それでは前回のあらすじ
パチュリーから語られる顛末。
龍がレミリアを攫いに来たが、レミリアはそれを拒否した。
だが、龍は1歩も引く気は無い。そのため、戦って追い返そうとしたが、レミリア達は手も足も出なかった。
レミリアはこれ以上みんなが傷つけられるのを見ていなくて自分が犠牲になることでみんなを守ることを決意。
龍について行ってしまった。
それではどうぞ!
side黒葉
「っ!」
話を聞き終わった後、即座に振り返って紅魔館を発とうとしていたら師匠に腕を掴まれてしまった。
そう、俺は取り乱していたのだ。
レミリアはこの紅魔館において重要で、居なくてはいけない存在。それはもちろん俺にとってもだ。
だが、そんなレミリアが攫われてしまった。これが冷静でいられるわけが無い。
今すぐにでも姉貴を追って龍をボコボコにして姉貴を連れ戻したい。
だが、それを師匠に阻止されてしまった。
むしろ師匠なら俺の考えに賛同して一緒に行ってくれるまであるかと思ってたんだけど、まさか止められるとは思ってもいなかった。
まさか、レミリアが攫われてしまったというのに、師匠は何も感じていないのか?
そんな失礼なことを頭に浮かべながら師匠へ振り返ると、俺はその表情を見て思わず固まってしまい、言おうと思っていた抗議の言葉すらも頭の中から吹き飛んで消えてしまった。
今の師匠の顔は今までに見た事ないくらいに怒りに染まっていた。
常に冷静な師匠からは想像もできない表情。ここまで怒りを顕にした師匠は初めてかもしれない。
この顔を見たあとなら少し冷静になれて手首を掴んできている師匠の手が怒りに震えているというのがわかった。
多分師匠も今すぐに飛んで行って龍とか言うやつをボコボコにしたいくらいの気持ちで居るんだろうけど、無理矢理自分を押さえつけているんだろう。
姉貴が居ない今、この場を纏めることが出来るのは師匠しか居ない。
もし今ここで師匠まで俺と同じように取り乱したりなんかしたら終わりだ。
無言の圧、俺に行くなと言っている。
俺のことは一切見てきてないし、ずっと腕の中のパチュリーに視線を落としているけれども、腕からそう伝わってくるようだった。
「その、ごめん。取り乱した。少し頭が冷えた」
「そう、ならいいわ」
姉貴が勝てないほどの相手。そんな相手に無作で突っ込んで勝てるわけが無いのだ。
冷静に考えて理解出来た。
今の話を聞いた限りでは敵は姉貴の能力と同じかそれ以上の能力を持っている。
俺が行っても攻撃を当てることが出来るかどうか。
でも、それでも――っ!
冷静になって状況を理解し、師匠の言いたいことも把握した上で俺は師匠の手を振りほどいた。
「黒葉!」
「ごめん、師匠。やっぱり無理だ」
俺は走り出す。
妖力探知はあまり得意じゃないけど、これほど激しく争った後だ。かなり強く妖力の痕跡が残されている。
それが動線のように連なって俺を導いてくれる。
懐かしくも感じる姉貴の妖力だ。
「黒葉!?」
「お兄ちゃん?」
「どこに行くの!?」
ルーミアとフランがこっちに気づいて声をかけてくるがそんなことよりも一目散に妖力を辿っていく。
2人には多分師匠が説明してくれるだろう。
だから俺はとりあえず姉貴を追う!
side三人称
「黒葉!!」
黒葉が咲夜の静止も聞かずに走り出してしまった。
だが、その気持ちが咲夜には痛いほどわかる。なぜなら咲夜がこの立場に居なかったら黒葉の代わりに走り出していたのはまず間違いなく咲夜だったからだ。
「咲夜、今黒葉が走っていったけど――え」
「どうしたの? ――そんな」
フランとルーミアが咲夜の元へやってきてようやくパチュリーと美鈴がボロボロになっていることに気がついた。
2人とも一気に顔を真っ青にして駆け寄ってくる。
紅魔館を見てこうなっている可能性は考えていたが、実際に見るとショックが大きいようだった。
「ねぇ咲夜、これって」
「私たちが返ってくる少し前に襲撃されたらしいわ。それでお嬢様が攫われたって」
「え、レミリアが!?」
レミリアの強さはルーミアも知っているため、襲撃されてそのまま連れ攫われたという事実に驚きを隠しきれなかった。
だが、そんなルーミアとは違い、フランは特に取り乱すということもなく、ただうつむいていた。
この状況、どうしたらいいのか。
咲夜の頭はパンク寸前だった。
ようやく黒葉を助けて連れ戻すことが出来たと思ったら今度は自身の主が連れ攫われたというこの状況。
間違いなく今すぐに助けに行ったところでレミリアが手も足も出なかったという相手に自分たちが勝てるという未来が見えない。
かといってこのままレミリアを見捨てるという選択肢はありえない。
おそらくレミリアだったらこの状況でも迷うこともなく的確に指示を下すことが出来るんだろうなと考えて自分の未熟さに心が折れそうになってしまう。
だが、ここで折れてしまったらレミリアを助け出すことなんてできなくなってしまうのだ。
そんな時だった。
トンと誰かの手が咲夜の肩に置かれた。
その手が誰の物だろうかと咲夜は肩に置かれた手から腕を辿って正体を見てみると、その手はパチュリーの物だということが判明した。
そしてそのパチュリーは今までにないくらいに優しい顔を浮かべていた。
「大丈夫よ咲夜。あなたはよくやっている。あなたはすごいわ、自信を持ちなさい。何もれみぃと同じことをする必要はないのよ。ただ、あなたはあなたなりにこの子たちを使えばいいんだから」
「パチュリー様……ありがとうございます」
咲夜はずっとレミリアのように、レミリアのようにと考え続けていた。
だけど、パチュリーのその一言でようやく今自分のすべきことが見えた。
(そうね、慎重なのはいいけど、慎重になりすぎても誰も救えない)
慎重に、時には大胆に。
今この場にいるのは鍛冶師の人里の危機を救うことが出来た最強のメンバーなのだから。
「黒葉に後れを取っちゃったけど、お嬢様を助け出しに行くわよ!」
はい!第187話終了
次回、ついに黒葉と龍が開墾!?
ちなみに鍛冶師の人里編で咲夜たちは月刃を倒すことが出来ましたが、殺してはいないので奪われた能力は戻ってきていません。
そのため、咲夜は長い間時を止めることはできませんし、クールタイムも長いので、時を止めて走ったところでそこまで時短にはならないというのが現状ですね。
ちなみに天魔組のメンバーは天音を除く全員が無間地獄行きになっています。
無間地獄はこの話の設定だと監獄のような場所ですね。
あ、あとこの場にいるキャラで天音だけ状況が理解できていません。
だって天音がみんなと出会ったのって永遠亭なんだもの。レミリアとか紅魔館組とかそんなことは知らないですし、それぞれの戦闘力も知らないので紅魔館がやられたと聞いて敵の強さの想像もできないですよ。
3章もそこそこ長くなりそうな気がします。
それでは!
さようなら