それでは前回のあらすじ
にとりのラボに案内された黒葉と咲夜。
黒葉は初めて見る機械たちに大興奮。
ついに気絶してしまう。
だが、何とか咲夜によって復活することが出来た黒葉は気を引き締めてにとりの案内についていくのだった。
それではどうぞ!
side黒葉
にとりに案内されて飛行船に乗ると、そこは別世界が広がっていた。
船という存在は知っていたが、今まで船というものに乗ったことがなかった。そもそもこの幻想郷には海というものが存在しないのだから船に乗る機会がないというのは当たり前なのかもしれない。
この幻想郷は巨大な結界によって覆われていることで、独立した世界となっているらしいが、この結界の外にはこの幻想郷の何倍も広い世界が広がっているらしい。
そこには海があるのだという。
ちょっと興味はあるが、幻想郷の外に行けることなんてないため、諦めている。
だから今の今まで俺が船に乗るなどと考えたことはなかった。
それだけではない。
船内にはにとりの工房ほどではないが、機械類がびっしりと詰まっていた。何が何だかわからないんだが、とにかく凄そう。
と言うかピカピカと光っている。何あれ、すごい!
なんかずっとガシャンガシャンと音を立てて上下に動いているパイプらしきものもあったり、操作盤のようなものもあったりする。
なんか、こう、よくわからないんだけど、うずうずする。
どう動いているのか、どういう機構になっているのか、めちゃくちゃ気になる。
端的に言うと俺は興奮していた。
「すごいわね。にとりの趣味全開って言ったところかしら?」
「まぁねぇ。機械チックなところがそそられるでしょ~? よくこういう機械類は隠れたところにしまっておくというのが、最近の河童たちの中でトレンドだったりするんだけどさ、私としては許せないよね。ロマンだよロマン! こういうのはロマンを追い求めてこそだと思うんだよね。それを隠すなんてとんでもないよ」
「そ、そうなのね」
にとりの熱量にさすがの師匠も押され気味になっている。あんな師匠は初めて見たな。
確かににとりの趣味全開で作られているように見えるけど、ちゃんと細かいところにも気を配られていて、実用性は結構高そうだ。
刀鍛冶でもたまにあるのが、ロマンばかり追い求めて趣味全開で作ったはいいものの、耐久力が無さ過ぎて使い物にはならないというものがあったりするけど、これに関してはそういうところにもちゃんと気を配られている。
なんだったらこの船内でしばらく暮らせそうなほどの設備が整っていたりするわけだ。
台所やトイレ、リビング的なところも完備されており、ちゃんと寝室もあるため、寝泊りが可能だ。
なぜにとりが300年も前からこんなものを作り続けていたのかはわからないけど、ちゃんといろいろ計画して作られたことはすごく伝わってくる。
「素材もかなり頑丈だからちょっとやそっとの攻撃じゃびくともしないよ。河童の技術力、ナメちゃいけないね」
「ほんと、あなたには毎度驚かされてばかりね。こんなもの、本当に使わせてもらってもいいのかしら」
「いや、お前らが使わせろって言ったんだろうが。今更遠慮するなよ」
「それもそうね。おかげでお嬢様を助けに行けそうよ」
「そういえば、あんたたちはどうしてあんなところに行こうとしてるんだ?」
そういえばさっきから俺たちは『スカイ』に行くという目的は伝えてたけど、どうして行くのかは伝えていなかったな。
協力してもらうのに、そこを伝えないのは失礼だったかもしれない。
そんなことを考えて少し返答が遅れると、にとりは少し申し訳なさそうな表情に変化した。
「あ、悪い。言い難い事だったら良いんだ。ただ、今お嬢様――えっと、レミリアだっけ? 彼女を助けに行くって言ってたからさ。どうにも彼女が助けられるって言う状況が想像出来なかったから気になってさ」
確かに姉貴は強いからあんまり助けられるっていうイメージは湧かないかもしれない。むしろ姉貴は助ける側だからな。
俺もにとりと同じ立場だったら間違いなく気になる。
師匠も俺と同じ考えだったのだろう。にとりの言葉を聞いて静かに事の顛末を語り始めた。
「今日の朝、私たちは遠出から紅魔館に帰ってきました。ただ、紅魔館は既に瓦礫の山となっていました。私たちが遠出している間、紅魔館で待ってくださっていたパチュリー様から話を聞くと、私たちが帰ってくる前に襲撃があったそうです。そしてその襲撃にお嬢様、美鈴、パチュリー様の3人で対抗したそうですが、適わず……その襲撃者にお嬢様が連れていかれてしまいました。その行き先が天空都市『スカイ』 なんです」
「なるほどね〜。だからあんなに焦っていたのか……。レミリアが負けるほどの相手となると、かなり厳しい戦いになりそうだね」
にとりは師匠の話を聞いて真剣な表情になるとパチンと手を叩いて胸を張って言い放った。
「よしわかった! 私も全面協力しよう! 絶対にレミリアを助けるんだ!」
「ありがとう、にとり」
「そのかわり、あの約束は頼むな」
「えぇ、それに関しては心配しなくても大丈夫よ」
師匠はいったいどうやってスカイの技術を調べ上げてにとりに渡すつもりなのだろうか。
まぁ、今考えても仕方がないか。なにせ、俺たちはスカイのことをまだ何も知らないのだから、計画の立てようもないだろう。
ついに俺たちはスカイへ行く方法を手に入れたんだ、スカイ行きの飛行船を1か月も待つことにはならなくて済みそうで一安心。
「それじゃあ、私たちはみんなを呼んできましょうか。今頃パチュリー様と美鈴を連れて永遠亭についている頃でしょう。それから出発といったところね」
そういえば師匠はあの2人のことをルーミア、フランドール、天音の3人に任せてこっちに来たんだったな。
俺が先走ったせいでちょっと面倒なことになったことは申し訳なく思っています。
そうして俺たちが踵を返してみんなを迎えに行こうとすると、にとりが「あ~」とちょっと気まずそうな声を出してきたため、俺たちは足を止めてにとりへと振り返った。
「あ、いや〜……その、やる気満々なところ悪いんだけどさ、2日だけ待ってくれないか?」
「どうしたの? 何か問題が?」
「いや、今回の話が急すぎなんだよね。これもまだしばらく動かす予定がなかったからさ、ちゃんと動いてくれるか稼働テストをして手入れとかもしておきたいんだよ」
確かに、特に今回の件は事前に話を通していたわけでもないため、にとりの準備が万端ではないというのは普通のことだ。
俺と師匠はどうやら姉貴を助けに行けるということで浮かれていて、そのことに気が回っていなかった。
この船だって無理を言って使わせてもらえることになったもんだしな。
それは仕方がない、1か月待たされるよりも全然早いのだから2日くらいなら多分大丈夫だろう。
「わかったわ。急な話でごめんなさい」
「いやぁ、常日頃からメンテナンスをできていない私にも問題はあるんだよ。だから、そんなに謝らなくてもいいぞ。それに、咲夜さんは盟友だからな。人間と河童は古くから盟友だ!」
「あら、黒葉は盟友じゃないのかしら?」
「そっちの子は半分人間だから、半分盟友ってところだな」
半分盟友ってなに!?
てか、普通に俺のこと半人半妖って分かるんだな。
まぁ、それもそうか。妖力自体は感じ取れるわけだからな。
外見自体はほぼ人間だけど、妖力を持っているって言うことはそういうことだもんな。
「それじゃあ、2日後にまた来ることにするわ」
「ん? 別にこのラボで寝泊まりしてくれてもいいぞ。ちょうど部屋も余っていることだしさ」
「あら、そう? なら、お言葉に甘えようかしら」
今の俺達には帰る場所はない。だから2日間、どこかに泊まれないかこれから探しに行くところだったんだが、にとりがありがたい申し出をしてくれた。
ここに泊まっていいのならばこれから宿を探しに行く必要も無くなる。
「それじゃあ、みんなに話を伝えて連れてくるわね」
「おう! あ、そうだ。ここにしばらくいるなら神社にでも挨拶に行ったらどうだ? なにかご利益があるかもしれないぞ?」
「そうね、あとで顔を出そうかしら。その前に椛にも話をしないと……」
「なんだお前達、椛にまだあってないのか?」
「えぇ、ここに来るまでに襲いかかってくるかと思ったのだけど、来たのは自我のない妖怪たちだけだったわ」
「不思議だな。もしかしてまた文に駆り出されているのかもな」
何の話をしているのだろうか。
椛というのは多分誰かの名前なのだろうが、襲いかかってくるという言葉を聞いて俺は嫌な予感しかしなかった。
もしかして、俺達は本来この妖怪の山に入り込んだ時点でこの椛とか言う妖怪に襲われるはずだったのではないだろうか。
聞いてないぞ、俺は!
恨みを込めた視線を師匠に送るが、師匠は全く気にしていない様子だった。
「まぁ、とりあえず私達はみんなを連れてくるわね」
「あぁ、気を付けてな」
もう一度この山に帰ってきたときのことが不安になるものの、とりあえずみんなに話をつけないことには何も始まらないため、俺達は永遠亭に向かった。
はい!第193話終了
パンパカパーン! にとりが仲間になりました。
操舵手としての仲間入りなので、共闘したりはしないですが、にとりが居ないと『スカイ』に行けないため、重要人物ですね。
ちなみに椛はいつも頻繁に文に連れ回されているという設定です。この世界ではそうなんです!
椛がもし妖怪の山に居た場合は山に踏み込んだ時点で奇襲されていたことでしょう。運が良いですね。
あ、作中でにとりが話していた通り、守谷神社には行く予定です。
まぁ、猶予は2日ありますからね。
次回は永遠亭です。
それでは!
さようなら