メリークリスマス! 今年も僕はクリボッチです!
それでは前回のあらすじ
ついに
白愛が初めて紅魔館にやってきた日、そして過ごした日々。
かつて、彼女だけ唯一、レミリアが見た不変の死の運命を覆したのだ。
そんな彼女と姉弟である黒葉ならあるいは――
それではどうぞ!
side黒葉
次々に攻撃の嵐がやって来る。休んでいる暇なんて無い。
動け、動かせ。動かなくても無理やり動かせ。
絶対に死なないし、姉貴を死なせたりなんかさせない。絶対に守り抜く、姉ちゃんから借りたこの力を使えばまだまだ動ける。
俺の目が黒いうちは不変の運命の通りにはさせない。
技を出せ!
「《
下半身をどっしり構え、吹雪を連続で繰り出す。
それをどんどんと加速させ、全方位に斬撃の防御を展開。吹雪発動時に撒かれる雪もすべて細かい斬撃だ。
「いい加減に粘るのをやめてくれないかなぁ!? どうせ君たちでは僕には到底届かないんだからさぁ、いい加減自分の運命を受け入れたらどうなのかな! レミリア嬢は本当に利口だよ。それに比べたら君たちは本当に往生際が悪いよね。もしかして頑張れば僕の命に手が届くとでも思ってるの? だとしたら片腹痛いよね。自分の運命も受け入れることができないなんて惨めこの上ないよ。言っておくけど、僕はまだ本気を出していない。だというのに君たちは僕の攻撃を防ぐのに手一杯だ。さて、ここからどうやって僕に反撃をするつもりなのか教えてほしいもんだね。君たちと違って僕は暇じゃないんだよ。これ以上粘って僕の貴重な時間を奪うのはやめてほしいな。聞いたことがないかな? 時間は金なんだよ。つまり、君たちは今、僕からお金を奪っているのと同義だ。これ以上僕に無駄な時間を過ごさせるのはやめてくれないかなぁっ!」
「なら、あんたが諦めればそれで済む話だ。絶対に僕らは諦める気なんて無いからさ! 疾風剣《
暴風が吹き荒れ、突如として俺の眼の前に一瞬で移動してくる風魔。
どうやらこの技は周囲に暴風の斬撃を撒き散らしながら突進する技らしい。俺と風魔の間にあったドラゴン頭も全て切られ、消滅している。
これで再び《
風魔と離れてしまっていたから《
「行くぞ、風魔」
「もちろん」
俺が雪を降らせ、風魔が突風を吹かせる。
周囲は猛吹雪と言っても良い天候となった。
「さっきさ、君は火を使ってなかったっけ? なんで雪が降っているのさ。一人の人間が複数の能力を使うなんてそんなのありなわけ? 生物の条理から逸しているよね。どういう原理なのかな?」
「お前に教えると思うか?」
「君が僕のことをバカにしているということはよーーーーーっくわかったよ。でも、いいさ。どうしても聞きたいというわけじゃないからさ。どうせもうすぐで君たちは死ぬんだから最後に聞いてあげようと思っただけだからね。でも、そう言うなら、僕も君たちに僕の秘密を教えてあげないよ。だって君から僕に喧嘩を売ったんだからね。文句は受け付けないよ」
「別に良いよ。もう知っているし」
俺の言葉に目を見開く龍。
俺たちが何の勝算もなしに突撃してくるはずがないだろう。こうして突っ込んできたんだからなにかした掴んだに決まっている。
でもすぐに龍はニタニタ顔に変わった。それだけで龍が何を思い至ったのかがすぐに分かった。
龍は師匠に龍の加護を持っていると言っていたらしいから俺たちがその情報を掴んで来たんだと思ったんだろう。
でも、それは嘘だ。そんな加護、加護辞典のどこにも載っていない。
「へぇ、良いよ。聞いてあげようじゃないか。僕の秘密って一体なんだい? 別に君たちが何を掴んで、どうやって僕を倒すつもりなのか、気になるわけじゃないけど、せっかく君たちが掴んだとっておきの秘密だ。君たちの考察を聞いてあげようじゃないか」
「いやいや、良いよ別に。別に気にならないんだろう? なら、それでいいじゃん。それとも何? 気になっちゃう感じ?」
煽るように言うと明らかに機嫌が悪くなる龍。
「本当に君たちは意地悪だよね。せっかく僕が聞いてあげると言っているんだ。何度も言うけど、あまり僕の時間を無駄にしないでくれよ。こうして敵の話を聞いてあげる僕の寛大さに感謝して知識を披露するのが礼儀というものなんじゃないかなぁ?」
「あっそう……じゃあ、お言葉に甘えて」
「そうそう、それで良いんだよ」
再びニタニタ顔になる龍。
だが、俺の言葉を聞き、一瞬にして龍の表情は真顔になった。
「お前の加護は悪食の加護。使う度に大量の霊力を消費する燃費最悪の加護だ。そしてお前の霊力量も少ないから相性最悪。それをドラゴン像内にあるクリスタルで島全体から霊力を奪い、賄って居るんだろ?」
「…………」
明らかに図星だ。
龍は何も言っていないが、表情が俺の言葉が正解だと告げている。
まぁ、加護辞典には龍の能力の説明ができる加護なんてこれしかなかったから間違いないと思っていたけど、やっぱり間違いじゃなかった。
つまり、クリスタルを破壊することができれば龍を倒すことができる。
「ふ、ふふふ」
「は?」
「ふははははははは、間違えているよそれ。冥土の土産に教えてあげるよ、僕の加護は悪食の加護なんていう品のない加護じゃなくて龍の加護さ。全ての攻撃を無効化できるほどの超再生。僕の攻撃、全てがこの加護を示している!」
なるほどそう来たか。
でも、龍の加護では説明できない。
「超再生にしても龍の域を超えている気がするが、それはどう説明するんだ?」
「………………《龍跳虎臥》」
突如として腹めがけて下からドラゴン頭が飛び出してくる。
それはちゃんと見えていたため、俺は刀でガード。そのまま上空へとふっ飛ばされた。
この技はさっき風魔が食らっていたのを外から見ていた。だからちゃんと次に何が来るかも把握している。
「
真下へ向けて左右に刀を二振りすると共に大小さまざまな氷の斬撃が放たれ、真下から襲い来る大量のドラゴン頭を次々と切り裂く。
それと同時に合わせるようにして風魔が突っ込んできた。
「疾風剣《
俺の氷の斬撃の間を縫い、風魔も風の斬撃を飛ばし、俺の真下のドラゴン頭を斬る。
氷と風、二つの斬撃があればどれだけドラゴン頭が多くてもその全てを斬ることができ、俺と風魔は龍の大技、《龍跳虎臥》を防ぐことに成功した。
そして何もなくなった地面に着地。風魔と横並びになって刀と剣を構えて龍を見据える。
その様子は先程までのニヤニヤと余裕のある表情ではなく、焦りと苛立ちが混ざったような怨嗟の表情へと変貌していた。
「何も言い返せなくなって口封じか? そろそろ余裕が無くなってきたようだな」
「僕に余裕がない? そんなわけがないだろう。僕の力は最強だ、君等なんかでは僕に勝つことはできない。認めるよ、君の考察は概ね正しい。確かに僕の力はくりすたるにいぞんしているものだから、クリスタルを破壊されたら僕はピンチに陥るかもしれない。だけどね、ここまでたどり着いたのが今まで君等だけだったと思わないことだね。それなのにどうして誰一人として僕に勝つことができなかったのか。それは誰一人としてクリスタルを破壊することができなかったからだ。簡単に言うけどね、クリスタルをそうやすやすと破壊できると思ったら大間違いさ。ま、そんな事ができたとしても僕を倒せる人が今の時代に居るとは思えないけどね」
「へぇ、それじゃあ、前は居たみたいな言い方じゃないか。そりゃそっか。博霊選抜チームを壊滅に追い込んだのはお前らのリーダーであるカイ・スーガレンスだ。お前じゃない。お前自体は誰かに負けたんじゃないか?」
瞬間、突然攻撃が飛んできた。
それを目で霊力の流れを視認し、斬り捨てたが、龍も心の余裕が無くなってきているらしい。時間を稼ぐだけなら相手の心を乱し、ミスを誘発するのが一番いいからな。
「そろそろ君たちの顔を見るのも飽きてきたよ。そろそろ僕の前から消えてくれないかなぁ? まずはその減らず口を叩く君から始末してあげるよ!」
これ以上俺に話せまいとして大量のドラゴン頭を放ってくる龍。明らかに余裕がなくなり、俺を殺すために今までよりも本気で攻撃してきている。
だが、今までのものよりも荒い。密度は高いけど、精度は低い。とにかく攻撃してきていると言った感じだ。逃げ道はいくらでも用意されている。
それに風魔も俺の隣りにいる。
「疾風剣《旋風》」
「《豪雪》」
同時に技を繰り出し、大量のドラゴン頭を斬り刻む。
少し前に風魔が、そしてその真後ろに俺が居る。ほとんどのドラゴン頭は風魔が斬れるが、それでもこの密度では防ぎきれない攻撃もあるため、その攻撃を俺が対処。
これならどれだけでも時間を稼ぐことができる気さえしてくるほどに戦いやすい。
行ける。
風魔をサポートしてドラゴン頭を斬っていくとどんどんと感覚が研ぎ澄まされていくような感覚になる。
不安定だった、まだ練度が足りていなかった《
全てが見える。
さっきまでは見えなかった風魔の剣捌きだったり、ドラゴン頭の軌道がはっきりと目で追える。
まるで世界がスローモーションだ。
鍛冶師の人里で指示されてやったときよりも強くなったからだろうか。あの時よりも更に深く深く集中という海の中に潜り込むことができている気がする。
無駄な思考、動作、それら全てを排除し、必要な風魔と龍以外の情報を全て削ぎ落とす。
殆どの攻撃は風魔が捌き、捌ききれなかった攻撃は俺が斬る。この連携にはさすがの龍も顔を顰めた。
これだけの攻撃をしているというのに、俺たちにかすりもしていないのだ。
俺だけでも、風魔だけでも出来なかった。
俺たち二人が揃っていることでようやく成り立っている戦い方。龍の目にはそれはそれは鬱陶しく写っていることだろう。
もっとだもっと。
もっと深く潜り込めば俺は――
「うぐぅっ!?」
「っ!? 黒葉君!」
「黒葉!」
突然胸が、特に肺が苦しくなり、思わず《
そして過呼吸気味に慌てて酸素を肺へと送り込んでいく。
今ここでやっと気がついた。
俺は深く潜り始めてから息をすることさえ排除していた。息をするという無意識ですら龍との戦いの集中に向けていたせいで、呼吸するということを完全に忘れていた。
必要なものまで削ぎ落としてしまっていたのだ。
そんな風に倒れ込んでしまったため、風魔と姉貴に心配をかけてしまった。
風魔は完全に攻撃の手を止め、こっちに意識を向けてしまう。だが、それは命取りだ。
「はぁ、か、ふう、が……俺のことはいいから」
そんな事を言っている間にも俺の目には見えてしまった。
風魔の背後から迫るドラゴン頭の存在が。
「ふ、ふうまぁぁぁぁぁっ! うしろぉぉぉぉぉっ!」
慌てて補給した少ない酸素を全て使い果たす勢いで叫ぶ。
だが時すでに遅し。
俺の声を聞いた風魔はすぐさま背後に防御態勢を取ったが、それを受け流すことは出来ず、まともに受けてしまった。
あの威力を完全に殺し切ることは不可能で、そのまま風魔の軽い体はドラゴン頭にぶっ飛ばされ、先程の龍と同様に教会の壁をぶち抜き、空の彼方までぶっ飛ばされていってしまった。
「さっきは僕を空中散歩に連れて行ってくれたからね。そのお返しさ。僕はお礼を絶対に忘れたりはしない。それが例え良いものであっても悪いものであっても……ね?」
「はぁ……はぁ……くっ」
まずいまずいまずい。非常にまずいことになった。
俺がミスったせいで風魔は飛ばされ、俺も動けない。大ピンチに陥ってしまった。
どうしてだ? どうして俺は《
練習ではここまで深く沈み込むなんてことはなかったし、呼吸まで忘れてしまうほどのミスはなかった……。
まさか、まだ俺は風魔のことを信じきれていなかったのか?
表面上は風魔のことを信頼していると言っておきながらまだ俺は風魔の実力に疑問をいだいていたというのか?
このまま風魔をサポートしていても本当に勝てるのだろうか? という疑念が邪念となっていたんだ。その上、龍の猛攻は想像を絶していた。
風魔に疑念を抱き、最大限の力を出せていないにも関わらず、あの攻防。
考えてみればあの時、思考こそ攻撃に追いついていたが、体は無理やり動かしているという感じで、全く体の動きをスムーズに運ぶことが出来ていなかった。
思考と肉体が分離していたんだ。
そんな状態だ。無理矢理にでも、それこそ呼吸を放棄してでも体を動かさなければ捌ききれなかったっていうことなんだろう。
悔しい。
俺のミスで、しかも俺の心が弱かったせいで俺は今、龍に負けてしまった。
風魔はぶっ飛ばされてしまった。
俺のせいだ。
「ま、安心しなよ。君の仲間たちはみんなすぐに君のもとへ送ってあげるからさ」
動け動け動け。
どんなに無様でも良い。急いで呼吸を整えて攻撃を回避しろ。
「それじゃあ、さようなら。冬夏黒葉君? 《龍騰虎闘》」
左右に出現するドラゴン頭。
その二つのドラゴン頭が俺を挟み込んで潰すが如くスピードで迫ってくる。
未だに俺の呼吸は整っていない。体を動かすことが出来ない。
酸欠で思考が回らない。
ダメだ……死ぬ。
衝撃を覚悟し、目を閉じる。
だが、俺の体に襲ってきたのはドラゴン頭に潰されるような衝撃ではなかった。
「え?」
一瞬の出来事。
俺の体はなにかに抱えられ、その場から離れることに成功。俺を狙っていたドラゴン頭はただただぶつかり合うだけとなっていた。
俺は驚愕していた。
なぜなら、さっきまで諦めて諦観していたはずの姉貴が俺のことを抱えて助けてくれたのだから。
はい!第260話終了
龍戦は基本、持久戦なので書くのが難しい。
どれだけ攻撃しても現時点では倒せないというのがわかりきっているので。
そして白愛の新技もいっぱい登場しました。
しかし、黒葉の《
風魔が居なくなってしまった今、全てがレミリアにかかっています。
果たしてここからどうなっていくのか?
ちなみに、風魔は最初から龍戦から離脱させるつもりで書いていたので、どこでどうやって離脱させるかを悩んでいたのですが、やっとここまで書けました。
それでは!
さようなら