それでは前回のあらすじ
続く咲夜、文、ルーミアVS力の戦い。
三人は力の圧倒的な攻撃力と防御力に苦戦を強いられる。
だが、力を倒す必要はない。三人の目的はクリスタルの破壊なのだから退ければ咲夜たちの勝ちだ。
咲夜は文に能力を託し、時を止めている間に文が力を遠くへ運んでいく。
これで咲夜とルーミアは像内へ入れる。そう思ったが、力はすぐに戻ってくるだろう。
ルーミアは覚悟を決め、文とともに力の足止めをするため、外に残り、咲夜だけを像内へ押し込んだ。
果たしてこのままクリスタルを破壊することができるのか?
それではどうぞ!
side咲夜
ゆっくりと立ち上がる。
初めて見る景色、先日見ようとして見ることができなかった景色。
周囲のものは全て石造りで、外周には機械が所狭しと並んでいる。誰がどう見てもここが間違いなくこの島の一番重要な場所だ。
三人で来たはずなのにいつの間にか私一人だけになってしまった。
文とルーミアは私がクリスタルを破壊するまで力を足止めしてくれている。だから私は急いでクリスタルを破壊しないといけない。
内部は薄暗くて足元がよく見えない。だけど、部屋の中央に設置された巨大なクリスタルが怪しげに輝き、クリスタルへ私を導いてくれる。
あれが多分チルノたちが言っていたクリスタルなんだろう。
怪しげな機械が設置されていて、そこに巨大なクリスタルが嵌められている。大きさは私の身長の二倍はありそうなほどの大きさで、思わず圧倒されてしまう。
確かここでチルノたちはやられてしまったと言っていた。
どこから現れるか、能力の発動条件は何か、どんな効果があるのか、それをわかっていない以上、警戒しなければいけない。
「これを破壊すれば」
ゆっくりとクリスタルへ近づき、太もものナイフホルダーからナイフを取り出す。
これを破壊したら理論上、龍への霊力の供給が止まり、龍を倒せるようになるはず。だけど、それと同時にこの島が落ちてしまう。
黒葉は任せろと言っていたけど、正直今でも不安はよぎってしまう。この数の人々全員が地面に叩きつけられてしまうんじゃないかって。
でも、今は黒葉を信じるしかない。
それにルーミアと文も頑張ってくれているのだから、私が迷っている暇はない。
「これでっ!」
「おっと〜」
「っ」
ナイフを振りかざしてクリスタルに突き立てようと振り下ろした瞬間、私の手首が背後から伸びてきた何者かの手に掴まれてしまい、その動きを止めてしまった。
聞こえて来た声は中性的なもので、男なのか女なのか判断することは不可能。
一つわかることは背後から感じる魔力はパチュリー様と同格、いや、それ以上の可能性もあるということ。
凄腕の魔法使い。
「全力の奴は一体何やってるんだろうねぇ。ここにネズミが入り込んじゃってるじゃん」
「あなたがここの番人っていう奴かしら」
「あっははは、番人っていうほど大層なものじゃないよ。ただ、僕は侵入してしまったネズミを駆除するために来ただけだからさ」
私のことをなんとも思っていないとでも言いたげな口調。
こいつにとって私は他の有象無象と変わらないんだ。いつも通りに私のことを軽くあしらい、そして奴隷にするというだけの仕事だと考えている。
事実、こいつには実力があるのは間違いない。チルノたちを完封したのもそうだけど、背後から感じる魔力だけでどれだけこいつが強いのかというのがわかる。
手首を掴まれているだけ、普段の私ならば簡単に振り払って逆に首元にナイフを突き立てているのだけど、今の私の感覚は首元に死神の鎌を突きつけられているかのよう。
手首を掴まれただけでこれほど明確に死を連想させられたのは生まれて初めてね。
話には聞いていたけど、この像には想像以上にとんでもないのが潜んでいたわね。
でも大丈夫、動ける、恐怖していない。すくみあがっていない。
今の私のコンディションは最高潮、お嬢様を救い出せないということ以上に、今の私に怖いものなどありはしない。
「お?」
私は簡単にその手を振り払い、そのまま背後へ向けて回し蹴りを放つ。
だが、その攻撃はいともたやすく背後へ飛ぶことによって回避されてしまった。でも、今の攻撃は別に当てるためにやったものじゃない、ただの牽制だからこれで問題ない。
チルノたちは恐怖で動けなくなってしまっていた。だけど私は違う、私は動けるし戦えるというところを見せつける。
私を有象無象と同じだと考えたことを後悔させてやる。
「危ないねぇ。君って怖いもの知らずっていう奴? 怖いという感情は人間が生きていく上で必要な——」
「うるさい!」
「うぇぇぇぇぇぇっ!?」
時を止め、急接近。
首元へナイフを振るうと情けない声を出しながら上体をそらして私のナイフを回避する魔法使い。そしてさらに後ろへ飛んで私から距離を取って来た。
そこでやっとクリスタルの怪しげな光に照らされてその姿が明確に私の視界に映し出される。
真っ黒なローブに身を包み、綺麗なブロンズヘアーには怪しげなドクロのヘアピンがあしらわれている。その顔は超絶美少女といっても過言ではなかった。
歳は黒葉よりも少し上くらいだろう。
こんな少女があれほどの雰囲気を醸し出していたと考えると恐ろしいものがあるわね。
「もう、服に汚れがついちゃったらどうするのさぁ。勘弁してよね、一張羅なんだから」
「そう、ならあなたのその一張羅、私のナイフでビリビリに引き裂いてあげましょうか?」
「いやーん、えっちですよお姉さん。僕を裸に剥いて、どうする気ですか!」
「どうもしないわ。ただ、お気に入りの一張羅が無残な姿になって放心しているあなたを、この島から叩き落とすっていうのも乙なものだと思ってね」
「鬼! 悪魔! 人でなし!」
「人でなしってどっちよ」とツッコミたかったけど、そんな余裕は私にはなかった。
この子のことを煽ってはいるけど、その不気味な気配は以前として私にプレッシャーをかけて来ている。動けてはいるし、今の所恐怖したりなどはしていないけど、このプレッシャーが続けば私の心は限界が来てしまうかもしれない。
そんなギリギリの状況でここに立っているのだ。
でも大丈夫、月刃よりは怖くない。
黒葉を庇って威迅と合流するまでの間、一人で月刃と退治していたあの時よりかは心細くない。
「むぅ、お姉さんってもしかして無謀な人?」
「は?」
「それとも恐怖を感じられないほど頭が悪い人?」
「子供が……目上の人への礼儀が足りれないんじゃないの?」
「怒っちゃった? ごめーんね。僕、弱い人には興味ないからさ」
調子に乗っている少女。
確かに調子に乗れるくらいの実力はあるようだけど、それでもあまり調子に乗りすぎると痛い目を見るということを教えてあげるわ。
私を嘲ったことを後悔することね。
「現世《ザ・ワールド》」
どれだけ強い相手であろうとも私が時を止めてしまえば誰も抵抗することなんてできない。
魔力量が多い? 不気味? そんなことは関係ない、私の能力に抗うすべなんて誰一人持ち合わせちゃいないのだから。
「幻符《殺人ドール》」
時が停止している間にありったけのナイフを彼女に向けて投げておく。
この技に対処できる人なんて私と同じ能力を持っているか、はたまた私の能力を知っているか、霊夢かの誰かしかいない。
初見でこの攻撃を食らったら何も抵抗することができずに何もわからずに死ぬことになる。
「時間がないからね、悪いけどあなたに構っている暇はないの。さっさとおわりにしましょう」
そして能力の効果が切れ、時間の流れが正常に進むように戻った。
それと同時に私が時間停止中に投げたナイフが私の投げた勢いのまま少女に襲いかかっていく。
四方八方から投げたナイフ。逃げ場なんてない。どこへ逃げようともそこはナイフの嵐、彼女の生きる道は残されていない。
「ちょ、ま」
それが少女の最後の声だった。
直後、おびただしい数のナイフが彼女の体のいたるところに突き刺さり、彼女の体からは噴水のように大量の血が溢れ出して来る。
少女は喉の奥からかすれたような空気だけが漏れ出るような音は出すが、もう声も発することができなくなってしまったようで、そのまま力つきるようにして地面に倒れ込んだ。
あまりにも呆気ない最期だった。
「私をナメてかかるからこうなるのよ。私はどんな相手だって容赦はしないわ」
それがお嬢様を守ると決めた日に誓った覚悟なんだから。
悲惨な光景、ピクリピクリとだけ動くけど、もうなんの感情も見せなくなった表情。
こんなことをしていなければこの子はきっともっと美しい美少女になったことだろうに、あまりにも残念ね。
でも、これは戦いだから、相手をナメてかかった方が悪いのよ。
「さようなら」
最後にその一言を告げ、私は再びクリスタル前にやって来る。
これで邪魔者はいなくなった。あとはクリスタルを破壊するだけ——
「ねぇ、いい夢は見れたかな?」
はい!第254話終了
ついにその姿を現した最後の敵!
今まで盗賊編で一人女の子の敵は出て来ましたが、非常に敵の女性率が低い現状でしたので、ここら辺で女の子の敵を出しておこうと。
ちなみにこの子、絶世の美少女です。まぁ、敵ながら咲夜が容姿を褒めていたところからもわかるとは思いますが。
この子が今までチルノたちや黒葉を絶望のどん底に叩き落としていた元凶なのです。
つまり、この天空都市スカイ編の影のラスボスと言ってもいい存在。
あっけなく倒せたかと思いきや、最後。不穏ですね。
果たして咲夜は無事にクリスタルを破壊することができるのか?
それでは!
さようなら