それでは前回のあらすじ
レミリアの様子をみにくる龍。
そんな龍に対して塩対応する龍だが、機嫌が良かったのか殺されたいというレミリアの願いは裏腹に許されてしまう。
龍はレミリアの部屋を後にした後、ホロウと遭遇。ホロウに気をつけるように忠告を受けた。
一方黒葉は風魔に街を案内され、初めてみるものばかりの光景に大興奮をしていたのだった。
黒葉の視点をもう少し進めたら咲夜や飛行船組の視点へ移ろうと思います。
それではどうぞ!
side黒葉
「ごめんごめん、あまりの事態にキャパオーバーしてた」
「びっくりしたよ。通信機から声が聞こえてこなかったもので、様子を見に戻ってきたら気絶してるんだから」
今までの俺の常識ではあり得ない遠隔会話が可能な通信機の能力を目の当たりにして気絶してしまっていたらしい。
つい最近も似たようなことがにとりの工房でもあったような気がする。
逆に風魔を驚かせてしまったことだろう。
もうここは俺の知っている世界とは別物と考えて何が起こっても驚かないように心の準備をしておかなければ俺は姉貴を助けに行く前に心臓発作で死んでしまうかもしれない。
吸血鬼が心臓発作で死ぬって格好つかないな。
そんなこんなで今俺たちは露店の棒付きウインナーを食べながら街中の様子を見ていた。
ここは観光地で道ゆく人々も俺たちと同じように買い食いをしながら歩いているため、目立つわけにはいかない俺は同じように買い食いをしながら歩くことにした。
決して俺が食べてみたかったわけじゃない。
というか、上にかかってる黄色のソースが少しピリッと辛くてうまいな。からしに似ているけどちょっと味が違う。
「ん? あれはなんだ?」
しばらく歩くと煙突部分からもくもくと煙が上がっている建物が見えてきた。もれなくビッグサイズである。
街の中心から少し外れた場所にあり、今まで見てきたどの建物とも雰囲気が違う。今まで見てきた華やかな街並みの建物とは違い、石造りの無骨な建物。
「あれは工場だね。この街のいろいろな設備を作っているところ」
「あ、あそこでここにあるものを作っているのか!?」
言われて再度周囲を見回してみる。
あそこを走っている自動車も、あそこにあるあんな機械もそんな機械も、果てはこの通信機もあそこで作っているというのか!?
興味が湧いてきた。
これだけのものを作ってしまう工場という場所がどんな場所なのか、一度見て見たい。
だが、勝手に言ってもいいものなのだろうか?
いやいや、俺にはみんなを探すというミッションがあるんだ。こんなところで油を売っている場合じゃないんだ。
早くみんなと合流して姉貴を助けに行かなければいけない。
よし、諦めて早くみんなを探しに行こう。そう決意した俺だったが——
「興味があるなら見学してみる? 工場は一般公開しているから見学できるようになってるんだけど」
「行く‼︎」
やっぱり興味には勝つことができなかった。
確かにみんなを探しに行くことは大事かもしれない。でも、この街の情報を得ることも同じくらい大事なのではないだろうか。
俺はみんなを信じている。みんなはどこかでちゃんと生きているはずだ。
だからみんなと合流したときのために今俺がやることはできるだけ情報を集めることだ。
……うん。
近くにやってくると壮観だ。
こんな建物、当然だが地上には存在しないだろう。——俺が知らないだけではないはず。
内部からはまるで地響きのような音や金属がぶつかり合う音のようなものがきこえてくる。正直言ってかなりうるさい。
どうしてこの建物だけ街から離れた位置にあるのかと思っていたら、かなり内部から音がするからうるさいというのと、風魔に聞くとあの煙は有害のため、離れた位置に建てられているのだという。
まぁ、あんな鼠色の煙が有害じゃないわけがないよな。
「大きいでしょ。この街で暮らしている人のほとんどがここで働いているんだ」
「あ〜だから大きいのか」
確かに異様にでかい建物だと思っていたけど、風魔の説明で納得した。
この島の人口のほとんどがここで働くとしたらこれだけデカくしなければみんな入れないだろう。
それから風魔に案内されて建物の内部へ入って行く。
内部もほとんどが石造りとなっており、これこそにとりの工房がデカくなったかのような見た目の内装だ。
にとりがここを見たら大興奮しそうだな。師匠がレポートを頼まれていたんだから師匠と合流してから来るべきだったかもしれないが、興味が湧いてしまったものは仕方がない。
入り口正面には大きな機械がゆっくりと回っており、数人がその近くで操作盤を操作したり、機械の様子を見たりしている。
全員同じ作業着を着用していることから、ここで働く上での制服のようなものなのだろう。
まるで一つの軍隊のように統率された動きで仕事をこなしていく作業員たち。ここで街のいろんなものを作られていると考えると感動だ。
だが、一つ気になるのは窓が無いことで内部の圧迫感がすごいという点だ。
ここで働いていたら確かに外の様子が見えないことから俺たちがバリアを突き破って入ってきたとしても気がつくことはできないだろう。
街で働いている人たちは別として。
風魔の後ろに着いてもう少し機械に近づいてみる。
「風魔もああいう仕事をしてたりするのか?」
「いえ、僕は違う仕事をしてます。僕はああいう機械とか苦手みたいで」
同じだな。
俺もああいうのを扱える気がしない。
苦笑いをしながら頬をポリポリとかく風魔を横目に従業員の姿を見る。
みんな忙しなく動いていて、とても忙しそうだな。まるでここまで近づいているのに俺たちに気がついていないかのような様子。
「え」
そこで気がついた。
今ちらっと見えた人の表情、全く目に生気がなく虚ろ、目の下には隈が深く出来ており、顔色はまるで死人のように血の気がない。
だが、俺の吸血鬼の血が彼のことを生きている人間だと言っているが、この目で見ると生きているとは思えない。
それに気がついてから他の従業員の顔色も伺ってみる。
この人だけならたまたまこの人が体調を崩しているという説がある。だから、そうであってくれと願いつつ、周囲を見て見たが、そんな希望はすぐに打ち砕かれてしまった。
この場にいる従業員、その全てが同じように死人同様の顔色だった。
足取りもフラフラと今にも倒れてしまいそうなほどで、どうして誰も仕事をやめようとしないのか不思議な状況。
そして俺の隣にいる風魔はこの状況をなんとも思っていない様子。
どういうことだ? どうしてこんな地獄のような光景が繰り広げられている。
「なぁ、風魔。ここってなんなんだ?」
「ここ? ここは天空都市『スカイ』だけど」
「違う。そうじゃない。ここってなんなんだ。スカイって観光地で、技術が進んでいて、素晴らしい場所だって聞いていたんだけど……ここはまるで、地獄だ。なんであの人たちは誰も休もうとしないんだ。体調が悪いなら仕事は中断するべきなんじゃないのか? なぁ、風魔。ここは一体なんなんだ?」
「だから言ったじゃん。ここは天空都市『
そう告げた風魔の表情には陰がさしていて、今までとは違ってそれがとても不気味に思えてきて。
すぐにでもここから逃げ出したくなって。でも動けなくて……。
「ここはスカイ。でも、表向きとは違う。ここは住人という名の奴隷たちによって成り立っているんだよ」
「ど、れい?」
「ここでは死ぬまで働かされる。幸いにも労働力は外からいくらでも入って来るからね」
「お、お前は一体何を言ってるんだ」
その時だった。
視界の端で一人の従業員が突然床に倒れ伏した。
躓いて転んだわけじゃない。急に力がなくなって、まるで大切な何かがプッツンと切れてしまったかのように、突然力なく倒れてしまった。
突然のことすぎて俺はその光景を見て固まってしまうが、すぐに我に返って倒れてしまった人へと駆け寄る。
「だ、大丈夫ですか! しっかり!」
しゃがみこんで声かけをしてみるが、全く反応がない。そもそも、俺の吸血鬼としての血がこの人を生者とは認めていない。
今この人はこの瞬間に生き絶えてしまったのだ。
原因はわかりきっている。この厳しい労働環境による過労死。
そのことはこの人の表情からすぐに読み取れた。
苦痛に歪んだ表情、彼は最後に何を思って旅立っていったんだろうか。
こんな最後、絶対にやりきれないだろうな。馬車馬のように働くだけ働かされて、こんなになっても休みなんてもらえなくて。
せめて最後はちゃんと埋葬してあげたい。
「すみません、誰か手伝って——は?」
顔を上げて埋葬を手伝ってくれる人を募ろうとした。
でも、そこには誰もいなかった。まるで人の死なんて興味がないと言わんばかりに仕事に没頭する従業員たち。人なんて死んでいないんじゃないかと思うほどの動きに俺は戦慄してしまった。
駆け寄ってすら来ない。
何事もなかったかのような光景が繰り広げられていた。
「なん……で」
同じ場所で働く仲間だったんじゃないのかよ。
どうしてそんなに我関せずを貫けるんだよ。
どうして……
はい!第203話終了
前話の高テンションからの絶望。この落差が癖ですね。
さぁ、スカイの闇が見えてきましたね。
風魔は最初から言っていたんですよ。地獄だってね。
間違いなくこの島の真実は黒葉の逆鱗に触れるものなので、真実を知ったら黒葉は冷静でいられるでしょうか?
特に今は天音が居ないので黒葉を落ち着かせることができる人が誰も居ないというのが不安ですね。
さて、ここからどうなっていくのか?
それでは!
さようなら