それでは前回のあらすじ
飛行船内を案内される黒葉達。
今回の経緯をにとりに話すと全面的に協力してくれることになった。
出発まで後2日。
果たして黒葉達は無事にレミリアを連れ戻すことが出来るのか?
それではどうぞ!
sideルーミア
私とフランの妖怪チームでパチュリーと美鈴を背負って永遠亭にやってきていた。天音は付き添いだ。
ここは本来迷いの竹林と呼ばれていて、案内なしだとほぼ間違いなく道に迷うという場所ではあるのだが、前回黒葉が天魔にぶっ飛ばされて丈がなぎ倒された箇所がそのまま残っていたため、迷うことなく来ることが出来た。
急いでパチュリーと美鈴を診てもらわなければならないこの状況、申し訳ないけど、竹林がこんな状態になっていてよかったと安堵してしまっている自分がいる。
それにしても何かがあったらまた行くと鈴仙に言ってから1日も経たずにまた行くことになるとは思いもしなかった。
そのため、さっき別れたばかりなのにまた会うという気まずさを少し抱えながらも永遠亭の前までやってきて、私とフランは手がふさがっているから天音にノックしてもらった。
「はーい」
中から声が聞こえ、がらがらという音を立てながら玄関の扉が開け放たれた。
ついさっきまで聞こえていた声だ。そして扉が開いて見えた先に居たのはそれまたまぎれもなくついさっきまで見ていた顔。
私が今抱いているこの感情は相手も感じたようで、私たちの姿を見てから一瞬、目を見開いて驚いたが、すぐに私とフランが背負っている2人を見て、真剣な表情に切り替わった。
「鈴仙、急いで見てほしい人がいるんだけど」
「わかりました。こちらへどうぞ」
私たちは鈴仙に案内されて永琳の元へと向かう。
さすがに建物内は黒葉がぶっ飛ばされて建物を破壊してしまった時とは違って片付けられていてたけど、空いてしまった穴に関しては簡単に木の板で塞いでいるような不格好な状態となっていた。
そんな廊下を横目にどんどんと先に進んでいき、ついに鈴仙は診察室に入ったため、私たちも診察室へ入っていく。
「お師匠様、急患です」
「えぇ、わかったわ。って、あら?」
永琳が鈴仙の言葉を聞き、こっちを見るとすぐに私たちが背負っている美鈴とパチュリーに気が付いたのか、座っていた椅子から立ち上がって歩いてきた。
私たちの横に回り込んで美鈴とパチュリーの二人をよく観察する永琳。
一通り観察すると再び椅子に座って椅子を回転させ、私たちに向き直った。
永琳の険しい表情に少し不安になってしまい、私は問いかけた。すると、すぐに永琳は表情をゆるめて答えてくれた。
「永琳、どうかな?」
「その二人がどうしたらそこまでのダメージを負うのかはわからないけど、さすが妖怪といったところね。すでに少し回復してきているわ。これなら患部に薬を塗って休ませれば完治すると思うわ。そうねぇ……大体1週間くらいかしら」
どうやら見た目はひどい状態だけど、そこまで重症というわけではなかったようで、一安心。
でも、永琳の言う通り、この二人をこれほどにぼろぼろにしてレミリアまで連れ去ってしまうほどの相手の力ってどれほどのものなんだろうか。
「とりあえずその二人をベッドで寝かしましょう。歩きながら何があったか聞かせてもらってもいいかしら?」
「うん、わかった」
永琳が先導し、私たちは美鈴とパチュリーを背負って病室に向かう。
私はその道中、紅魔館へ着いてからのこと、パチュリーに教えてもらったことなどを話していく。
話している間にあの紅魔館での思い出がよみがえってぼろぼろになってしまったことが悲しくて辛くなったりもしたんだけど、もっと辛いのはフランなんだからと気持ちを切り替えて続けて話す。
フランは紅魔館を出てから一言もしゃべっていない。それだけでかなりつらいんだろうということが予想できる。
攫われてしまったレミリアとフランは姉妹、そしてあの紅魔館はフランの家なんだ。そのどっちもフランは一瞬にして失ってしまった、奪われてしまったんだ。
その辛さは私には計り知れない。
「そうなのね……あの紅魔館が一瞬で……」
二人をベッドに寝かし、私たちは診察室に戻ってきた。そこで永琳は椅子に座り、しみじみとつぶやいた。
私も信じられないけど、手も足も出なかったらしいから……。
「永琳、何か知らないかな。なんか相手が五天魔王って名乗っていたみたいなんだ――」
「ご、五天魔王ですって!?」
「ちょ、ちょっと、永琳!?」
私が五天魔王の名前を出した瞬間、永琳は血相を変えて私に掴みかかってきた。
いつもの余裕そうな表情はどこへやら、冷や汗だらだらで相当焦った様子に私は面食らってしまった。
五天魔王という名前が永琳の様子をこれほどまでに変えてしまうくらいにやばい名前なのだろうか。
私自身は聞いたことが無いからピンと来ていない。
「五天魔王、奴は本当にそう言ったの!?」
「う、うん、パチュリーの話ではそう名乗ったって」
「五天魔王……あなたたちはレミリアのことを助けるつもりなのかしら」
「うん、もちろん。多分黒葉と咲夜が今、助ける方法を探して――」
「悪いことは言わない。今回は諦めなさい」
「――え?」
私たちの返答に食い気味に言ってきた永琳。
一瞬、私の脳が永琳の言葉の意味を理解することが出来なかった。
諦めろってどういう意味だったっけ? 頑張れって意味だったっけ?
そんな現実逃避に脳が支配される。
今、永琳はレミリアを諦めろって言った?
とても仲間思いで、紅魔館の仲間ではない私にもとってもよくしてくれた。
私にとってもレミリアはお姉ちゃんみたいな存在なんだ。
「今回ばかりは分が悪い。相手が五天魔王だなんて……」
「そんなの……関係ないよ」
「ルーミア?」
「そんなの、関係ないよ! 今更諦めるなんてことできる関係じゃなくなったんだから! 私も、レミリアがいなくなるのは嫌だから!」
たとえ相手がどんな奴だったとしても私たちは絶対に諦めるなんてことはしない。
レミリアだったら紅魔館の誰が攫われたとしても、どんな奴が相手だったとしても諦めるようなことはしないだろう。
なら、私もレミリアを諦めたくない。
「なら、後ろの二人はどうかしら?」
「っ!」
後ろの二人というとフランと天音のことだ。
さっきから二人とも一言もしゃべっていない。
そうだ、フランはレミリアと姉妹ということで助けに行く理由は充分あるけど、天音はレミリアとは会ったことないし、そもそも紅魔館に来たのだって今日が初めてだった。
だから助けに行く理由なんてないんだ。
「あたしは行くよ。お兄ちゃんの大切な人なんでしょ? ならあたしも助けるのに協力したい。お兄ちゃんを大切にしてくれてありがとうってお礼を言いたいから」
「そう……でも、生半可な覚悟じゃ死ぬわよ」
「あたしは5歳の時からずっと命を懸けている。ずっと危ない一本橋を渡り続けてきたんだよ。それが多少長くなるだけ。死ぬ覚悟はもうとっくの昔に完了してるんだから」
天音はずっと天魔を倒すために策を巡らせ続けてきた。そしてそれがようやく先日叶ったんだ。
天音の執念は凄まじい。これが無ければ天魔を倒すことはできなかったかもしれないんだから。
だから、天音の覚悟を生半可と片付けることは絶対にできない。
それなら、ここにいる私たちの気持ちは一つ。レミリアを助けに――
「私は、辞退するよ」
「え?」
突如としてフランが言い放った言葉に私たちはただ、唖然とすることしかできなかった。
はい!第194話終了
今回は珍しくルーミア視点。
永遠亭での1幕ですね。
しかし、フランがレミリアを助けに行くことを辞退するとは……異常事態ですね。
さて、次回は再び黒葉視点!
果たしてどうなってしまうのか?
それでは!
さようなら