それでは前回のあらすじ
ルーミアから天音が囮になったという話を聞かされて混乱する咲夜。
だが、自分がしっかりしないとと自分を奮い立たせ、ルーミアとともにこの街のことについて調べ始める。
一方、黒葉はどこかの牢屋に閉じ込められていた。
霊力も封じられ、絶望していたところに何と風魔が現れて牢屋を破壊したのだった。
それではどうぞ!
side黒葉
「これでここから出られるはずだよ。ここから出たら君は真っ先にスカイから脱出するんだ。ここに囚われた時点で龍に目をつけられた。だから何かされる前に逃げるんだ。そして龍に見つからないようひっそりと暮らせ」
「ちょ、ちょっと待って」
目を覚ましたらこの牢屋にいて、何もわからない状態で風魔が鎖と鉄格子を破壊したことで混乱が余計に増幅された。
この状態で一気にまくし立てられたところで何も理解できない。すでに俺の脳はキャパシティーを超えているのだからやめてほしい。一回状況を把握させて欲しいところだが、風魔はそれを許さんとばかりに真顔で圧をかけて来ている。
質問は許さない、何も言わずにさっさと行けという言葉が聞こえてくるようだ。
でも理解できないものは理解できないのだ。
「風魔……」
「黒葉君、君の目的はわかっている。
聞いていた?
どういうことだ。誰に? ……いや、分かりきっている。
俺たちの目的を知っているとしたら龍たちに限定されている。それに洗脳されていないということも考えるとそれしか考えようがない。
だとしたらどうして俺を逃がすようなことを? 聞いていたなら俺が敵であるということはわかっているはずだというのに何で俺を助ける?
「君の大切な人のことは残念だけど、あれに勝てる人は居ないからさ。死ぬことに比べたらまだマシでしょ。死んだらそこで全てが終わりなんだから」
「待ってくれ」
「君の仲間も追って帰させる。安心して、僕に全てを任せるんだ」
無機質な冷たい表情から一変、俺を安心させるような優しい表情。この表情を見ているとやばそうだということを忘れて無条件で信用したくなってきてしまう。
それくらいに優しい表情だ。心が優しいんだということがわかる。
もうちょっと話してみたい。でも、有無を言わなぬという風魔の雰囲気に圧されてうまく言葉が出てこない。
とりあえず落ち着くためにここまでの情報を整理する。
俺は敗北しておそらく寝ている間にこの牢屋に閉じ込められてしまった。それを今、限りなく敵に近しいはずの風魔が助けに来てくれたんだ。
風魔は最初から知っていた。俺らが来たことも、俺らが来た目的も。その上で俺に街を案内して、この島の闇を教えて、力から守ろうとしてくれた。本当によくわからないやつ。
知っているんだ、俺も師匠もルーミアも天音も、そして姉貴のことも。
追って帰す俺の仲間というのは師匠とルーミア、天音の三人のことだろう。諦めるように言っているということは姉貴に関しては風魔ではもうどうしようもないのだろう。
多分風魔は俺の身を案じてくれている。風魔が黒であることはこの態度から見てほぼ確実だと言っても過言ではないけど、心までが真っ黒であるようには見えない。
このことに気がついてから俺の心は妙に冷静さを取り戻した。こんな妙な状況、こんな絶望的な状況だというのに落ち着くのは風魔の優しさに触れたからだろう。
俺はこの島のことについては何も知らない。飛行船がどこに落ちたのかも全くわからない。
でも、この島がヤバイ場所だというのは嫌という程風魔に教えられた。
なら俺がやるべきことははっきりした。
風魔、姉貴を諦めるのは無理だ。
「家族を喪うのってな、死ぬことより辛ぇんだぜ」
「え?」
俺が放った言葉に風魔は面食らったように固まってしまった。
覚悟は決まった。
立ち上がり、風魔が開けてくれた鉄格子から牢屋の外に出る。
牢屋の外も景色は変わらず、無機質な景色が永遠と続いている。とてもとても長い牢屋といったところだ。窓も一切ないから気を失ってからどれくらい時間が経過したのか全くわからない。
でも、そんなことは関係ない。今はとりあえずこの牢屋から脱出して師匠たちと合流する。
そして風魔の横を通り過ぎようとしたその時、背中に隠していた刀を俺に突きつけて来た。
「これ、黒葉君の刀だよ。気をつけてね、脱出するならもしかしたら上にあいつがいるかもしれないから」
「あいつ?」
「あ〜、とにかく誰にも見つからないように気をつけてってこと。じゃないと、本当に命の保証はしないから」
さっきの件があったからもう敵の前に姿を表さないようにと忠告してくれているのだろうか、それとも……。
いや、今はとりあえず誰にも見つからないようにこの牢屋から脱出することだけ考えよう。
風魔から刀を受け取ると風魔の横を通り過ぎて廊下を歩き出す。
「くっ」
痛い。
身体中が痛い。
さっきまでは混乱していたせいか痛みが気にならなくなってたがこうして歩くとなると身体中が痛い。力にボコスカ殴られたからな。
でも、さすが妖怪の肉体といったところだ。人間の肉体だったらあの戦いで死んでいたかもしれない、もっと重症だったかもしれない。治りかけているんだ。
確かにこれは敵に見つからないに越したことはない。もうしばらくしたら普通に動けるようになるくらいのダメージではあるけど、今は戦えない。
今、敵に見つかったら絶望的だ。
でも風魔は見つからないようにとは言っていたものの、両サイドに俺が閉じ込められていた牢屋と同じものがずらっと並んでいるだけの一本道。敵が来たとしてもこれじゃあ隠れることはできないだろう。
幸い、今は誰もいないから大丈夫だけど、ここに監視が誰もいないということはあり得るのか?
なんか嫌な予感がする。
早く、早く脱出しないと。
はい!第226話終了
風魔は優しいんです。優しい人なんですよ!
それにしても、ここら辺の描写って難しいんですよね。
まだ三章の核心に迫るような内容は書きたくないんですけど、書かないと薄くなりがちというのが辛いところです。
それでは!
さようなら