【3章投稿中】東方妖滅録   作:ミズヤ

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 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 天音の声が島中に響く。

 彼女は紫によって助けられた。その助けられた命を今ここで龍撃破のために使用する。

 これが彼女の戦いだ。



 それではどうぞ!


第282話 第一の奇跡

side黒葉

 

 スピーカーから突如声が聞こえてきた。その瞬間、俺たちに向かって進軍してきていた住民たちの歩みが止まった。

 その姿はまるでゾンビのようで、意思もなくただただだらんと両手を降ろし、じっとしている。

 

「たす、かった?」

 

 もしあのまま住民たちが迫ってきていたら、俺たちは為す術なく、やられてしまっていたことだろう。

 スピーカーから聞こえてきた声、それは間違いなく俺の妹、天音の声だ。

 紫さんからは天音は龍から師匠とルーミアを守るために囮になったって聞いていたんだけど、無事だったのか!

 

 いや、多分紫さんのことだから天音のことは助けて、無事であるということは知っていたけど、俺には伝えないようにしていたんだろうな。

 俺に伝えられた作戦も天音のことについては何も言われなかった。

 でも、多分紫さんはこの状況を狙っていたんだろう。

 

 そして、天音が生きているという事実をなるべく広めないために俺にも隠していた。

 本当に腹が立つな。俺から天音が生きているという情報が洩れるとでも思っているんだろうか。

 

 作戦の為には必要なことなんだって言うことは理解しているけど、それでも妹が殺されてしまったかもしれないと思って不安になっていたから、隠されていたことに関してはむかつく。

 でも、本当に生きていてよかった。

 

 普通の人間の声だったらあの住民たちは一切の反応を示すことはないだろう。

 なにせ、俺が工場で声をかけた時も全く止まることはなかったくらいだしな。あれは天音の声だからこそ起きている現象だ。

 

「あの小娘、生きていたのか! 殺したはずなのに、どうして生きているっ」

 

 どうやら紫さんの作戦もあって、龍は本当に天音が死んだものだと思っていたらしい。

 

「黒葉、大丈夫!?」

「あ、あぁ、大丈夫。それよりも、ついに作戦が次の段階に移行したみたいだ」

「作戦って?」

「知らん」

「えぇ……」

 

 紫さんが俺にまで内緒にしていたんだから仕方がないだろう。

 一応作戦はある程度知っているが、このように紫さんが内緒にしている作戦もあるとしたら、俺はもうわからない。

 ただ、俺はこの状況に身をゆだねるしかないだろう。

 

「君たち! 早く、この二人を取り押さえろ!」

 

 龍が叫んで命令をする。

 すると、一時的に停止していた住民たちが動き出してしまった。やっぱり洗脳の力は強力だ、決められた人以外の命令は聞かないようにされてしまっているのだろう。

 天音の言霊もかなりの力を持っているけど、やっぱり洗脳には勝てないのか……。

 

『突然ごめんね? 驚かせちゃったよね。でも、これは必要なことらしいんだよ。だから、あたしは今こうして、みんなに声を届けてる。みんなは今、どこで何をしているのかな……何を考えているのかな。それとも、洗脳されて意識も完全に無いのかな……? 多分、この島にいる人たちはみんな、辛い状況だと思う。ほとんどの人は洗脳されちゃって、自分の意志とは違う風に操られて……死にたくても死ねなくて、死ぬまで永遠とこき使われて……それはそれはひどい状況だと思う。あたしも想像するだけで辛くなってくるよ』

 

 再び話し始めた天音。

 その声が聞こえてくると、進軍を再開した住民たちの足がまた止まった。

 天音の声色は優しい。まるで、心に言葉がしみじみと溶け込んでくるような、心を直接触り、そして精神に語り掛けてくるような。

 そして、この声を聞いているだけでさっきまで感じていた焦燥感って言うのがどんどんと溶けて流されていくような、そんな感覚に陥ってしまう。

 

 師匠から天音の声を聞いたら警戒心が薄れていったっていうのは聞いていたけど、こんな感覚だったのか。

 そして、天音の声は洗脳されている住民たちの心にまで届かせる効果がある。

 

『まぁ、こんなことを言っても、あたしは実際に洗脳されて重労働をさせられているわけじゃないから、みんなからしたらよく知らないくせにわかった気になるんじゃねぇ、お前に何がわかるっていう状態だと思う。うん、それはそうだ。その考えはごもっとも、実際に被害を受けていないあたしじゃみんなの辛さっていうものは正確にはわかってあげられないと思う。そこは本当にごめん。あたしはみんなじゃないから。そして、みんなもあたしじゃないから……』

 

 天音は実際にカウンセリングをするかのように、みんなの心に寄り添うようにゆっくりゆっくりと言葉を並べていく。

 

『でも、あたしはみんなの辛さ、分かる』

 

 その言葉は実感がこもっていて、凄まじく力強い言葉だった。

 

『あたし、ちょっと前まで本当にひどい環境にいてさ、人里を破壊して回ったり、子供に人体改造をするような、ひどい親のところに居たんだよね。あたしはその状況をどうにかして改善したいって思って、その親の考えを正してくれるような人を探してた。でも、そんな人はそうそういないものでね、あたしの親はとんでもなく強くて、あたしが頼った人たちはことごとくダメだった。最後の方はちょっと、あたしも諦めかけてたよ』

 

 天音は天魔組に居た。

 そしてどうにか天魔を倒せるような人がいないかをずっと探していた。

 でも、天魔は異常なほどに強くて、俺たちが戦ったときもそのあまりの強さにみんなボロボロになって戦った。

 

『あたしはこのまま一生、この環境で生きていくんだろうなって、思った。自害も考えた。でも、あたしって弱くってさ、そんなことはできなかった。……でも、そんなあたしにも奇跡が起きた。その人はあたしの親よりもずっと弱くて、吹けば飛ぶような力しかもっていなかった。だけど、あきらめず、何度も何度も戦ってくれた。死にそうになりながらも、必死に……必死に……そしてついにあたしの親を倒してくれた。ボロボロだけど、その姿は世界一かっこいいと思ったよ。そして今、この島にも奇跡を巻き起こそうとしている人たちがいる。桑間龍っていうとんでもない悪を倒そうとしてくれている人がいる。でも、奇跡って言うのは願っているだけ、祈っているだけで叶うっていうものじゃない。奇跡って言うのは起こそうと頑張った人が掴み取ることができる勲章のようなものだから……』

 

 ――だから。

 

『諦めないでほしい。生きることを、抗うことをやめないでほしい。どんなに今が辛くても、今この瞬間を乗り越えれば、きっといいことがあるから。素敵な未来が待っているから。いろいろあって、地獄を見てきた私だけど、今私は最高に幸せだって思えているから。だから、みんなも、その幸せをつかむために……戦ってほしい。洗脳なんかに負けないでほしい、絶望に屈しないでほしい……そうしたら、きっと……いや、絶対に素敵な未来が待っているんだから! 私は絶対に諦めない。どんなに苦しい状況になったとしても、絶対に諦めない。勝利を手にするその瞬間まで、絶対に諦めたりはしない。みんなも、心の中ではずっと願ってるんだよね。この地獄から解放される、奇跡、幸せな未来っていうものを。それとも、そんなことはないのかな? これって私の独りよがりなのかな……?』

 

「そんなことないっ!」

 

 その時、スピーカーの声に呼応するように一つの声が響いた。

 今の声は俺の声でも、姉貴の声でもない。ましてや龍の声でも。

 

 そうなると、今の声の主は間違いなく今俺たちの目の前にいる住民の中の一人の声だろう。

 つまりそれは――

 

「あぁ、そうだ!」

「こんな地獄、さっさと抜け出してやる!」

「俺たちに奇跡を見せてくれ!」

 

 天音の声によって洗脳が解けていく。精神に作用していた洗脳は同じく精神に作用する天音の声によって上書きされたのだ。

 そして、一人が呼応するのを皮切りに一人、また一人と洗脳から解放されていく。

 

「な、これはどういうことだ!?」

 

 龍もこんな事態、初めてのだろう。

 目の前で起こった奇跡が信じられないのか、叫んだ。

 

 もう俺たちを邪魔する奴らは居ない。

 住民たちは次々に洗脳から解放され、もう龍たちの言うことは聞かないだろう。

 

『……だよね、みんな誰しもがこの地獄から救ってくれる人を望んでいる、奇跡っていうものを望んでいる。だから、これは一つ目の奇跡。だけど、奇跡はここからもっとすごいものが起こるよ。だから、最後まで諦めないで。これから第二、第三の奇跡がみんなを救ってくれると思うから……私たちの救出劇(マジックショー)はここから始まるよっ!』

 

「「「おおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!」」」

 

 大歓声が巻き上がる。

 その声は島中から響いてきて、この島にいる住民たちは全員洗脳から解放されたというのがわかる。

 そう、これがここから始まる大奇跡の第一歩。

 

 もっとすごい奇跡はこれから起こすんだから。

 

「こ、こんな奇跡、あってたまるかぁぁぁぁぁっ」

「いや、こんなのは序の口だよ」

「なにっ!?」

「見せてあげるよ、龍。これから始まる、奇跡ってやつを」

 


 

side三人称

 

「あれ、ここは」

「私たちは今まで何をして」

 

 スピーカーからの演説を聞き、チルノたちの洗脳も解けた。

 咲夜を羽交い絞めにしていた大妖精と結乃、フランを取り押さえていたリグルとミスティアも正気に戻り、二人の拘束を緩める。

 

 由麻は自分の能力に絶対の自信を持っていた。

 幻覚を見せる、そして精神を操る由麻の能力は最強レベルといっても過言ではない。だが、そんな由麻の能力に対し、対抗できる能力者が今回は居た、ただそれだけの話だ。

 

「な、どうしてっ。僕の能力は完璧のはずだ!」

 

 そして自分の能力に絶対の自信を持っているほど、能力が打ち破られたときに動揺するものだ。

 そのため、由麻はこれ以上ないくらいにうろたえる。だが、それが命取りとなる。

 

「やっと私の出番ですねっ、人符《現世斬》」

 

 これはまだ奇跡の序章。

 ここから黒葉たちの反撃が始まる。




 はい!第282話終了

 天音の演説、そして、奇跡がここから始まる。

 最後の方、天音は感極まって本来の一人称が漏れ出てました。

 ついに黒葉たちの反撃が始まります。

 いやー、ここまで長かった。ついに後半戦です。

 とりあえず、ちょっと由麻戦をやったら次、力戦をやって、次に龍戦をやって、由麻戦をやって、最後に龍戦をやって終了かなと。

 そして最後についに出てきたこの人物。
 もう皆さん、お分かりですよね。

 紫はこのタイミングを狙っていました。
 敵が動揺して隙が生まれやすいこのタイミングを。なので、今まで動かなかったのですが、ついに反撃開始ということで。

 お楽しみに。

 それでは!

 さようなら
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