それでは前回のあらすじ
スカイに不時着した飛行船。
運良くも全員無事ではあったが、動けるのはルーミアと天音の二人だけのため、振り落とされてしまった黒葉と咲夜を二人だけで探しにいく。
この中で戦えるのはルーミアだけという状況に不安を抱える二人ではあったが、じっとしていても始まらないため、二人はまず近くに落ちた咲夜を探しにいくことにしたのだった。
それではどうぞ!
side三人称
「ねぇ、本当にこっちに飛んで行ったの?」
「うん、かなり広いから歩いていくとなるとどうしても時間かかっちゃうね」
二人はしばらく歩いていたが、咲夜の姿が見当たらないことに不安を抱いていた。
この島は円形、その外周を歩いているのだから必然的に歩く距離が長くなってしまうのは仕方がないことなのだが、その目的地にたどり着くまでの距離が長いため、歩けば歩くほど不安を抱いてしまう。
ルーミアとしては早く咲夜と合流して自分が最前線で戦わなくても大丈夫な状況を作りたいものなのだが、なかなか咲夜を見つけることができなくて焦っている。
そもそもとして二人はある可能性を失念していた。
それは咲夜がもう移動してしまっていて天音の記憶とは違う場所に行ってしまっているという可能性。
そうなってしまえば霊力を探知することができない二人では咲夜を探す方法なんて無くなってしまい、合流できる可能性は絶望的になってしまう。
ルーミアが樹海を使えば周囲の気配を探ることはできるかもしれないが、それは気配だけで咲夜の気配をピンポイントで探るなんて離れ業はできないのだ。
その可能性が一瞬でも頭に浮かび上がらないのは二人が二人だけでスカイに放り出されてしまったことによって緊張と不安によって思考能力が鈍ってしまっているせいだ。
そのため、そこに居るかもわからない咲夜を探して二人は歩く。
けれどもあるけどあるけど見えるのは草原。上空からではわからなかったが、かなり広大な大地が広がっているため、どれだけ遠くに目をやったとしても見えるのは外周の草原だけというこの状況も不安を抱く要因となって居る。
特にこんな場所では隠れる場所もないため、万が一敵に見つかってしまった時は真っ向勝負をするしか無くなってしまう。
「お兄ちゃん、大丈夫かなぁ」
「急にどうしたの?」
天音が小さく呟いた。
今は咲夜を探しに行って居る時のため、急に黒葉の話をしたことにびっくりしてルーミアは問い返す。
すると天音は青々と雲一つなく輝く空を見上げながら言った。
「今日は晴天だからさ」
「あっ」
そこでルーミアは思い出した。
生憎にも今日は雲一つない晴天。屋外に居たら雲などに遮られることはなく直で日光を浴びることになってしまうが、黒葉は吸血鬼のため、日光を浴びてしまうと灰になってしまうというのがある。
もし、身を隠すものが近くにない場所に落下してしまったらそのまま燃え尽きてしまうかもしれないというのがあるため、その考えに至ったルーミアの顔は青ざめてしまった。
「ど、どどど、どうしよう! こ、こここ、黒葉が死んじゃう!」
「落ち着いて、今更あたしたちが慌てたところでどうしようもないから」
「だからさっきからどうして落ち着いてるの!」
「いや、あたしも慌ててるよ」
「慌ててる態度じゃないよ、それは!」
天音は黒葉を兄と慕うようになってから少し感情が戻ったため、天音のいう通り確かに少し不安も感じて居るし、慌ててもいる。
この状況で咲夜が移動しているかもしれないという大事な条件を見落としてしまうくらいには冷静じゃない。
ただ、やはり強化プログラムの影響で感情の起伏が少なくなってしまっているため、ルーミアから見たら冷静だと思ってしまうのだ。
もし天音に感情が普通にある状態だったら黒葉が死ぬかもしれないということに気がついた瞬間、泣き崩れてしまっていたとしてもおかしくはない。
「そんなことよりもさ」
「は、話をそらした」
「あそこに教会が見えるよね。落ちて行った方角的にもちょうどここら辺だし、ちょっと入って見ない?」
「いや、見えないんだけど……」
視力が明らかにおかしい天音は一足先に教会を発見し、報告するが、ルーミアの目には埃みたいな小ささで何かがあるなと思う程度なため、改めて異常な天音の視力を実感してルーミアは天音にジト目を向ける。
明らかに埃程度の大きさでしか見えないのだが、天音の目ではしっかりと教会に映っているのだ。
「およ、なんか人がいるみたい。二人いるね」
「だから、おかしいんだよね。私はまだそれを認識できる距離にいないんだよ」
ある程度の大きさで埃程度の大きさではあるものの、まだ何かあるな程度に認識できる教会とは違い、人影なんてものは微塵も見えちゃいない。
完全にルーミアの認識の外の存在なのだが、なぜかをそれを人として認識できている。
ルーミアは天音の視界がどうなっているのか、ちょっと怖く感じてきて居たものの、ここまで来ると逆に気になってきたため、その視界を一度見てみたいと考えてしまった。
「血の臭いだ」
「あ、本当だ」
「これは感じるんだ」
「私も人喰い妖怪だからね」
最近人を食っていないことから忘れられがちではあるが、ルーミアは人喰い妖怪である。
そのため、人の臭いや血の臭いにはかなり敏感であり、その嗅覚に関しては天音と比べても遜色ない程度である。下手したら天音の嗅覚を超えてしまうかもしれないというレベルで血の臭いに対しては敏感なのだ。
しかも、その臭いが漂ってきている方角が直感的に理解できる。そのため、この血の臭いがどこから風を漂って香ってきているのか認識したのだが、この血の臭いやその方角を把握したことによってルーミアの顔に焦燥が浮かび上がって突然教会へ向かって走り出した。
「ちょ、ルーミア!?」
突然走り出したルーミアに驚いた天音は後から続いて追いかけるように走り出したのだが、妖怪であるルーミアと一般人程度の体力しかない天音では歴然の差が存在し、天音はどんどんと突き放されていく。
ルーミアには天音を気にしている余裕などなかった。
この血の臭いは何度も嗅いだことのあるものだし、自分の感覚が正しければかなりまずいことになっている。
焦る焦る焦る。
慌てて走っているせいで足がもつれて転びかけるが、それでも強引に足を動かして体制を立て直し、足が痛むとかは関係なしに走り続ける。
嫌だ。
嫌だ嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ。
「はぁはぁはぁ」
妖怪だから体力には自信があり、走り疲れたというわけではないのに息が上がる。
近づくほどに濃くなっていく血の臭い。
ルーミアの中で疑念であった可能性は確信に変わっていた。
どうにか間に合ってくれと願いつつ臭いが漂ってきている教会の裏手側へと回り込んで臭いの現場に飛び込んだ。
そこで見えた。最悪の光景、探し人である咲夜が体の至る所から血を流しながら地面に倒れこみ、その目の前には真っ黒なドラゴン頭が大きい口を開けて迫っている。
少し離れたところにはマントに王冠という奇抜な格好をした男が立っている。
咲夜はおそらくあの男にやられてしまったのだと理解したルーミアはとりあえず咲夜を救い出すために咲夜の目の前に居るドラゴン頭に向かって突っ走る。
なりふり構ってなんか居られない。
魔理沙がやられてしまった時、自分は何もすることはできなかった。でも、もう誰も親しい人を失いたくない、その一心で突っ走り、そして——
「やめろぉぉぉぉぉぉっ!!」
全力を込めた拳をドラゴン頭に真横から叩きつけた。
その衝撃でドラゴン頭は怯み、そのまま消滅。消えたことを確認したらルーミアは咲夜と男の間にかばうようにして立つ。
咲夜の傷ではもうこれ以上動くことはできないだろうから、ここは自分が戦うしかない。
ルーミアの覚悟は完了した。ついさっきまで自分一人で戦うというのは本当に怖かったのだが、今のルーミアには恐怖という感情は一ミリも存在していなかった。
今のルーミアにあるのはただ一つ、咲夜を助けたいという勇気。
「なんだい、君は。今いいところだったのが見えなかったのかい? 僕には向かってきた愚か者を断罪するところだっただろう。それを邪魔するって君は何の権限があって邪魔しているんだい? 悪いことをしたら罰せられる、それはこの世の常識だろう? 悪いことをしたのに罰を回避できるっていうのはちょっと横暴が過ぎるんじゃないかい? そもそも、君はなんなんだ。急に僕の攻撃を邪魔してきたけどさ、邪魔をするっていうことは君もそれ相応の覚悟はしてきたんだろうね。だってそうじゃないか、断罪を邪魔したっていうことはそれを邪魔した君も罪に問われる、それは当然のことだよね。僕は本当にこんなことしたくないんだよ? 特に僕にとって女の子っていうのは宝みたいなものだからさ、守りたいって常々思っているわけよ。でもさ、悪いことをしたのにそのままっていうのも筋が通らないわけじゃん? だから僕は女の子を傷つけたくなんてないけど、心を鬼にしてこうして敬意を持って断罪しているわけよ。そんな僕の覚悟を踏みにじるって許されない行為だよね。それってさ、僕のその子への敬意を踏みにじる行為だっていうのがわからないわけ? 人の敬意を踏みにじるっていうのはね、誰であろうと許される行為ではない、たとえ君のような子供であろうとも決して許される行為ではないんだ。だから君のような美少女を傷つけなければいけないっていうのは非常に心苦しいんだけど、君にも罰を与えなければいけなくなってしまった。罰は悪いことをした全ての人に平等に与えられるべきなんだからね。だから僕、五天魔王『第二席』桑間龍は君に敬意を持って罰を与えることにするよ。もう嫌なんだよね、どうして僕の気持ちをわかってくれないかな。でも、仕方がないから僕は僕の責務を全うすることにするよ。だからその前に、君の名前を聞かせてくれないか?」
「る、ルーミア」
「ルーミアちゃんか、いい名前だね。可愛い君にぴったりの可愛い名前だと思うよ。君の名前はしっかりと僕の記憶に記録した。君のような美少女がこの世界に存在したということは決して忘れないよ。僕は全ての女の子に対して紳士だからね。あぁ、どうしてだ。どうして神は僕にこのような役目を託したのだろう。僕は女の子を傷つけたくなんてないというのに、それに君はまだ小さいじゃないか。君もその少女を助けなければこんなことにはならなかった、君のミスだ。ミスは罰によって贖われなければいけない。それがこの世のルール、常識だ。だから、これからルーミアちゃんにも罰を与えることにしよう。できるだけ抵抗いないで居てくれたら嬉しい。僕だって必要以上に女の子を傷つけたら心を痛めてしまうのだから」
ずっと喋っている龍。
ルーミアの第一印象は「なんだこいつ」だった。
もちろん敵意はあるし、警戒もしている。だが、龍の長ったらしい演説のような台詞にルーミアは唖然としてしまっていた。
よくもまぁ、これほどまでに自分を正当化して喋ることができるよなと、嫌気がさしてくる。
名乗ったのも名乗らなければさらにどんどんと長い台詞で責め立てられるのではないかと考えたからなのだが、それでも長い台詞を浴びせかけられるのならば答えなければよかったかと後悔する。
そしてルーミアは名乗りを聞いて確信した。
こいつがパチュリーの言っていた五天魔王の桑間龍、レミリアを攫った今回の敵。
ゴクリと音を立てて唾を飲み込む。
咲夜ですらこれほどまでにやられてしまう相手ともなるとルーミアでは対抗できるか怪しいものではあるのだが、それでもやらないことにはここで全滅してしまう。
覚悟はもうとっくに決まっている。
元々自分一人で戦うつもりではあったため、置いてきてしまった天音のことについては全く気がついていなかった。
それよりも目の前の龍に集中をする。
そして、周囲に弾幕を展開したその直後、何かに右から突撃されたルーミアはそのまま真左へとぶっ飛ばされることになってしまうのだった。
はい!第221話終了
ルーミアVS龍ということなのですが、あそこでルーミアが名乗っていなければもっと長文で激昂されていましたね。
なので、一応答えるのが正解なのでした。
あとですね、一応ルーミアは樹海を使えるものの、咲夜が樹海で攻撃を察知して回避していたのは咲夜の樹海の精度が高いからというのがあるので、それに対して劣るルーミアの樹海では察知して回避は不可能に近いですね。
最後の真横からの攻撃も咲夜だったら回避することだってできました。
そこら辺が実力の違いというのを感じますね。
あそこまで龍をボコボコにすることができていたのだって咲夜だからこそなので、ルーミアで対抗することはできるのでしょうか?
ちなみに龍の動き自体は素人同然なので、龍が反応できないくらいのスピードで接近すれば時間を止めずとも攻撃を当てることは可能だったりします。
まぁ、未来を見ることができる龍は事前にどんな攻撃を仕掛けてくるかを把握することだってできるので、攻撃を当てるのも至難の技なわけですが。
あ、紅魔館に現れた時に絶大な霊力を感じたとか言っていたのを訂正して不気味な気配を感じたに変更しました。
こいつがそんな絶大な霊力を持つわけがねぇ。
ちなみに、紅魔館の時の身のこなしはかなりいいと思いますが、それは初期の設定では武術の達人ということになっていたからですね。
ただ、それでは能力も相まって黒葉たちに勝ち目がねぇと感じたため、変更して今の能力がなければ素人設定に変更しました。
なので、紅魔館での一件は未来を見ることができるからということで納得して置いていただけると幸いです。
本当に勝ち目がなくなってしまいますので……
月刃も当初すごい困りました。自分で作り出したキャラクターではあるのですが、あいつチート性能もりもりだったので、どうやって倒そうかと。
二章で倒したいというのは考えていましたし、最初にやられた咲夜がやり返して月刃を倒すという流れもやりたいと考えていたんですけど、如何せん咲夜だけじゃ勝てない気しかしなくて、そこで威迅も当てたんですけど、やっぱりみんな共通認識ではあるとおいもますが、そこまでしても勝てる気がしないんですね。
なので、伏線として茉衣にスタンガンを持たせたんですよね。
殺すことは不可能なので、これで意識を刈り取ってしまいましょうということです。
ただ、さすがに龍さんに関しては下方修正せざるを得ませんでした。
武術の達人となったら勝てる人は本当の上澄み、天魔やカイ、霊夢くらいしかいなくなってしまうので。
というわけでご了承ください。
それでは!
さようなら