それでは前回のあらすじ
あともう少しのところでやられてしまった風魔。
気を失い、両親の夢を見る。
そこで風魔は両親に元気づけられ、勇気を貰う。
そして二人に別れを告げ、もう振り返らないと覚悟を決め、最後の戦いへと駆け出したのだった。
それではどうぞ!
side風魔
「はっ」
僕、今どれくらい気絶してた?
顔を上げると、そこにはまだ力が立っていることから気絶していたのは長くても数秒程度のことなんだろう。
意識が戻り急に現実に戻ったら全身の激痛が蘇ってきて泣きそうになる。
久しぶりにお母さんの腕の中に抱かれて幸せだったから、もっとその幸せを味わっていたいところだったけど、僕はもう振り返らない。
僕が見ているのは常に前のみだ。昨日を想うんじゃなくて、明日を想え。
明日を手に入れるために、今本気を出せ。倉風魔!
「…………」
「マジか……」
僕はなんとかその場に立ち上がる。
ほとんど根性で動いているようなものだ。
心は粉々にへし折られたし、龍戦からの連戦でこちとら心身ともにボロボロのぐちゃぐちゃなんだよ。
それでも、僕は立っている。こうして地面に足をつけて立っている。
僕は生きている。
「ふはっ」
なんだか笑えてきた。
何だこの状況、なんだこの絶望的な状況。苦しい、辛い、嫌だ、逃げたい。そんな気持ちが渦巻いているのに、僕の足は逃げない。
まるで心と身体が分離しているような変な感覚だ。
思えばこの身体の痛みもどこか可笑しい。痛いと感じるということは僕は生きているということだ。
周囲の全てがぼろぼろだ。これは今まで龍たちが積み上げてきた努力を破壊できているということにほかならない。つまり、僕らはあいつらの大切なものを着々と奪えている。
なんだか楽しい。絶望的なのに、でもなんだか今僕は力に負ける気がしない。
「あっはっはははははははははははははははははははは」
「なんだ、ついに恐怖で壊れたのか?」
「ちげぇよ、バーカ。未来を想って笑ってんだよ。あんたらを倒した先にある、僕らの輝かしい未来を想ってな!」
「未来……未来だとぉ? お前らには未来なんてものは存在しない。お前らは俺たちに敗北し、殺されるかこの島で一生奴隷として生きる未来しか残されていないんだからなぁ」
なんだろう。
さっきまでもやもやしていて、苦しくて、焦りで胸がいっぱいだったっていうのに……お父さんとお母さんに背中を押されてから全てが楽しく感じて仕方がない。
こいつらを倒した後、僕は何をしようかと。この街に居た時は出来なかったようなことも色々とできる。選択肢は無限大だ。
とりあえず僕は警察官を目指して頑張る。警察官になって今まで地獄に落としてきた人数以上の人たちを守り助けるんだ。
それからこの幻想郷の色んなところを見てみたい。大きくて綺麗なひまわり畑がこの幻想郷の何処かにあるらしいし、いろんな景色を見てみたい。
やりたいことが次々と浮かんでくる。
もはや僕の目には力や龍といった小者は映っていない。ただただ、未来を想って剣を振るう。
「暴力《破壊・乱打》」
「疾風剣《竜巻》」
大量の衝撃波が襲いかかってきたから僕は周囲に風の防御壁を作り、風の流れによって全ての衝撃波を受け流してみせた。
どうせ今の力の攻撃を完全に防ぎ切ることは出来ないんだから、僕は受け流すことにした。
止められないならば止めなければ良い。ただそれだけのことだ。
「なにっ」
だが、攻撃を一つ防ぎきっても次々に放たれる衝撃波の嵐。
さっきまでの僕だったら防ぎ切ること出来ずに殺されていたかもしれない。だけど、何だろう。
思考が冴えて、クリアになっていく。どんどんと動きが研ぎ澄まされて、より深く風の声が聞こえてくるようになる。
楽しい、楽しい、なんて楽しいんだ。未来を掴み取るためにする戦いっていうのはこれほどまでに楽しいものだったのか。
「あは、あはははは、あーーーっ、はっはっは」
僕は高笑いをしながら高速で剣を振るい全ての攻撃を防ぎきった。
凄い。なんだろうこれ。
なんだか自分の体が自分の体じゃないみたいだ。
身体の調子がすこぶる良い。痛みなんてとっくの昔に忘れてしまった。
まるで風が僕の身体の一部かのように身近に感じる。
風が呼びかけている。今までやられてきた分をやり返してやれって、未来をその手で掴み取れって。
僕と風が一つに溶けていくかのような感覚。
龍は確か未来を見ることが出来るっていう話だったけど、所詮は少し先程度のことだ。僕は遠い未来、一年後二年後の未来まで見ている。
やりたいこと、見たいものは数え切れないほどにたくさんあるんだ。だから、そんな僕の未来を邪魔するやつは等しく僕の敵だ。
「敵は……排除しなきゃ、だよね」
「は? お前っ」
僕が剣を振るった瞬間、大気が揺れたような感覚があった。
今までよりも強い風が力の肉体を襲い、僕の剣が直接あたったというわけじゃないのに、その筋肉ダルマは風によってぶっ飛ばされ、地面を転がる。
いつの間にか僕の両手に握った剣の刀身には緑色のオーラのようなものが纏われていた。
今まででは考えられないほどの威力が出た。
これはもはや疾風程度の騒ぎじゃない。そう、いうなれば風神の所業。
そうだ、そうだよ。
これだ、これこそが僕の『疾風の加護』の真の力。『疾風の加護』改め、『風神の加護』とでも言うべきだろうか。
風を意のままに操ることの出来る僕の最高の力だ。
「調子に乗るなよクソガキがぁぁぁぁっ!」
今の一撃は力に大ダメージを与えたようで、ついに力は身体から血を流した。
力は今『
でも、今のはまだ全力じゃないんだよね。僕の『風神の加護』のポテンシャルはこんなもんじゃない。
「力、あんたを師匠として僕の本気、見せてあげるよ。これから、ね」
はい!第291話終了
ついに来た『風神の加護』です。
これを出す日が待ち遠しかった。
風魔のもともとの加護『疾風の加護』が正当進化した力ですね。
演出はちょっと至高の領域に近かったですが、風魔のこれは至高の領域とはまた違い、両の剣に緑色の風を常に纏わせているのが特徴です。
スピードは『疾風の加護』とは比べ物にならなく、『疾風の加護』よりもさらに強力な風の技を使うことが出来るようになります。
さて、次回かその次辺りには力戦完結すると思います。
それでは!
さようなら