それでは前回のあらすじ
黒葉と咲夜も永遠亭に辿り着いたものの、ルーミアとフランが言い争っていた。
なんと、フランがレミリアを助けに行くことを辞退するという。
果たしてフランの真意は如何に!?
それではどうぞ!
side黒葉
俺は永遠亭を飛び出し、周囲を見回す。
フランドールの飛び出していく速度は速かったけど、それでもまだそんなに遠くには行っていないはずだ。
こんな時、俺に羽があって空から探すことが出来たらと思ってしまうが、無いものねだりをしても仕方がない。
吸血鬼になったんだから俺にも羽をくれてもいいじゃないか。姉貴とフランドールにはあんなに立派な羽があるんだから。いや、フランドールの羽は羽と呼べるのか怪しいものだけど。
とにかく俺は永遠亭を飛び出して走り出す。
フランドールは俺と違って飛べるだろうから圧倒的に俺が不利なのには変わりないけど、今ここで諦めたら取り返しのつかないことになる気がするため、足が痛くなろうとも、竹にふくをひっかけて破けかけても構わず走り続ける。
どこに行ったのかはわからない。でも、なんとなくこっちの方に居そうな気がするという予感が俺を突き動かしていた。
前にも似たようなことがあったなと思い出す。
あの時はルーミアが俺を食料として見ることを恐れて飛び出していったんだ。
フランドールがどんな考えで姉貴を助けに行くことを辞退するとか言い出したのかは全く想像もつかないけど、何があったかは話してほしい。
話し合いたい。それでもって、どうしたらその悩みを解決できるのか一緒に考えたい。
必死に走っているといつの間にか竹林を抜け出していた。
目の前には大きな草原が広がっており、周囲をよく見渡すことが出来る。
すでに日は沈んでいた。でも、今の俺は吸血鬼だから夜目が効いてよく周囲を見渡すことが出来る。
そしてそこで見つけた。
竹林から少し離れた一本の木、その上に静かに座って空を眺めているクリスタルのようなきれいな羽を携えた金髪の吸血鬼。
その木の下まで静かに歩いてくると、俺はそこに座り込んだ。
フランドールは多分俺に気が付いているけど、今度は逃げられなかったため、俺は静かに声をかけた。
「空が綺麗だな」
「そう、だね。うん、星がよく見える」
今日はあまり見ないくらいの快晴により、空の星々がキラキラと輝いていて、まるで空全体が宝石箱のようだ。
「って、あはは、黒葉にはこんな話なんて似合わないよ。どうしたの? 気、使ってくれてるの?」
「あー、と……まぁ」
「ありがとう。でも、気を使う必要なんてないよ。聞きたいことがあるんでしょ?」
俺にはこういうのは向いていなかった。
気を使うはずが、逆に気を使われてしまったらしい。
もうちょっと世間話をしてリラックスしてから話始めるつもりではあったんだけど、仕方がなく俺は本題を話し始めた。
「どうしたんだ?」
「えっと……」
「いや、聞き方を間違えた。レミリアとの間に何があったんだ?」
「…………」
「フランドールはレミリアのことが好きだろ? いつものフランドールなら間違いなく真っ先にレミリアを助けに行くと思ってさ」
「そう……だね。いつもの私なら……うん、確かに黒葉の言う通りかも。あの時黒葉は飛び出していったけど、いつもなら黒葉の立ち位置に居たのは私だったかもね」
一時期、フランドールは地下室に引きこもっていたから、その時期に姉貴と交流があったのかはわからない。
でも、出てきてからはとても仲良くしていたのを見ている。
フランドールが庭に出て遊んで、その姿を微笑ましそうにニコニコして眺めている姉貴。あの光景を見るのが俺はとても好きだったんだ。
フランドールも姉貴を見つけるとすごく嬉しそうに笑って……お互いに凄く大切に思いあっているというのが俺にも伝わってくるほどだった。
「……私ね、知ってたんだ」
「知ってた?」
「そう、知ってた。今日、私たちが帰ってくるちょっと前に凄く強い人が着て、お姉様を連れ去っていくって。ほかでもないお姉様に聞いた話」
「レミリアから?」
ちょっと不思議に思ったけど、別におかしな話ではなかった。
姉貴は運命を操る程度の能力を持っていて、未来を見ることが出来る。だから今回の襲撃の件も知っていたんだろう。
そしてもしそれが不変の運命なのだとしたら? 姉貴は不変の運命が見えたらすべてを諦めてしまう。
俺の時は姉ちゃんが俺を現世へ引き戻してくれたから助かったけど、あれがなければ不変の運命通りに死んでいたことだろう。
つまり、不変の運命は余程のイレギュラーがない限りその通りになってしまう……。
だから知っていたとしても逃げようとはしなかったんだろう。
そしてフランドールにそれを聞かせていた。
「あの炎の奴が襲撃しに来る少し前だったかな。聞かされたんだよ」
sideフラン
「お姉様、話って何?」
私は突然お姉様に呼び出されてお姉様の部屋に来た。
あまりお姉様の部屋に来ることってないから、この部屋の前に来るだけでも結構緊張した。それに、こんな風にまじめに呼び出されたのは初めてだったから嫌な予感もしていた。
静かに部屋に入ると、お姉様は窓際のテーブル席に座り、おそらく咲夜が用意してくれたんだろう紅茶を啜っていた。
「フラン、いらっしゃい。そこに座ってもらえる?」
私はお姉様に促されるままにお姉様の前にある席に座った。
正面に座ったことですべてが分かった。お姉様のこの表情、かなり深刻な話が来るに違いない。そう考えると自然と背筋がピーンと伸びる。
私が座ったことを確認するとお姉様は手に持っていたティーカップをソーサーの上に置いて私に向き直った。
「来てくれてありがとう、フラン」
「うん」
「最近どう? 黒葉と仲良くしてる?」
「うん、黒葉はすごく優しくしてくれるよ。なんであそこまで私にかまうのかはわからないけど。他に仕事もあるだろうに」
「
「そう、だね」
そこで言葉が止まってしまう。
早くこの重い空間から抜け出したい。そう思っていっそのこと本題を私の方から聞き出そうかと口を開くと、それよりも数瞬先にお姉様の方が言葉を紡いだ。
「約一週間後、紅魔館は嘗てないほどの脅威にさらされる」
「嘗てないほどの?」
「そう、襲撃されるわ。本当に参るわね……」
「襲撃って……でも、この幻想郷ならいつだってあり得る話だよね? どうして今回はそんなに暗いの?」
「……その襲撃で私はそいつに攫われてしまうわ」
「っ!? お姉様が」
その言葉が信じられなかった。
一瞬お姉様が何を言っているのか、理解することが出なかった。
「な、なんで!? この紅魔館には強い人がいっぱいいるよね! 美鈴、パチュリー、咲夜、私とお姉様、黒葉だって!」
「タイミングが悪いっていうのもあるけど、足りないのよ。そいつに勝つには」
「え、そ、そんな」
「これは不変の運命。どれだけ抵抗しようとも、この紅魔館は敗北する。そして私は連れ攫われる。そういう運命なのだから」
私が覚えているのはここまで。
この後もいろいろとお姉様と話していたということは覚えているけど、でも内容は全て抜け落ちている。それくらいに衝撃的な話だったんだ。
だから私は知っていた。今回の襲撃も、そしてその結果どうなるのかも。
黒葉が攫われるという話は聞いていなかったからあんなことになってすごく驚いた。でも、同時にこれはチャンスだと思った。
このまま紅魔館に居たら私は無力で、敗北してただただお姉様が連れ攫われてしまう場面を見るだけになってしまう。そんなのは私の心が耐えられないと思った。
もちろん黒葉が大切だから黒葉を助けたい。そして黒葉と一緒にあの人里を守りたいと思ったのは本心。
でも、それとは別に、これは私の逃げだったんだ。
今回の出会い、そして戦いは全て私の逃避行。嫌なことから逃げたかった、ただそれだけの子供っぽい理由の行動だったんだ。
お姉様が攫われるということは知っていたんだから、私も紅魔館に残ってお姉様を守るということもできた。
私は結果としてお姉様を見捨ててしまったんだ。黒葉達にも伝えることが出来たかもしれない。助けてほしいってみんなに助けを求めることだって出来たかもしれない。
でも、そうしなかった。
できる努力を、その一切を怠ったんだ。
不変の運命だからそれを覆すことが本当にできるのかはわからない。でも、それを覆す努力をしなかった時点で私は世界で一番大切な、唯一の肉親を見捨てたんだ。
だから、私はもう、お姉様に合わせる顔がない。
私は……
はい!第196話終了
これがフランの秘密です。
実は今回の冒険は全てフランの逃避行だったということですね。
よく考えてみたらフランは黒葉を助けに行かず、残るという選択肢もあったわけですね。
でも、フランは魔理沙を励まし、一緒に助けに向かったんです。
もちろん、黒葉を助けたいという気持ちが一番大きかったのですが、打算があったのは事実だったんですね。
果たしてこのフランに黒葉はどんな言葉をかけるのか?
それでは!
さようなら