それでは前回のあらすじ
奮闘する妖夢。
だが、氷の床に大苦戦。
機転を利かして壁を走ることによって由麻に対抗したが、結乃を狙った由麻の攻撃を庇ったことによって妖夢は昏睡状態に陥ってしまったのだった。
それではどうぞ!
side黒葉
突如目の前からドラゴン頭が飛び出してきたため、俺は刀で受け流して回避した。
龍の顔を見てみると、額に血管が浮き出て、相当キレていると言った様子だった。
ついさっきまで完全優位だったのに、一つ優位性を崩され、敗北と言う二文字が現実味を帯びてきたため、焦っているんだろう。
龍たちには今までどれだけ歯向かってきた人たちが居ても、簡単に返り討ちにできていたと言う自負があるのだろう。だからこそさっきまでは余裕で居られた。
でも、もうそういうわけにも行かないだろう。
「ふざけるな、ふざけるな、ふざけるなよぉっ! 何が奇跡だ、そんなのあるわけがないだろうっ! 君たちは僕がこの街を作り上げるまでどれだけ苦労してきたか分からないからそんな簡単にこの街を壊すことが出来るんだ。目の上のたんこぶであるカイを超えるため、ずっと努力をし続けてきた。それを、ぶっ壊すだってぇっ!? ふざけるのも大概にしたらどうなのかなぁっ! 君たちには人の心っていうものが、無いのかなぁっ!!??」
それはこっちの台詞だ。
こんなに人を奴隷のように扱って、死んだら島から投げ捨てる。そんなのは人間のやる所業じゃない。
鬼畜の所業だ。
龍が好き勝手生きるほどに苦しむ人が出てくる。
こいつはもう生きていちゃいけない存在だ。
「もう時期、俺の仲間があの像をぶっ壊してくれるはずだ。そうしたら、チェックメイトだな、龍」
「チェックメイト…………チェックメイトだってぇ!? それはこっちの台詞だよ。君たちは僕には勝てない、敗北が確定してるんだよぉっ」
その次の瞬間、龍の肉体の周りをドラゴン頭がぐるぐるとひしめき始めた。
その数は今まで俺たちに攻撃として放ってきていたドラゴン頭の数と比べても歴然の差で、一瞬にして龍の姿はドラゴン頭に隠れ、そして龍のシルエットが真っ黒になってしまった。
確かにああいうものは霊力があればある分だけ出すことが出来るけどさぁ、まだ多く出すことが出来るのかよ。
「黒葉、なんかあれヤバいわね」
「でも、やるしか無い」
ヤバい雰囲気が漂っている。龍に準備をさせてしまったらおしまいだ。
総判断した俺は刀を構え、そして龍に突っ込んでいく。
「《
加速を付けて一気に龍の肉体を切り裂く――ことは出来なかった。
俺の振るった刀は龍に当たる前の段階で止まってしまった。まるで龍の肉体の周りに見えない壁でもあるかのような、そんな感覚。
俺の炎でもこの壁を燃やして突破することが出来ない。
空間を喰っているんだ。
あの大量のドラゴン頭全部が龍の肉体を守るように周囲の空間を喰い、空間断裂という鎧を着込んでいるんだ。
そしてやがてそのドラゴン頭は一つに集合し、まるで龍の鎧かのようにまとわりつく。これは龍の能力じゃないから、
「《
「へぇ……でも、残念ね。その自慢をする機会は私たちには無さそう」
「なに?」
「だって、地獄に行くのは私たちじゃない、あなただもの……」
「そっかい、そっかい、そんなに直ぐに死にたいならそう言ってくれればいいのにさぁっ!」
その次の瞬間、龍の姿は一瞬にして消え、そして消えたと思いきや姉貴のすぐ目の前にまで来ていた。
あまりの速さに姉貴は一瞬反応が遅れてしまい、腕をクロスして防御しようとしたものの、その防御は間に合わず、防御が不完全な状態で龍のパンチを受けてしまい、殴り飛ばされてしまった。
なんとか姉貴は地面に手をついて体勢を立て直すことによって耐えたが、今のスピードは一体何なんだ?
今までの龍とは全く違う。
今までの龍ならば、あまり動かずドラゴン頭だけを使って相手を攻撃する省エネ戦闘がメインだったのに、とんでもない速さで姉貴が殴り飛ばされてしまった。
間違いなくその種はあの鎧にあるんだろうけど、どういう原理なんだ?
龍の肉体強度的に、あんな動きをしていたら肉体がぶっ壊れてもおかしくはない……。
「いやぁ、久しぶりにこれを使ったから、力加減を間違えたよ。今ので瀕死にするつもりだったんだけど、思ったよりもダメージを与えられなかった」
「それも、加護の力なのか」
「そうそう、これも僕の加護だ。確かに今、君たちの仲間は頑張っているようだけどさ、それって君たち有りきだよね。どれだけ他の人たちが頑張ったところで、君たちがあの像を破壊する前に死んでしまったら、僕を殺すことなんて永遠に出来ない……僕の完全勝利って言ったところだ」
つまり、ついに龍は本気を出したということなのだろう。
ちょっと不安を煽りすぎたせいでピンチになってしまった。
龍のあのスピード。俺が《
でも、見えたところで反応できる自信がない。
本当に俺にやれるのか?
いや、やるしか無い。姉貴を無事に連れ帰るには龍を撃破することは必須条件だ。
「だぁぁぁぁぁぁぁっ、《画竜点睛》」
勢い任せに刀を振るう。だが、その刀は龍に当たることはなく、そのまま空振ってしまった。確かに刀を振るうまではそこに龍が居たのに、眼の前から忽然と姿を消してしまった。
どうやってこんな速度の相手を仕留めろって言うんだよ。無理すぎるだろ。
その直後、腹に鉄の塊が突っ込んできたのかと思ってしまうほどの衝撃が走り、そのままぶっ飛ばされて草原を転がってしまった。
深緑の草原に真っ赤な血を吐き捨てる。
今ので確実に骨が何本もイカれてしまった。腹が痛い、思うように息ができない。
今、俺は龍に蹴り飛ばされた。
なんだ、この破壊力は。こんなのもう一発食らったら一溜まりもない。
今こうして意識を保てているだけでも俺は奇跡だとすら感じてしまうほどの激痛。
「やべぇ……」
調子に乗っていたのは俺の方だったのかもしれない。
今までの龍の戦い方の対策ばかり考えていて、もしかすると龍にもまだ見せていない技があるんじゃないかという可能性を考えていなかった。
それがこの結果だ。
「はは、ははははは、はははははははははっ」
もう、俺は笑うしか無かった。
はい!第285話終了
本来《龍武装》ってもっと後に出す予定だったんですけど、まぁ、このタイミングで出さないといけないって思ったので出しました。
次回も龍戦やって、ついに力戦開幕です。
力戦はラストまでやりますよ!
それでは!
さようなら