それでは前回のあらすじ
咲夜たちの戦いが始まった。
しかし、咲夜の攻撃はことごとく弾かれ、ルーミアの攻撃は固すぎる肉体によって防がれてしまう。
だというのに力の攻撃は突然やって来て回避する暇さえない。
果たして咲夜たちは力を突破し、魔力炉内へ突撃することができるのか?
それではどうぞ!
side咲夜
力が地面に拳を叩きつける。
さっきまで私たちが食らったほどの威力の拳ならば一撃で地面が粉砕されてもおかしくはない威力。だけど、地面にはまるでソフトタッチしたかのように何も衝撃が伝わらず、その代わりに——
「ぐ、ふぅぅ」
突然横から衝撃が来た私が真横にぶっ飛ばされてしまい、地面を転がる。
視界内の好きな場所に衝撃を飛ばす力。見えず、突然襲いかかる暴力。
凶悪すぎる。
これが能力なんだとしたら樹海でも使えば反応することができるかもしれないけど、ここが像の真下っていうのが本当に悪い。
せめて龍と戦った時のように教会くらい離れていれば霊力探知した時の影響は小さく、普段と変わらないくらいの戦いができただろうに。
「はぁ、はぁ」
何とか立ち上がったけど、このままじゃダメだ。一方的に攻撃されてしまう。
龍とは違い、不可視の攻撃であるというのがより一層厄介だ。これじゃあ回避のしようもないし、攻撃をしようとしても攻撃が通らない。
ナイフを投げたとしても多分あいつの皮膚には攻撃が通らない。
でも、勝てない相手でもない。
耐久力、攻撃力ともに天魔といい勝負だけど、絶対に天魔の方が強かった。雷、攻撃力、耐久力、どれを取っても博麗選抜チームのメインアタッカーにふさわしいほどの人だった。
状況が悪いだけで追い詰められるというのならば私はメイド長失格だ。
私たちの攻撃力であいつの防御を突破することができないのなら突破しなければいい。
覚悟は決まった。
「さぁ、そろそろ俺たちの駒になる覚悟はできたか?」
「いいえ、もちろんそんなものがあるわけないわ。そんなことよりも、私たちはあなたを退ければそれでいいのよ。たとえあなたを倒せなくても、この像を破壊する、それが私たちの目的なんだから」
「ほう、ならどうする?」
「こうさせてもらうわ!」
そこで私は時を止める。
昔の私だったらここで力を運び、場外まで運んでいたかもしれない。だけど、今はそれだけの時間の余裕なんてない。
だから私一人で何とかするのは諦める。
なにせ、今私は一人で戦っているわけじゃないから。威迅と共闘して協力するということを覚えた。
「《ザ・ユニバース》」
威迅と共闘した時と同じ。
私の能力の制限時間内で唯一、遠くまで運んでいくことができそうな文に手を触れ、能力を付与する。
この《ザ・ユニバース》は自分以外の誰かも私の世界に入れることができる。相手に聞かれたくない話をする時や、共闘する時などには便利。
だから威迅の時同様、この状態で作戦を伝える。
「文」
「え、えぇ!? さ、咲夜さん、急にいろんなものが止まったんですけど!」
「今はどうでもいいでしょ」
「ちょ、説明くださいよ!」
詳しく説明できなくて悪いとは思っているけど、私の能力には時間制限があるから詳しく説明している時間なんてない。
「今から私があなたに能力の主導権を譲渡するわ」
「え、えぇ、どういうこと」
「だからあなたは私から能力を受け取ったらできるだけあいつを連れて遠くへ走って」
「ご、ごめんなさい、全く状況が理解できない」
「とにかくお願い」
「ちょっと、咲夜さん!?」
「《ディス・ワールド》」
文から猛抗議の言葉を投げられるけど、私は《ディス・ワールド》を使用した直後、動きが完全に止まってしまった。
この世界はもはや私のものではなくなった。一時的に文に主導権が移動し、私はこの時が止まった世界では動くことを許されなくなったのだ。
だから文に何を言われようとも私は何かを答えることはできないし、何もすることはできない。あとは文に全てを任せるしかないのだ。
「もう、恨みますよ咲夜さん!」
何が何だかわからないという状況、本当に悪いと思っているけど、今はこの手しか思いつかなかった。
時間が停止しているせいで私は何も喋ることはできないけど、心の中で文の恨み言に謝罪をする。そしてあとは文に任せるしかない。
文は新聞記者をやっているだけあって、相手の意思を汲み取るという能力に長けている。
だから恨み言を言いつつも文は多分私の意思を汲み取って動いてくれる。
「行きますよ!」
文は地面を蹴り、力へと突進をする。
その勢いでぶつかったら力の耐久力を考えると大岩に突撃したのと同じような衝撃だとは思うけど、文の耐久力もなかなかなもので、そのまま力を掴み、一瞬で目視できる限界距離まで飛んで行ってしまった。
さすがいつもパパラッチをして霊夢たちに追い回されているだけあるわね。
文は自称幻想郷最速というほどのスピードの持ち主。『風を操る程度の能力』を持つ彼女は自身の持つ羽でうまいこと風を掴み、トップスピードを常に維持することができるように飛ぶことができる。
この状況で彼女以上に力を遠くまで運ぶことができる人を知らない。
文がいなければ使えなかった手だ。
数秒後、能力の効果は切れ、私たちはいつも通りに動くことができるようになった。
すでに文と力の姿は見えない。文の速度だったら相当遠くまで行ったのだろう。
これで私とルーミアは像内に入ることができる。
「ルーミア、早く入るよ!」
「う、うん、わかった!」
私以外は状況を理解し切れていないだろうけど、説明している時間はあまりない。
悪いけど、このまま強行させてもらう。
私が手をついた横でルーミアが壁に手をつける。
力を連れて行った文が心配だけど、速攻でクリスタルを破壊したら文も助けることができるかもしれない。だから、もう少しだけ耐えていてくれと願い、壁をルーミアと同時に押した。
二人で押すといともたやすく動き出す壁。二人以上で触っていないと動かないように仕組まれている回転扉。
見た目は魔法か何かでカモフラージュされているようで、動いているようには見えないけど、感触ではちゃんと動いている。
私たち二人の体が徐々に壁に飲み込まれていく。
その時、背後から爆発音にも似た轟音が鳴り響いた。
私は直感した。あれは間違いなく力が暴れている音だ。
文に連れられて行ったり気が強引にこっちに戻ってこようとしている。
あんな威力の攻撃を何度も食らっていたら流石の文といえどもただでは済まないだろう。
早くクリスタルを壊さないと——
「え?」
突如としてトンと押される背中。
それによって私はバランスを崩すようにして像の内部へと転がり込んでいく。
驚き、体勢を崩しながらも背後へ目を向ける。そこに見えたのは覚悟を決めた目をしているルーミアの姿。
開くときは二人以上じゃないとひらけない扉だけど、開いてしまえば二人以上で入る必要はない。ルーミアはそう踏んで私を像の中へ押し込んだ。
そしてあの目、あれはおそらくルーミアも力と戦いにいく気なのだろう。
私がクリスタルの破壊に集中することができるように力を足止めするために。
「咲夜、お願い」
その言葉が聞こえたのを最後に私が通ってきた扉は勢いよく閉まり、完全に私は完全に外界と隔絶されてしまった。
はい!第253話終了
とりあえず力戦は中断し、咲夜パートを何話かやってから黒葉へ戻します。
それでは!
さようなら