【3章投稿中】東方妖滅録   作:ミズヤ

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 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 結乃のおかげで目を覚ましたにとりに魔道具を見せる咲夜。

 にとりは咲夜の見せた魔道具に大興奮。だが、怪しいことにも気がついた。

 咲夜はにとりに現状を説明する。

 すると、次ににとりが示した目標はドラゴンの像を調べるということだった。



 それではどうぞ!


第237話 一人じゃなく、みんなで

side咲夜

 

「あの像?」

 

 にとりが示したのは郊外からでも嫌に目立つどんな建物よりも巨大なドラゴンをかたどった像。

 この島のシンボル的な存在なんだろうけど、私たちにとっては龍のことを思い出してしまうため、あれにはあまり関わりたくはないと感じてしまうものだ。

 でも、情報収集をする上で、あれを調べなかったかと言われると私とルーミアは隅々まで調べたはずだ。なにせ、あんなにも龍を彷彿とさせる像、怪しくないわけがないから。

 

 でも、私もルーミアも何も見つけることはできなかった。

 どこからどう見てもただの像にしか見えなかった。だから私とルーミアはあれを調べることを断念したのだ。

 

「あれはしっかりと調べたけど、何も見つからなかったわよ」

「なら、何か咲夜たちでは見つけることのできない何かがあるんじゃないか? 私にはその何かっていうのははっきりわかりはしないけどな」

 

 私は確かにしっかりとこの目で確認した。

 押しても引いても、なんだったら至る所でノックをして見たけど、なんの変哲もない像に見えた。何かが隠されているようには全く見えなかった。

 私が見落とした? そんなことはないはず。私は完璧に観察した。

 

「咲夜さ、あんまり関わりのない私の目から見ても、今のお前さんは焦りに焦りまくって本質が見えていないように見えるが?」

「私が……?」

「まぁ、大切なご主人様がさらわれたとなってはその心が穏やかでいることはできないだろうけどさ、一度頭を冷やしてみることをお勧めするぞ。私が言わなかったところでお前さんん周囲にいる人たちはみんなお前さんのことをわかっているだろうからさ、誰かがいずれ言っただろうけど」

「昨日、ルーミアと文にも似たようなことを言われました」

「はははっ、ならもうわかっているはずだ。今の十六夜咲夜は紅魔館の完全で瀟洒なメイドでは無くなっているって」

「っ」

 

 わかっている。

 冷静さを欠いているなんてもうとっくにわかっている。それによって本来見なければいけないことも見落としてしまっている可能性があるなんてわかっている。

 でも、止まれない。お嬢様を助けるためにはもう止まっている時間なんてないんだ。

 お嬢様と龍は三日後に結婚する。それまでにお嬢様を助けださなければ取り返しのつかないことになるんだって。だから私は止まることができない。誰になんて言われようとも、お嬢様を助けるまで私は休むわけにはいかない。

 

「昨日一日、無駄にしてしまったの。だから私に休んでいる時間なんてない。ただでさえ時間がないのに、これ以上時間を無駄にしている暇なんてないから」

 

 そして私は踵を返す。

 

「にとり、ドラゴンの像だったわね。もう一度行ってくるわ」

 

 あの一瞬にして魔道具の構造を見抜くその目。あれは嘘や出鱈目を言っているようには見えなかった。

 私が焦っているから何かを見落としているのかもしれない。だからもう一度調べてみることにする。お嬢様を助けるためならばなんだってやるって決めているから。

 

『あなた、私のところで働く気は無い?』

 

 今でも思い出すことができる。

 寒い冬、ゆくあてもない私にそっと手を差し伸べてくれたお嬢様の姿。凍えて死にゆくだけだった私に命を与えてくれたお嬢様。

 だから絶対に……絶対に……絶対に……。

 

 ——お嬢様を諦めたりなんてしない。

 

「はーい。文、ルーミア、咲夜をひっ捕らえて〜」

「え、あ、はい!」

「わかったっ!」

「え、ちょ、ふ、二人とも!?」

 

 にとりの鶴の一声とでも呼ぶべきものだろうか。

 頭に血が上っていたせいというのもあるんだろうけど、私は一瞬の隙を突かれて能力を発動して回避する間も無く文とルーミアの二人にがっしりと捉えられ、床に組み伏せられてしまった。

 二人とも正面から戦ったらまず間違いなく私が勝てるだろうけど、それでも二人がかりで抑え込まれ、しかも密着している状況では時を止めたところで何もできないし、押しのけることも叶わない。

 私は完全に身動きをとることができなくなってしまった。

 

「何をするの! 今はふざけている場合じゃ——」

「咲夜、今のお前さんに必要なのは十分な休息だよ。普段からその身を酷使しすぎているんじゃないかい? 身を粉にして主人に尽くすことが己の幸せだと言って。でもね、それじゃあ何も救えない。お前の主人だって喜びはしない。お前が主人の幸せを願っているように、主人だってお前の幸せを誰よりも願っているはずだよ。だから、まずはしっかりと休む。お前さんは今までよく頑張ってきた。だけど、ちょっと頑張りすぎなんだよ。もうちょっと周りを頼れって。そのためにルーミアと文は一緒にいるんじゃないか?」

「そうだよ!」

「まったくです」

「二人とも……」

「頑張るのはお前さんの美徳だ。でも、それで全てが解決するって思っているんなら、それは傲慢というものじゃないかい? お前さんは一人しかいないんだ。そんなちっぽけなたった一人が頑張ったところで何ができる? いずれ限界は訪れるはずだ。だからさ、たまには肩の力を抜いて辛い時は誰かに頼る。お前さんはたった一人で完全で瀟洒なメイドになろうとしているけどさ、私たちにもその完全で瀟洒なメイドになるための手伝いをさせてくれっていうことだ」

「にとり……」

 

 にとりの言葉を聞いた今でも正直焦る気持ちはあって私がなんとかしなければと考えてしまっている。

 お嬢様の力になるためには完璧でなければいけないんだと。完全で瀟洒なメイドであることでお嬢様の助けになることができるんだと信じている。

 妖精メイドたちは私のことを超人だとか、完璧な人間だとか、私ならばできないことなんて何もないとか言っている。でも、確かににとりの言うとおり私は人間という肉体の限界を感じざるを得ない。

 霊夢のように超人になれない、魔理沙のようにお気楽にはなれない。

 

 私は一生この完全で瀟洒なメイドという荷物を下すことなんて出来はしないんだろう。だってそれが私の本質、十六夜咲夜というものなんだから。

 でも、この荷物を一緒に背負ってくれるというのなら。

 

「わかったわ。私の負けよ」

 

 諦めよう。

 どの道、この場にいる誰も私を行かせる気なんて更々ないんだから。

 

「やっと素直になったか、この頑固メイド」

「はぁ……でも、私が行けないとなると誰が行くのよ」

「私たちが行きますよ」

「うん!」

 

 私の言葉に文とルーミアが挙手をするが、にとりはあまりいい反応を返さなかった。

 

「咲夜はどう思う?」

「正直、ルーミアと文に行かせるのは危険だと思うわ。なにせ、二人とも龍たちに知られているのだから、近づいた瞬間に勘ぐられたっておかしくはない。すでに二人とも敵対している状態なんだから」

「やっぱりか、状況的にそうであってもおかしくはないと思っていたが……なんだ? すでに一戦交えたのか?」

「私たちは完全な敗走をしてしまったわ」

「堂々ということじゃねぇだろ。というか、よく生きてたな」

「天音が囮となって私たちを逃がしてくれたんだよ」

「っ、そうか。だから天音ちゃんは居ないのか」

 

 天音の話を聞いて表情を曇らせるにとり。

 でも、今この状況ではにとりは私よりも何をするべきなのかわかっている。色々と見えていて、今なら私よりも頼りになる存在だと言えるだろう。

 だからすぐに表情を元に戻して考えを話し始めた。

 

「それなら確かにルーミアを生かせるのは危険だな。それに文もなんかやらかしているんだろう」

「うっ、まぁ……」

「なら、二人に任せるのは危険だ。となれば——」

 

 ルーミアと文に任せるのは危険。私が行くのは禁止されているし、にとりはこの船を見張らなければ行けないという役目が存在してここから動くことができない。

 となれば必然的に動くことができる人物は絞られてくる。

 龍たちに目をつけられていなくて、且つ先入観にとらわれることがない人たち。

 

 にとりと私の考えはどうやら一致しているようだった。

 ほぼ同時のタイミングで私たちはとある一点へ目を向ける。

 

「なんだ?」

「な、なんですか?」

「い、嫌な予感が」

「お二人さん、怖いですよ〜」

「ふ、ふえっ!?」

 

 チルノ、大妖精、ミスティア、リグル、結乃ちゃんの五人がいる場所。部屋の隅で邪魔にならないように状況を見守ってくれていた五人へ私とにとりの視線は向いていた。

 

「ふ、二人ともまさか!?」

「む、無茶じゃないかなって思うんだけど」

 

 文とルーミアは冷や汗をかきながら私たちの考えに異議を唱えようとしてくるが、私とにとりの考えは変わらない。

 この状況ではこの人たちが最適解だと判断したから。

 五人はまったく疑われていない。且つ、小さいから見つかりにくい。

 潜入には適した人材だと考える。ただ、不安点がないこともない。その一番の不安点がチルノだ。

 チルノはよく紅魔館に侵入しようとして美鈴に止められていたが、かなりのお調子者ですぐに調子の乗ってしまうというところがある。

 一応大妖精というストッパーがいるにはいるけど、調子の乗って余計なことをしでかさないかが心配ね。

 

「大妖精、チルノのことを頼んだわよ」

「わ、私たちが行くことは確定なんですか!?」

「だってよ、お前ら以外に最適な人がいないんだからさ」

「ふっふーん。やっとみんなもあたいのスゴさに気がついたってことね! 見せてあげるわ! あたいの真の力を!」

「チルノちゃんは静かにしてて!」

 

 大妖精が荒れている。

 あんなに声を荒げる大妖精なんて初めて見たかもしれない。そしてそれはチルノも同じようで、大妖精に怒鳴られて縮こまってしまった。

 あの様子なら大丈夫かもしれない。

 

「あなたたちが何度も紅魔館に迷惑をかけたことは忘れていないわよ」

「ぐぅ」

「今こそ汚名返上をするチャンスじゃないかしら? お嬢様の危機なのよ、これを救うことができたらお嬢様も見直すんじゃないかしら」

 

 これには大妖精も何も言い返せない様子。

 主にチルノのせいだが、紅魔館に迷惑をかけていることは事実なのだから、ここで私たちの頼みを無下にするということは常識を持っている大妖精はできないはず。

 ちょっと卑怯だとは思うけど、そんなことを言っている場合じゃないから、私は心を鬼にする。

 

「まぁまぁ、大ちゃん。ルーミアが困っているんだしさ、親友の大切な人を助ける手助け、私は嫌じゃないけどな」

「リグル……」

「そうだよ。親友が困っているのに、見過ごすことなんてできないよ」

「みすちー……」

 

 なんと以外にもリグルとミスティアも私たちの援護をしてくれた。

 どうやらルーミアは相当あの子たちに大事に思われているらしい。ルーミアと黒葉にいい友達がいるっていうことをしれてよかった。

 そして二人に言われて考え込む大妖精。

 

 大妖精も多分ルーミアのことを大事に思ってくれているだろうけど、そのために他の四人まで危険にさらすということで頭を悩ませているんだろう。

 本当に優しい子なんだろうから。

 

「私、は。皆さんから見たら弱いです、体も心も。でも、私も黒葉君とルーミアちゃんの助けになりたいんです!」

「結乃ちゃん……っ!?」

 

 意外だった。

 あんなにさっきまで隅っこで妖怪に囲まれて子鹿のように震えていた結乃ちゃんが力強く言い放った。

 そのことにこの場にいる誰もが驚いただろう。

 今の彼女はさっきまでの彼女とは違う。覚悟が決まった目をしている。彼女は彼女なりに強くなろうと、弱い自分から変わろうとしている。

 そんな様子を見て心優しい誰よりもみんなのことを考えられる大妖精が心を動かされないはずがない。

 

「わかりました。私たち、できる限りやってみます!」

「ありがとう! あ、でも無理はしないようにね。私も咲夜もそんなことは望んでないからさ。……望んでないよ、ね?」

「にとり、あなたは私をなんだと思っているのよ」

「ストイックバカ」

「ぐっ」

 

 何も反論できないところが腹立たしい。

 でも、にとりが言うように私としてもみんなが傷つくと言うのは望んでいない。だから——

 

「危ないと思ったらすぐに逃げること。いいわね」

「わかりました。私たちも全力でみなさんのお手伝いをさせていただきます。ただ、その代わり、今の状況をちゃんとおしえてください!」

「えぇ、わかっているわ」

 

 みんなを巻き込んでしまった以上、説明しないと言うわけにはいかない。

 危険な場所に引きずり込むと言うのはあまり気が進まないけど、今はみんなに託すしかない。それがもどかしいけど、でもみんなを信じて進むしかない。

 もしこの中の誰か一人でも欠けてしまったら私は責任を取る。そんな覚悟で私はみんなに現状を説明するのだった。




 はい!第237話終了

 説明に関しては今までの流れの焼き直しになるのでカットです。
 ちなみに話してるのは咲夜なので、黒葉が今どうしているのかは知らないため、黒葉パート以外の部分の説明になります。

 次回からはチルノたちが像を探索しに行くことになるのですが、三人称視点になります。

 果たしてチルノは調子に乗らず、ちゃんと調査することができるのでしょうか?

 正直不安な五人組なのですが、結乃がいるのでかなり安心感はありますよ。

 前回のあとがきでもかきましたが、結乃の回復能力は最強クラスなので。

 そして次回くらいから黒葉パートと咲夜パートがクロスしてくると思います。

 さて、どうなって行くのか?

 この後、19時にも投稿されますよ!

 それでは!

 さようなら
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