それでは前回のあらすじ
ついに始まった黒葉、風魔VS龍の戦い。
龍は自分勝手な持論を展開し、二人を責め立てる。
だが、黒葉はそんな言葉は意に介すこともせず、攻撃に出る。
龍が油断して能力を使っていなかったおかげで刀が直撃したものの、その傷は一瞬にして治癒してしまった。
さぁ、まだまだ時間を稼がなければいけないぞ。
それではどうぞ!
sideレミリア
無理だ。勝てるわけがない。
黒葉たちが来た時、そう思った。
だって龍は未来を見ることができる。どんなにすごい攻撃をしたところで未来を見て回避されたらどうしようもないのだ。
咲夜だったら龍に攻撃を当てることができるかもしれない。だけど、ここに来たのが黒葉の時点で敗北は濃厚だって、そう思った。
私の知っている黒葉は愚直に頑張るけど、実力が思うように伴わなくて、いつもボロボロになっている黒葉だから。あれでは五天魔王、それも第二席の強さを誇る龍とまともに戦うことすらできないだろうって、そう思っていた。
だけど、どうやら私は黒葉を過小評価してしまっていたらしい。
龍の攻撃を捌いて龍を斬ることに成功した。残念ながらその攻撃は一瞬にして回復されてしまったけど、黒葉が龍に攻撃を当てることができたというのは事実だ。
いくら龍が油断して能力を使っていなかったとしても、昔の黒葉では考えられないことだ。
男子、三日会わざれば刮目してみよとはいうけれど、まさか鍛治師の人里に行って帰ってくる間にこれほどまでに実力を伸ばしていたとは。
私の能力は近くにいる人のある程度の期間の運命を見ることができるというもの。だから遠くに行ってしまった後の黒葉の動向はあまり知らないのだ。
そして黒葉と一緒に来た、確か倉風魔という男の子。あの子もかなりの実力を持っている。
見た感じ、一撃一撃の威力に関しては黒葉の《
あの二人が力を合わせればもしかするとと思ってしまうけど、今だに私の運命は不変を示している。この運命からは逃れられないし、無理に変えようと動いてしまったら不変の運命の結末に収束するため、もっと過程が酷くなるかもしれない。
私はどうしたら……。
そうこうしている間に参列者たちの避難が完了したらしい。突然地面に開かれた異空間への入り口、あれは間違いなく紫のスキマね。
あのスキマ妖怪も協力してくれているのね。
私はひっそりと自分だけ犠牲になって終わらせるつもりだったんだけど、かなり大ごとになってしまっているらしい。でも、それは私の望むところではない。
もし龍に負けた時、被害者がどんどんと増えて行ってしまうから。
でも、黒葉はそれだけ本気ということなんだろう。さっきの一撃で伝わって来た。
咲夜たちがここにいないということはどこかで何かをやっていて、黒葉は多分私を結婚させないための時間稼ぎのためにここにいるんだろう。でも、今の一撃は間違いなく龍を倒すという気迫すら感じた。
龍を倒すことは容易じゃないと黒葉もわかっているはずなのに、黒葉は一瞬たりとも勝てないとは思っていないみたい。
私の見る運命はあいも変わらず不変。すなわち黒葉の敗北を示している。
やっぱり黒葉たちじゃ龍を倒すことができない。
「君たちには人の心というものがないのかなぁ!? 人のことをズタズタに斬って、心が痛んだりすることはないのかなぁ!? その感情がないとしたら君たちはもうとっくに人間として終わっているよ!」
「それが不思議なことにお前だけは斬っても心が痛まないんだよ」
「むしろ死んでくれないかなぁ。僕らは全員あんたの敗走を願っているんだ」
「君たちは本当に狂っているよ!」
再びぶつかり合う、黒葉、風魔と龍。
龍からさっきまでの密度とは明らかに違う量のドラゴン頭が放たれる。まるでそれは真っ黒な壁のよう。それらが蠢き、次々と黒葉と風魔の二人へと襲いかかる。
それを二人は斬って対処していくけど、龍にスタミナ切れというものは存在しないのか、斬っても斬ってもキリがなく、斬った側からまた新しいドラゴン頭が二人へと襲いかかる。
「キリがない」
「さすがにこの量は厳しいね」
斬って回避してまた斬って、しゃがんでジャンプしてまた斬る。
二人は背を預けてお互いをカバーするように立ち回っているが、二人には体力の限界というものがある。半妖である黒葉のスタミナは常人よりも多いかもしれないけど、風魔は人間だから体力の限界もすぐに来てしまうことだろう。
この調子で咲夜たちの仕事が終わるまで時間を稼ぐことなんてできるのかしら。
「あっははは、逃げ回ってばかりじゃ僕を倒すことはできないよ? 君たちは僕を倒したいんでしょ? ほーら、僕はここから動かないよ。斬ってごらん? って、それの対処で精一杯なら僕に攻撃を届かせることもできないかぁ。ま、残念に思うことはないよ。だって僕は最強で完璧な存在なんだから、最初から有象無象である君らが僕に敵うはずがなかった、ただそれだけのことなのさ。さっきは僕に好き勝手してくれたけどさ、所詮君たちはその程度だったっていうことなんだよ。弱い君たちは何も得ることができない。でも、完璧である僕は全てを得ることができる。なんだって手に入るんだ。これは君たちがどれだけ努力したところでたどり着くことができない境地っていうやつだよ。ま、今回は運がなかったって思って諦めなよ。自分の力を過信し、驕った君たちが悪いんだからさ。人の結婚式をめちゃくちゃにしてくれて、さぞかし実力に自信があるんだろうと思っていたらこれだよ。弱い犬ほどよく吠えるとはこのことだよね。何も持っていないくせに人のものは欲しがって、何様のつもりかな? 不敬、弱小、強欲。自信満々に挑んで来た割にはこのザマなんて、本当にお笑いものだよね」
お腹を押さえて煽るように笑う龍。
でも、確かにこのままじゃ龍に近づくことすらできないし、体力を削られていく一方だ。このまま長くは続かない。
龍は今、油断している。なんとかあのドラゴン頭の波を超えて龍に接近することさえできれば龍に攻撃を当てることができるかもしれない。
私がやる? でも、このまま流れに身をまかせるのが一番いい未来となるのなら私は何もしないほうがいいのかもしれない。私はみんなが必要以上に酷い目にあうところなんて見たくはないから。
龍は勝利を確信し、私は目を伏せようかと考えていたその時の出来事だった。
「そうか、じゃあ散々煽っておいてやり返されたら、カッコ悪いよな」
「あ?」
「《
炎を纏った黒葉の刀が高速で動き出す。
黒葉はまるで舞でも踊っているかのような華麗な動きで刀を振るい、次々とドラゴン頭を斬っていく。というよりも、受け流しているという動きに近いかもしれない。
黒葉の刀が前に使っていた吹雪ではなく、どこにでもあるような刀を使っていることから耐久力は少ないため、高威力の技を使えないのかもしれない。だからさっきから《
ただ、それでもこのまま戦い続けていたら刀が破壊されてしまったとしてもおかしくはない。けれど、あの受け流す動きならば刀へのダメージも最小限でこの状況を切り抜けることができる。
「俺の知り合いに舞うように刀を振る人がいてな。完全再現とはいかないけど、それを参考にさせてもらった!」
「なっ」
「俺たちがなんだって、龍? 攻撃して欲しいんなら、お望み通りに攻撃してやるよ!」
舞う、そのままの流れで龍へと剣を振るう黒葉。
あいも変わらず龍はすぐに油断をする性格のせいで黒葉が突然迫って来たことに反応しきれず、一瞬遅れてドラゴン頭を出して迎え撃った。
黒葉が苦い顔をしながら飛びのいてドラゴン頭を回避、地面に膝をついた。実に間一髪というところだった。
「はぁ、はぁ、クソっ」
悪態をつきながら手に握る刀へと視線を落とした。
やっぱり黒葉は刀をかばいながら戦っているせいで全力を出せていないんだ。今のだって《
だが、悔しがっている暇はない。こうしている間にも次々と攻撃がやってくるのだから。
「今のはびっくりしたよ。まさかこの嵐の中を抜けてくるとは思わなかった。でも、今の動きは相当神経使うんじゃない? そうなんどもできる芸当ではないだろう。確かに驚いたけど、それならば脅威というほどではない。ほら、突っ込んで来たらどうだい? 僕はいつでも相手をしてあげるよ」
龍は構えてしまっている。二人のどちらかが攻撃を抜けて来るということを警戒させてしまった。
ああなってしまった龍は手をつけられない。龍はノーモーションであらゆる攻撃を仕掛けることだってできるわけだし、反応することさえできれば今の黒葉を退けたようにとっさの事態にだって対応することができる。
あの状態の龍に攻撃するのは至難の技。しかも追い詰めすぎたら未来を見られて詰んでしまう。
やっぱり今の黒葉の攻撃じゃスピードが足りないのだ。今のが千載一遇のチャンスだったというのに、スピードが足りなかったせいで対応されてしまった。
最初、龍を倒せるかもしれないと思ってしまったのはただの幻想だったのだ。
はい!第250話終了
ほぼレミリアの独白でした。
そして黒葉の新技《炎舞》。実は紫との特訓で習得した技の一つがこれです。
ただ、非常に体力消費が激しいので、龍のいうとおりそうなんども使うことはできません。
そしてこれはあくまでも時間稼ぎおよび、最小限の力のみで突破するための技なので、基本的に龍と真っ向からやりあうことは想定していない技なので、スピードは遅いです。
なので、龍に反応されてしまいました。
ただ、これを使えば一応頑張れば天魔の《雷神剣・地》位なら受け流すことができるかもしれませんね。
さて、次回は黒葉視点に戻って龍戦の続きです。
次回でとりあえず龍戦視点は中断して、力戦(咲夜パート)へ戻ります。
正直、龍戦は永遠と時間稼ぎをしているだけなので、いいところは今の所あまりないんですよね。
なので、早く咲夜パートを進めなければ。
ただ、咲夜パートが片付く前に龍戦でもっと描きたいシーンとかあるので、ちょくちょく龍戦へ戻って来ます。
それでは!
さようなら