それでは前回のあらすじ
意識を取り戻した風魔は吹っ切れた。
全身に激痛が走っているはずなのに、これを未来を掴み取るための戦いだと考えるだけで興奮し、楽しんでいたのだ。
戦いの中でどんどんと技が洗練されていく風魔。
そしてついに風魔は『疾風の加護』の局地、『風神の加護』にたどり着いたのだった。
それではどうぞ!
side風魔
「テメェがどんな力を使おうとも、俺に勝てるわけがねぇだろうがぁっ!」
力は激昂し、今度は自分を殴りつけて一瞬で僕との距離を詰めると、直接殴りにかかってきた。
遠距離で衝撃波を放ったところで僕に防がれるのだ。ならば、直接殴ったほうが融通が効くとでも思ったんだろう。
浅いんだよねぇ。
「ぐっ」
僕は迫ってきた力の拳が届く前に剣を振り上げ、力に牽制する。
今の僕ならば、その速度の移動にもついていけるぞという意思表示。それ以上近づくと、僕の剣はお前の身体を斬り刻むことになるぞという脅し。
必然的に力は後ろに下がらざるを得なくなった。
今の一撃で僕の攻撃は《
だから、力は僕の攻撃を完璧に防ぐためには《
さぁ、どうする?
僕を倒すためにこのまま《
さっきまで追い詰められていたのは僕だった。だがしかし、今追い詰めているのは僕だ。
「はっ、お前はなにか勘違いをしているようだな」
「勘違い?」
「確かにお前の考えていることは概ね正しい。このまま《
「なっ」
そうか。
クリスタルを守っているのは魔導。確かに彼女が誰かに負けるという場面は想像がつかない。
幻覚に
でも、僕は黒葉君の仲間を信じることに決めたんだ。
だから、僕が諦めることは絶対にない。
「さぁ、終わることのない戦いを始めようじゃないか」
一つだけ、力は勘違いしていることがある。
力はどうなのかは知らないけど、僕は楽しげではあるが、その実体力は限界を超えている。
つまり、力を倒したとて、像にまで向かう体力なんてものは残っていないから、僕は像に行って助っ人をすることなんて出来ない。
連戦に次ぐ連戦なんだ。もう休ませてほしいよ。
「どっちの体力が先に尽きるか……風魔、ラストバトルと行こうじゃないか! 暴力《
力が拳を動かした次の瞬間、僕の真後ろから衝撃波が飛んできたことを察知し、振り向きざまに相殺しようと刀を振るったその瞬間。
その衝撃波は爆ぜた。
まさか衝撃波が爆ぜるとは思っていなかったため、僕はその爆発をまともに受けてしまい、少しの距離をぶっ飛ばされてしまった。
あんな技、見たことがない。
あいつ、あんな繊細な霊力操作も出来たのか。
周囲の風を利用して空中で体勢を整え、着地する。
あの技を出してきたということはいよいよ力も本気ということなんだろう。僕にも見せずに温存していた技だ。
ついに力は僕を自分の敵だと認めたのだ。
なら、僕だってその期待に応えてやるしか無いよなぁっ!
「もう一発行くぞ! 暴力《爆拳》」
「風神剣《
力の暴力《爆拳》に合わせて風神剣《刃嵐》を放つ。
疾風剣《旋風》を『風神の加護』用に昇華させたもので、疾風剣《旋風》よりも圧倒的に高威力かつ、猛スピードの斬撃が相手を襲い狂う。
この攻撃を《
ドガアアアアアアアアアアアアアアン。
「なっ」
僕の斬撃は爆発する衝撃波を突破し、そのまま力へと襲いかかる。
威力は僕の攻撃のほうが上回ったということなのだ。
「ぐぐぐぐぐぐぐっ」
大量の斬撃が力へと直撃。
力を後ずらせる程の威力は出せているが、それでも力の鉄壁の筋肉を切り裂くことは出来なかった。
力はニヤリ顔でこっちを見る。
「やはり、お前の攻撃では俺に傷一つつけることが出来ないみたいだなぁっ!」
あぁ、そんなことは最初から分かっていた。
そして、このまま戦い続ければ僕のほうが先に力尽きるということも分かっている。なにせ、僕と力じゃ受けているダメージ量が違いすぎるから。
だからあいつが持久戦を挑んできた時点で、僕には勝ち目なんてものは存在しない。なんとかして力を倒さないと僕に道なんてものはない。
凄まじく厳しい条件だ。
でも、この条件を乗り越えればその先に僕の未来が待っていると考えると、僕は楽しくて仕方がない。
今、この島で一番の未熟者は僕、だけど決して負けることは許されない。
今ここで負けたら死ぬほど後悔してしまう。戦犯になってしまう。
……そんなの、僕が求めている未来じゃないよなぁ!
みんなが頑張っているんだ。僕一人置いていかれてどうする!?
僕は頑張れる、僕はやれる。
黒葉君の起こしてくれた奇跡に続くために。
「確かに僕はあんたを倒すことは出来ないだろうさ……でも、ならばこれならどうだ!?」
僕は風を利用した超スピードで力の背後を取る。
だが、力は僕が背後に回ったことにすぐに気が付き、振り返ってきた。
「お前も知っているだろ。俺には死角なんて無いってなぁっ!」
力の加護、『天視の加護』はまるで天から見下ろしているかのように周囲の状況を把握することが出来るという索敵最強の加護だ。
だから僕が背後を取ったとしても不意を突くということはまず出来ない。
でも、そんなのは別に関係ないんだよ。
僕のスピードに力は追いつくことが出来ない。僕との距離を取ろうと動いている間に僕は何十発も斬撃を加えることが出来るんだぞ。
「俺が引くと思ったかぁっ! 俺がお前なんぞ相手に引くわけがねぇだろうが!」
「あがっ!?」
直後、アッパーカットが飛んできた。
真上に向かって殴り飛ばされた僕の身体は簡単に宙を舞った。
そうだ、あいつの攻撃の衝撃波は防ぐことが出来ても、接近した時のパンチまでは防ぎようがない。
僕が攻撃できる間合いということはちょっと力も前に出れば拳が当たる距離ということなんだ。
僕はすっかりその事を失念していた。
でも、すぐに切り替えろ。
幸い、僕の意識はまだ保たれている。今の攻撃で意識を飛ばしそうになったが、なんとか耐えた。
諦めるな。戦え、戦え。
絶対に動きを止めるなぁっ!
「僕は絶対に力、お前を倒すっ!」
「どうやってだぁ? お前の攻撃力じゃ、俺には勝てないだろ」
「だから、殺す以外の方法で勝つことにする!」
さっきは砕けなかった地面。
今ならば砕くことができそうな気がした。だから、僕は全力を次の一撃に込めて放った。
「これがお前を倒す剣だ! 風神剣《
通常の疾風剣《竜巻》よりも回転数を多く、力強く風の斬撃を力に向けて放つ。だが、この一撃で力が堪えることはないって知っている。
だから、この風神剣バージョンは更なるおまけ付きだ。
「何が大竜巻だ。お前の十八番、竜巻と大差ないじゃねぇか――っ!?」
「僕は倉風魔……元三龍騎士としてお前を地獄に連れて行ってやるぜぇっ!!」
それは僕自信も竜巻になることだ。
風に乗り、そして僕自信も回転で勢いをつけて二振りの剣を力へと叩きつけた。
手応えはあった。間違いなくクリーンヒットしたと言う感覚があった。
これでダメだったら僕にはもうどうしようもない……。
その直後――ミシッ。
ミシミシミシっと音を立てながら力の足場を中心に大地がひび割れ始めた。
「お、お前、まさか!」
「地獄へ堕ちろ、越前力ぃぃぃっ!」
ついに僕の攻撃力に地面が耐えきることができなくなったのか、力の立っている場所が崩れ落ち、力が立っている場所を中心として円形の穴が出来上がった。
力は抗うことは出来ず、僕の風に乗ってそのまま穴から下界へ叩き落とされる他道はない。
「ぐあ、くそっ、てめぇこの野郎! らぁっ!」
「ぐぅっ」
だが、力も諦めず、僕に向けて衝撃波を放つことによって僕を殴り飛ばし、風の放出を止められてしまった。それによって力を下へと突き落とそうとする力が無くなってしまった。
マズイ、このままだったら力はそのまま自分を殴ってスカイへ戻ってきてしまう。
後もう一歩だって言うのに、勝利まであともう少しだって言うのに、その一歩が遠い。届かない。
地面へ転がり、僕は這いつくばる。
もう限界だった。これ以上戦えるほどの気力は残っていない。穴を眼の前にして僕は力がこの穴から這い上がってくるのを見るしか無いのか……。
そう思っていたのだが、どうやら勝利の女神は僕らのことが好きだったらしい。
「このまま這い上がって風魔、テメェのことをボコボコにしてやるよ!」
「そうはさせません!!」
「はぁっ? ドグワァッ」
穴に超高速で飛び込んでいく一つの黒い影。
それは力に突撃すると、落下の勢いを利用して力に蹴りをお見舞いし、更に下界へと押し込んでいった。
「さっき何度も何度も殴られたお返しです。私たちに勝ちを譲ってもらいますよ!!」
「ち、ち、ちくしょぉぉぉぉぉっ!!!!」
あの人も黒葉君の仲間だ。
確かメイドさんたちと一緒に行動していたはず。
そっか、助けに来てくれたのか……。あの人もぼろぼろになっていたって言うことはついさっきまで戦っていたのだろう。
でも、あの状態でも助けに来てくれた。僕らの思いをつないでくれた。
力、これが僕らの想いの力だよ。
あんたでは到底たどり着くことの出来ない、奇跡の力だ。
「はぁ……はぁ……力……今回は僕らの勝ちだ」
そのまま力は下界に落ちていった。
横移動ならまだしも、上に移動するとなったら重力の兼ね合いもあってかなり時間がかかるだろう。
だから落ちて息があったとしてもクリスタルが破壊されるまでにはもう戻ってこれないはずだ。
つまり、僕らの勝利だ。
【龍陣営VSレジスタンス
天空都市スカイ、力の足止め
勝者、倉風魔、ルーミア、射命丸文】
はい!第292話終了
ついに力戦完結です。
ちょっと最後走ってしまった様な気がしないでもないですが、良いとします。
やっと敵を一人倒せましたね。ここまで長かった。だって三章始まったのは2年前なんですよね。
めちゃくちゃ時間がかかりましたが、お待たせいたしました。
反撃のお時間にございます。
あ、ちなみに最後に来たのはもちろん文です。
風魔は文の名前知らないので。
それでは!
さようなら