それでは前回のあらすじ
咲夜が目を覚ました。
ルーミアは咲夜が目を覚ましたことに気がつくとパニックに陥って謝り続けたため、落ち着くまで待つ。
やがて落ち着いてから聞いてみると、ルーミアの口から咲夜にとって衝撃的な一言が放たれた。
それではどうぞ!
side咲夜
今、ルーミアはなんて言った?
天音が一人で私とルーミアを逃がすために龍と戦っている? 私は今の今まで天音は別の場所にいるのだとばかり思っていた。そんな幻想を抱いていた。
でも、少し考えればわかることだった。
ルーミアと天音は同じ船内に居る状態で不時着して、この土地勘もなく敵が潜伏している島では別行動をするのは自殺行為。一緒に行動をしていると考えるのが普通だ。
どうして気が付かなかった? いつもならここまで思考が回っていたはず、私も気が動転していたんだろう。
自責の念に駆られてしまう。
今までの私はどれだけ呑気だったかということを思い知らされているかのような気分だ。
気が付いていたところで今の私とルーミアが戻ったところで犠牲者が二人増えるだけ……何の意味もない。だから気が付いていても何が出来たというわけではないということは分かっている。でも、それでも今まで呑気だった自分が許せない。
どうして私はルーミアの様子を見て事態を察することが出来なかったんだろう。どうしてどうしてどうして
思考が頭の中をぐるぐると廻る。
もしあの時、冷静に穏便にあの場を去ることが出来ていたのならば、もし休憩所として選んだのが教会じゃなければ、もし、もし、もし、そんなifの可能性を考え、そして後悔する。
そんなことを考えても意味がないというのに。
「私と天音は龍の隙を突いて咲夜を担いで逃げようとした。でも、無理だった」
当然だ。
龍にはお嬢様と同系統の能力が備わっているし、視界の範囲内に自由に出すことが出来るドラゴン頭もある。あれから逃げるというのは容易ではない。
ただでさえ難しいというのに私という足手まといを担いでいる状態だと猶更だろう。
「天音の能力を使えばドラゴン頭を無効化できる。だから天音は囮を買って出たんだと思う」
「そんな……」
確かにルーミアよりかは龍の力に対抗できるかもしれない。でも、それでも天音の身体能力に関してはそこまで高くはなかったはず。
いくら加護を無効化出来るからってそう上手くずっと逃げ続けることが出来るものなのか?
「いや、無理よ」
龍と戦った私が一番よくわかってる。
あいつの力はその程度で何とかできるほど甘いものじゃない。
加護の対処が出来たとしても奴は未来が見えると思われる。だから逃げても逃げられず、肉弾戦に持ち込まれればスタミナの差で天音は勝てない。
「ルーミア……」
悔しい。
仲間がピンチだと言うのに意識を失っていた自分が恥ずかしい。
でも、ここで落ち込んで泣いている場合じゃない。私が統率しなければ、お嬢様に期待されているんだからその期待に答えないと。
私が蹲っていたってただいたずらにルーミアに不安を与えるだけ。それよりも今は次にどうするかを考えなければいけない。
天音のことは心配。でも、ここで戻っても天音の頑張りを無駄にしてしまう。
「ルーミア」
そんな顔しないで。
大丈夫、私は大丈夫。
そんなに心配しなくても大丈夫。私は冷静、ちゃんと状況を見れている。
心配しなくても私が導くから。大丈夫。
大丈夫……。
大丈夫…………。
「ルーミア」
私はその場で立ち上がって不安そうにこっちを見てくるルーミアの頭に手のひらを置く。
わかってる。やるべきことはわかっている。
黒葉は大丈夫なはず。黒葉は最初に出会った時よりも圧倒的に強くなっている。だから今はまずは情報収拾。龍を倒す方法とこの島について調べて龍の不死身を暴かなければ勝てない。
不死身の人なら一人知っている。藤原妹紅だ。
でも、彼女とは系統が違うような気がする。単純に再生している。ダメージが通っているようにも見えない。
「ルーミア、まずはこの街で聞き込みをするわよ。話はそれから」
「うん、わかった」
ルーミアの手を取って立ち上がらせてあげる。
街の中にいれば人混みに紛れることだってできる。龍に見つかりにくくなるだろう。
私とルーミアは手を繋ぎ、そして街の中へ繰り出した。
黒葉と天音の無事を祈って。
side黒葉
「くそ、くそ、くそぉっ!」
手足を動かす度にガチャガチャと鎖の音が響き渡る。
身動きが取れない、四肢が壁に鎖で繋がれているからだ。腰に差していたはずの刀もいつの間にかなくなっている。取られたんだ。
目を覚ましたら俺はこの薄暗く冷たい牢屋の中に閉じ込められていた。
気絶している間に運び込まれてしまったんだろう。
武器の類は何もない。この鎖に繋がれているとうまく霊力を操作することもできない。霊力を使おうとすると鎖に吸い取られるような感覚がある。
俺たちのような霊力を使える人を逃さないためのものだろう。妖力も同じ、全くうまく使うことができない。
本当に俺は動けなくなってしまったみたいだ。
詰み。あの時キレてしまったことで相当やばい状況になってしまったらしい。
だから風魔は俺を連れて力が来た時に物陰へ隠れたんだ。力に見つかったり喧嘩を売ったらまずいと言うのがわかっていたからだ。
風魔はあの場所のことを知っていた。ヤケに詳しかった。この島のやつらは何かおかしい、工場内で働いている人たちならわかるけど、俺たちが飛行船で突入して来たことを屋外で働いている人たちも気がついていないみたいだ。
だから何らかの方法でこの島にいる人たちにも工場で働いている人たち同様に催眠をかけられていると考えられる。でも、風魔はどうやら正気みたいだった。
怪しい。
でも、風魔は俺を助けようとしてくれた。
力の仲間なんだとしたらどうしてこの島の闇を明かすように工場へ連れて行った。力から守るように物陰へ連れて行った?
何もわからない、わかれない。もう一度風魔に会って話をしなければいけない。
じゃないと風魔の目的がわからない。
最初の時にどうして助けたのかの答えもうまくはぐらかされたような気がする。
風魔のことを知らないと。風魔のことを知ることが力や龍、この島を攻略することにつながると思うから。
「っ!」
瞬間、窓も無いこの空間に風が吹いた。
一瞬だけだが、肌を切るんじゃないかと思うほどに鋭い突風。それと同時に金属音が鳴り響き、俺の四肢を固定していた鎖が一瞬で粉々になって動かせるようになった。
目の前にある鉄の檻もバラバラになり、俺が通ることができるくらいの隙間が出来上がる。
突然のことだった。前触れもなく突然に起こった。
そして俺は目を見張る。
檻の前に立っていたのは軍服を着用し、両手に短めの剣を携えた男。
「風魔……」
俺の探し求めていた男、倉風魔だった。
その表情はこれ以上なく冷たく、全てを諦めたような表情に見える。
今まで俺が見て来た風魔の優しそうな表情はどこへやら。冷たく虚ろなその目は真っ直ぐに俺を見つめて来ている。
お互いの動向を窺うようにじっと目を見合う。
そしてついに風魔は口を開いた。
「これでここから出られるはずだよ」
はい!第225話終了
咲夜とルーミアは探索、黒葉は牢屋からの脱出を目指します。
しかし、咲夜の精神状態がかなり心配ですね。途中でおかしくならなければ良いのですが。
風魔の目的が不明ですね。
この島の人間にしては少し変であり、ただ黒葉を守るように動いているんですよね。
敵だとしたら黒葉を牢屋から助けるような真似をするはずがありませんし。
さて、ここからは再び黒葉のターンです。
それでは!
さようなら