それでは前回のあらすじ
風魔と力の戦いは激しく、ルーミアは戦慄していた。
力では圧倒的な力、だが、スピードに関しては風魔に軍配が上がり、風魔はスピードを活かした斬撃で力の足場を削り、下界へ落とそうと画策する。
しかし、力にはその作戦は見破られてしまった。
だが、風魔の考えはさらにその先を行く。加護の核心を掴み、さらなる力を得ようとしていたのだ。
そんな風魔に力から衝撃的な事実が語られる。
それではどうぞ!
side風魔
今、この男はいったい何を言った?
聞き間違いだと信じたかった。何かの悪い夢だと、信じたかった。
だけど、僕のこの耳ははっきりと今、力が言った言葉が残って、反芻していた。
――お前の両親なら、俺が二日目に殺しちまったぁ。
「あ、あぁ……」
声にならないうめき声のような声が自分の喉からかすれ出て、僕は両手に持った剣を思わず手放してしまった。
力の笑い声が脳に響く。
信じない、絶対に信じない。
この男は絶対に僕を動揺させるために言っているだけだ。そんなこと、あるはずがない。
だって、そうじゃないと今までこいつらに協力してきた僕の努力は全部――
「くくく、くはははは、その顔、傑作だなぁ。そうだ、お前の両親は俺が殺した。そう、今までお前は両親を守るつもりで俺たちに協力し、そして両親を守ったつもりになっていた。そして、お前はその両親を殺した敵に戦い方を教えてもらい、両親が殺されまいと従順になって人を貶めてきた。だが、結局お前がこれまでしてきた努力は全部、無意味なものだったんだよ。お前が心を殺して俺たちに協力し、人を貶めてきたのも、俺に戦い方を教えてもらっていたのも、全部全部、無価値だったんだ」
「あ、ぐ、あっ」
この島に来てからのいろいろな記憶がフラッシュバックする。
僕は両親を守るためにいろいろな許されざることをしてきてしまった。下界に行って空島に案内してみたり、逃げようとする人たちを食い止めたり、三龍騎士として戦ったり……でも、それは全て父さんと母さんともう一度会いたいという一心だった。
いつかチャンスが訪れるんじゃないかって、必死に頑張っていた。
でも、それらすべてが無意味、無価値な行為だったのだとしたら。
「オエ……」
胃から熱いものがこみあげてくる。
僕は今まで、一体何をしてきた? 何をしていた?
特殊警察にあこがれていると言いながら、僕は警察の敵になるようなことをずっとやり続けてきた。それが、父さんと母さんを守ることができる一番の方法なんだって、ずっと感情を押し殺して自分に言い聞かせていた。
僕が陥れてきた人たちの中にはいい人たちもたくさんいた。
黒葉君だってそうだ。
僕があの工場に黒葉君を連れて行った理由なんてただ一つだ。黒葉君をあの工場で働かせようとしていた。
僕は僕自身の目的のためにいけにえにしようとしていたんだ。
だけど、黒葉君の様子を見ているうちに僕は黒葉君と友達になりたいって思ってしまったんだ。だから、黒葉君をいけにえにすることはできなかった。
僕は今まで許されざることをしてきた。
今更どう償えばいいのかわからないことをたくさんしてきた。もう、後戻りできないところまで来てしまっていたんだ。
せめて両親を助けることができれば、僕は満足だった。黒葉君にはああ言ったけど、僕は両親を救って顔を見ることができたなら、死ぬつもりだった。
「どうにもこうにも、お前の両親はうるさくてなぁ? 一応お前との約束だから牢屋に閉じ込めておくだけだったんだが、『風魔はどこだ!』『風魔は無事なのか!?』『風魔に合わせろ』って、うるさくてなぁ? つい、殺してしまったんだよ。だから、俺は悪くない。悪いのは俺をカッとさせたお前の両親だ」
「じゃあ、僕は今まで、何のために戦ってきたんだ……」
「知らねぇよ。ただ、分かることはお前は目的というものも何もないのに、ただただ俺たちに組して悪事を働いてきたって言うことだ」
「ち、ちが、僕は父さんと母さんのために……」
「でも、そんな奴らはもうとっくの昔からいないんだよ。お前が何を言おうとも、その事実だけは変わりゃしねぇ」
違う、違う。
僕はこんな奴らに力を貸したかったわけじゃない。
違う、違う。
僕の本質はこいつらと一緒じゃない。
違う、違う。
僕はただ、父さんと母さんを助けたかっただけ――
僕は、今まで何のために、戦っていたんだろう。
思わず僕は膝から崩れ落ちてしまった。
さっきまであったやる気なんてどこにもない。ただ、そこにあったのは目的も無くし、これまでの自分の行為に後悔し、絶望している生きる屍だった。
涙がとめどなくあふれてくる。
でも、僕はそれを止める方法を知らなくて、分からなくて……。
「死ねよ、僕っ」
今までの罪悪感に苛まれ、そんな言葉が口をついて出た。
僕は今まで何人死に追いやってきた? 僕は今まで何人地獄に突き落としてきた?
僕は今まで……何をやってきた?
「死ね、死ね、死んじまえ、僕。どうして僕は悠々と生きているんだ。人を殺しておいて、なんで平然と生きてるんだ。死ね、死ねよ。さっさと死ねよ、何のために生きてるんだよ。何の目的も無い癖に、なんで僕は生きているんだよ。死ね、死ね、死ねぇぇぇぇぇぇぇっ」
僕は狂った。
今までの僕の努力がすべて無駄だったと知り、今までやってきた行いの罪悪感に耐え切れず、叫び散らかす。
喉が裂け、出血しても僕は叫び続ける。
そしてついには剣に手をかけ、首にあてがう。
「そうだ、そうだやっちまえぇぇぇぇっ!」
「だめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
二つの叫び声が聞こえる。
その直後のことだった。
「ぐぅっ」
手に突然の衝撃と激痛が走り、思わず手に持っていた剣をその場に落としてしまった。
「ち、良いところだったのに、このタイミングか」
手を見てみると、そこには矢が突き刺さっていた。
首に剣をあてがっていたということは手は頭のすぐ近くにあったということで、これがちょっとでもずれていたら頭に直撃していた。
矢を抜き、矢が飛んできた方向へと視線を向けてみると、そこに居たのはこの街の住民だった。
その人だけじゃない、多くの住民がこっちへ向かってきているのが見えた。そして、僕に矢を放ってきたところを見るに、あいつらは龍たちにじゃなく、僕らに敵対しているようだ。
こんな芸当、できるのはただ一人、魔導しかいない。
「まぁ、いい。これが始まった以上、お前らの勝ちはなくなったな……」
はい!第277話終了
これにて力戦前半終了です。
ついに残す戦いは由麻戦です。
すべての前半戦を終わらせてしまいましょう!
それでは!
さようなら