それでは前回のあらすじ
更に強くなった龍を前に絶望してしまう黒葉。
だが、レミリアは諦めていなかった。
そのレミリアの期待に応えるために再び奮起する黒葉。
レミリアは言う、戦いが終わったら黒葉に言いたいことがあると。
その話を聞くため、黒葉はなんとしてでも生き残って龍を倒すために戦うことを覚悟したのだった。
それではどうぞ!
sideルーミア
天音ちゃんの声が周囲に響いた。
すると、私たちの方へと歩いてきていた人たちの足が止まり、そして武器を捨てた。
確か天音ちゃんの能力には相手の心を落ち着かせるという効果もあったはずだから、きっと洗脳の効果を打ち消したんだ。
「なんだ、これは……まさかあの魔導の能力が敗れたとでも言うのか!? 有りえない。こんな事、今まで一度もなかった」
力が困惑している。
つまりは、今この島で龍たちにとって想定外の出来事が起こっているということなのだろう。
龍たちが自信満々だったのは今まで一度たりとも龍たちの力を打ち破ったことがある人が誰も居なかったから、今回も私たちには負けないと思っていたんだ。
でも、ついに一つ力を打ち破ったんだ。第一の奇跡が起こったんだ。
なら、私たちもそれに続かなければいけないだろう。
「まぁいい。何があろうともまずお前たちを排除して、その後にあいつらに洗脳をかけ直せばいいだけの話だ。お前らの力ではこれ以上の奇跡を起こすことなど叶わない」
洗脳を解いて後は龍たちを倒すだけというこの状況。
私たちが負けて力が像に行ってしまったら全てが水の泡になってしまう可能性がある。
そんなのはダメだ。みんなの努力を、みんなの思いを繋ぐために、私たちは絶対に力を像に行かせてはダメだ。
力はここで食い止める。
「どうやらお前も繊維を喪失したようだしな。俺はもうここに居る理由はない。お前らは戦犯となる。俺を食い止めることが出来なかった、最低最悪の戦犯だ。俺を止めることが出来れば、もう少しは勝機があったかもしれないのにな」
そう行って打ちひしがれている風魔を見下ろし、そしてこの場から走り去ろうとする力。
でも、そんなことは絶対にさせない。
「なっ」
走り去る直前、私は力の足にしがみついた。
もう骨が折れていて、妖力も枯渇している。今の私に出来るのはこうして力の足にしがみついて思うように走れなくすることのみ。
樹海だとか、弾幕だとかで戦うことはもう出来る気がしない。
それでも、諦めるわけにはいかない。
みんなが頑張っているのに、私たちの失敗で全てを失敗で終わらせるわけにはいかない。
「くっ、離せ」
私の頭を蹴って私の身体を離そうとする力。それでも、私は力を緩めることは一切しない。
これでも妖怪だ。力に関しては人間よりもあると自負している。だから、すべての力をこの腕に込めて全力で足に抱き着く。
「こいつっ」
「かはっ」
今度は私がしがみついている足を思い切り振り上げ、地面にそのまま叩きつけてきた。
胴体に来た凄まじい衝撃。思わず私は腕の力を緩めてしまった。
その隙を狙って力は私の事を蹴り飛ばして私を足から離す。
だめ、だめ、だめ。絶対にダメ。
行かせちゃダメ。私たちはなんとしてでも力をこの場に留めなければいけないんだ。
骨が何本折れていようと関係ない、妖力が枯渇していようとも関係ない。
たとえこの身が滅びようとも、絶対に力を像にはいかせない。
「はぁっ」
「なっ」
私は手のひらに作り出した手のひら大の妖力弾を力いっぱいに投げ飛ばし、力の立っている足場を破壊して体勢を崩した。
これが私の最後の妖力弾。
正真正銘、もう一ミリも妖力が残っていない。もう、これ以上はどうしようもない。
だけど、力が体勢を崩し、思うように走れなくなっている間に私は必死に走る。
体中の骨がミシミシ言っている感覚がある。
なんでなんだろう。
ついさっきまで力の能力を見せつけられて絶望していたはずなのに、今はこうして全力で走ることが出来ている。
……それも、天音の言葉を聞いてからだ。
天音の声を聞いていると、悩みとか色々と吹っ切れたように感じた。
迷いも何もかも、吹っ切れて、ただがむしゃらに勝利に向かって走ることが出来るようになった。
天音の言葉は住民たちに向けられた言葉の様に思えて、天音は私たちの事も鼓舞していたのかもしれない。
心理カウンセリングというやつだ。
なんだか、さっきまでは怖かったのに今はこれで果てるのは怖くない。
それよりも、私たちが原因ですべてが失敗するという方が怖い。だから、私は――
「絶対に行かせないっ」
「ちょろちょろと鬱陶しいっ!」
どうやら私を厄介な相手として認識したらしい。
自分の身を顧みず襲い掛かってくる相手程恐ろしいものはないからね。
「まずはお前から死ね。暴力《破壊・乱打》」
私に迫りくる大量の衝撃の嵐。
さっきまでの私ならば《
だけど、今の私に《
対処、できない。
まだ私は死ぬわけにはいかないのに…………っ!?
「疾風剣《旋風》」
だけど、その攻撃が私に届くことはなかった。
吹き飛ばされそうになってしまうほどの暴風が吹いたかと思ったら私を守るようにして風の斬撃が衝撃とぶつかり合う。
まるでその衝撃が来る場所が分かっているかのような防御。
これって――
「はぁ……はぁ……」
私の前には力の攻撃を防ぎ切り息を切らした風魔が立っていた。
その様子はどこかさっきまでの覇気のある風魔の様子とはちょっと違っていて、さっきまでの荒々しい風の雰囲気ではなく、どこか落ち着いたそよ風のような雰囲気となっていた。
暴風がとても弱弱しい風に変化したとでも言うべきか。
やっぱりさっきの話を風魔は引きずっていて、何とか動いたけどそれでもショックのあまり本気を出すことが出来ていないと言ったところだろう。
それでも、風魔は私を助けてくれた。
だから、何とかして風魔に声を掛けようとした、その時だった。
「ね、ねぇ……」
「僕、何やってんだろうなぁっ!」
そんな小さな叫びが風魔から放たれた。
はい!第287話終了
ついに今回から力戦なわけなのですが、ここからノンストップで力戦をラストまでやっていきますよ。
雰囲気が変わった風魔。
ルーミアからは弱弱しくなったように見えると言われた風魔ですが、彼にはどんな変化があったのでしょうか?
それでは!
さようなら