それでは前回のあらすじ
像内を探索し始めた五人。
そこにはいろいろな怪しいものが。
着々と情報が集まっていく中、チルノが突如恐慌状態に!?
それを皮切りにリグル、ミスティア、大妖精も次々に恐慌状態に陥る。
一人残された結乃。そんな結乃の背後に一人の人物が姿を現した。
人物はここまでたどり着いた褒美だと言い、結乃に一つ情報を伝えると、結乃は自我の無い妖怪に襲われてしまうのだった。
それではどうぞ!
side咲夜
「あの五人、大丈夫かしら」
「信じて送り出したのはいいけど、ちょっと心配だよね」
壁にもたれかかるようにして座り、休む私の両サイドにはルーミアと文。
別に監視されなくとも私としてはもう無理をする気はさらさらなかったのだが、それでも三人に監視される形でこうして挟まれて休む形となっていた。
ただ、この状況、本気になれば二人が掴んできていないということもあって簡単に抜け出すこともできるのだが、そこはおそらく三人とも私のことを信用してくれているのだろう。
五人が出発してから二時間が経過した。
歩いていくとしたらあの像まで十五分くらいだろうから、今頃何かを見つけているのかもしれない。
「もうちょっと私も冷静でいればね……」
「やっと反省できたのかい?」
「えぇ、おかげさまでね。ただ、不安なのは変わらないわ」
私が選んでおいてあの五人に何かがあったらと思うと私は気が気じゃなかった。
だから基本的に全て自分で解決したいと思っているんだけど、今回ばかりは止められてしまったんだから仕方がない。仕方がないと理解しているが、やっぱり自分で行けばよかったと考えてしまう自分も存在する。
さっきはああして脅したけど、私たちの危険な戦いに巻き込んでしまったのは確かだし、無事に戻ってきたらしっかりとお礼をしないと行けないわね。
あの子たちは何がいいのかしら。
不安を抱えながらも終わった後のことをポジティブに考えて待ち続ける。
そしてやがて、複数人の霊力が近づいてきていることを感じ、私は樹海を使用して正確に測る。これが結乃ちゃんたちではなく、他の人だった場合、どうなるかわからないため、すぐに素性を確認する必要があったからだ。
チルノ……大妖精……ミスティア……リグル……結乃ちゃん。
しっかりと五人の霊力を感じる。どうやら船に戻ってきたらしい。
だけど、警戒を解くようなことはしない。
なにせ、五人のすぐ近くに別の六人目の霊力まで感じるからだ。今まで感じたことがない霊力で、おそらく私たちがあったことがないスカイの住人の一人なのだろう。
「なにか、あった?」
「咲夜?」
「どうしたんですか?」
「何か感じたのか?」
私は勢いよく立ち上がる。
そしてより鮮明に霊力を探知してみると、どうにも五人の霊力が弱々しくなっていることに気がつき、五人が瀕死の状態になっているがわかった。
六人目の目的がなんなのかわからないけど、その状態になってしまった五人を私たちの前に連れてくるとはいい度胸ね。喧嘩を売りに来たのかしら。
なんにしても、ここに近づくスカイの住人を放っておくことはできない。何が原因で龍に私たちの動向がバレるかわかったものじゃないのだ。
「現世《ザ・ワールド》」
時を止め、船から飛び出す。
止まっている時の中で私のことを止めることができる人はこの場にいない。唯一止めることができるとしたら私から能力を奪った月刃くらいなものだろうが、今この場にいない。
天魔組は全員無間地獄に幽閉されているはずだ。
ただ、罠が張ってあったら時を止めていても関係がない。だから慎重に出るが、月刃に能力を奪われてから時を止めていられる時間が大幅に短くなってしまったため、慎重に且つ迅速に行動する。
そしてそいつはそこにいた。
台車のようなものを引き、その中に五人を乗せた黒葉とそこまで変わらないくらいの男の子。
軍服のようなものを着用しているため、このスカイで見た誰とも異なる服装で警戒心が一気に跳ね上がった。これは最悪、龍の使いだったりする可能性もあるため、私は時が止まっている間に彼の背後に回り込み、そしてナイフを首元に突きつけて時間停止を解除した。
「叫ばないで、今から私の質問にだけ静かに答えて」
「っ」
突然のことに少年の肩が跳ねる。
今ここで問答無用に殺してしまってもよかったんだけど、これは間違いなく街の人たちのような設定された動きではなく、ちゃんと考えて動いている人間、その表情を見ても間違いなく生気が宿っている。
だから昨日できなかった情報収拾、この少年からならばできるのではないかと思ったため、ちょっと尋問させてもらうことにしよう。殺すかどうかはそのあとに決める。
「あなたの名前は?」
「……」
「早く」
「倉風魔」
「どうしてここに来たの」
「荷台に乗っている子たちが気絶していたのでお届けに」
確かに五人は気絶して荷台に乗せられている。それは間違い無いんだけど、この五人が理由もなしに気絶するとは思えない。ましてや、この五人がたまたま見つかるような場所で気絶しているとも……。
だからこの少年は私に何かを今隠したということになる。怪しさMAXだ。
「どこで気絶していたの?」
「……塔の内部です」
「塔?」
「あそこに見える巨大な像が塔になっています」
どうやらこの子たちは無事に像の内部に侵入することができたらしい。ただ、その結果こうなってしまっているので、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
で、ここで一つ問題が出て来たけど、どうして彼が塔の内部に入ることができたのか。私たちは調べて見たけど全く入り口に気がつくことができなかった。だけど彼は普通に塔の内部に入って結乃ちゃんたちが気絶しているところを発見している。
怪しいことこの上ない。
「これ、あなたがやったの?」
「まさか、僕には彼女たちを気絶させることなんてできませんよ」
背中に剣をふた振りも背負っておいてよく言うわね。
ただ、この状況で私に対する敵意というのは微塵も感じられないのが不思議なところだ。敵なのだとしたら間違いなく私に対し敵対心をむき出しにするはず。
でも、彼の様子はまるで全てを諦め、たとえ殺されてもいいとすら考えているように落ち着いている。
最初こそびっくりしたみたいだけど、今の彼の様子は穏やかな川のように落ち着いていた。
怪しいことこの上ないし、正直この時点で怪しいやつは消してもいいんだけど、もっと何か判断材料が欲しい。
だからいっそのこと、こう問うことにした。
「単刀直入に聞くわ。あなたは司祭の仲間なの?」
「どっちだと思う?」
「私の質問には正確に答えなさい。これはイエスかノーの単純な質問よ」
イエスと答えたらとりあえず拘束する。
ノーと答えたらこのまま手に握ったナイフで彼の首を掻っ切る。
二つに一つだ。
「……ノー。だけど、君たちの仲間だというつもりはない。僕はただ、君たちに警告をしに来ただけだ」
「なにを?」
「君たちの大切な人は諦めてさっさと帰って」
「……」
「龍には誰も勝つことができない。絶対に不可能だ。三龍騎士がいるし、その上龍を倒す? 夢物語だ。誰かを助けることより、今自分が生きる方が大事だと、そうは思わないか?」
風魔は言った。
わかっている。私自身、つい昨日、龍と一戦交えたし、自分の力不足を実感しているところだ。
ルーミアと天音がいなければ、まず間違いなく死んでいたことだろう。だから、彼の忠告もわからないでもないけど、私たちはその忠告を聞くことができない。
ルーミアにとってはどうなのかはわからないけど、私にとってお嬢様という存在は自分の命よりも大切な存在なんだから。
「無理な話ね」
「……どうして君たちはみんなそうやって自分の命を顧みないんだろうね。黒葉君も僕の忠告を聞かずに魔導にやられた」
「黒葉に会ったの!? それに魔導って?」
「まぁ、君たちがどうなろうとも僕の知ったことではないんだけどさ。でも、もう龍の被害者は増やしたくないから。僕の話、前向きに考えてくれると助かるよ」
「っ!」
次の瞬間、私の腕の中にいた風魔は姿が変わり、霧となって霧散してしまった。
いつからこの状態だったんだろう。私は間違いなく風魔の不意をつくことに成功した。だけど、実際は霧の幻影に惑わされていたということ?
私が困惑していると、私から少し離れた場所に風魔の姿が出現した。
「僕の忠告を無視したら、必ず後悔することになるよ」
その一言を告げると再び姿が消滅した。
一体何だったんだろう。まるで幻でも見ていたような感覚。でも、間違いなく結乃ちゃんたちはこの荷台にいるから、今風魔と話したという事実は幻でも何でもない。
風魔はこの子たちを私たちに届けるためにわざわざ危険を冒して私たちのところに来たということ? そんなことをして彼に何のメリットがあるんだろうか。
でも、とりあえず結乃ちゃんからは霊力や妖力を感じるから、まだ息がある様子。
ひとまずみんなを介抱して話を聞いてみよう。
はい!第240話終了
寺子屋組を風魔が助けてくれました。
ちょっと風魔がどのようにして助けたかというと、彼女たちを洗脳して労働力にした方が殺すよりも生産性が高いだろうと説得をし、五人を連れ出したという感じですね。
寺子屋組を気絶させた人物は風魔が工場に連れて行ったものだと思っています。
さぁ、風魔の立場はどのようなものなんでしょうか?
そして次回、一気に話が進むと思います。
それでは!
さようなら