実は昨日の投稿通り、今日は僕が物書きを初めてから9周年なんです!!
ということで、今日は3話一気に投稿していきます!
このあと12:00と19:00にも投稿されるのでお楽しみに!
それでは前回のあらすじ
フランが動く。
フランと由麻の戦い。火力が高いフランの方が優勢かと思われた。
意表を突かれ、フランは由麻の手につかまってしまう。
由麻を倒さなければクリスタルを破壊できない。そして由麻を倒そうと動けばフランを殺される。
絶体絶命のピンチに陥ったかと思われた。
だが、その時、意識を奪われたはずの妖夢が気を失ったまま動き出した。
それではどうぞ!
side三人称
――お主は判断が鈍い。
魂魄妖夢には師匠が居た。
妖夢と同じように白玉楼にて庭師をやりつつ、妖夢に稽古をつけてくれていた。
その人物は妖夢の祖父、魂魄妖忌。
今日も今日とて妖夢は妖忌に刀の稽古をつけてもらっていたが、いつものように妖忌に一切触れることが出来ず、地面に倒れ込んだ。
そんな妖夢に妖忌が毎回告げる言葉がある。
それが「お主は判断が鈍い」という言葉だ。
「いつも言っているが、お主の太刀筋は悪くない。だが、そこに至るまでの判断が鈍い。だからこそ、お主の動きはいつもワンテンポ遅れてしまうのだ。だからこうしてこの老いぼれに足下を掬われる」
「老いぼれって言っても、おじいちゃんは博霊選抜チームの一員じゃないですか。バリバリ現役ですよ」
「ていっ」
「いたっ」
不貞腐れたように言う妖夢の頭を竹刀で小突く妖忌。
妖忌も妖夢の実力自体は認めていた。攻撃の鋭さ、そして速度に関しては自分に迫るものがあるとも感じていた。
これなら自分に攻撃を当ててくるのも時間の問題かもしれない、そう思っているのだが、妖夢には一つ難点があった。
(この子、筋は良いんだが、思考時間が長過ぎる。故に相手に先手を許してしまう。それでは勝てるものも勝てなくなってしまう)
妖夢は考えすぎてしまうのだ。
パッと考えた事を思い切って実行するのではなく、思いついたことを一回これが正解かを考え、そしてそれが自分に可能かどうかを考えてから実行している。
そのせいでどうしても後手後手に回ってしまっている。それが妖夢の一番の欠点であり、何度言っても直らない困った部分でもある。
そこさえ直すことが出来れば妖夢は一気に成長することが出来る。妖忌はそう考えていた。
妖夢に必要なのは思い切りなのだ。
(この子の欠点は考えすぎじゃな。せめてこの子が無意識にでも戦うことが出来るようになれば化けるじゃろう)
だが、人は無意識状態で戦うことが出来るようには出来ていない。
意識が有り、思考をしなければ戦うことが出来ない。だから、妖忌は妖夢の思考が遅れる度にそれを咎めるかのように鋭い攻撃を妖夢に浴びせる。
妖夢にとっては厳しいと感じるだろう。だが、それも孫に強くなってほしいという思いから来る愛のようなものだった。
そんなある日、ついに五天魔王との決戦前日。
妖忌はその日も欠かさず妖夢に稽古をつけていた。妖夢の剣技はあれから更に鋭さを増し、思考が長いと言う欠点はまだ改善していないものの、それでもだいぶ妖忌の技に食らいついていけるようになった。
妖忌が思考が長いことを咎める一撃を放とうとしても、それを防いでくることが増えたのだ。
(確かに思考速度はかなり上昇した。だが、それでもまだ安定感が足りぬ。もっと、もっと雑念を無くす方法があれば)
至高の領域というものがある。
そこに至ることが出来るかどうかと言うのは完全に運であり、自在にその領域に入ることが出来る人はこの世に居ないとされている。
だが、妖忌は妖夢がその雑念を完全に取り払うことが出来れば至高の領域に至ることが出来るんじゃないかと考えていた。
至高の領域に入るための条件は主に三つ。
一つ、実力があること。
一つ、極限の集中状態に至ること。
一つ、誰かを助けたいという気持ちを持ち合わせていること。
妖夢は優しい。守りたい人が出来れば自ずと三つ目をクリアできる。実力もそれなりに着いてきた。
だが、妖夢は考えすぎてしまうが故に極限の集中状態に至ることが出来ていない。
これさえクリアできればあるいは……。
「あがっ」
「っ! 妖夢、すまぬ」
妖忌も考え事をしていたせいだろう。
思わず妖忌はいつもよりも強めの攻撃を妖夢に叩きつけてしまい、妖夢はその場に倒れ込むようにして気を失ってしまった。
妖忌はバツが悪そうに頭をかく。
「とりあえず手当をするかのう」
このくらいだったら手当をして休ませれば直ぐに目を覚ますだろう。そう考えて妖夢を担ぎ上げようと手を伸ばしたその時だった。
パシーンと音を立てて妖忌の手が弾かれてしまったのだ。
その直後、即座に妖忌は身の危険を感じて飛び退いた。その判断は正解だったとすぐに分かった。
妖忌が飛び退いたのとほぼ同時に鋭い一撃が妖忌がもともと立っていた場所に放たれた。
その光景を見て妖忌は緊張に喉を鳴らした。
「お主は……妖夢なのか?」
ふらりと妖夢が立ち上がった。
今の一撃を放ったのは妖夢なのだ。だが、普段の妖夢とはまるっきり雰囲気が違う。まるで別人が妖夢に乗り移っているかのよう。
能力の暴走も一瞬考えた妖忌だが、妖夢の能力は別に獣が宿っているような特殊な能力というわけではない。
第一、今まで一度も能力の扱いが難しくなったことなんて無いのだ。
それならこの現象は一体――
「まさか、妖夢。その力は」
妖忌は反応することが出来なかった。
あまりの速さ、普段の妖夢からは考えられないほどの洗練された動き、攻撃のテンポ。妖忌ですら何が起こったのか理解することが出来ず、いつの間にか手に痣が出来上がっていた。
妖夢は妖忌の反応が出来ないほどの速度で妖忌の手に竹刀を当てたのだ。
「これは…………」
妖忌が考えていた道ではない。
だがしかし、確かにこの瞬間、魂魄妖夢という剣士は完成に至った。
初めてこの日、妖夢は妖忌に一撃を当てることに成功した。
はい!第295話終了
次回、妖夢覚醒回!
それでは!
さようなら