【3章投稿中】東方妖滅録   作:ミズヤ

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 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 牢屋を後にして階段を上った黒葉の前に紫色のオブジェが出現する。

 オブジェは能力を島中に拡散する力を持っていると気づいた黒葉は龍の力をできるだけ制限しようとオブジェを破壊しようとする。

 だが、謎の人物にそれを止められてしまった。

 黒葉が攻撃をしようとしたところ、一瞬で腕を切り飛ばされ、死の境を彷徨う絶体絶命の大ピンチに。

 果たして黒葉の運命は?



 それではどうぞ!


第228話 一番格好つけることができる選択

side黒葉

 

「しっかりしなさい!」

「はっ!?」

 

 突然耳元で叫ばれたことによって沈まりかけていた俺の意識が覚醒する。

 ぼやけていた視界が再び機能を取り戻し、世界を鮮明に映す。

 

 映ったものは視界いっぱいに映った大量の目玉が浮いた空間だった。

 

 ………………どうやら俺はまだ意識が現実には戻っていなかったらしい。これは恐らく夢か何かだろう。

 視界いっぱいに映ったものを見てそう判断した俺は目を覚ますために再び目を閉じようとして――溺れた。

 

「ごぼぼぼぼ」

 

 そう、突然真上から俺の頭目掛けて滝のように大量の水が降り掛かってきたのだ。

 突然のことに驚愕し、大量の水に苦しめられたことで理解した。いや、理解してしまった。

 今、この視界いっぱいに大量の目玉が映っている光景が現実であるのだと。

 出来ることならこんなおぞましい光景を信じたくは無いのだが、俺の感覚がこれは現実ですと告げているため、否定することは出来ない。

 

 仕方がなく警戒しつつ、()()()()()()上体を起こし、周囲を見渡す。

 

 何度見ても気持ち悪い空間と言わざるを得ない。

 さすがにこんな空間が、この不思議な現象が起こり得る幻想郷とはいえ、自然界に存在するわけが無いし、これは明らかに何らかの能力であるというのはわかる。

 俺が気絶している間に何があった。どうなった? どうして俺は今生きている?

 

「やっと起きたのね。良かったわ、ここであなたが死んでた歩夢に怒られるもの」

「へ?」

 

 頭上から声が聞こえた。

 弾かれるようにして声の方へと目を向けてみるとそこには傘に座って浮かんでいる金髪の女性が居た。

 そしてその姿を俺は知っている、見たことがある。

 

 妖怪の賢者、八雲紫。

 誰だって知っている。閉鎖されていた人里で長年暮らしていて世情に疎い俺だって名前と顔を知っている。

 文献にも載っているし、新聞にだって名前が出る。

 幻想郷の誰もが知る有名人の一人だと言えるだろう。ただ、その神出鬼没さ故に名前こそ新聞に載るが、半分空想上の生物と化している女性だ。

 

 でも、俺は知っている。

 

「ひ、久しぶり……ですね。紫さん」

 

 ちょっと前まではこの人のことも忘れていた。でも、鍛冶師の人里の一件で思い出した。

 俺はこの人と会ったことがある。

 冬夏家にお世話になるよりもずっと前。

 この人は歩夢母さんと親しく話していた歩夢母さん曰く友人だという女性。

 約八年ぶりの再会に俺は激しく動揺した。

 

 こんな気味の悪い場所でこの人に会った。状況的に考えればこの空間は紫さんが作り出したものなんだが、俺はどうやってこの空間に来たんだろうか、あの後どうなったのか。

 この人はどうしてここにいるんだ?

 約八年ぶりに見た紫さんは家で見た時とはまるで違う雰囲気で、威圧感すらある。だから、見知った顔だと言うのに、まるで強敵に遭遇した時のような緊張感が俺を襲っていた。

 

「大きくなったわね、太陽君。前に見た時とは見違えたわ」

「覚えているんですか?」

「えぇ、歩夢と天魔の子供だもの。逆にあなたが私のことを覚えているのが驚きよ」

「まぁ、つい最近までは忘れていましたが……」

 

 つい最近まで記憶喪失だったからな。

 

「助けに行くのが遅れて悪かったわね。この島は色々な霊力が渦巻いていたし、特にあの塔の中は霊力が分散していたから探知が遅れたわ」

「塔?」

「えぇ、スカイの丁度中央付近に存在している島の核とも言える塔のことよ。そこの中にあなたはいたのよ」

 

 気がつかなかった。

 俺は確か島の端の方にある工場内でやられて倒れたはず。それから俺は塔の地下に運び込まれたと言うことか。

 多分霊力が分散していた原因というのはあの部屋の中心に存在していたオブジェのせいだろう。それによって霊力を探知しにくくなっている。

 やっぱりあれは厄介な代物だ。早急にどうにかしたいものではあるが、あいつがいる時点で危険すぎる。

 

 とにかく、俺は紫さんに助けられたらしい。だから俺は今、この空間に居るということなのだろう。

 

「でも、どうして紫さんがここに? 確かそろそろ冬眠の準備を始める時期だったような」

「まぁ、そうなんだけどね。霊夢に頼まれて」

「博麗様に!?」

 

 博麗の巫女は忙しい人だ。だからいつも幻想郷を飛び回って居るし、今回に至っては色々と厄介な事件が立て続けに起こりすぎて居る。その対処に追われて居るのだろう。

 だから今回は博麗様には助力を頼むことができないと考えてたが、どうやら知らないところで博麗様に助けられていたらしい。

 事実、俺は紫さんに助けてもらうことができなかったら間違いなくあの場で死んでいたことだろう。

 博麗様と助けてくれた紫さんには感謝してもしきれないな。今度参拝しに行くか。

 

「よく頑張ったわね。本当に昔と比べて見違えるよう」

「はは、ありがとうございます」

 

 昔のように頭を撫でてくれる紫さん。

 その手つきは俺の強く保とうと決意した心を破壊するのには十分すぎるほどで、天魔たちと戦う前までの俺だったらあっさりと泣き崩れていたかもしれないなと苦笑する。

 ただ、本当に疲れてしまった。

 

 鍛治師の人里のみんなを助けたい、姉貴を龍の魔の手から救い出したい、そんな想いでずっとここまで戦ってきたけど、ちょっと折れかけている。

 俺はやっぱり無力だったらしい。

 天魔や月刃の言っていたことは間違いじゃなかった。俺は弱かった。

 俺はこの天空都市『スカイ』に来てから何も成し遂げていない。風魔の忠告を無視して工場で戦いを挑み、敗走。地下牢に幽閉されるも風魔に助けられて、これまた忠告してもらったのにオブジェの観察をしていたら背後から敵がやって来て、そしてまた敗走。

 自分一人では何もできていない。今まで俺がやって来られたのは全部みんなのおかげだ。みんなが頑張ってくれたから俺は今まで戦えていた。

 一人になった瞬間、この体たらくでは笑い話にもならない。

 

 ——俺は、弱い。

 

「紫さん、俺は居ない方がいいのかもしれません」

「どうしてそう思うの?」

「俺は弱いんです。とてつもなく、今まで戦って勝ててたから調子に乗って居たのかもしれません」

 

 俺がゲンに勝つことができたのはみんなの支援があったから。俺が天魔に勝つことができたのはみんなが一丸となって戦ったから。

 俺はただ、最後の美味しいところだけをみんなからもらっただけにすぎないんだ。

 せめて狂獣技(ビースト)さえあれば少しは違うんだろうけど、どうやっても完璧に発動することなんてできないんだ。

 俺はその程度だったということだ。

 

「せっかく助けてもらったのに、すみません。俺は……帰ります」

 

 完全に心が折れてしまった。

 姉貴のことは助けたい。その想いは今も変わっちゃ居ないけど、でも俺が居たところで何ができる気もしないんだ。

 

「これ以上居ても、足手まといになると思うので」

 

 これでいいんだ。そう自分に思い込ませる。

 諦めきれるわけがない、でも仕方がないことなんだって。

 歩夢母さんには任されたけど、俺よりもっと適任がいるだろう。それこそ、この幻想郷には最強の巫女だっているんだから。

 だから、俺が今動かなくたって——

 

「確かにそうかもしれない。隠れて見て居たけど、実力で言ったら間違いなく咲夜やルーミア、フランの方が強いし、レミリアなんてもっと強いでしょうね。今まであなたが勝てて来たのは運の要素が大きい、それだけは疑いようのない事実ね」

「で、すよね」

「逃げたいなら逃げてもいいと思うわよ」

「…………え?」

「確かに私は霊夢に頼まれたからあなたたちの手伝いをしに来た。でもね、逃げたいというのなら私にそれを引き止める用意はない。それがあなたの選択なのだというのなら、私は止めはしないわ」

 

 驚いた。

 てっきり紫さんは俺が帰るのを引き止めに来るのかと思っていた。

 でも、紫さんの口から飛び出した言葉は全く真逆のもので、俺の望んで居た展開のはずなのに思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

 

「正解か不正解か、その選択がどちらに転ぶかは誰にもわからない。だから、今を生きる人々は後悔しない道を選び続けることしかできない。でも、それでも結局は後悔が付きまとうもの、だから生きるってとても難しいことなのよね。そしてどちらを選んでもその苦しみを味わうことになるのだから、今私からあなたに言うことっていうのはあまり多くはない。あなたの姉ならばもうちょっと何かいうことがあったんでしょうけどね、私は生憎そこまでしてあげるほどのお人好しじゃないのよ。でも、そんな私でも一つ言えることとしたら、男の子なんだもの、自分が一番格好いいって、『今の俺、めっちゃ輝いてるぞ』って胸をはれる選択が一番いいんじゃないかって思うわ。あなたの人生の主役はあなたなんだもの、自分が一番格好つけることができる選択肢を選んで後悔した方が良くないかしら?」

「俺が一番格好つけることができる選択……」

「そう、あなたが一番輝くことができる選択。それが逃げることなんだっていうなら、私はあなたの意思を尊重しようと思うわ」

 

 格好つける、今まで一度もそんなこと考えたこともなかった。

 姉ちゃんが死んでからはずっと必死に生きて来たから。必死に戦って来たから。

 考えてみるとずっと心の余裕というものはなかったかもしれない。絶対に勝たなくちゃダメなんだって、絶対に許しては置けないんだって。

 ずっと俺の頭の中を敵への憎悪がずっと渦巻いていて、いろんなものに全力を注ぐことができていなかったかもしれない。

 紫さんは俺の選択肢を止める気ないって言っているけど、それは大嘘だ。紫さんは俺を諭しているんだ。

 

 後悔しない道を選べ、そんなのは不可能だ。

 この短期間でさえ俺は何度も何度も後悔をし続けて来ている。

 人は誰だって後悔しない道を選びたがっている。でも、そんなのは不可能だから、自分が一番格好良くなれる道を選ぶ。

 格好つけて死ねるんなら、確かにそれでもいいかもしれないな。逃げるよりよっぽど重要だ。

 

 俺は色々なことを考えすぎていたのかもしれない。考えすぎて色々ダメになっていた。

 本当に俺はバカだった。

 

 俺なんかが姉貴や姉ちゃん、博麗様のようになれるわけがなかったんだ。

 

 俺は俺のまま、俺らしく格好つける。

 それは確かに……。

 

「最高だな」

 

 気がついたらそうつぶやいていた。

 いつの間にかさっきまでのネガティブ思考はどこかへ消え去り、俺の頭の中はある一つのことしか無くなっていた。

 それはどうやったら俺は格好良くなれるのか。どうしたら格好良く姉貴を助け出すことができるのか。

 

「どうやら心は決まったようね」

「はい、ただ、一つ問題があるとしたらこの腕でどうやって戦うかってことなんですけどね——え」

 

 俺は驚いた。

 問題点を告げる。その時俺は無意識のうちに右手で頭をかいていた。

 だが、本来俺は右手で頭をかくことなんてできなくなってるはずなんだ。だってさっき、あの謎の人物の手によって俺の右腕は切り落とされてしまったはずなんだから。

 でも、俺の腕は確かにそこに存在していた。

 

 様子からして紫さんが治してくれたとも考えにくい。

 どうしてなのか分からない。でもとりあえず、問題点はどうやらなくなったらしい。

 

「どうかしたの?」

「いえ、何も。それよりもお願いしたいことがあるんですが」

「なに?」

 

 俺はもうくじけたりなんてしない。

 絶対に姉貴を助け出し、そして平和な日常を取り戻してみせる。




 はい!第228話終了

 まぁ、博麗の巫女と関わりのある紫が歩夢と何も関わりがないはずがなく、昔の銀河家にもたまに顔を出しに来ていました。

 ただ、気まぐれなので黒葉は銀河家にいた頃は一回しか来なかったそうです。

 ちなみに紫が本気を出したら多分龍を倒せるんですけど、冬眠前の時期なので眠くて本気を出すことができず、戦いに関しては黒葉たちに任せて自分はサポートに徹しようと考えています。

 今まで黒葉は集中しようとしていましたが、いろいろ考えすぎて集中しきれていなかったんですよね。

 ただ、今回で雑念を捨てた黒葉は果たしてどうなっていくのか、楽しみですね。

 次回は咲夜たちの視点に戻ろうと思っています。

 そしてついに彼女が登場予定!

 さて、次回もお楽しみに!

 それでは!

 さようなら
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