それでは前回のあらすじ
風魔に牢屋から助け出された黒葉。
風魔から脱出できたらスカイから出ろと言われる。
しかし、黒葉は諦めない。
建物から脱出するために黒葉は走るのだった。
それではどうぞ!
side黒葉
どうやら俺が閉じ込められていた場所はどこかの地下牢だったらしい。
一本道だったからそのまま進むと階段が見えてきた。
階段には隠れられる場所なんてなく、敵が来たら隠れることなんて出来ないため、今の俺の体力だと不安が募るが、上に行かないことには始まらないため、胃を決して階段を上っていく。
「はぁ……はぁ……」
多分、俺が妖怪だからこの程度で済んでいるのだろう。力から受けたダメージはまだ大きく残っていて、一歩踏み出す度に全身に激痛が走る。
本来ならまともに歩けないほどのダメージなんだろう。
でも、ここで歩みを止める訳にはいかない。絶対にみんなと合流して姉貴を助けに行くんだ。
一体ここはどこなのか。
ぐんぐんと階段を上っていくとやがて上階から紫色の眩い光が見えてきた。
ここに来るまで見張りのような人は見かけなかった。どうしてここまで手薄なのか、どうしても訝しんでしまう。
頭に血が上って力と戦ったせいで俺は敵に補足されていることだろう。
だからおびき出されているのかもしれない。だってこれほど牢屋付近が手薄なのは考えにくいから。
異常に発光している上階には何があるのか、罠なんじゃないだろうか。そう考えると上りにくくなってしまうが、いつまでもこうして燻っていたって何も始まらない。
姉貴を助け出すには危険は伴うということは最初から分かっていたはずだ。だから俺は腹を括って上階、一階へと足を踏み入れた。
稲妻が迸る。
バチバチと弾ける音が響き、空間を霊力が埋め尽くしている。あまりにも濃度が濃すぎて、霊力探知に長けていない俺が気持ち悪くなりそうなほどに濃い。
霊力の流れが出来上がっている。
霊力というのは体から離れると徐々に霧散していくもので、弾幕のような霊力を使った技とかなら動きがあるのは分かるが、霊力の流れが出来上がることはそうそうない。
つまり、この空間は異常だということだ。
そして異常なものはもう一つ、今俺の目の前に見えている巨大なオブジェ? らしきものだ。ここから稲妻や霊力があふれ出してきているというのが一目見たらわかる。
俺の何倍もある大きさで、怪しく紫色に発光し、台座の上に鎮座しているクリスタルのような物体。そこに龍が使っていたドラゴン頭のようなものが上から噛みついているのが見える。
ゾクゾクと背筋が震えた。
今この場には龍の姿は見えないというのに、まるで龍に睨まれているかのように感じる。
警戒しつつ、オブジェに近づき、台座に手を触れた。
「っ!」
バチッと静電気が走ったような感覚に思わず手を引く。
慌てて手のひらへ目を向けてみるが、手のひらはなんともなっていない。
今の感覚、静電気のような感覚と共に俺の霊力が周囲に拡散されたような感覚があった。
「霊力拡散装置? いや、違う」
霊力が拡散されると共に、俺の預かり知らぬ場所まで発火することが出来そうだと感じた。
つまりこれは能力範囲拡大装置と言ったところか。感覚的に範囲はこの島全域、ということなのだろう。
そしてドラゴン頭がこれに噛み付いているという事はドラゴン頭の攻撃範囲はこの島全域ということになる。だからこそ俺たちが侵入しようとした時、ドラゴン頭が妨害して来たのか。
これがある限り、龍の力の影響はどこまででも届いてしまうだろう。
龍は姉貴を簡単に負かしてしまうほどに強い。だから俺たちが勝つためには龍に有利なこの島の条件を崩す必要がある。
だから、今ここで破壊してしまおうか。
龍にとってこれがどんな意味を持っているのかわからない、だけど不安の芽を摘んでおくにこしたことはない。
いけるはずだ、今の俺の刀だったらこのオブジェくらい簡単にぶっ壊すことができるはず。これで俺が見つかったとて、俺はすでに見つかっているんだから、暴れまわって狙われたところで構うものか。
むしろ俺が暴れまわって撹乱してやる。
集中しろ、船でのことを思い出せ。
あの時俺は部分的にだが、
「っ! びー」
「ねぇ、君」
刀を構え、
背後から膨大な魔力を感じる。魔理沙と同じく魔法使いタイプの人間だ。
だが、その量は圧倒的に——
落ち着け、落ち着いて状況を把握しろ。
慌てたら相手の思う壺だ。こんなところにいるんだから俺にとって敵に決まっている。そしてこのタイミングで現れたと言うことは間違い無く、このオブジェの破壊を妨害しに来たんだ。
それすなわち、暗にこれが重要なものだと公言しているような行動。
大丈夫、落ち着いてチャンスを狙え。そうすれば絶対にあれを破壊するチャンスはやってくるはずだ。
「ねぇってば……無視はちょっと悲しいなぁ」
左肩に手を置き、もう片方の手で反対側の頬を突いてくる。
ダメだ、動けない。下手に動いたらその瞬間に殺されると言うのが本能的にわかってしまう。
ちょっと間延びした喋り方をしていて、天然風を装っているがとんでもない。鍛治師の人里で死ぬほど殺気を浴びて来た俺だから気づくほどに巧妙な殺気隠し。
こいつ慣れている。
「ところでさぁ、子供がこんなところで何やってんのかな? こんな
密着しながら俺の腰につけた刀を優しく撫でてくる。
怖い、でもこのまま黙っていても何をされるかわかったものじゃない。
こんな所で怖気付いてる場合じゃないんだ。
俺は勢いをつけて振り返りつつ背後のやつを振り払うと流れで刀を抜き、構えた。
さっきは力に負けたけど、次こそは簡単に負けない。
体調的には全身が痛くて最悪だが、さっきよりも頭が冴えてる気がする。より深く集中出来る。
「ん〜ん、元気いっぱいだね。でも、威勢を張る相手は選んだ方が身のためだよ」
「え?」
瞬間、俺の右腕が静かに俺の肩から離れ、地面に落ちた。
理解できなかった。理解が追いつかなかった。
数秒呆然としてしまう。が、理解した。理解してしまった。
俺の腕が切り飛ばされたのだ。
その事実を理解した瞬間、俺の肩にはあの夜と同じ激痛が腕にやってきて、その激痛のあまり膝から崩れ落ち、喉が避けるんじゃないかと思うほどの咆哮を上げた。
フラッシュバックする。
あの日、左腕を失った日のことを。あの日、最愛の姉を喪ってしまった日のことを。
絶望が、恐怖が、怒りが、悲しみが、喪失感が蘇ってくる。
痛い、痛い、痛い、痛い、いたい、いたい、いたい、いたい、イタイ……イタイ……イタイ……。
もう右手が無いはずなのに、右手が焼けるように痛い。
「か、あ、く、あ」
ひとしきり叫んだあとは喉の奥から掠れたような音しか出てこない。
意識が薄れていく。死にそう、いや、死ぬ。
胃の中から熱いものが込み上げてくる。
俺は何もできなかった。姉貴を助けると息巻いたはいいけど、結局何もできなかった。
口だけだった……。
俺は居る意味……なかった。
はい!第227話終了
黒葉が絶望してしまいました。
両腕を失い、刀を握ることが出来なくなってしまった黒葉。
黒葉はどうなってしまうのでしょうか?
ちなみに今回黒葉が対峙した相手は、この作品内で登場するキャラの能力だけで言うとトップ5には入るであろうほどの能力を持っています。
登場する敵キャラで霊夢の能力にワンチャン勝てるとしたらこいつくらいかもしれないですね。
それでは!
さようなら