に倒れ込んでいる女性2人。
紫色のっパジャマと緑のチャイナドレス。あれは間違いない。パチュリーと美鈴の2人だ。
それを認識した瞬間、俺は今までに無いくらいの猛ダッシュで駆け寄った。
まだ2人がどうなっているのか分からない。最悪の想像もしてしまう。
2人がそうそう簡単に殺されるわけが無いのは知っている。でも、絶対じゃない。
くそ、くそ、くそ、どうして、どうしてこんなことに……。
「パチュリー! 美鈴!」
とにかく2人の安否を確認するのが先だ。
しゃがんで2人の手を取ると手首で脈の確認をしてみる。
間違いなく弱ってはいるが脈はある。まだ死んではいない。気を失っているだけと言った感じだ。
妖怪の自己治癒能力的にこの状態なら自然と回復すると思うが、念の為に永遠亭へ連れて行った方がいいか。
「黒葉、誰か見つけた――パチュリー様、美鈴!?」
ここで師匠もパチュリーと美鈴に気がついたようだ。
「酷い状態だけど、大丈夫。浅いけど息もある。でも、念の為に永遠亭に連れて行った方がいいかもしれない」
「そう……良かった。なら、急いで永遠亭に」
「うー……ん」
「っ! パチュリー!」
「っ! パチュリー様!」
師匠がいつもの瞬間移動(仮)で永遠亭に連れて行こうとパチュリーを抱えた瞬間、パチュリーがどうやら意識を取り戻したようで、薄く目を開けた。
まだぼんやりしているのだろう。焦点が定まっていない感じがするが、何となく自分が今、咲夜に抱えられていると言うことはわかったのだろう。ぎゅっと咲夜の服を握りしめると、声を絞り出した。
「咲夜、レミィが……レミィが」
「お、お嬢様がどうされたんですか!?」
「レミィが連れていかれた……」
パチュリーが絞り出した言葉、それはとてもとても衝撃的すぎて俺たちはしばらく頭が動かなくなり、固まってしまった。
思考が追いつかない。
姉貴が、連れて行かれた? 誰に? 何のために?
ただでさえこの破壊された紅魔館、そして被害者が居ないかという心配、この2つがあるというのにさらなる情報が追加されて頭の中はパンク寸前だった。
だが、俺よりも先に思考が回復した師匠はパチュリーに問いかけた。
「誰に……連れていかれたんですか」
「そうね……あれは、化け物としか形容できない程の奴だったわ。奴はちょうど1週間前、1度ここに現れた。スーツ姿のふざけたヤツだったわ」
side三人称
1週間前。
この日、紅魔館は騒然としていた。
レミリアの予言ではこの日、招かれざる客がやってくる。
美鈴は警戒し、珍しく門前で眠っていない。パチュリーもいつでも戦うことができるように入口前で魔導書を手に構えていた。
そしてあろうことか主であるはずのレミリアがパチュリーと共に構えていたのだ。
確かにレミリアはこの場の誰よりも強い。しかし、主がやられてしまったら紅魔館の一大事のため、基本的には後ろに下がっているものだ。
「レミィ、そんなにそいつはやばいの?」
「そうね。正直全力を出さないと5分と持たずに全滅するわ」
「そんなに……」
「それに今は咲夜もフランも居ない。私たちが負けたら紅魔館はおしまいよ」
レミリアは基本、自信に満ち溢れている。そのため、弱気なことを言うことっていうのは滅多にないのだが、今回ばかりは自信が無いと言いたげな発言をした。
その事で本当にやばいのだとパチュリーは察する。
時刻はお昼すぎ。
まだまだ日が高いこの時間に襲撃など、考えにくいものだが、それが実力に自信があるということの証明だ。
すでに妖精メイドたちは非難させており、もう紅魔館にはこの3人しか残っていない。妖精メイドたちも戦えないこともないが、この戦いにおいては足手まといにしかなりえないからだ。
(っ! 来た)
突如、この場にいる全員が不気味な気配を感じ取り、戦闘態勢に入った。
まずは門番の美鈴が相手をすることになる。実力的に無理そうならば無理をすることはなく、下がってみんなで戦う。その手はずだった。
だが、初手からその作戦は崩れた。
「待て貴様っ!」
美鈴の叫び声が周囲に響き渡り、何事かとレミリアとパチュリーの2人は門を注視した。
もし空を飛ぶことが出来る相手なら門をスルーして入ってくる可能性がある。魔理沙がそうだからだ。
だが、今回の相手は違った。
まるで奴はハードルを飛び越えるかのように簡単な動作のみで巨大な門を飛び越えてきたのだ。
すらっとした一人の人間が長距離をジャンプし、レミリアとパチュリーの眼前に降り立ってきたため、パチュリーがすぐさま反応して魔導書を構えたが、突如何かがパチュリーの魔導書に直撃、魔導書を叩き落とされてしまった。
「うーん、いきなり攻撃してくるとは野蛮じゃないかい? 僕は戦いに来たわけではないというのに……」
ひょろひょろでまるで筋肉があるようには思えない肉体、そして黒いマントを羽織って王冠のようなものを頭にかぶっている。
全く見た目では強そうには見えない、だというのに圧倒的強者だと嫌でも認識してしまう。
レミリアが霊力を解き放って圧をかけるものの、全くもって意に介していない様子でへらへらとしている男。
「まずは自己紹介と行きましょうか」
そう言うと男は1歩下がると、王冠を手に取ってまるで執事がするように胸に右手を当ててお辞儀をすると名乗り始めた。
「初めまして。僕は五天魔王が第二席。
「そう、私はレミリア、こっちはパチュリーよ。単刀直入に聞くわ。何をしに来た」
「せっかちだね。でも悪くはない。僕を睨んでいるその目もうん、いいね。君のその顔を歪めるのが楽しみだ。だが、僕は戦いに来たわけじゃない。だから殺気はしまってもらえるかな? 思わず殺してしまいそうになる」
「っ!」
初めて龍から放たれた殺気。
それはレミリアとパチュリーに死というものを眼前に感じさせるのには十分すぎるほどだった。
「さて、本題だったかな。僕はね、君が欲しいんだよ。レミリア・スカーレット」
「は?」
「素晴らしいね、その顔。呆けているその顔も美しい。美しい君の顔をぐちゃぐちゃに歪めてしまいたくなるよ。僕はね、レミリアお嬢様をいただきにまいりました」
「
突如龍の背後から大量の弾幕が降り注いできたため、レミリアとパチュリーはその場から左右へと退避、弾幕が着弾して周囲に砂煙を発生させた。
龍は全く動く気配がなかったため、龍の姿こそ見えないものの、気が付くことなく直撃してしまったのだろう。
「今のうちに! お嬢様、今のうちにお逃げください! 私が時間を稼ぎますから!」
「美鈴!」
弾幕を放ったのは美鈴。
龍が門を飛び越えた直後、慌てて門を開けて龍へ向けて弾幕を放ったのだ。
だが、美鈴の言葉にはレミリアは従わなかった。それはレミリアが主としてプライドを持っていたからだ。こんな簡単に主がこの場から逃げ出すことはできない。
それでも、すぐにこの場では美鈴の言葉が正解なのだと判明した。
「逃げられちゃ困るなぁ」
「なっ!」
周囲に突風が吹き荒れ、弾幕の着弾地点付近に漂っていた砂煙は一瞬にして晴れた。だが、そこから現れたのはダメージを負った龍ではなく、全く何事もなかったかのような佇まいの龍だった。
服すらも弾幕による影響は無。
完全に不意を突かれたはずで全く回避した様子はなかったはずなのにだ。
そして何より気になるのは、龍の周囲の空間がところどころもやもやしていることだ。そこからは龍と同じ霊力を感じるため、間違いなくそれは龍が出しているものなのだが、これがどういったものなのかがわからない。
「全く……僕は戦う気は無いというのに」
「そう。なら、お引取り願えないかしら? 私はあなたと行くつもりはないわ」
「まぁ、今はそういうだろうさ。君も準備は出来ていないだろう。今すぐじゃなくてもいい。1週間後、もう一度来るからその時に返事を聞かせてくれ」
もう来るな。そう思いながらゆっくりと歩いて帰っていく龍のことを3人は見送った。
見逃した訳では無い。どうやっても今ここで倒すことが出来る未来が見えなかったのだ。
絶対について行くわけが無い。
無理矢理にでも連れていこうとするならば絶対に倒してみせる。
今までもそうやってきたから。
でも、現実はそう上手くは行かないものだった。
はい!第185話終了
ついに出てきました。
五天魔王第二席、桑間龍。
五席からではなくいきなり二席が相手です。
龍はめちゃくちゃ強いですよ。
五天魔王の強さ的には
五席<四隻<三席<越えられない壁<二席<越えられない壁<越えられない壁<越えられない壁<一席
という感じですね。
二席は飛び抜けて強いのに、一席との間に越えられない壁が3枚挟まっているというイカレ具合です。
ちなみに龍が美鈴の弾幕を防いだのは加護の力と言った感じです。
五天魔王は全員加護持ちです。
さて、はたして次回はどうなるのか?
それでは!
さようなら