それでは前回のあらすじ
風魔は覚悟を決めた。黒葉とともに龍と戦うことを決断し、結婚式場へ乗り込む。
ついに黒葉&風魔VS龍の戦いが始まろうとしていたその頃、咲夜たちはどうなっているのか。
それではどうぞ!
side咲夜
静かだ。
街を歩いていても人がポツリポツリと存在するだけで、昨日までのような多くの人々が行き交う街という雰囲気ではない。
足音も私たち三人以外のものはそんなに聞こえない。きっとこの街の住民の多くはお嬢様と龍の結婚式に行っているのだろう。
つまり、今の私たちは敵に遭遇したとしても人混みに紛れて逃げると言った手段が取れない。
さらに、私たちには外部から何も知らずにやってきた観光客を傷つけないようにしなければいけないという条件もついている。
非常に厳しい戦いになるだろう。
でも、私たちは私たちの役目を果たさなければいけない。
心を落ち着かせる。
そう、いつも通り、いつも通りだ。私はいつも通り私の役目を果たす。
やがて私たちの主戦場となる像の麓が見えてきた。
あいも変わらず巨大で、どこに入口があるかもわからないほどにカモフラージュされた石造りの巨大なドラゴン像。
この像を見る度に龍のことを思い出して胸糞悪くなる。でも、それも今日でお終いだ。お終いにするために私たちはここで戦う。
私たちがここで勝たなければ龍撃破への道は閉ざされる。
失敗できない状況。でも、こんな状況なんて今までメイドをやってきて一度もなかったわけじゃない。今まで全て成功してきたのだ、だから今回も同じことをするだけ。
「確か壁の一部分が回転扉になっているって言っていたわよね」
「はい、二人以上で押すと回ると言っていました。ただ、どこもかしこも同じように見えてどこに回転扉があるのかわかりませんね」
文の言うとおり、回転扉のつなぎ目のようなものも見当たらない。おそらくなんらかの能力でカモフラージュをさrているんだろう。もしくは回転扉自体も魔道具だと言う線。
とにかく私たちはチルノたちが見つけたという回転扉を探し当てないことには話にならない。
この島中から霊力を感じる。そんなことでもなければ魔道具なら樹海で見つけ出すこともできただろうに、このそこかしこから感じる霊力が私の感覚を鈍らせる。
「本当に厄介な島の構造ね」
この像からも一箇所ではなく、すべてから霊力を感じる。溢れている箇所や魔道具の場所なんて探りようがない。
チルノたちと大妖精が中に入ったのだって偶然なのだから、そう簡単に見つけられるとは思っていないけど、この大きさの像の一箇所から回転扉を探し当てるのはかなり骨が折れる。
それまで黒葉が耐えてくれればいいんだけど。
「出来るだけ早く達成するに越したことはないわよね」
チルノたちに回転扉前の詳細な景色をもっと聞いておくべきだったとか、そんな後悔は今はしている場合じゃない。
とにかく一刻も早く回転扉を探し出さなければ。
「文、手伝って」
「はい、任せてください!」
私と文は一緒に並び、少し位置をずらしながら像の壁を押していく。霊力探知や見た目だけでは見つけることができないのだからこうして地道に探していくしかない。
探して探して探して——
三十分は経過しただろう。一見無意味に思えるこの行動だけど、ここに間違いなく敵の急所があるとわかっている今、この行為をやめる理由はない。
だからこの巨大な像をぐるっと文と二人並んで横にズレながら押していく。
本当にこの条件が正しいのか、チルノたちもはっきりしないらしいけど、それでも試す以外道はない。
私と文の二人かがりで同時に回転扉を押す。そのドンピシャな場所を見つけることができるまで諦めない。
そしてついに。
「あっ」
「咲夜さんっ!」
突破口。
私と文二人同時に手を触れた瞬間、歪んだ、揺れた。グラグラと、この手が沈み込むみたいに。
カモフラージュされているのか見た目上は壁が揺れ動くわけじゃない。だけどその感触が手に伝わってきた。寄りかかることができない、頼りない感触が。
「文、せーのでいくわよ」
「はい!」
改めて二人で壁に手をつけると息を合わせて力を込める。
「「せーのっ!」」
そして力を込めて押そうとしたその瞬間の出来事だった。
突如前方から腹を殴られたかのような衝撃が走り、私と文は同時に後方へとぶっ飛ばされてしまった。
「か、はぁはぁ」
あまりの衝撃。激痛、ちょうどみぞおちに入ってしまったからか、私は息をすることすらままならなくなってしまい、地面をのたうちまわる。
なんだ、何が起こった?
私たちの正面には壁、誰もいなかったし、そんな状態で正面から殴られたら気がつかないはずがないだろう。
そもそも、壁が目の前にあったのに正面から殴られたというのも意味がわからない。壁が変形して拳になり、殴ってきたというわけではない。変形は一切していない。
だというのに私と文は殴り飛ばされてしまった。
全く気がつくことができなかった。
それもそのはず、この中にクリスタルがあるせいか、島の中でここら辺はより一層霊力が濃く充満している。だから、霊力を感知するということがそもそも不可能なんだ。
「く、くぅ……」
ルーミアは?
悶絶する最中、もう一人の仲間の様子を見ようと私はゆっくりと顔を横に向けた。
——目を見開いた。
ルーミアは殴り飛ばされていない様子。だけど、それとは別に大ピンチに陥っていた。
なんと、突如現れた巨漢に服の襟を掴まれ、持ち上げられていたのだ。
必死に抵抗するルーミアだけど、そのガタイの差からルーミアを掴む手はビクともしない。ルーミアも妖怪だから人間よりも素の筋力は強いはず、だけどそれでも一切抵抗できないほどの力の差。
ルーミアを片手一本で抑え込んでいる。
「っ、離せ!」
ついに出した弾幕。
それらすべてがルーミアを掴んでいる巨漢へと向かっていくが、そんなものは無意味だというように巨漢が腕を数度ふるった瞬間、周囲に迫っていた弾幕、そのすべてが一瞬にして弾き飛ばされた。まるで薙ぎ払われてあらぬ方向へと飛んで行ったかのように。
でも、あいつはルーミアの弾幕には一切触れていない。ましてや、背後から迫っていた弾幕なんて腕を振るった衝撃波すらも届かないはず。
一体どうして。
「悪いネズミもいたものだ。まさか、神父様の結婚式の日を狙って強襲してくるとは。これはきついお仕置きが必要になりそうだな」
自分の技が通用しない、そのことを思い知らせて一通り絶望させたことで気が済んだのか、ルーミアを乱雑に投げ捨てると私たちへ向き直った。
私はまだ正常に息ができるとは言い難いけど、それでも立ち上がる。同じように文も立ち上がったのを見てともに臨戦態勢に入った。
中に入るにはまずはあいつをなんとかするしかない。
「この程度のやつら、魔導の出る幕はないな。俺は三龍騎士が一人、越前力。テメェら全員、俺たちの労働力となってもらおう」
はい!第248話終了
ついに咲夜たちのところでも戦いが始まりました。
咲夜、文、ルーミアVS力の戦い。果たして力の能力はいったい?
そして力や風魔があれほどいう魔導の実力は果たして?
次回は黒葉パートに戻ります。
そして咲夜パートと黒葉パートを並行して進めていくのですが、二章の時と同様、交互に進めるとは限らないため、連続でパートを薦める場合があります。
というよりも、咲夜パートが早く進行してくれないと黒葉パートが進められないので困るんですよね。
黒葉パートは基本時間稼ぎとレミリアをやる気にさせるための戦いですから。
メインは咲夜パートになります。
ただ、実力的にはかなり不安なメンバーですけどね。ルーミアは鍛治師の人里で強化されたとはいえ、味方チームの中で上位の実力とは言えません。
文も基本的には戦闘要員ではないので。
なので、咲夜に頑張ってもらいましょう。
それでは!
さようなら