それでは前回のあらすじ
黒葉が目を覚ますとそこは紫が作り出した異次元だった。
どうやら紫が黒葉たちを助けに来たとのこと。
しかし、スカイに来てから負けに負け続けて来た黒葉の心は限界に達し、崩れてしまう。
だが、紫の「自分が一番格好つけることができる選択をしろ」という言葉に感化され、再び戦うことを誓った。
それではどうぞ!
side咲夜
まず私たちは龍の目を誤魔化すために返送をすることにした。
私はジーンズを穿き、白の服の上にジャンバーを羽織ってツバ付きの帽子を目深に被った。
そしてルーミアはショートパンツを穿いてパーカーを着用。大きめの帽子をかぶることで金髪を誤魔化した。
どちらもこの島にはよく居るようなカジュアルな服装で街並みに溶け込む。
二人とも遠目で見たら私たちが咲夜とルーミアだということには気が付かないだろう。
それから私たちは一時間ほど聞き込みをした。
この間、龍や龍の手下らしき人たちが私たちを襲ってくるということはなく、いたって普通に聞き込みをすることができた。いや、これを普通と言っていいものなのかは全くわからないんだけれども。
一時間も聞き込みをした、怪しい人がいるかって何人にも聞いた。
でも、全く何も聞き出せなかった。何も情報を得ることができなかった。
ちゃんと聞き込みをした。でも、住民たちは全員私たちのことなんか居ないように、認識していないような態度だった。私たちの聞き込みには何一つとして答えてくれなかったんだ。
聞いても何も帰ってこなかった。
まるで機械のように、あらかじめ決められた指示しか行わないロボットのように。
気味が悪かった。
間違いなくこの島にいる人たちは全員生きている。それは私が樹海で霊力を持っていることを確認したから間違いない。
でも、目の前にいるのは生きている人間とは思えなかった。私とルーミアのことなんて見ていなかった。
私たちが声をかけてもどこか虚ろで、私たちではないどこか明後日の方向へ視線が向いていて……正直怖かった。
こんな体験、初めてだった。
「この島の人たち、どうしちゃったのかな」
ルーミアの言葉が夕焼け空に寂しく響く。
まるで私たちだけがこの世界に取り残されてしまったみたい。もしかすると気がついていないだけで私たちは龍に敗北して死んでしまったんじゃないかと考えてしまう。
霊夢が以前、死んだことに気がついていない霊っていうのもいっぱい居るっていう話を聞かせてくれた。そのことが頭の中で反芻する。
それにしても気持ち悪い。
龍と戦った時にはあまり気にならなかったけど、樹海を使うと至る方向から龍の霊力を感じる。まるでこの島自体が龍かのようだ。
正直、これ以上聞き込みをしていたところで何の進展もないだろう。
「もう夕方……」
リミットが後どのくらい残っているかわからない。
そんな中、ほぼ丸一日を無駄にしてしまったと言っても過言ではない。龍と戦ったけど、有効打になりそうなものは見つけられなかった。
この島の秘密も明かすことができなかった。
私たちはいったい何のためにスカイへ乗り込んできたのかわからなくなる。
まるで世界に挑んでいるかのような、そんな途方も無い戦い。
世界の理を作り変えるような、全てを破壊するようなものが何かないと私たちは運命を、未来を変えることができるように思えない。
私たちがこの状況を解決することを世界が拒んでいるんだ。
せめて誰か、誰か一人でいいから相談できる人が欲しい、一緒に話し合える人が欲しい。
どうしたら……どうしたら…………どうしたら………………。
「あっ」
夕暮れ道、ルーミアと二人で並び、今日の宿を探し歩いて居ると、ふと顔を上げると突然視界に一人の少女が写り込んだ。
その少女は地面に座り込んで虚ろで正規のこもっていない瞳を明後日の方向へと向けていた。
でも、明確にさっきまで私たちが聞き込みをしていた人たちとは違う。あれは操作されている表情じゃない。住人たちはもっと意思のない態度だった。
そのことに気がついた瞬間、私は駆けた。
突然駆け出した私に驚きの声を上げるルーミアだが、今はそれよりも目の前にいる人物の方が大事だ。
それに、やっと見つけた。ずっと探していた情報屋。
「はぁ……はぁ……」
漆黒の翼を持った黒髪ボブの少女。
私たちが一番最初に合流するべきだと考えていた人物。
こんなところにいたのね。
「
久しぶりに目にした彼女の姿は以前見かけた溌剌としていて不躾に相手の懐に入り込んでくるようなパパラッチと同一人物とは思えないほどに暗い雰囲気を纏っていた。
隅っこで目につきにくい場所で膝を抱えて座り、顔は膝に埋めてうずくまっている。
私の声に反応したようで、ゆっくりと上げたその顔はそれはそれはとても酷いものだった。
目に光は宿っておらず、散々泣き腫らしたであろう目尻、街の人々とは違う意味で焦点が定まっていないという生きているが、半分死んでいると言った様子だった。
「文、どうしたの? 文!」
私を見たのに一言も発さない文をとりあえず正気に戻すため、肩を揺らしながら名前を呼びかける。
するとやがて文は死にそうな表情に軽く笑みを浮かべ、言葉を放つ。
「あぁ、咲夜さんじゃないですか。ルーミアさんも……久しぶりですね」
「う、うん……久しぶり」
その笑みは無理していると一発で分かるもので、痛々しく思えてしまった。
私の後から来て笑顔の部分しか見ていないルーミアも感じ取ったようで、直ぐに不安そうな表情になってしまった。
普段快活な彼女がここまで憔悴してしまうとは、一体どれほどの出来事がこの島で起こったのか。
考えたくもないほどで、この島が異常だと言うことは既に私も気がついているから、何があったのか聞くのはすごく怖いのだが、聞かないことにはこの島の現状を把握することなんて出来ないため、恐る恐る聞いた。
「ねぇ、文。何があったの? 今のあなた、これ程ないくらいに絶望していますって言う表情してるわよ」
「あ、はは。すみません、皆さんにはあまり辛い表情とか見せたくはなかったんですが、ちょっと……」
「……何が、あったの?」
「私、いつも通りに椛と一緒にこの島へ取材に来ていたんです」
文がゆっくりと語り出し、文の身に何が起こったのか、その真実が明かされた。
はい!第229話終了
ついに文が登場しましたが、なんだか様子がおかしい。
次回文の過去回想。
過去回想なので、文視点で書きますよ。
作者が僕なので、見るのが辛いほど鬱展開になることはないと思いますが、結構辛い内容だと思うので、次回は覚悟しておいて下さい。
それでは!
さようなら