【3章投稿中】東方妖滅録   作:ミズヤ

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 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 スカイに入ってから初めての戦闘シーンです。
 鍛冶師の人里とは違ってここは敵の本拠地なので戦いまでが速いのは必然ですね。



 それでは前回のあらすじ

 黒葉に叩きつけられるスカイの真実。

 あまりに残酷な現実に絶望していく。

 そこへ工場のボスらしき人物が現れ、過労死してしまった人物を処理するように従業員たちに告げる。

 処理方法は崖から突き落とすこと。もののようにこき使い、そして壊れたら捨てるというあまりに非人道的な扱いについに切れてしまった黒葉はボスの前に飛び出してしまうのだった。



 それではどうぞ!


第215話 根比べの末に

side黒葉

 

「ここにいる人たち全員解放しろ、この筋肉ダルマ」

 

 俺の言葉を聞き、眼の前の筋肉ダルマは目を鋭くする。

 

 近づくと余計にこの男の筋肉ダルマ具合が分かる。俺よりも二回りくらいでかい風船のような巨漢。

 だが、太っているわけではない。これは全て筋肉だというのはパンパンに膨らんだ腕に浮き上がってきている血管を見れば一目瞭然だ。

 筋肉量的にはもしかしたら天魔よりも多いかもしれない。そう思ってしまうほどの迫力がそこには存在した。

 

「なんだぁ? ちっせぇ癖にいっちょ前に威嚇してきやがって」

 

 瞬間、筋肉ダルマから霊力が溢れ出した。

 これは威圧だ。並大抵の人ならばこれで気絶してしまうこと間違いないだろう。でも、今までもっと霊力量が多く、威圧感が強い相手と戦ってきたんだからこの程度で今更怯む俺ではない。

 月刃のほうがもっと威圧感があった。

 

 皮肉なものだが、今までの戦いが全て経験となって今の俺の力になっているらしい。

 

「聞こえなかったのか? ここの人たちを解放しろ、この筋肉ダルマ!」

 

 瞬間、巨大な拳が眼前に迫ってきた。俺の顔を狙った鋭い一撃。

 それを俺はギリギリ上体を反らして回避したが、拳が通ったあとの風圧だけで顔に少し切り傷が付いてしまう。

 

 筋肉ダルマが拳を引いた直後、俺は全力で地面を蹴って筋肉ダルマから距離を取って刀に手をかけた。

 今の一撃、直撃していたら間違いなくただでは済まなかったとわかってしまうほどのパワーがあった。

 

「コイツラを解放しろだ? 笑わせるな。コイツラはうちの貴重な従業員だ。お前は観光客か? ならこの街を見ただろ。この街のあらゆるものはこの工場あってこそのものだ。うちに従業員が居なくなったらああいったものは作れなくなるぞ」

「貴重な従業員だと言うなら、普通に働かせろ。あんな、催眠術で強制的に働かせて、休みも与えず……人は過労で死ぬんだぞ!」

「人は放っといても無限に増える。勝手に欲情して、勝手に繁殖する。無限の労働力とはまさにこのことだ。死んだら補充すれば良い。補充するための人材はこの世界にいくらでもいるんだからな」

「何言ってるんだ、お前」

 

 筋肉ダルマが何を言っているのか全く理解ができなかった。

 理解できないし、理解したくもない。だって、それって人間のことを道具としか考えていないということだから。

 死を前提に働かせる。これほど残酷なことはない。

 人を何だと思っているんだ。死んでしまったあの人にも、ここに来る前には普通の生活というものがあったはずだ。

 だが、こんなところに連れてこられてしまったがために、死ぬまでボロ雑巾のように扱われた挙げ句、死んだあとに雑に処理される。

 こんなことがあって良いはずがない。

 

「しかし、俺に意見してきたやつは初めてだ。俺は三龍騎士が一人、越前(えちぜん)(りき)だ。お前の名前を聞いておこう」

「……冬夏黒葉」

「そうか黒葉。お前も俺達の仲間にならないか? その度胸があれば十分に使える駒となる。司祭の役に立つことだろう。こんなところで働いている奴らとは違う、一歩上の次元に立つことが――」

 

 力が喋り終わる前に俺の刀が凪いだ。

 今の俺はキレている。ここまで話を聞いていて胸糞悪い、耳障りが悪いと感じたのは初めてかもしれない。

 俺達の仲間にならないかだと? なるわけがないだろうが。

 俺はこの光景がおぞましすぎて仕方がない。人は家畜じゃねぇぞ。お前らの道具じゃねぇぞ。

 

「おっとっと、あぶねぇ……人の話は最後まで聞くものだぞ」

「聞く価値もないから斬ったんだよ」

 

 バックステップをして回避動作を取った力。その姿を見てみると、俺の刀はどうやら掠りもしなかったようで、その肉体には傷一つついていなかった。

 というか、斬られたというのになおも平然と話を振ってくるとかだいぶ俺を子供だからって舐めているらしい。

 

「だが、斬るということは逆に殴られるということも覚悟してのことだったんだよな?」

「あぁ、もちろん――ぐふっ」

 

 突如として俺は腹に強烈な衝撃を感じ、あまりの痛みと呼吸の苦しさに腹を押さえ、その場に膝をついてしまった。

 何が起こったのかわからなかった。

 俺が斬ったときに同時に俺の腹を殴ったのか? いや、あいつにはそんな素振りはなかった。腕を振り抜いてなどなかったはずだ。

 まさか月刃のように神速の加護で目にも止まらぬ早さで動けるとか? だとしたら厄介にもほどがある。

 

 だが、そんな単純な話でもない気がする。

 とりあえず、こいつをどうにかするんだったらまずは能力を確認しないと無理だ。

 どんな能力を持っているのか、加護はあるのか、そこを知らないことには対策の立てようがない。

 

「おぉ、立つか。なかなかの根性だ。ますます人材としてほしい」

「ち、俺はお前らのようなのが一番嫌いだ。死んでも言うことなんて聞くものかよ」

「へぇ、それは残念。なら、仕方がない。お前にもこの工場で働いてもらうことにしよう」

 

 拳を構え、飛びかかってくる力。

 勘が言っていた。あの一撃に直撃したら間違いなく一溜まりもないだろうと。

 さっき腹に食らった一撃も蹲ってしまうほどだった。次蹲ってしまったとしてもやつが攻撃の手を止めるかはわからない。

 だから俺はその攻撃を全力で避けた。

 

 するとその攻撃は俺の背後に設置されていた機械に直撃した。だが、その機械には傷一つつくことはなかった。

 俺はてっきりあの攻撃が機械に直撃したら機械を破壊することができるものだと思って攻撃を当てさせたのだが、それは無駄な考えだったらしい。

 もしかして俺に回避されたことを確認してすぐに力を緩めたから機械にはソフトタッチができたということなのか? などとそんなことを思っていると、なんと次の瞬間には暴風にも似た衝撃波が辺りに放たれ、油断していた俺は抗うことなどできずに吹き飛ばされてしまう。

 

 どんどん飛ばされていく俺の肉体は背後に存在していた機械めがけて一直線。そのまま機械に直撃するのかと思われたが、機械に直撃する寸前で背中にまるで殴られたかのような衝撃が走り、そのまま正面へと殴り飛ばされて床に転がった。

 何が起こっているのかまるで理解ができない。

 

「うぐ、かはっ」

 

 見てみても俺の背後には誰も立っていない。力は機械を殴ったその位置から一歩も動いちゃいない様子。

 混乱する。

 攻撃の方向が俺の思っている向きとは違って頭がおかしくなりそうだ。

 今までいろいろな物理法則を無視した能力を見てきたが、こいつほど頭がおかしくなりそうな相手に出会ったことはない。

 

 そもそもおかしいだろ。どうして放った拳の衝撃波が正面には放たれなくて、真後ろに居た俺の方に襲いかかってきてるんだよ。

 そして誰も居ないはずの方向から殴られたというのも解せない。

 

 こいつは攻撃を別の場所に出すことができるのか? いや、でもそれだと衝撃波の方向がおかしかった理由が説明つかない。

 なんだ、これは。どうなっている?

 

「おいおい、敵を目の前にして考え事か? そんなの攻撃してくれと言っているようなものだぞ?」

「は? ぐあっ」

 

 力は一歩も動かずにデコピンの要領で指を弾いたが、何故か直後に俺の額に鋭い衝撃が走った。

 まるで本当にデコピンが額に直撃したかの衝撃に思わずのけぞってしまう。

 この距離では力が腕を全力で伸ばしたとて俺に攻撃を届かせることなどできないはずだ。

 言うなればここは近接戦闘タイプにとって間合い外のはずなのだが、それなのに攻撃をもらってしまった。

 弾幕を飛ばしているとか、そんなちゃちなものじゃない。攻撃そのものを俺の眼の前に召喚しているかのような動きだ。

 

 衝撃の()()がおかしかったり、攻撃の()()がおかしかったり、わっけわからねぇ。

 とりあえず今わかっていることは、どこに居てもこいつの目に入る距離にいるのならば、そこは危険だということだ。

 どんな攻撃が飛んでくるかわかったものじゃない。

 

 どこに居ても攻撃が飛んでくるなら警戒するだけ無駄だ。あの攻撃を防ぐことができる気もしない。

 だから試しに正面から攻撃を仕掛けてみることにする。

 刀を鞘に納めて居合の構えを開始、刀に炎を纏わせる。

 

「どこに居ても攻撃を食らうから逆に攻撃か……攻撃は最大の防御とも言うしな。だが、それは無駄だ」

「《日輪一閃(プロミネンス)》」

 

 地面を蹴りくだかんとする力で駆け、力との距離を一気に詰めていく。

 この距離ならば一瞬で間合いに入れることができるだろうと考えていたのだが、そんな俺を他所に力は拳に力を込めると地面を全力で殴りつけた。

 だが、やはりと言うか奴の殴ったものが砕かれることはなく、傷一つついていない。その代わり、俺の一歩踏み出した地面が割り砕かれ、突如として俺の踏み出す足場が消え去ってしまったことによってバランスを崩してその場に倒れ込んでしまった。

 

 あいつが殴った攻撃の位置が変化し、俺の足元が砕かれたっていうことか?

 何でもありかよ。

 空間全てを警戒しなければならなくて、その上足元まで敵になる。どうしたら良いんだ。

 

「これだけやっても心が折れず立ち上がるか」

「はっ、これでももっと強い威力で何度も何度もぶっ飛ばされても戦い続けたという実績があるもんでな」

 

 天魔に何度もぶっ飛ばされたのは正直辛かったが、こいつは天魔ほどじゃない。

 このくらいのダメージ量ならまだまだ戦える。

 だから俺は諦めない。こいつに勝ってここの人たちを全員解放して、そして姉貴を助けに行くんだ。

 その強い願いが今俺を立ち上がらせる。

 

 地面も警戒しなければいけないとわかった今、地面の陥没くらいならまだ対処できるはずだ。

 だからあとは殴り飛ばされないように警戒しつつ攻撃をする。

 そのためにはやはり直線攻撃では地面の攻撃を避けることもできないだろう。だからここでは《日輪一閃(プロミネンス)》よりももっと動ける技の方が良い。

 それならばと再び刀に炎をまとわせる。

 

「まぁ、まだ来るならば心が折れるまで殴るだけだけどな」

「余裕で居られるのも今の内だ、力!」

 

 再び駆け出す。

 だが、それはさっきの居合の時とは違いただ走る。だけど、このスピードなら咄嗟のときに反応しやすいというものだ。

 早速やつが地面を殴ってきたため、走り幅跳びを行い、割り砕かれた正面の地面を飛び越えて更に走り進めていく。

 すると今度は拳を振り抜いてきた力。それを見た俺は正面に攻撃が飛んでくるものだと思って左に飛んで回避したが、その宛は外れて右側から殴られた衝撃が走り、俺はそのまま左に殴り飛ばされてしまう。

 

 だが、何度も殴り飛ばされていると流石に慣れてきた。

 空中で体制を立て直すと、地面に足をつけて踏みとどまり、再び力へと向かって走り始める。

 攻撃はどこから飛んできてもおかしくはない。むしろ突拍子もない場所から飛んでくると思っていたほうが良いだろう。

 そしてその攻撃は推測することができないと来たものだ。ならば、何度ぶっ飛ばされても、何度転げようとも力に攻撃が当たるまで何度でも立ち上がって、この刀を振るう!

 

「ぐっ」

 

 額にデコピンの衝撃が来た。

 確かに痛いし、威力も気を抜いたらぶっ飛ばされてしまいそうなほどではあるが、今回は頭が後ろに弾かれるだけで済んだ。

 だから俺は走り続ける。

 

 走って走って、ぶっ飛ばされ、そしてまた走る。

 やつを斬ることができるまで絶対に諦めるようなことはしない。

 

 時には何もない場所から殴り飛ばされ、時には地面が砕かれて転け、時には衝撃波によって向かい風でぶっ飛ばされそうになる。

 それでも俺は刀の炎を絶やすことはなく、なおも走り続ける。

 

 もう意地だった。

 どっちが先に根負けするかの根比べ。

 天魔との戦いを経て根気には自信がついた今の俺ならどれだけぶっ飛ばされたとしても心が折れる気がしなかった。

 

「何だよお前、そこまで行くと根気が強いと言うよりかは変だぞ。お前、大丈夫か?」

「お前に心配される謂れはねぇ!」

 

 傷だらけ、骨もあちらこちらにヒビが入っていることだろう。

 体中が痛くていたくて仕方がないが、今の俺はアドレナリンが大量に分泌されているおかげか全然動ける。倒れる気が一切しない。

 だからどれだけぶっ飛ばされようとも関係ない。俺にこの足がついていて、刀を握るこの腕がある限り、俺が走るのを辞めることは決して無い!

 

「気持ち悪いんだよ、お前――」

「いい加減に斬られろ!」

 

 本能だった。

 俺が奴の攻撃を推測できるわけがないし、その攻撃を認識できるわけもない。

 だけど、俺の生物としての生存本能が危機を促し、無意識ながらに身をかがめると、その直後に俺の頭上を衝撃が迸った。

 偶然だった。俺自身もどうしてこの攻撃を回避することができたのか、全く理解できていない。

 だが、それでもようやく回避できたんだ。力もこの攻撃を回避されるとは思っていなかったと見えて唖然としてしまっている。

 チャンスだ。ようやく手に入れた千載一遇のチャンス。このチャンスを逃す事はできないと気を引き締めて刀を握りしめる。

 

 そしてたどり着いた、力の眼前。やつを間合いに入れることに成功した。

 ここで力も我に返って拳を構えたが、もう遅い。そこは俺の間合いの中。しかも、攻撃を構えるのは俺のほうが早い。

 俺の一撃をのらりくらりと回避することはもうできない。

 奴の背後には機械があって避けることはできない。俺のことを舐めていたから位置を変えようとしなかったんだ。

 それがこいつの驕りであり、その傲慢さが招いた結果だ。

 

「《炎天双画(えんてんそうが)》」

 

 双剣を発動し、一振りで左右からの同時斬撃を放つこの技は、一撃高火力を出す《日輪一閃(プロミネンス)》に次いで高火力を出せる。

 反応に遅れた力にこれを防ぐすべなど存在しない。

 だからこの一撃は真っ直ぐ力へ向かっていき、ついに俺の攻撃は直撃した。しかもこれは双剣だから二撃だ。

 

「があああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 力の叫び声が響く。

 ついに一矢報いることに成功した。このまま畳み掛けよう、そう考えてさらなる攻撃を構える。

 

 が、その直後に脳天へと頭蓋骨が割れるんじゃないかと思ってしまうほどの衝撃が走り、視界が歪んだ。

 波打つように視界が歪み、靄がかかったように霞む。

 まともに俺の視界が機能しなくなったことを認識するのと同時に意識がどんどんと遠のいていくのを感じた。

 そこでついにここまで無理してきた反動も同時に襲いかかってきて、急速に俺の意識を闇の底へと引きずり込んでくる。

 

 悔しい。

 やっとの思いで攻撃を届かせることができたというのに、ここで終わってしまうのかと、まだまだやれるという自分の気持ちとは裏腹に体は限界に到達していたようで、アドレナリンが切れるのと同時に体は言うことを効かなくなり、そしてついに俺の意識は――




 はい!第215話終了

 えー、いつもならば数話に分けて書くような内容なのですが、まぁこんなところで時間を書けている暇はないということで、6000文字かかりましたが、一話にまとめて書き上げました。

 どうです? いつもと違って今回の戦いではなるべく擬音を使わないということを意識して書いてみました。

 擬音が使えないだけで表現がかなり難しかったのですが、それと同時にこういう縛りを貸して書くと自分の文章力の向上を実感できていいですね。

 実は最近、WEB版のリゼロを読みまして、音を音として書いていなく、全て文章のみで表現していたので、それにとても感銘を受けまして、ならこれからは擬音ではなく、文章で表現できるようになろうと思った次第です。

 それと同時に、他の文でもだいぶリゼロに影響されている文もあるかもしれません。

 というわけで、これからはなるべく音を使わないように意識して書いていきたいと思います。

 それでは!

 さようなら
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