それでは前回のあらすじ
《龍跳弧臥》を切り抜けた黒葉は屋上にて龍と対峙する。
龍によってどれだけスカイが素晴らしい街なのか説かれるが、この街の闇を知ってしまっている黒葉はあっちゃいけない街だと言う。
龍の逆鱗に触れた黒葉。
二人が激突するというところで、突然黒葉を矢が襲う。
その矢を放ったのはなんと、スカイの住民だった。
それではどうぞ!
sideルーミア
私は戦慄していた。
目の前に繰り広げられている戦いの壮絶さに、ただただ見守ることしかできなかった。
力は《
二人の攻撃の激しさに周囲の建物は二人が近づいてすらいないのに風圧のみで消し飛んでいく。
私の目から見たら、二人の実力は互角で、攻撃を相殺しあっているように見える。
だが、どうやらそうではなかったらしい。
風魔の風圧では拳圧を相殺しきれていないようで、ちょっとずつ、ちょっとずつではあるが、風魔の体にあざが増えていく。
これは力の拳圧によって出来上がってしまったものに他ならない。
風魔はまだ、力の力を上回ることができるほどの力を有していないということ。
「おいおい、どうしたんだ? 俺を殺すんじゃなかったのか?」
煽る力、そして悔しそうに表情をゆがめる風魔。
確かにこのまま戦っていたとしても、風魔が敗北してしまうのは目に見えている。
風魔も凄まじい力を持っているけど、師匠を超えるほどではない。一人では攻撃を防ぐことが精いっぱいで、風魔は全然攻めに転じることができていない。
でも、それは私のせいでもあるだろう。
これほど至近距離で二人の戦いを見ているというのに、さっきから私の方には一切風圧が飛んでこない。
それはなぜか。手負いの私をかばいながら風魔が戦っているから。私の方に風圧がなるべく来ないように拳圧を相殺しきろうとしているから。
力の力は凄まじいんだから、相殺しきろうと思ったらそれこそ、天魔並みのパワーが最低条件だろう。でも、風魔にはそれほどの力はない。
なのに、私に風圧が行かないように相殺しきろうとして、私の方を優先しているから風魔の方にはダメージが蓄積されてしまっている。
私も戦わなきゃ。
動かなきゃ。
そう、頭ではわかっているのに、妖力は枯渇し、骨は何本も折れ、ピクリとも体は動いてくれない。
もうさっきの《インパクト》で妖力は使い切ってしまったから弾幕も使うことができない。
風魔が来てもこの状況、もうどうにもならない……
そこで風魔とちらりと目があったような気がした。
そして風魔は目で語った。
――僕を舐めるな、と。
「疾風剣《嵐》」
瞬間、風魔の姿がブレたような気がした。
風魔はパワーや防御力では完全に力に負けている。でも、そのほかの面だったらどうだろうか。
『風を操る程度の能力』を有する文があれほど早かったのだ、なら、同じように風を操っているであろう風魔なら、どれほどの速度を出せるのか。
その答えはすぐに分かった。
「ぐふぅっ」
一瞬で移動した風魔は力の攻撃の切れ目を狙い、剣を突き立てていた。
しかし、力の肉体はやはり素でかなりの強度を誇っているようで、《
だが、どうやら風魔は計算通りだったらしい。
風魔が力を二振りの剣で突き飛ばすと、その直後、力の体を無数の斬撃が襲った。
その斬撃は力の肉体を両断することはできずとも、着々と力の肉体を削っていく。
「《
即座に《
この状態の力にはどう頑張っても風魔じゃ傷1つつけることはできない。
やっぱり、風魔のスピードは凄まじいし、手数で言ったら風魔の方が上なんだけど、《
でも、風魔には一撃で力を倒すことができるような攻撃力は無いみたいだ。さっきから見ていても、風魔の攻撃は力ほどの破壊力があるようには見えない。
無数の斬撃を飛ばし、それを力の拳圧にぶつけることによって対処していたみたいだけど、それじゃ力を倒すまでには至らない。
風魔は自信ありげな表情をしていたけど、どうやって倒すつもりなのだろうか。
「お前、俺に攻撃を当てるように見せかけて、俺の足元を削っているな? もしかして、俺を島の下に落とすつもりだったりするのか?」
「……」
「図星か。確かに、お前の役割は俺を倒すことじゃない。俺を足止めすることだ。俺を落とすことさえできれば俺を長い時間足止めすることも可能だろう。それに、真横や真下ならともかく、自分の肉体を真上にぶっ飛ばすとなれば、それ相応の威力が必要だ。それじゃ、俺が自分の肉体をボロボロにしてしまう……つまり、落ちたらもう戻ってこれないわけだ」
そういうことか。
確かに島から追い出してしまえば、力はもう何もできない。私たちの完全勝利っていうわけか。
でも、この力がそう簡単に島から出て行ってくれるとは思わない。
力は地面を削っているということに気が付いてすぐにその場から離れ、安全な足場へと移動した。
目論見がバレた。これじゃあ、力は警戒してさらに落ちてくれなくなってしまうだろう。
「確かに、僕の目的はあんたを下界に叩き落すこと。だけど、あんたを地面を削り取って落とそうなんて思ってないよ。僕が狙っているのはあくまでも一撃必殺だ」
「何を言っているんだ。お前の攻撃で俺を一撃必殺で倒すことなんてできるわけないだろう」
「確かに、今はできない。僕じゃ一生かかってもあんたを倒せないよ。そんなことは自分がよくわかっている。でも、なんか、黒葉と共闘して、ちょっと『疾風の加護』のことを少し理解できたっていうか……僕はこの加護をまだ、完全には使いこなせていないって。だから、僕はどうしたらこの加護を100パーセント発揮できるのかって、慣らし運転中だ。だから、かならずこの戦いの間に加護の核心を掴んで、あんたを下界に叩き落してやるからな」
自信満々に言い放つ風魔。
「そして、必ず父さん、母さん、それにこの街の人たちも全員救い出して見せる」
「父さん、母さん? あぁ、あいつらのことか」
「あぁ、僕は今まで二人とも助けるために戦ってきたんだからな」
「そうか、そうかぁ……くくく、そういやそんな話だったなぁ。お前の両親には手を出さない代わりにお前が働く……」
顔に手を当てて静かに嗤う力。
そんな力から放たれた一言を聞き、風魔は思わず両手に構えた刀を地面に落としてしまった。
「お前の両親なら、俺が二日目に殺しちまったぁ」
はい!第276話終了
力戦前半戦を今回と次回で終わらせようと思っているのですが、ここで新事実。
風魔の両親はもうとっくに力によって殺されていたことが判明しました。
今まで風魔が従ってきた理由って言うのは両親を殺されないようにということでしたからね。
ここからどうなってしまうのでしょうか?
それでは!
さようなら