【3章投稿中】東方妖滅録   作:ミズヤ

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 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 ルーミアVS龍。

 ルーミアは未来を見られないように《W.O.N》で能力を妨害する。

 しかし、龍は対抗手段として全周囲に見えない壁を展開してきた。

 龍の見えない壁は加護による力、ルーミアの樹海では能力しか妨害することができないのだ。

 攻撃を当てることができず、困り果てていると突然の声。

 驚いて樹海を解除すると、言霊によって見えない壁が掻き消され、ついに攻撃がヒットしたのだった。



 それではどうぞ!


第223話 逃げるためには

side三人称

 

「ま、にあった……」

 

 天音の安堵の声が響く。

 天音自体の身体能力は普通の人間程度のものしかない、そのためルーミアにおいていかれた後、息を切らしながら必死に追いかけてきていたのだが、たどり着いて見て見たらルーミアがピンチになっているのだ。

 感情が薄い天音はそこまで感情が現れていないが、これ以上ないほどに焦燥感を抱いていたことには変わりない。

 それは表情には出ていなくてもその呼吸から現れている。

 息を荒くして肩を上下させている天音だが、それは走ったから息が乱れているというだけじゃなく、焦りによるものも多分に含まれているのだ。

 

 あと数秒遅ければルーミアはやられていたことだろう。

 間一髪という言葉がこれ以上なくふさわしい状況だった。

 

「はぁ、はぁ……る、ルーミア、ルーミア手を!」

「え、う、うん」

 

 息を切らしながら必死にルーミアに駆け寄り、手を伸ばす天音。その手をルーミアは戸惑いながらもしっかりと掴む。

 天音と目配せをして意図を理解するとルーミアは咲夜を担ぎ上げ、二人は逃げ出した。

 天音は二人の戦いを見ていて自分が混ざったところで勝てないということは理解した。黒葉の全力集中状態ほどではないが、天音も観察眼がある。その目で見ているとルーミアがどれだけ攻撃をしてもダメージが一瞬で回復する上に未来を見られて攻撃はなかなか命中せず、一方的に攻撃されてしまう。

 どう考えても二人だけでは勝つことは不可能だ。

 

 天音の能力を使えば命のない龍が作り出したドラゴン頭は消せるかもしれない。だが、それだけだ。

 ダメージを与えられないのにどうやって攻撃するのだろうか。

 その方法をまずは編み出さなければ龍に勝つなんて不可能だ。だから天音はルーミアと咲夜を救出して逃げることを選んだ。

 

 龍が全回復する前になんとか龍の射程範囲外に逃げなければと必死に走る。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、う、運動不足かな。もうちょっと特訓するべきだったかなぁ」

 

 基本戦闘要員ではなかった天音はあまり体を鍛えるということをしてこなかったことを後悔した。

 能力や驚異的な五感こそあれど、肉体強度や身体能力に関してはほぼ一般人レベルしか無いのだ。だからボロボロであるルーミアよりも早く息を切らしてしまう。

 

「天音大丈夫?」

「だい、じょうぶ。こんなところで死ぬわけにはいかないから!」

 

 兄である黒葉を見つける、それまでは絶対に死ねないという強い想いを糧にだんだん重くなっていく足を必死に前へ進める。

 早く早く早く!

 遠くへ遠くへ遠くへ!

 できるだけ遠くへ、あいつが干渉できないくらいに遠くへ、姿が見えないくらいに遠くへ――

 

「かはっ」

 

 ルーミアに手を引かれる形で走っていた天音が前方へ吹っ飛び、突然の出来事に思わずルーミアは手を離してしまった。

 弾かれるようにルーミアが天音の元居た場所を見てみると、そこにはさっきまで嫌と言うほど見ていた漆黒のドラゴン頭が出てきており、すぐに天音はこのドラゴン頭の頭突きによってぶっ飛ばされたのだと理解した天音はすぐさま距離を取った。

 すでに大概の能力なら効果範囲外となるであろう位には離れた。でも、ここまでドラゴン頭が来たということは本当に龍の加護は見える範囲にはすべて攻撃できるようなとんでもなく広範囲の攻撃なのかもしれない。

 

 龍のことは気になるけど、今は取り合えずぶっ飛ばされた天音のほうが気になる。

 だからルーミアは龍を放置して天音がぶっ飛ばされた方へ駆け寄る。

 だが、それは悪手だ。

 相手はどんなに距離を離れていても攻撃できる遠距離攻撃の化物みたいな能力の持ち主だ。

 そんな相手に背を向けてしまえば攻撃してくれと言っているようなもの。

 

 ルーミアの背からドラゴン頭が迫る。でも、ルーミアは必死になりすぎてドラゴン頭に気がつくことはなく天音へ駆け寄る。

 ルーミアとドラゴン頭の速度はほぼ互角。ルーミアが立ち止まったりなどしたらまず間違いなく噛まれるであろう。

 

 天音はぶっ飛ばされて強打した箇所を手で擦りながら起き上がり、目を見開いて驚愕した。

 なぜなら、天音の見た光景というのはルーミアの背後から迫る実に約15体ものドラゴン頭。あれ全てに襲われたら一溜まりもないだろうというのが本能で察せられる。

 だから天音は声に霊力を込めて叫んだ。

 

「"消えろ"」

 

 天音の《言霊》。

 その効果でルーミアの背後のドラゴン頭が一斉に霧散した。見た目はドラゴンなので、生物判定なのか天音は能力を使うまでは不安だったものの、どうやら生物判定というわけではなく、弾幕と同じで霊力の塊だったことで天音の能力の対象となるのが唯一の救いである。

 ただ、生物ではないため喉への負担は少ないものの、それでも霊力の消費と喉へのダメージは多少なりともある。

 これをずっと続けているということも不可能だ。

 

 龍はずっとドラゴン頭を使っているけど、霊力が減っている様子が見れない。つまり、龍は霊力の消費無しでドラゴン頭を使っている可能性があるということ。

 この考えが正しければ龍にガス欠という概念が存在しない。長期戦となってしまった場合、不利なのは明らかだ。

 なんとか逃げたいものの、逃げようとしてもこのように妨害される。

 

 天音は頭を捻る。

 咲夜は気絶をしてしまっている様子だ。そのため、この場で一番頭が回るのは天音となっている。

 だからこの状況を切り抜ける方法を天音が編み出す必要がある。だが、どう考えてもこの三人でこれ以上の犠牲もなしに逃げることができるビジョンが見えない。

 何をやっても龍に妨害をされてしまう運命しか見えないのだ。

 

「ちょっと、人のことを殴っておいてそれでとんずらってそりゃー無いでしょうよ。通り魔だよ通り魔。全くどうかしているよ。それに、人の力をなんだと思っているのかな、勝手に僕の能力を解除するってそれって本当に人のやることなのかな? 人の能力に勝手に鑑賞するなんてご法度もいいところだよ、あれは僕の力だ、僕だけが出したり消したりすることができるんだ。それを他人である君がやるっていうのは少し横暴が過ぎるんじゃないかなぁ? さすがの僕もこれに関しては許すことはできないよ。あれは僕を僕足らしめている個性の一つだ! 君はそんな僕の個性を否定したということに他ならない。つまり、君は今、僕という存在を軽視、軽んじて否定したということになる。僕はただ、この島で平和に何不自由なく暮らしたいだけだと言うのに、君たちは僕の楽園に土足で入り込んで、僕に対して随分と好き勝手してくれたね。そんなに僕に敬意を払わないというのなら、僕だって敬意を払う必要なんて無いよね。僕は今まで我慢してきた。君たちの横暴や、僕への数々の非礼。君たちは一体何様のつもりなのかな? 例え何であろうとも、他人の幸せを破壊していい理由にはならないんだ。だから君たちのやっているそれは悪だ、極悪だ。僕の幸せを、僕の安寧を、僕の存在を、侵害してくれた代償は大きくつくよ。このまま生きて変えることができると思わないことだ。僕に敬意を払わない君たちに、僕も敬意を払うつもりなんて無くなった! 君たちは今ここで全員細切れにしてくれる!」

 

 憤慨しながらゆっくりと歩いてくる龍。

 あれは今までの余裕を持った姿とは違う。額に青筋を浮かべ、相手を殺すことしか考えていないといった表情。

 今までの舐めプによって何とか戦えていたルーミアでは間違いなくもう攻撃を加えることはできないだろうし、なんだったらどれくらい持つのかもわからないくらい。

 天音の能力が龍を怒らせてしまったのだ。

 

 今まで鉄壁の防御力を誇っていた龍の見えない壁が彼女の能力によって消滅させられてしまったのだ。

 こんな屈辱、龍も受けるのは初めてで、どうしようもなく怒りで満たされてしまったのだ。

 だから彼がまず一番に狙っているのは天音、彼女を殺すまでは彼の怒りが収まることはないだろう。そして、天音を逃がしてくれることは絶対にない。

 

 でも、逆に言えば、天音を一番に見ているからこそ、ルーミアと咲夜は後回しにされており、天音が囮になって気を逸らしさえすればルーミアと咲夜の二人だけでは逃がすことができるかもしれないという事実。それに天音は気がついてしまった。

 天音ももちろん死にたくはない。黒葉にもう一度会いたいし、抱きつきたい。

 助けてと叫びたい。逃げたい。死にたくない。

 でも、どんな状況でも比較的冷静で合理的な判断を下すことができる天音が自分を選ぶということは不可能だった。

 

「ふ、ふふふ」

「あ、天音?」

 

 天音が地面を蹴った。

 突然のことにルーミアは反応することができずに固まり、ルーミアから勢いよく離れていく。

 

 怖い怖い怖い、死にたくない死にたくない死にたくない。

 でも、それでも、あの二人が死ぬよりは自分が死んだほうがまだマシだ。

 もともと自分は敵なのだから、今更自分が死んだところで何も変わらないと自分に言い聞かせる天音。

 僅かに感じる恐怖で心臓がドックンドックンとまるで太鼓が叩かれているんじゃないかと思うほどの爆音を奏でる。

 

「死にたくないけど、それでみんなが逃げられるなら……お〜にさん、こっちだよ〜」

「ねぇ、それってどういうことなのかな? 君一人程度で僕の時間を稼ぐことができると思っているのかなぁ!? それってあまりにも浅はかが過ぎるんじゃないかな! 僕を舐め過ぎだろう。僕に対して失礼だとは思わないのかな!!」

「"消えろ"。思わないよ。だって、あなたじゃあたしを殺すことなんてできないんだからね」

 

 ドラゴン頭を放つ龍とそれを消滅させる天音。天音が立ち位置を変更したことによって簡単に二人の一対一の構図が出来上がってしまった。

 

 逃げて、二人とも。

 そんな天音の願いが届いたのか、ルーミアは一瞬苦い表情を浮かべるが、そのルーミアの気持ちを汲み取り、咲夜を背負って全力で逃げ出した。

 龍は天音にご執心、天音を殺さなければ他の人を嘔気にもなることはないだろう。だから、天音の目論見は正しかったのだ。

 

「お願い、二人とも。龍の倒し方を見つけてどうにか倒して」

 

 天音は覚悟を決める。

 ドラゴン頭は天音に当たることはない。でも、必ず天音のほうが先にガス欠が来る。

 龍とタイマンなんてしたら間違いなく天音が死ぬというのはわかっているが、天音は意外にもこの行動に後悔なんてなかった。

 もともと、天音は自分の命を捨てるつもりだった。それがちょっと伸びて、しかもおまけに自分の大好きな黒葉というお兄ちゃんに甘えることだってできた。

 天音に思い残すことなんてなにもない。天音自身もそう思っていたのだが――

 

「はぁ、なんで泣くかなぁ。これじゃあ僕が悪者みたいじゃないか。イヤダイヤダ、女の子の悪いところだよ。泣いたら何でも自分の思い通りになると思ったら大間違いだ」

「え」

 

 龍に言われて気がついた。

 天音の頬には涙が伝っている。泣いていたのだ。

 感情が薄いと言うのに涙を流してしまうほどに感情が高ぶっている。

 今回の案件だって後悔しているわけじゃない、満足しているのに、だと言うのに。

 人というのは一度贅沢を味わうとまた更に味わいたく、そしてさらにそのもっと先まで味わいたくなってしまう。

 

 死を覚悟した。

 でも、やっぱり――

 

「死にたくないなぁ」

 

 思わずそんな言葉をこぼしてしまうのだった。




 はい!第223話終了

 2章でルーミアとフラン、咲夜を逃がすために戦った魔理沙、そして今回ルーミアと咲夜を逃がすために戦う天音。
 構図が同じですね。

 さて、ここから天音VS龍が始まるのかと思ったら、始まりません。
 ここも魔理沙と同じ流れで逃げていったルーミアと咲夜の視点となります。

 天音と龍の戦いの結末は現状、神のみぞ知るといったところですね。

 それでは!

 さようなら
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