それでは前回のあらすじ
フランは黒葉の能力の存在に気が付き、レミリアに報告するも、どうやら知っているようだった。
黒葉はレミリアにお使いを頼まれ、人里へと向かうのだった。
それではどうぞ!
side黒葉
人里にやってくるとやけに静まり返っていた。
いつもならばこの時間帯でも屋台で飲んでいる人や店で飲んでいる人でにぎわっており、こんなに静かなことはまずない。
不気味だ。飲食店もすべて店を閉め、まるで何かの侵入を防ぐかのようにバリケードのようなものが設置されている。
この場に長居するのは危険だ。そう考えて俺は足早に食用の輸血パックを売っている店へと向かっていく。
なんだろう。胸がざわつく。嫌な予感がしてならない。
「あれ? 黒葉なのかー?」
「え、ルーミア?」
そこにいたのはルーミアだった。
静まり返ったこの人里にルーミアただ一人この場にいた。なんだか胸がざわつく。
信じたくないとは心で思っていても最悪の事を考えてしまう。ルーミアがこの状況を作り出したんじゃないかって。
戦闘実技の時もルーミアは毎回好成績を収めている。そのため、この状況を作り出すことができるほどに強くなっていても何ら不思議だとは思わない。
少し怖かった。だが、友として友が道を踏み外しそうになった時は止めてやりたい。そう考えて聞いてみることにした。
「る、ルーミア……もしかしてこの状況って」
「っ! 黒葉、逃げて!」
その瞬間、全速力で走ってきたルーミアに反応することができず、俺は突き飛ばされてしまった。
すると、俺の元居た場所をものすごい炎が焼いていった。もちろんルーミアは俺をかばってしまったせいでこの炎に飲み込まれてしまった。
「ルーミア!!!」
「黒……葉……」
俺は叫ぶものの、炎の中からは弱弱しい声しか返ってこなかった。
慌ててルーミアを助け出そうとするものの、あたりはものすごい高温、そしてその炎は誰一人として寄せ付けないほどの熱気を帯びている。
周囲の家屋にまで引火し、大勢の人が家の中から飛び出して逃げていく。
俺の中に嫌な記憶がよみがえる。
少し前に俺の住んでいた人里が燃えたあの情景に非常に酷似している。
怒りで拳が震え、どうしようもなく自分が憎かった。
あの時も俺は誰一人として救えなかった。それどころか俺は姉ちゃんに守ってもらうばかりだった。
もう、絶対に誰も失わないと誓ったのに……目の前でルーミアが炎に焼かれ、苦しんでいるその姿を見て見ぬふりをするしかないのか?
いや、違う。俺はもう、誰一人として失わない!
「ルーミア!」
俺は炎の中へと駆け出した。
ものすごい熱が俺の皮膚を焼いていくが、そんなものは関係ない。太陽に目を焼かれる痛みから比べたら、この程度の痛みは蚊に刺された程度だ。そして、大切な人を失う心の痛みから比べたら一瞬のこの痛みはへでもない。
倒れかけたルーミアの腰に手を回すと俺はお姫様抱っこの要領で抱えてその場から駆け出した。
炎から脱出すると俺はルーミアをかばうように倒れこんだ。俺が下敷きになってルーミアが上にいる状態。
ルーミアは辛うじて意識があるようだが、だいぶ意識が朦朧としてしまっている。このままでは危険だ。全身やけどの大けが。このまま放置していたら本当に命が危ない。だというのに––
「相変わらず空気が読めないんだな。お前は」
「覚えていてもらえるなんて光栄だ。吸血鬼になった少年」
俺はルーミアを隣におろして立ち上がった。
背後に人の気配がする。そしてこの気配を俺は知っていた。
忌々しい過去の記憶が蘇る。どうしようもなく殺意がわいてくる。
殺してやる、殺してやると俺の心が叫んでいる。
だが、俺は妙に落ち着いていた。なぜだかわからないが、冷静になることができていた。多分、さっき熱を帯びて熱くなったところに冷たい夜風を浴びたからだろう。頭が冷やされて、この状況を冷静に分析できた。
この気配は俺の住んでいた人里を燃やしたやつと同じ気配だ。
「久しぶりだな。炎の魔人」
「炎の魔人だなんてそんな……俺にはゲンという名前があるんだぜ」
「じゃあ、ゲン……なんで今回はこの人里を襲いに来た」
「……命令だな」
命令? ということはこのゲンの上にいるやつがいるのか?
つまり、この戦いはゲンを倒せば終わりというわけではないのか。
「以前はよくも俺の故郷を燃やしてくれたな」
「あー、お前はあの雪女と一緒にいた雑魚か」
雑魚。本来なら悔しいはずなのに、今の俺は何一つとして言い返すことができなかった。
俺が雑魚であるのは事実だ。未だに師匠の能力をつかむことができず、一撃すら与えられていない。姉貴との特訓でも未だに血液を操ることができないでいる。俺は霊力、妖力操作の才能が一切ないのだ。
だが、
「いつまでも昔の俺のままだとは思うなよ!」
姉ちゃん、俺に力を貸してくれ。
俺は姉ちゃんの刀、吹雪を抜いて構える。
刀身が雪のようにキラキラと輝いている。まるで刃こぼれなどしていなく、よく手入れされた刀身。
俺には雪の力は使えないけども、少しは戦えるようになったはずだ。
「今度は俺がお前を喰らう番だゲン」
「出来るものなら、やってみやがれ」
その瞬間、俺たちにものすごく大きな炎の渦が襲い掛かってきた。
俺はそれに反応しきることができず、立ち尽くしてしまった。
はい!第25話終了
黒葉はゲンに勝つことが出来るのでしょうか?
それでは!
さようなら